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~技能研究を志す少女は変態フリーター盗撮魔の手を取る~  作者: スタイルフリー
第1章 『フリーター脱却編』
7/22

第7話 「愛ちゃん特訓スタート!」

 10月の中旬、今日は土曜日だ。


 愛と技能指導の日程を話し合って、今日が初めて技能を指導する日になる。


 待ち合わせ場所はお馴染みの例の公園で、午前10時に集合することになっている。

 服装は動きやすいものを、スカートは厳禁としておいた。


 今の時刻はちょうど午前7時で、さっき起きたばかりだ。

 

 美少女jcとの技能指導の日々が始まる……というわくわくする気持ちが半分、いつ俺のついた嘘がバレるのだろう……というヒヤヒヤする気持ちが半分、そういうどっち付かずの状態がここ最近続いている。


 愛の技能を開発するメニューはすでに完成していて、指導していく上である程度の算段は立っている。


 どこまで騙し騙しやって行けるか不安に感じる部分はあるが俺に出来ることはやって行こうと、そう思う。


 


―――――




「いただきます」


「はい、いただきます」


 今、俺の向かいで椅子に座り一緒にいただきますをしてるのはこの家の同居人であり、唯一の俺の家族―――政令(つかされい)だ。


 髪は長くストレートで、下ろしてる今は背中辺りまで届いている。

 

 髪色は明るめの薄茶で、これは染めているのではなく母親からの遺伝らしい。


 意思の強さが一目見ただけで感じ取れるような瞳。


 目、鼻、口と顔のパーツ全てが整っていて、その美人な顔立ちにはほんの少しだけのあどけなさを残している。


 令とは子供の頃からの付き合いで、毎日この顔を見てきて何なら若干見飽きてるくらいだが、それでも客観的に評価して凄まじく美人だと言えるだろう。


「何ですかジロジロと」


 なんて考えていたら令に怪しまれてしまった。


「別に……」


 何でもないですよアピールをしながら令から視線を反らし、朝食に手を伸ばす。


 土曜日の朝はいつも令と一緒に朝食を摂っている。


 令は普段仕事が忙しくて朝出るのは早く、夜帰るのは遅い場合が多い。


 平日なんかは俺が朝起きた時点では既に出勤してる場合がほとんどで一緒に朝食を摂ることは滅多にない。

 そういうこともあって比較的ゆっくりと朝の時間を取れる土日に関してはなるべく一緒に朝食を摂るようにしている。


 にしても……


「また肉じゃがか」


 思わず心の声が出てしまう。


「はい、また肉じゃがです。何か文句でも?」


「2日前にも食べたぞ」


「そんなことは知ってますよ。私も食べましたから」


 当然だろうと淡々と答える令。


「しかも朝だぞ」


 正直言って朝から肉じゃがはきつい。

 残り物を消化するにしてもせめて夜にして欲しい。


「はぁ……。前にも言いましたが、文句を言うなら自分で作って下さい。あなたは自分で何もしないくせに文句ばっかりです。仕事をしながら欠かさずいつもご飯を用意している私の苦労があなたにわかりますか? だいたいあなたは……」


 いかんいかん、令の説教が始まってしまった。


 何もしないで放っておくとしばらくは機嫌が悪くて厄介なんだよな。


 少しでも令の機嫌を取り戻すべく、用意された肉じゃがと白米を勢いよく掻き込む。


「グッ……ング……ゴクッ。うまいうまい、やっぱり令のご飯はうまい」

 

 味は悪くない、むしろ普通よりはおいしい。

 ただ明らかに具材のデカさがおかしい。

 今掻き込んだじゃがいもなんかデカすぎて喉を詰まらせそうになったくらいだ。


「何ですかいきなり」


「本当のことを言ったまでだ。それに忙しい中、いつもご飯を作ってくれていることには感謝している」 


 これは本当のことだ。

 ご飯を用意するのなんて冷凍でもインスタントでも出前でもいいはず、それでは健康に良くないからと自信が忙しいにも関わらず時間を作ってわざわざ用意してくれている。その事に関しては素直に感謝している。


「そ、そうですか。確かに感謝の気持ちは大切ですね」


 いきなりの感謝で少し驚いたのか、俺から視線を反らして明らかにサイズがおかしいじゃがいもに箸を立てる令。


「令、いつもありがとう。今度何かお返しさせてくれ」  


 追撃。逃げる間を与えない。


「い、いいですよ、私が作りたくてやってるだけですから。感謝の気持ちを聞けただけで十分です。それに……いつも残さず食べてくれるじゃないですか、それだけで私は嬉しいです」


 頬を赤く染め、少し焦りながらチラチラとこちらの様子を伺ってくる。


 あい変わらず令はチョロいな。


 怒らせてもべた褒めしたり、普段の感謝を述べまくっていると大抵は許してくれる。


 この後も「感謝」や「お返し」といった言葉を乱用しまくり、令をさんざんいじり倒して朝食の時間を過ごして行った。


 まあ感謝をしてるのは本当のことだ、給料が出たら何かしらのお返しはしよう。




―――――(#)―――――



(つかさ)、遅いよ!」


 集合時間の10分前くらいに待ち合わせ場所である公園に到着したら、既に愛が先に着いていて腕を組ながら俺を待ち構えていた。


「まだ予定の時間より早いだろ。なんだ、随分と気合いが入ってるな」


 上はジャージで下はショートの短パンと非常にラフで動きやすそうな格好をしている。

 動きやすい服装でと事前に通達してあったが俺が想像していた以上に動きやすそうだ。


「そりゃそうだよ。今日から特訓スタートだし」


「そうか。だったら早速始めるか」 


 今すぐにでも始めてくれと言わんばかりにうずうずしていたので早速始めることにする……と、その前に開発メニューから軽く解説しておこう。


「まず今日行うのは体を動かしたイメージトレーニングだ」


「イメージトレーニング?」 


「そう、イメージトレーニングだ。愛が目標としているのは火種Ⅲ類の習得だろ、まずは無から火を生成するイメージトレーニングを徹底的に行うところから始める」


「えーっ、そんなの毎日やってるよ。もっと特別なことしようよ」


 まあそう来るだろうな。

 だが、ただのイメージトレーニングとはひと味違う。


「毎日やってるのか。具体的にはどういうふうにやってるんだ?」


 とりあえず質問してみる。


「具体的にって……普通にしてるけど。施設借りられない時とかイメトレするしかないし」


 個人で技能を開発しようと思えば、一般に向けて解放されている技能開発センターという施設を利用するしかない。(通称施設と呼ばれている)


 技能を行使するには国が認可した整った環境や設備が必要であり、加えて技能を指導、監督する資格を持った人間の同行が不可欠となってくる。


 資格持ちの指導者と個人契約でもすれば施設を借りて定期的に技能開発を行えるが、今まで愛に指導者はいなかった。


 施設の役員で資格を持った人間が一部ではいるが、そこには指導を求めて多くの人間が集まってくるので予約をしてもなかなか自分の番は回ってこず、定期的な技能開発を行うのは困難と言える。


 愛はこれまでその役員に予約をして、自分の番が来るたびに少ない時間ながらも着々と自身の技能を開発し、ついにはb群にまでなったという。


 ここで愛の言う「施設を借りられない」というのは厳密に言葉通り施設を借りられないというわけではなく、自分の番が来ていないので借りられても役員に見てもらえず、実質的に借りられないのと同じという意味でそう言ってるのだろう。


 そういった意味で施設を借りられないので、イメトレをするしかなかったと。

 

「そのイメトレをしてⅢ類は習得出来なかったんだろ? やり方に問題があるとは思わないのか」


「それは……そうだけど。でもイメトレするより実技の方がよくない?」


 確かにそうなんだがな、実技は出来ないんだって。

 俺資格持ってないし。


 実技を徹底的に避け、イメトレをさせ続ける。それが俺の狙いだ。


 技能を行使するのに自身の持つイメージはとても重要と言われていて、イメージトレーニングだって立派な技能開発の一つと言える。


 技能が使える多くの人間には指導者などおらず、施設を使った実技での技能開発などはなかなか出来ない。


 だからこそ愛はそれを求めて指導してもらうことを条件にしたのだろう。


 だか、無い袖は振れない。出来ないものは出来ないんだ。


 愛には悪いがイメトレ以外には何も出来ない。


 でも、やる以上は手を抜かないし徹底的に最後まで付き合う。


 それにイメトレとはいえ、ひと味違ったイメトレだ。


 愛がこれまでどういうイメトレをして来たのかは知らんが、一口にイメトレと言っても様々なやり方がある。

 特に俺なんかは技能の行使に強い制約があるため、今までイメトレばかりして来た。


 どういったイメージトレーニングが効率的か、それなりに効果的なやり方を教えてやることくらいは出来るだろう。


「実技を行うのは後からでいい。まずはⅢ類を習得する上で、火に対するイメージがしっかり出来るようになるまでひたすらイメトレを行う」 

 

 断固としてイメージトレーニングを推す構えを取る。


「イメトレなんて一人でも出来るじゃん。それなら政いる意味ないし」 

 

 なかなかはっきりと言うな、こいつは。

 

「いる意味はある。それに今から行うのは体を動かしたイメージトレーニングだ。愛が今までして来たただのイメトレとはひと味違うぞ」


 体を動かす、の部分をあえて強く主張する。


「体を動かしてなんか変わるの?」


 とてつもなく不満そうな顔で渋々質問してくる。


「全然変わるな。少なくとも俺はそれで技力が上がった」


「へ、へえー……ホントに?」 


「本当だ。前に俺の技能を見ただろ? 実技を用いた技能開発のみであそこまで技力が上がったわけじゃない。自分なりに試行錯誤してイメトレに励んだりもしたんだ」 


「確かに政の技能はすごかったけど………体を動かすって何するの?」


 食い付いた。愛ちゃんチョロいな。


「まずはランニングを行う」


「えっ、走るの!? イメージトレーニングをするのに?」


「ああ、走るんだ。限界まで走って体力を消耗させた直後にイメージトレーニングを行う」


「それ、効果あるの?」 


 当然の疑問だな。


「当然効果はある。これを行うことの目的は、違った角度からイメージすることによるイメージ力のアップにある」


「違った角度からのイメージ力の……アップ」


「愛はこれまで普通にイメージトレーニングをして来たと言ったな。でもそのやり方ではⅢ類の技能は発現していない、そうだな?」 


「うん、今はまだね」


「普通にイメージしていて出来てないんだ。それを継続しても飛躍的にイメージ力が上がるわけでもないし、Ⅲ類の発現は難しいだろう。色んな角度からイメージが出来るようにイメージトレーニングを繰り返し行いイメージ力のアップを狙う。少し見方を変えてみるというのも大事なことだ」


 特にこのⅢ類の技能はイメージをする力が重要だと言われている。

 元々才能があってなんとなくで出来る者もいるが、努力を積み重ねて出来るようになった者は皆が口を揃えてイメージすることの重要性を説いている。


 普段のイメージでうまくいかないなら別の視点でイメージしてみるというのは悪い考えではないはず。


「色んな角度……ランニング以外にもするの?」


「そのつもりだ。今回は体力の消耗後にイメージトレーニングを行うためランニングをするが、場合によっては精神的刺激を受けた直後にイメージトレーニングを行う時もある。その時は他の運動なり何なりをしてもらう」


「そうやってイメージ力をアップさせて行けばⅢ類を使えるようになるの?」


「保証は出来ない。だが可能性は上がるはずだ」


 技能の開発を行ったからといって技力が上がったり、使えなかった類の技能が発現するとは限らない。そこは努力の量や才能による部分が大きく、ここで断言は出来ない。


「でも政は実技よりイメージトレーニングの方が大事だと思うんだよね?」


 不安そうに愛が質問してくる。


 いやどう考えても実技の方がいいんだが、ここは頷くしかない。


「その通りだ」


「そっか……わかった。政を信じてみるよ」


 自分に言い聞かせるように、強気な笑みを浮かべて白い歯を見せてくる。


 ダメだ、罪悪感がヤバい。


 この嘘がバレた時、俺はどうなってしまうんだろう。


 捕まるのは当然としてそれだけでは済まない気がする。



「よーーっし!! 走るかっ!!」


 気合いの入った声で愛が自分自身に渇を入れる。



 こうして、愛ちゃんとの特訓が始まった。




―――――(♠️)―――――


 


「ハァ……ハァ……ゼェ……」


「どうだ、限界か?」


「ハァ……まだ……いけるっ」

 


 今、俺と愛は公園の外周を走っている。


 俺達が待ち合わせ場所でよく使っているこの公園は繋がる形で2つに分けられていて、片方は遊具などが備えられている子供達の遊び場として使用されるごく普通の公園。もう片方は遊具など一切ないただのグランドで地元のスポーツクラブなんかでよく使われている。


 その各々がなかなか広い敷地面積を誇っていて、それらが繋がる形で隣接しているのでその周りを走るというのは結構な距離があって女子中学生にはかなり辛いはずだ。


 今はまだ二週目だが少しずつ愛がバテ始めている。


「まだ……ハァ……まだ」


 息を切らしながら食らい付いている。


「一定のペースで呼吸をするんだ。あと走るフォームも一定に保て。無駄な動きが増えればその分疲労も溜まっていくぞ」


 愛の横を走りながらアドバイスを出す俺。


 正直言って俺は走る必要がないが、何もせずボケッと突っ立っているのも退屈なので愛と並走している。



 いや、、、しかし。


 以前からそこそこのものをお持ちだとは思っていたが。


 これは……。



 ぶるんっ、ぶるんっ、ぶるんっ。



「ハァ……しんどいなぁ」


 愛が走るたびジャージ越しにゆさゆさと揺れながら強く主張してくる2つの夢塊(ろまん)


 ハァ……愛ちゃんのおっぱいすごいなぁ。


 やっぱり大きかったか。


 服の上からだとはっきりとは分かりづらかったが、今確信を持って言える。


 愛は巨乳だ。しかも隠れ巨乳だ。



 ぶるんっ、ぶるんっ。


 プル、プル。


 ふる、ふる。


 美少女jc隠れ巨乳。とてつもないパワーワードだ。



「……かさ……つかさ! もう無理っ!」 


 叫ぶような声を上げながら愛が立ち止まる。


「お、おう、限界か? よし、イメージするんだ。火を生成するイメージをするんだ!!」


 愛に釣られてなぜか俺も大きな声を出してしまう。


「う、うん。ハァ……ゼェ……はあああぁぁ!!」


 息を絶え絶えに手を前にかざし、まるでジャ◯プ系主人公が手からビームを出す時のような気合いの声を発し出した。


「………」 


 あまりにシュール過ぎて思わず無言になってしまった。


「ゼェ……ゼェ……火を、出すんだっ! あああぁぁぁ!!!」


 はははっ。シュール過ぎて逆になんか面白いな。


「ハァ……フゥ……ああありゃぁぁぁ!!!」


 ダメだ。やらせてるのは俺なのに草が生えてしまう。


「………どうだ?」


 少し落ち着いて来たタイミングで声をかける。


「……ダメ。しんどすぎて全然イメージ出来ない」


「そのわりにはずいぶん声が出ていた気がするが」


「気合い入れる必要あるかなって思ったから。でも以外と難しいね。イメージよりしんどさが勝っちゃって、イメージしようとしても頭の中に靄がかかったみたいで上手くいかなかった」 


 だろうな。

 さっきは内心で笑ってしまったが俺も同じようなイメトレを繰り返し行って来たからわかる。


 平常時にイメージすることは容易い、だがそこに外的要因が加わったとして尚、同様にイメージ出来るかと言われれば全くもって話は変わってくる。


 そういった状況でのイメージトレーニングを繰り返すことによりイメージ力そのものを上げるのが狙いだ。


「初めはそんなもんだ。それを繰り返し行い、いかなる状況でもしっかりイメージ出来るようになるまでもっていく。そして自身の持つ火に対するイメージをより強固なものにする」


「普通にイメージするのとは全然違うね。今はまだ全然出来てないけど……もし出来るようになったらイメージする力がグッとつきそう」


「イメージする力がつけばⅢ類の習得にも近づく」


「うんっ、頑張る!」




―――――


 

 トレーニングは続き…… 

 


「んっ、やばい。無理!」


「よしきたっ! イメージだ!」 


「火をっ、だすんだぁぁぁぁああああっ!!!」 




―――――



「ほら愛ちゃんまだ走れるよ!」 


「フゥ……ハァ……ハァ……でぎない」


「手を抜いても意味ないぞ。ぎりぎりの極限状態でイメージすることに意味があるんだ。甘えて中途半端なイメージをしても時間の無駄だ」


「ヒィ……ヒィ……やだ、死んじゃう」


「よしここだっ!」


「にぃぃぃぃぃぃいいいいいいい!!!」





 この後も昼食そっちのけでランニングを交えてのイメージトレーニングは続き、午後3時辺りで愛の体力が完全に尽きたので本日の特訓は終了し、お開きとなった。


 特訓一日目終了。




―――――(☆)―――――



 特訓二日目



「えー、本日は格闘技をやってもらいます」


「格闘技ィ!?」 


「はい、格闘技です。前はランニングだっただろ、同じことを繰り返しても新鮮味に欠ける。それに体力を消耗させるという点では同じでも、少し過程を変えてやることでイメージの仕方にも変化が生じる」


「ええーっ、生じるかなぁ」


「重要なことは色んな角度からのイメージトレーニングだ。ランニングは一定の動きを続けるのに対して、格闘技は瞬発的な動きを必要とする。過程が違うだけで消耗の仕方も全然違う。その後に行うイメージトレーニングにも少しながら違いがあるはずだ」


「………まあいいけど。私格闘技なんてやったことないよ?」


「問題ない、技術を身につけるためにやるわけじゃないんだ。適当に殴ったり蹴ったりして体力を使えればそれでいい。あと動きづらいだろうからジャージは脱いでおけ」


「わかった」


 よいしょっと、ずいぶん男前な脱ぎ方で豪快にジャージを脱ぎ捨てる愛。


 ジャージの下は白色の無知な半袖Tシャツを着ている。


 よし、準備完了。


「さあ、俺を殴るんだ愛!」

 

「えっ、政を殴るの!? 空打ちするんじゃなくて?」


「空打ちよりも実際に人を殴る方が体力は消耗しやすい。それに俺とて簡単に殴られるつもりはない。避けたり防いだり適宜対応する」


「わかった。本当にいいの? 結構痛いかもよ」


「来るんだ」


「フゥーーー。よし」


 少し長目に息を吐き、愛が奇妙な構えをとる。


 なんだその構えは?



「ハッ、ハッ、ハァァァイ!!!」


 右、左、右とみぞおち目掛けて正拳突きをかましてくる。


 うおっ、想像以上に動きが早い。


 女性であるなら少しは恥じらいや遠慮を交えて初めのうちはナヨナヨした動きになるもんだが、一切迷いや遠慮のないパンチ。



 それにしても、、、おっぱいが。



 バイーン、バイーンと凄まじい勢いで揺れている。


 揺れが凄すぎてこのままとれてしまうんじゃないかと心配になるくらいだ。


 やっぱりデカい。


 隠れ巨乳なのは前から知っていたが……こりゃFはあるな。


 などと考えながら3発とも軽くいなす。

 やはり素人ということもありパンチ自体は軽い。


「リャア! ウリャ! セェェェイ!」


 続けてもう3発、今度は顔面目掛けて容赦のない無茶苦茶なパンチが飛んでくる。


 無茶苦茶であるが故、逆に軌道が読みづらくてかなわんがこの手の攻撃をあしらうのなんて慣れている。大振りに振るってくる拳をうまくタイミングを合わせて腕を挟みガード。


 2発目、3発目も同様に防ぐ。


 大振りに拳を振るった衝撃とそれを俺の腕で食い止められた衝撃で胸の振動が凄いことになっていた。幸せだ。



「ハァ……ハァ……待って! これ………胸くるしっ」 


「何だ、もうおしまいか」


「フゥ……フゥ……いきなり格闘技とか言われても困る。こういうの、女の子は色々と準備が必要だから」



 準備ィ? 


 それは何の準備だ?



 よかろう、この俺が解説してやる。



 激しい運動を行うと胸は強く揺れ、その際に痛みを伴う。


 通常のブラとスポブラとでは胸の揺れを固定する強度が違うため、今回のような激しい運動を行う際は胸の揺れを固定して痛みを抑える、及び邪魔にならないようにする為通常ブラよりもスポブラが好まれる傾向にある。

 

 すなわち愛ちゃんの言葉を要約すると、、、


 今浸けてるのは普通のブラなのっ!


 こんな激しく動いたらおっぱいが揺れて痛いに決まってんじゃん!


 次からはちゃんとスポブラ着けて来るから今日はヤメッ!


 ということだろう。


 しかし前のランニングは大丈夫だったのか?


 まあ体力を消耗するために走るのであってペース自体は自由だったから負担がかからないよう調整して走っていたのだろう。


 本人も特にそういった発言はしていなかったので問題はなかったと見ていい。

 

 今回は格闘技と言うことで、瞬発的な動きを要求されどうしようもなかったのだろう。



 なるほど、了解ですと。



「了解だ。しっかりと準備してこい」


「………きも」 


「どうする、今日は終わりにするか?」


「ううん、まだやるよ。全然時間あるしっ!」


「だったら前回と同様、ランニングでもするか」


「オッケー!」



 意気込みはあるんだよな。根性もある。


 火種Ⅲ類を習得したいという強い気持ちも感じる。


 何が愛をそこまでさせるのだろう。


 俺は愛のことを全然知らない。名字すら知らない。

 

 愛もまた俺のことを全然知らない。


 お互いがお互いのことを全然知らないこの奇妙な関係はいつまで続くのだろうか。


 俺の嘘がバレたら速破綻するのは当然として、そうならなかった場合は?


 わからない。


 まだまだわからないことだらけだが、もう少し愛のことを知ってみたいな。

 


「ねえ政、今やってることって本当に意味あるんだよね?」


 愛が不安そうに俺を見つめて聞いてくる。


 そして俺は……こう返すしかない。


「当然だ」



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