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~技能研究を志す少女は変態フリーター盗撮魔の手を取る~  作者: スタイルフリー
第1章 『フリーター脱却編』
4/22

第4話 「jc宙へ浮かせてみた」

「あのさ、さっきの話の続きしたいんだけど」


「あ、ああ」


 俺は今、喫茶店にいる。


 目の前の少女に手を引かれ警察から全力で逃げ、身を隠すために逃げている途中で見つけたこの喫茶店に強引にねじ込まれた。


「ねえ、本当に技検2級なの?」


 さっきの話の続きがしたいということか。

 まだ取り引きは成立していない……と見た方がよさそうだ。


「ああ、本当だ」


「うーん、本当? あの時はテンパってて聞きそびれちゃったけど、何で2級取得者がコンビニでアルバイトなんてしてるの?」


 相当疑われているな。まあこれも当然か。

 盗撮してきた相手が偶々同じ中学の先輩でしかも技能力検定で2級を取得しているという。

 出来すぎだと思うのは当たり前だろう。


 それに普通は技検で2級を取得しているなら誰もが羨むような国家職にでも就いてバリバリに働いているはずだしな。


 それがコンビニでアルバイトしているというならあまりにも不自然に映るだろう。


「今は休職中なんだ。人間関係がうまくいかなくてな」


「へ~。でも仕事休んでアルバイト?」


「ずっと続けるわけじゃない。いつか復帰する時に備えて人と接するリハビリがてら短期でしてるだけだ。家に引きこもってばかりだと腐っていくだけだからな」


「そっか、なんかごめん」


「別に構わない」


 ふー、何とか切り抜けた。危ない危ない。


 話の方向を変えるか。

 警察から俺を助けたということは、取り引きについて前向きに検討してくれると見ていいはずだ。


 警戒をさせないようにゆっくりと慎重に言葉を選ぶ必要がある。

 あくまでも選択権は自分にあると思わせることが重要だ。


「やっぱり、推薦は必要か?」


「必要っていうか……うん、必要。でも、まだ迷ってる」


「怪しいか?」


「うん、怪しいよ。さっきまでは警察に付きだしちゃえって思ってたけど、なんか体が動いちゃった」


「それは、お前の本心では俺と取り引きをしたいと思ってるからじゃないのか?」


「多分そうだと思う。でも怪しいって気持ちは消えない」


 平行線だな。

 取り引きしたいと思いつつも、疑う気持ちを吹っ切ることが出来ない。


 どうする?


 日をおいて考える時間を与えるというのも悪くはない。

 だが、ここは攻めよう。


 一つパフォーマンスを見せれば雰囲気的に流れで押し切れそうだ。

 そのパフォーマンスを見せるのは俺の立場上かなりのリスクを負うが、捕まってしまえばもともこもない。


 捕まるという最悪の状況を回避する上での必要なリスクと考えよう。


「何か証明出来れば信用してもらえるか?」


 まずは気持ちの確認、そして誘導する。


「私が納得出来るなら。でも今はライセンスないんでしょ、証明なんて出来ないと思うけど」


「ライセンスで証明出来ないなら技能で証明すればいい」


 上級の級取得者は全員が高い技力を有している。

 俺がそれに匹敵するほどの技力を持つと示すことが出来ればある程度の保証にはなるだろう。


 もちろん高い技力を有しているからといって級取得者とは限らないので完全な保証にはなり得ないが、この場を押し切れるくらいの信頼は得られるはずだ。


「どうやって、施設にでも行くの? 監督してくれる人はいるの?」


「いないな。だから人通りの少ない裏路地でやろう」


「……は? それ普通に犯罪だよ?」


「バレなければ問題ない。それに周囲に危害を加えるような技能を俺は使わない」


「いやそういう問題じゃなくて。ねえ、本当に2級なの? 上級の人がそういうこと言うと思えないんだけど」


 特別な事情がない限り、国が認可した環境が整った特定の場所意外で技能を行使することは禁止されている。


 バレれば程度が軽くて罰金刑や書類送検。重ければ一発で実刑も考えられる。


 これは大人子供関係なく全国民が知っている共通認識だ。


 向こうからすれば相当非常識な発言に聞こえたことだろう。

 だが今の状況を動かし信頼を勝ち取るためには必要なパフォーマンスになってくる。


 ここで、俺が必死であることをアピールしておくか。


「そんなものは当然理解している。それだけ今の俺は必死なんだ」


「そんなに?」


「当たり前だ。ここでお前との取り引きが成立しなければ俺は捕まる。当然ライセンスは剥奪され自分自身の立場も全て失うことになる。それに比べれば多少のリスクを犯してでもお前からの信頼を得たいと思うのはおかしなことじゃないだろう」


「それは確かに。でもさ、流石にやばくない? バレちゃって巻き添えとか嫌だよ」


「安心しろ、巻き添えにはならん。盗撮をしようとした以上は俺が加害者でお前は被害者だ。万が一バレるようなことがあっても盗撮の件を話せばいい。無理やり交渉させられて連れて行かれたとでも言えばいい。さっきの警察官も俺とお前を目撃している以上は発言してくれるはずだ」


 仮にバレても罪に問われるのは俺だけ。

 自分自身は大丈夫という保険を作ってやる。


「うーん……う~ん……どうしよ」


 かなり悩んでいるな。仕方ないことだが。


 ここからはあえて何も言わず中学生の決断に任せることにする。

 これ以上の深追いは返って警戒心を抱かせてしまうので悪手だ。 


 仮にNoと言われても後日ライセンスを見せる方向で約束を取り付け、時間を稼げばいい。

 まあこっちの方針は……あまり取りたくはないが。


「本当に私は大丈夫なんだよね?」


「保証する。何かあった場合全ての責任を負うのは俺だ」


「………私から動かないと何も変わらないよね。わかった、技能見せて」


 前半部分は小さな声で何かボソボソと言っていて聞き取りずらかったが、了解の返事はちゃんと聞こえた。


「よし、場所を変えるか」




―――――(#)―――――



 時刻は20時を少し回ったくらい、場所は大きな公園。


 喫茶店を出て10分ほど歩いた先に大きな公園がある。


 公園は大きく2つに別れていて、片方はたくさんの遊具等が備えられ子供達の遊び場としてよく使われている。


 もう片方は遊具などは一つもないただのグランドだ。

 野球やサッカーの地元のクラブチームなどが頻繁に仕様している。


 地元の人間ならこの公園を知らない者はほとんどおらず、日中は人の出入りが多い。


 日が暮れると遊具で遊んでいる子供達は帰り、近隣住民の迷惑になるからとグランドの仕様も19時までと定められているためその時刻を回ると途端にこの公園から人気は消える。


 たまに学生のDQN集団達がたむろしていたりもするが今日はいないみたいだ。


 俺と中学生の二人きり。条件としては最高だな。


「ねえ、変なことしないでよ。次は絶対警察呼ぶからね」


 ここまで来てまだ疑われてるのか。

 確かに俺達以外に人はいないし、俺がやらかしたことを考えれば当然の警戒か。俺は、それだけのことをした。


「同じ過ちは繰り返さない。絶対に変な真似はしない、誓おう」


「だったらいいんだけどさ」


「よし、始めるか」


「具体的になにをするの?」


「周囲に被害が出ないよう技能を使う。どれほどの技力かはお前自身が評価しろ。ちなみに俺の技能は風種だ」


 ちなみに俺の技能は風種じゃない。

 風種であることを装って、この中学生が納得するようそれなりの技力を示す。


「へー、風種なんだ。私も使えるよ」


 それは好都合だな。自分に出来ないことをして見せれば技力の高さを納得して貰いやすい。


「まずは……そうだな。それなりに強い風を産み出そう。念のため10メートルくらいは離れておけ」


「うん、わかった! ばっちこい!」


 そそくさと俺の元を離れ、体感10メートルくらいの距離まで間隔をあける。


「いくぞ?」



 目を瞑って集中力を高める。


 まずは身体の中心に貯まったエネルギーを外部に引っ張り出すイメージ。


 エネルギーの量は、ほんの少しでいい。


 少量のエネルギーが心臓付近から体全体に広がっていくのを感じる。


 次に、極微弱に引っ張って来たエネルギーを体全体に薄く纏わせ、具現化させる。


 フワッと体に何かがまとわりつく感覚を覚える。


 右手を前にかざし、それをトリガーとして体を纏うエネルギーの一部を切り離し周囲へ拡散させる。



 ふー、火力は押さえろよ? 



 調整を間違えると近くにいる中学生も巻き込み兼ねない。


 かざした右手を軽く握り、それを合図に拡散させたエネルギーを空へ向かって一気に発散させる。








 ブゥゥゥゥゥゥオオオオオオーーーーーー!!!







 鈍く凄まじい音が強風と共に吹き荒れる。



 地にある沙が風によって宙へ舞い、砂塵となって周囲一帯を脅かし小規模の竜巻を発生させる。



 数秒間強風による音が鳴り止まず、まるでここら一帯が風に支配されたような、風によって創られた小さな世界を幻想させる。


 

 大丈夫……この程度なら周囲に被害が及ぶことはない。

 風向きは上方向で障害となり得る物質も存在しない。


 何もないところから物質を生み出すのは技能においてⅢ類に分類される。Ⅲ類の技能はそれなりに珍しく、使える者の技力は比較的高い傾向にある。

 加えてこの強風を見れば規模としても十分大きく、これらの要素で技力が高いと錯覚させることは出来るはずだ。



 チラッと、中学生の方へ視線を向ける。





「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!! すげぇぇぇぇぇぇ!!!」


 

 うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、パンツ見えてるぅぅぅぅぅぅぅ!!!


 空へと向かって射出し続けている風の影響で周囲一帯が上方向へ強い風にさらされている。


 スカートが完璧なまでに捲り上がり、先ほどまで堪能していた可愛らしい地味目な黒パンがこんにちはしている。


 どうもこんにちは! さっきぶりだな。



「どうだ」


 一通り拡散させたオーラを消費仕切り、吹き荒れていた風もピタリと止む。

 捲れていた中学生のスカートもピタリと定位置に戻り、黒パンはさようならしている。


「うんっ、すっごい! すごい! こんな強い風生み出す人初めて見たよ、やるじゃん!!」


 先ほどまでは疑心暗鬼であったのがうって代わり爆発的にテンションを上げて称賛された。


 すごい勢いでスカートが捲れていたがどうやら気づいていないらしい。


「だったら、取り引き成立と言うことで」


「ねえ、他に何が出来るの!? もっと見せて!!」


 物凄く喰いついてくる。まさか取り引きのことを忘れてるんじゃないだろうな。


「ねえ、ねぇ、ねえってば!」


 まあいい。急いで取り引きのことを持ち出すのは逆に怪しくもある。

 追加で後一つ何か見せてやって俺の技力が高いと確信を持たせる。


 取り引きはその後だ。


「まったく、しょうがないな。そこまで言うなら要望に答えよう。あと一つだけだぞ」


「わぁ、やったー! 次は何を見せてくれるの?」


「そうだな…宙に浮いてやろう」


「えっ、すごいっ、宙に浮けるの!? それって風種のなかでもかなり技力が高くないと出来ないやつじゃん!」


 本当にテンション高いな。

 さっきまですがりつく俺に対して無言を貫き、増悪を込めた軽蔑の視線を向けてきたのが嘘だと思えるくらい瞳を輝かせ、純粋に技能を見せてとせがんでくる。


 まるで技能に魅せられている子供だな。まあ中学生だから子供ではあるが。


 しかし……めちゃくちゃ可愛い。


 クリクリの目を輝かせ、興奮混じりに頬染めて強く見つめられたら思わずその視線に釘付けになって見とれてしまう。


「しないの?」


 おっと、危ない危ない。完璧に見とれていた。


「わかった。するぞ」


 本来、技能を用いて宙へ浮けるのは風種だけだ。

 風を生み出し風向きを上方向へ調整、風力は自身の体重を持ち上げられるくらい。

 それらを同時に行い、安定させ、維持する。

 これで宙へ浮けると言われている。


 言うだけなら容易く感じるかもしれないが、風を常に上方向へ生み出し続け、自身の重さを支えられる風力を維持する必要があり、それらを同時にやってのけるのだから相当な神経と精密さ、技能的体力を伴う。

 一般的には技力が6以上はないと出来ないと言われていて、難度が高く高等な技術が必要だ。


 ちなみに浮くことは出来ても空を飛び回ることはほぼ不可能らしい。


 なぜ「ほぼ」なのかと言うと、一応理論上では可能なのだが実際に行うことの難しさを考慮すれば実現することが相当に困難であるから。


 空を飛び回るのは浮く技術を用いて応用すれば理論上は可能とされている。

 移動方向が目まぐるしく変わるなか、的確かつ瞬時に生み出す風のベクトルを変えつつ、自身にかかる重力で下に落ちてしまわないよう風力を維持して体を支え、さらには自身が生み出す風とは別で自然に吹く風や空気抵抗なんかも計算に入れ調整する必要がある。


 これら全てが同時に出来れば理論上は「可能」。

 だが実際にはそれだけの処理を一度に出来る人間なんてまずいない。日本国内において空を飛べる人間は一人もいない。


 しかし世界というのは広いもので、世界中で一人もいないかと言われればそれは違う。極稀に存在するんだ、例外中の例外が。


 厳密に言うとアメリカで一人だけ、空を自在に飛び回れる人間が存在する。


 本来、その難度を考えれば空を飛び回ることなんてバッサリと不可能と言っていいはずだ。しかしそういった例外がいる以上は断言することが出来ず、それ故「ほぼ」と言う言葉が使われる。


 おっと、随分と脱線してしまったが浮く準備をしないとな。


 俺の技能を用いれば浮くことは難しくない。

 具現化させたエネルギーを足元に纏わせ下方向へ放出し、その反動を受け瞬間的に宙へ浮く。重力によって地面へ引き戻されるの防ぐため、さらに下方向へエネルギーを放出させ続け、それによって生じた上方向への反動を受け続けることで釣り合わせ維持させる。

 

 エネルギーそのものに宙へ浮かせる性質はないため、あくまでもエネルギーを放出する瞬間に生じる反動を利用するしかない。


 全くもって風種の技能を用いていないが旗から見れば風種をうまく駆使して宙へ浮いてるように見えるだろう。


 ブワッとエネルギーを放出させ、50センチ程浮いてみせる。



―――どうだ、中学生よ? 



「お……おっ、おーーー。やばっ、この人」


 よし、受けてるな。

 高い技力を有してると強く印象付けるんだ。


「はっきり言って俺からすればこの程度ゴミみたいなもんだ」


「ご……ごみぃ?」


「別にカスでもいいぞ。とはいえ俺もまだまだ未熟だ、空を飛び回れるようになるにはまだまだ自身の技能を開発する必要がある。まあ時間の問題だろう」


 あたかもいつかは空を飛び回れるようになると、しれっと言っておく。

 

「そっ……そらをっ!? この人……本当に2級かもしんない」


 なかなか反応が面白いな。


 トドめだ。最後にもう一つだけおみまいしてやろう。


「おい中学生。お前は宙へ浮けるか?」


 わざと意地悪な質問をする。


「浮けるわけないじゃん! でもほんとすごいねっ、私にも教えて!」


 いや教えてじゃなくて……こいつ取り引きのこと忘れてるんじゃないだろうな。


「ふん、教えてすぐに出来るもんじゃない。出来るもんじゃないが……今回だけは特別に俺の力で体験させてやろう」


 纏うエネルギーの量をさらに増やし、一部を切り離して拡散させる。

 拡散させたエネルギーを中学生に覆わせ、あとはさっきと同じ容量で中学生を浮かせる。


 ほれ、どうだ?


「体験? え……ちょ、待って。えっ、何これ……こわいっ!」


 いきなりのことでかなり驚いているな。

 クリクリの目を大きく開きながら地面から離れた足元を凝視している。


「わ……わあ! うそっ、浮いてる! うそ、うそだっ」


「嘘じゃない。現実を見ろ」


「やばい、やばい。やばいよこれ」


 初めての体験であり、宙へ浮く感覚も少し特殊なので興奮を抑えられないんだろう。



 うん?



 おう、、、またパンツが見えてるな。



 なるほど。地面へ向かってエネルギーを放出させた時の反動を受けて、その影響でスカートが捲れているのか。


 小柄で華奢な中学生を支える程度なので放出しているエネルギーの量は極極微弱であり、その反動によって体が受ける風圧は対したものではない。


 それ故、スカートがヒラリと捲れては戻りヒラリと捲れては戻りを繰り返している。



 そういえばこのガキ、土下座した俺の頭を踏んづけて行ったよな。

 そのお返しはまだしていない。                                 


 クックック、ちょうどいい。


 さらにエネルギーを広げて中学生へ纏わせる。


 少し、ほんの少し、放出しているエネルギーの量を増やす。


 ビュッ。


 反動によって受ける風圧が少し増す。


 捲れては戻りを繰り返していたスカートが捲れた状態を保つと同時に釣り合わせていた力の均衡が崩れ、中学生がゆっくりと上昇する。


「えっ…なに? 上がってる!?」


 はっはっは。パンツ丸出しではないか。このドスケベ中学生が!


「ねえ、ちょっと止めて。もういいよ。それに……スカートもやばいから」


 バカが、止めるわけないだろう。この光景を目に焼き付けるんだ!


 今後の俺の人生でjcのパンツを拝める機会なんてまずないだろう。

 それもただのjcなどではなく飛びっきりの美少女jcのパンツなんだ!

 「見納め」という意味でも目を反らすわけにはいくまい。


「聞いてるの!? もういいからっ! パンツ……ちょ、やばいから!」


 必死にスカートを押さえつけながらパンツを隠そうとする中学生。


 ずいぶんと可愛いらしいじゃないか。だがこの俺をコケにした罪は重い、この程度では終わらせられないな。



 ふんぬっ!!!



 さらにエネルギーを込め、風の威力を上げる。


 ビューッと音を伴いながら中学生のスカートを捲りにかかける。

 必死に押さえていたスカートが強引に捲れ、可愛い可愛い黒のおパンツの全体像があらわになる。エッチじゃないか。


「や……やだっ……もう! 止めてってば!」


「すまん、少し調整が難しくてな。俺をよく見てみろ! 自分とお前の両方をいっぺんに浮かしているんだぞ。これがどれだけ難しいことかお前に分かるか?」 


 さりげに技力高いアピールも忘れない。重要なのは取り引きだからな。


「うん、わかった! わかったよ、すごいから! もうやめてっ」


 そうか………わかったか。何がわかったんだ?



 ふんぬっ! ふんーぬっ!! ふーーーんぬぁ!!!



 ビュン、ビューン、ビュッビューンと追加で三連発かます。





「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」






 


―――――(♠️)―――――





「次やったら絶対に許さないから」 


 顔におもいっきり平手打ちをかまされた。

 

 調子に乗ってスカートを捲り続けていたら初めは50センチくらい浮いていたのがやがて5メートルくらいにまで上昇していた。

 

 止めてという言葉を無視し続けたことが中学生の逆鱗に触れたらしい。


「悪かった。調整が本当に難しくてな」 


 あくまでも意図的ではないと主張する。


「本当に? なんか途中からスカートに集中して風が来てたような気がするんだけど。 ……もしかしてまた変なことしようとしてた?」


 やばいやばいやばい。


「お前は宙に浮けないんだろ? だったらその難しさが理解出来ないはずだ。 ましてや二人同時に浮かせるなんて離れ業……これがどれほど難しいことか」


 少し深刻そうに伝え、あえて空気を重くする。

 納得させる必要はない、とりあえず押し切れればいい。

 俺が意図的にスカートを捲っていたことはまだバレていないはずだ。


「そりゃすごかったけどさ……うーん、なんか腑に落ちない」


「腑に落ちなくていい、重要なのは今見た事実を受け入れるということだ。お前は俺の技力を確かめるためにここまでついてきたんだろ、違うか?」


「………え? あっ、そういえばそうだった。うん、そうだったね」


 このガキ……やっぱり取り引きのことを忘れてやがったのか。


「どうだった俺の技能は?」


 忘れていたことを突っ込んでやってもいいが、取り引きに関してガッツキすぎるのは危ない。あくまでも取り引きの話は向こうから切り出させるように誘導する。


「普通にすごかったよ。宙に浮くのなんか初めて見たし、技力も高いと思う。2級って言うのもひとまずは信じてもいいよ」


 よし、取り引き成立か!


「でも、推薦だけで盗撮したことをなかったことには出来ない」


 ………は? 何を言ってるんだこいつは。


 中学生が悪戯な笑みを浮かべている。

 まるで、何かを企んでいるような。


 なんだか、嫌な予感がする。


「性的被害にあった女性の辛さがあなたにわかりますか?」 


 さっきまで浮かべていた笑みをふっと消して無感情の声音で中学生は囁く。


「辛いのはその瞬間だけじゃないんです。被害にあった後も当時のことを思い出して辛い気持ちになりますし、そのことを一生忘れません」


 えっ……いきなりなんだ?


「加害者側の身勝手な行動一つで被害者側の人生にどれほどの影響を与えるか、あなたにわかりますか?」


 なぜいきなり敬語になった!?


 どこかで地雷を踏んだか?


「はい……それは…本当にすいません」


「すいませんではありません。わかりますかと聞いてるんですよ」


「すいません……」  


 いやどう答えたらいいんだ、すいません以外に言葉が出て来ない。


「………やっぱり警察に行きますか」


 は……? おい、ふざけるな!


 おま、お前っ、何のためにここまでしたと思ってるんだ!



 中学生が公園の出口に向かって歩き始める。



 なっ、本気で言ってるのか!?


 取り引きをする意思があるからここまで来たんじゃないのか。


 やばいやばいやばい。


「何かまずいことをしたか? 悪かった、本当に悪かった。本当にすいませんでした。僕に出来ることなら何でもします、どうか警察だけは勘弁して下さい。」


 必死にすがる。すがってみせる。


 ここまで来て取り引き不成立とかそんなことあるか?


 冷静になって考えろ、さっきまでは普通にタメ口で話していたはずだ。

 なぜいきなり敬語になった?


 スカートを意図的に捲っていたのがバレたか?


 いや、もしそうならタイミングがおかしい。

 普通ならそれに気付いた直後にこうなっていたはずだ。


 それにスカートを捲られたという確信までは持っていなかったように思える。腑に落ちないとは言っていたが確信していたわけじゃない。


 だとするならそれ以外の部分で地雷を踏んでしまったか?


 どこでだ? いや、全然わからん。



 わからんわからんわからん、中学生全然わからない。



「ねえ………警察に行かれたくない?」


「はいっ、行かれたくないですっ!!! 本当にすいませんでした! 金輪際二度とあのような真似はしないと魂に誓います!」


「さっき何でもするって言ったの……あれホント?」


「はい………僕に、出来ることでしたら」


 何だいきなり。


 何を企んでいる?


 何のフリだ?


 何をさせるつもりだ?


「あれ? なんか声ちっちゃいな、出来ないってことなのかな。やっぱ……行こっかな」


「出来ます!!! 何でも出来ます!」


 声を張り上げて叫ぶ。


 何だこいつ。

 何で俺が脅迫されてるみたいになってる。


「ホントかな?」


「はいっ、本当です!」


 だから何なんだよ!




「じゃあねえ…………私に技能教えてっ!!!」


 俺と距離を詰めてきて、手を伸ばせば触れられるくらいの位置から元気な声で中学生が要求してくる。



 はあ? 

 

 それだけ? 


 そんなことでいいのか?




「教えるだけでいいのか?」


「うえっ、いいの!? 教えてくれるの!?」


 どうして要求してきたお前が驚いてる。


「それで……取り引きは成立するのか?」


「うん、いいよ! 推薦と技能の指導の2つ!」


 ああ、そういうことか。疑問が確信へと変わる。


 推薦に加えて技能の指導をしてもらうことも条件に引き上げるために人芝居打ったというわけか。


 ガキが………。


 いきなりすぎて焦った。

 流れは完全に俺の方に来ていて、突然の豹変だったからな。

 話してみると以外に素直で扱いやすいかと思ったが抜け目がない。

 だがまあ技能を指導するくらいなら構わない。


「わかった。取り引き成立だ」 


「本当に? 後でやっぱ止めたはなしだよ!? いやったあーー!」

 

 満面の笑みを浮かべて喜んでいる。可愛い。


 ふー、一時はどうなることかと思ったがなんとか落ち着いた……のか?


 最後の演出のせいで、本当にこれで大丈夫か?他にまだ何かあるんじゃないか?と疑ってしまう。


 大丈夫だよな?


「約束する。それにやっぱ止めたをした場合、警察につき出されるんだろ」


「うんっ、絶対つき出す! 証拠の写真もあるし!」

 

 あ、そういえば写真を撮られていたな。


 まずい。 今消させるか?


 いや、それは悪手か。


 俺が裏切れないよう証拠を握っているというこの状況は中学生視点からすれば一つの保険になるはずだ。

 それを消すよう懇願すれば強く警戒させてしまうだろう。

 やっと一段落ついてまた揉めるのはごめんだ。ひとまずはこれでいい。

 技能を指導していく上である程度の関係を築き、信頼を得てから消させる方が無難だろう。




「よーーーっし!!! 取り引き成立だねっ!!!」




 というわけで、女子中学生に技能を指導することになってしまった。


 



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