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~技能研究を志す少女は変態フリーター盗撮魔の手を取る~  作者: スタイルフリー
第1章 『フリーター脱却編』
2/22

第2話 「技能と歴史」

 

 初見だと読みづらいと思うので一旦飛ばしてもらってオッケーです。


 1話の続きは3話からになります。

 技能と技力について話をしていこうと思う。


 と言っても俺の学歴は高卒止まりで難しくお堅い言葉を使って解説なんて出来ないので、文献を参考に当時の時代に合わせて大雑把に軽く解説させてもらう。


 まずはその歴史から。



 人類は大昔から、超能力の存在を肯定するものと否定するものとに分かれてきた。


 科学が発達するにつれてこれまで解明されて来なかったことが次々と解明されていき物事にはそれに至る理由と原因があるのだという認識が強くなっていった。


 超能力なんていう理屈が分かっていない力の存在を否定するものが増えていった。

 もともと超能力の存在を肯定するものなんて極少数であったのでそれがさらに減り壊滅的なほどの数となった。


 まあ、当然だろうな。


 当時は超能力なんて眉唾ものだし、力の存在を吟うものはいてもそれを示すものはいない。

 稀に力を示そうとするものも表れるが大抵は勘違いかイカサマをして金儲けを企む詐欺師まがいの道化かのいずれかだ。


 いずれにしろ明確に皆が納得いく形で示せたものなんていなかった。


 だが、超能力の存在を肯定したくなる気持ちも分かる。


 当時は技術が発達していないが故、起こった物事に対して論理付けて説明出来ないものが多い。そこに科学的根拠が示せないなら超常現象が起きたという事にすればいい。


 超常現象が起きるなら超能力が存在していてもおかしくはない。

 説明出来ないからこそ、そう言ったものに人はすがり付く。


 なにより、科学が発達しても超能力の存在そのものを否定する証明なんて出来ないからな。証明のしようがない。


 だったら例え僅かな可能性でも超能力はあるんじゃないかと考えるものも一部で存在する。


 だから科学が発達してありとあらゆる物事が解明されていっても超能力を信じるものがゼロになることはない。



 ひょっとすると、その一部の諦めの悪い超能力信仰者達の願いが神様にでも届いたのかもしれないな。

 



――――そして、1987年世界に変化が訪れる。


 アメリカ・ウィスコンシン州にある閑静な住宅街に位置する一軒家から一本の通報が入る。

 

 マッチに火をつけただけのはずが瞬く間に火が大きくなっていき手がつけられない。このままだと家が燃えてしまう助けてほしいと。


 通報を受けた消防隊はその発言に疑問を感じながらも通報が入った一軒家へ出動した。

 現場に到着した頃には家は全焼していたがその家に住む一家はすでに避難しており幸いにも負傷者はいなかった。


 この家事が起きたのはマックス一家の自宅であり、その家に住む住人は父マックス・ハーバー、母マックス・リリィ、息子マックス・ガードナーの三人家族であり消防署に通報したのは父のマックス・ハーバー氏である。


 消防隊が火を鎮火したのち警察からマックス一家に事情聴衆をするも主張は一貫しており、マッチに火をつけたら何もしていないのに火が大きくなっていき火事になったと言う。


 現場検証をするも特に不自然な点は見つからずマッチにつけた火が何らかの原因で飛び火し、このような惨事になったのではないかと結論付けられたがそれにハーバー氏は猛反発。


「火が飛び火するようなことは一切していない、自分達が原因ではない」

 

 警察の見解とマックス一家の主張が食い違い、果てにはマックス一家が保険金目当ての自作自演をしたのではないかと疑われ始める。


 ここで、マックス一家の息子ガードナー氏から一つの証言が入る。


「ごめんなさい、僕がやりました。僕が火を大きくしました」


 ガードナー氏は当時7歳であり、始め警察は子供のイタズラかただの妄言であると彼の詳言に聞く耳を持たなかった。


 しかし、それから数日後ハーバー氏から警察に連絡が入り彼も息子ガードナー氏と同じ内容の主張を始めた。


「もしかしたら自分の息子がやったかもしれない。一度見に来てもらえないか」


 保険金目当ての自作自演を疑われていたタイミングと重なったこともあり、自分たちが犯した罪を息子に擦り付けようとしているのではないかと警察は疑い始める。


 子供がやったことなら仮に罪に問われたとしても重い刑が課せられる可能性は低く、罪に問われない可能性すらあるからだ。


 後日、警察は疑いの眼差しを持ってマックス一家に詳しい説明を求めたのだが、、、




「取り合えず見ていて欲しい」


 ハーバー氏が警察官にそう伝える。


「ガードナー出来るか?」

 

「うん、たぶん。やってみる」


 そこで警察が目にしたものは想像を絶する光景であった。


 ガードナー氏はマッチに火をつけ、マッチを持たない片方の手を火にかざし、何かを念じ始めた。

 初め火に変化は見られず、やはりあの証言はただの虚言であると判断されそうになる直前………



「みんな、いくよ」



 ボッ、



 ボーーーッ、



 ブゥ~ワァァァーーー、



 初めは豆粒くらいだった火種がガードナー氏が念じるとともに瞬く間に増幅していき、やがてサッカーボールくらいの大きさにまで変化した。


 この少年は、何一つ器具を使わず火を自分の意志で増幅させたのだ。


 その光景を見た警察は思わず開いた口が閉じられなかったと言う。


 



―――これが人類で初めて技能が観測された瞬間である。




 この事実を警察が公式に発表し、アメリカ全土においてビッグニュースとなった。

 各メディアは連日同じ内容のニュースを報道し続け、やがて国を越えて世界中で知られることとなる。


 警察が公式に発表したと言う点が国民の注目を集めた。


 ただのイカサマや現象に科学的根拠があると言うのならわざわざ大々的に警察が公式で発表するなんてことはあり得ない。

 それを国民やメディアが理解しているからこそ、ここまでの話題となったのだろう。


 だが話題となれば当然力の存在を疑う者は現れる。


 国家ぐるみで偽りの超能力者を造り上げ火事が起きた本当の原因を隠蔽しているのではないかと疑う声も一部では上がっていた。


 だが、ここから話ははやい。


 そう言った疑う全ての声を実証を持って黙らせたのだ。

 

 当初ガードナー氏の不思議な力を目の当たりにした警察は何かの手品ではないかと当然疑ってかかった。


 ガードナー氏が火を増幅させた原因を解明すべく多くの人員を参入させ本格的な調査に入り、なかには大学の教授などの専門家に協力を依頼したりもしたがその原因を突き止めることは叶わなかったという。


 しかし、実証をする事は可能でありガードナー氏は多くの人々の前で自分の力を示し続けた。

 警察に示し、メディアに示し、大学などのあらゆる研究機関に示し続けた。


 やがてガードナー氏の力を手品やイカサマなどと疑う声は減っていき、彼の力は原因不明の異能であると国が正式に声明を出した。


 

 今まで存在が疑われていた異能の発見に国民は驚き、大いに喜んだという。

 この力は人類における進化の可能性であるとされ、国は原因を解明すべく研究対象の一つとし、多くの研究費を出資する事を発表した。



 これが1987年にアメリカで起きた出来事だ。

 今後の世界の在り方を変えた激動の一年だったと言えるだろう。

 


 


―――――(★)―――――



 1987年から数年が立った。

 ガードナー氏の異能を解明すべく多額の研究費を費やし国は研究に勤しんだが今だ原因を特定するには到っていない。


 一部学者達の間ではガードナー氏が火に念じる時、特殊な電波を発しその電波が磁場を形成して火に何らかの作用をしているのではないかと推論されている。


 しかし推論の中身があまりにも抽象的であり、そもそもガードナー氏から発していると言われている電波を観測する事も現時点では出来ておらずこの推論を指示する学者は少ない。


 結局、ここ数年で異能に関しては何一つとして明確に解明されてはいない。



 アメリカが異能の存在を発表し研究対象にする意向を示した当初、周りの国々は関心こそはあったが自国においてそれを研究対象とする事はなかった。


 理由としては異能の存在に対して懐疑的な考えを示す国がほとんどであったこと。

 また異能を扱える人間のサンプルがなく、そもそも研究を行うこと自体が困難であったことの2点に尽きる。




―――――しかしここ数年でそれらの事情が一変した。




 1987年以降において、世界の各国で原因不明の不思議な力の観測が後をたたなくなったからだ。

 

 ガードナー氏と同様に火を念じて増幅させる力。


 水を球体のような形に変形させる力。


 水を勢いよく遠くへ噴射させる力。


 周囲の風の流れを変える力。


 様々な原因不明の力が各国で観測され始めた。


 これを機に多くの国がアメリカと同様に原因を解明すべく自国の研究対象とする事になった。




―――――(#)―――――



 世界各国が、観測された原因不明の力の解明を研究対象としてから10年近くがたった。


 世界各国で新たな異能の観測が後を断たない一方でそれらの原因を解明する事はまだ出来ていない。


 研究者達が何もしていなかったわけではなく、多額の研究費や多くの人員を使ってもなお異能の原因を解明するには到っていなかったのだ。


 しかし、研究を重ねていく中で幾つかの傾向を発見する事が出来た。


  主に現時点で発見されている傾向は以下の3つになる。



・異能が観測された人々全てが10歳以下の児童であること


・異能を使う事により体力が消耗していくこと


・観測された異能に一定の偏りがあること



 これは世界各国での研究データを照らし会わすことにより発見された3つの傾向。


 1つ目は特筆する事なくそのままの意味だ。


 2つ目もそのままの意味だ。


 異能を使う事によって体力が消耗される。

 消耗度合いは個人差がかなり激しく、扱える異能が同じでも数回使うと立てなくなるくらい疲弊する者や意識を失ってしまう者までいれば、逆に何回使っても平然としてる者もいる。


 いずれにしろ異能を使えば体力は消耗していく事が実証されている。


 

 そして3つ目の傾向が中々に興味深い。

 

 観測された異能の種類に偏りがあるのだ。


 上述したように、火を増幅させる力や水を球体に変形させる力、風の流れを変える力など、同じような種類の異能が観測され続けている。


 現時点において観測されている異能の種類だけでも5種類は越えていて、さらに同じ異能を宿す者の数が異様に多い。

 

 また同じ異能が使えても個人によって力の強弱に差があるのもポイントだ。


 と、現時点における各国の研究によって分かった事はここまで。

 

 異能の原因を解明する事は難しいが異能そのものを開発し発展させていく事は出来るため、異能の開発及び発展に研究の重きを置く国も一部で現れ始めた。



 しかし各国が異能の研究を続けていく中で世論の声は段々と厳しいものに変わっていく。


 ・子供を対象とした研究を繰り返す事に対する不安や危惧


 当然ながら研究は異能を観測しなければ出来ず、何度も何度も観測し最高の環境の下、多くの研究者達が試行錯誤していく事で実現される。


 異能を使う事で体力を消耗してしまう以上、子供たちの体には負担が懸かる。

 医療従事者を同行させ、頻繁に体調管理を行った上で実験は行われるがそこに不安が残るのは当然の事だろう。



 ・異能が使える人間に対する不安


 異能の観測が急増しているとは言え世界の人口比率からして異能が使える人間は極々少数であり使えない人間の方が圧倒的に多い。


 自身の異能をうまくコントロール出来ない者や殺傷力の強い異能を持つ者もいる。異能を持たない一般市民からすればそういった子供達を国はどう扱っていくのか疑念の声が年々大きくなっていく。



 ・異能を研究する事そのものに対する疑問


 何を目的に異能を研究していくのか。

 どの国も研究費用のほとんどは国民が支払う税金から来ている。

 研究を続けていきそれを利として国民に還元する事は出来るのか。

 行われている研究そのものに意味はあるのかなど世論からの疑問は尽きない。



 このような世論からの声に対して、ばらつきはあるが各国では以下のような見解を示している。




 ・異能の存在を確認していながら放置する事の危険性


 異能が観測されているのは10歳以下の児童のみであり、精神的にまだ未熟で物事の判別が出来ると断定は出来ず、異能によっては殺傷性が高いものもあるため異能が原因で事故や事件などを誘発してしまう可能性があり、それを国が放置する事は到底出来ず国の指導の下、異能が扱える者を管轄していく必要がある。



 これに関しては納得せざるを得ない。


 異能の扱い一つで事故や事件になる可能性があるならその対策を予めから国がするのは当然の事だ。

 ましてや異能を使えるのが子供だけとなると尚更注意が必要だろう。


 国がしっかりと異能力者達を管理する事で国民達を納得させるしかない。


 それでも国民からの不満の声は尽きないが、異能力者を抹殺するわけにもいかないからな、どこかで折り合いをつけるしかないだろう。



 ・異能を研究する必要性


 これは国によってかなり見解に違いがある。


 異能の存在は人類にとって進化の可能性であり、今後人類が発展していくための大きな手掛かりであるとし、多額の税金を出資してでも国が研究していくべき重要案件であるという見方。


 

 異能の観測が後を断たず、異能が扱える子供達が増えているなか今後もこの傾向が続くならこれから先、国は多くの異能力者を抱えて行くことになりそれを放置する事は出来ない以上、異能の研究をせざるを得ないという見方。



 前者はともかく後者に関しては仕方がないと言える。


 これから先もどんどん異能力者が増えていくなら異能の研究をしていくしかない。


 それに日常生活において役立つ異能もある。


 現時点では用途に意味を見い出せない異能でも研究を行っていく事によって有意義に扱える道が見つかる可能性だってある。



 異能を研究し発展させ、異能を人間社会に解け込ませる事でより人々の生活を豊かにしていく事を目指す。


 これが国及び研究者達の理想だろう。


 原因を解明するにしろ異能を開発し発展させていくにしろ研究せざるを得ないだろう。


 

 ・子供達に懸かる肉体的負担


 上述にある通り研究を行っていく必要がある以上、その研究には子供達の協力が必要不可欠なため医療従事者同行の下、肉体、精神ともに健康状態を維持しながら研究を行っていく。



 国としてはこう返すしかないよなといった感じの見解だ。

 



 国によってばらつきはあるが、だいたいはこんな感じの見解を示した国が多い。



 しかし、見解を示したからと言ってそれで世論が収まるわけもなく日を増す毎に声は大きくなっていく一方であり、一部の国では大規模なデモまで行われたりもした。


 このように国と国民との間に徐々に軋轢が出来始めたのを恐れたのか、しばらくして各国で異能に関する大規模な法整備が成された。無論、日本もその例外ではなかった。




 国によって法律の内容は当然異なるが、刑罰の対象となるのは以下の2点においてどの国もだいたいは同じであり、


 ・国に無許可で異能を使う事


 ・人体に大きく影響を及ぼす異能実験を禁止にする事





 1つ目は異能が使える環境を強く縛り、国が異能力者達を管轄するための法律。


 無許可で異能を使った時点で法に触れるというのがポイント。


 異能を使い物を破損させたり他者に損傷を負わせれば当然罪に問われるが、周囲に危害を及ぼさなかったとしても罪に問われる。




 2つ目は異能に関する実験において被験者を守るための法律。


 実験を行っていく過程で被験者に肉体的負担が掛かる以上は必ず必要になってくる法律だ。



 主にこの2点はどの国もだいたい同じだ。



 国によって細かく様々な法整備が成されたが、どの国も異能に関する法律を施行して日が浅く穴も多かった。しかしそれは時間と共に解決して行くことになる。



 また、法整備が成された事をきっかけに異能に対する名称を統一する国が増えていった。


 日本では異能のことを技能と呼ぶように政府から国民に対して要望があった。



 色々と説明してきたがここに来てやっと技能に触れた。


 単純に日本では異能そのものを技能と呼び、技能という言葉は能力の内容そのものを指したりもする。


 ちなみに技力というのは技能の強弱を指す。


 周囲に大きく影響を及ぼす技能もあれば、大した影響を及ぼさない技能もある。技能によって力の強弱に差がある以上はそれを指す一つの指標として技力という言葉が使われるようになった。


 ここからは異能のことを技能と呼んでいくことにする。



 技能の観測が後を断たず技能を扱える子供の急増が止まらないこと、様々な国で技能に関する法整備が成されたこと、ここではこの2つが大きなポイントだ。





―――――(♠️)―――――




 技能に関する法整備が成されてからさらに数年が経過。


 技能の原因を解明する事は出来といない。


 各国において技能関連の新たな法律が施行されたり、既存の法律が改正されたりと、ここ数年は法律に関する動きが著しかったみたいだ。


 元々は世論の影響もあり取り急ぎで法整備が成された形になるのでうまく機能していない部分も多々あり、穴が多い部分が目立ったがそれを年々修正していったわけだ。


 とはいっても今だ不完全な部分は多く、これから先さらに時間を重ねて各々の国が技能に関する法整備を成していくことになる。



―――――



 技能が観測されてから15年ほどが経過した。


 初めて技能が観測された世代は20歳を越え、なかには社会進出をして行く者も現れ始めた。


 社会に身を置くという事は、技能が使える者と使えない者が同じ環境で協力しあって助け合い仕事をこなしていく必要がある。


 技能が使える人間に対して劣等感を抱く者もいれば、技能そのものに恐怖し嫌悪する者もいる。


 これから先、技能が使える人間がどんどん社会進出して行く事に対する不安を多くの国民は感じ、うまく共存して行けるのかと世論を巻き込んで国と国民との間で壮絶な議論がなされていった。


 社会において技能が使える者と使えない者とで明確に分け隔てるべきではないかとの声が多かったが、人権というものがある以上は技能の有無に関わらずどの職に就くのか選択する自由が個人に与えらるべき、との見解を示す国が多かった。


 しかし実際のところでは技能力者の社会的地位に関して扱いに困る国が多かったみたいだ。



―――――



 この時代ぐらいから技能が関わる犯罪が散見されるようになった。


 技能を許可なく使う事はどの国でも犯罪とされているが、技能力者を24時間体制で監視しておけるわけでもないので技能を使おうと思えば何時でも使える。例えそれが犯罪であると理解していても罪を犯す者はどこかしらに必ず存在する。


 技能が使える世代は一番上で20歳を少し越えるくらいなので年齢層を鑑みれば非行に走る層が一部で存在する事は理解できる。


 技能が関わる犯罪であろうと警察が介入し場を納めに向かうが、警察に技能を行使する加害者に対して制圧する手段が乏しく、当時は各国の警察を悩ませていたらしい。


 技能によっては遠距離から攻撃を仕掛けてくるものもあり、接近戦に持ち込み武道や警棒で制圧したり複数人で取り囲んで取り押さえるという手段が取れない場合がある。


 銃の射撃で制圧するという手段も考えられるが、国によっては警察が加害者に対して銃を射撃できる条件が限られている場合があり、必ずしも銃による制圧が許可されるわけではない。


 特に日本なんかでは警察の銃の扱いは相当厳しく、射撃してもせいぜい威嚇射撃止まりで加害者に直接射撃することは滅多にない。


 仮に加害者に直接射撃したとしても当てるのは手足くらいのもので、その程度では加害者が技能を行使するのを止められる保証はない。


 銃による射撃が認められている国であろうと、優勢順位は加害者の制圧であり致命傷を負わせることではない為いずれにしろ技能力者を制圧する手段が乏しいことに変わりはない。



 そこで技能を扱う犯罪に関してはこちら側も技能を用いて対抗するのが良いのではないかと一部の国の警察は考え始めた。


 例えば火を扱うタイプの技能に対しては水を扱うタイプの技能で対抗し、その間に警察が制圧を試みるといった形で技能力者と警察が連帯するといったもの。


 技能力者の地位や扱いに関して困っている国が多いなか、技能力者の活躍の場を与えるといった意味でも挑戦してみる価値はあるとし実際に技能力者と警察が連帯して犯罪を取り締まるといった試みが一部の国で試され始める



 これがうまく嵌まり、被害を最小限に抑えながら加害者を制圧出来たという報告が多く集まった。


 それを機に様々な国で技能力者と警察が連帯して犯罪を取り締まるといった体制が採られていくようになった。


 国民の中で技能の使い道に疑問を感じる者も多くいたが、技能が人々の生活を守るために有用に使うことも出来ることが示せた。



 

―――――



 技能力者と警察が連帯するようになってからしばらくが経ち、多くの国で警察の内部で正式に技能犯罪を取り締まる専門の課が立ち上げられた。


 技能力者達の多くはその課に所属し、警察という大きな組織の一員となった。


 当然与えられる待遇も周りの警察官達と同等であり、技能力者達の進路の一つとなっていく。


 また日本においても同様の体制が採られた。



 長く解説してきたが技能が観測されてからの各国の動向は、基本的にここまでは同じだ。


 分からないことだらけだからこそ、周りの国を参考にし、ある程度は歩幅を合わせて進んで行く国が多く見られたが、それも次第に変わって行く。



 ここから先は、警察官にならない技能力者の扱いや技能の研究、技能に関する法律など国によって全く異なっていくため他の国のことは割愛し、日本のことだけに触れていく。




―――――(@)―――――



 技能が観測されてから現在まで約35年程が経過した。


 ここでは一気に飛んで現在の日本について語る。



 ・技能力開発支援機構


 技能力開発支援機構なる組織が国運営の元、立ち上げられた。


 これまでは各大学や機関の各々が研究を行っていたが、技能の研究に関してすべてをまとめ一つの組織として研究していくという考えを政府が示した。


 研究の資料やデータ、研究に参加している子供達の情報などをまとめ、技能に関する情報全てを一つの組織に集中させた方が効率よく研究を行うことが出来るため、それら全てをまとめ管轄及び研究する組織として技能力開発支援機構が発足された。


 日本国内におけるいかなる研究機関もこの組織に属さない限り技能に関する研究を行うことは出来ない。


 東京と大阪に一つずつ拠点を構え、技能に関する資料やデータはそこで保管されているが、研究そのものは組織に属する外部の機関で行われる。


 要は研究自体は属する各機関で行い、その情報を技能力開発支援機構一つにまとめましょうという話だ。




 ・日本での技能力者の数について


 技能が観測されてからいよいよ現代まで来たが、原因の解明はされないまま技能の観測だけは後を断たないといった状況が今だに続いている。


 日本において10歳未満の児童のうち20人に1人は技能を宿すというデータが技能力開発支援機構から発表されている。


 これは相当な数だ。小学校で約一クラスに1人当たりは技能を宿す児童が観測されているという事実。


 現代日本で技能が使える人の総数は約30万人にも及ぶという。


 出生率そのものが減少傾向にあるとは言えこの割合で増え続ければ日本社会は技能力者で溢れてしまうことになり、これは一つ問題視されている部分でもある。



 ・現代までの研究で散見されたデータ



 現代までの技能に関する研究で、その理屈を明確に根拠があり論理的に証明されているものは一つもない。


 よって技能を研究、開発していく上で最も重要になって来るのは今までに観測されたデータだ。


 ここでは積み重ねられた研究によって得られたデータのうち、目を引く2点を挙げていく。



 ・技能開発を続けて行くことによる技能及び体力の向上割合



 技能の向上と言うのは、技能の応用力や技能の質が向上することを言う。


 技能開発とまで言ってるわけなので技能を向上させるために研究が行われる。


 データによると技能開発を受け続け、技能が向上する人間の割合は全体のうちの2割から3割と発表されている。


 技能開発を受けても半数以上が技能に変化が見られないままで、これ以上続けても可能性がないと判断されれば開発を打ち切られたりもする。

 


 次に体力の向上について


 ここで指す「体力」と言うのは技能を行使する上で必要な体力であり、体を動かす時などに使われる肉体的な体力とは意味が異なる。


 技能を行使する際に必要とされるエネルギーと体を運動させる際に必要とされるエネルギーは別者であると推測されている。


 随分と前にも触れたが技能を行使する上で個人によって消耗度合いの差が激しい。

 これは技能を使う体力が有るか無いかの差だ。


 開発を受け続けるということはそれだけ技能を行使し続けることになる。

 その過程で技能を行使する体力に向上の傾向が見られることがいくつものデータにより発見された。


 伸び代は個人によって差があり一概に断定することは出来ない。


 また体力の有無は生まれもった資質による部分が大きいと言われていて、開発によって多少は体力が向上しても飛躍的に向上した例は確認されていない。



 ・新たに観測されたこれまでには未確認の技能


 技能の種類には一定の偏りがある。


 火に関する技能、水に関する技能など観測された技能の種類には限りがあり、技能が扱える人間のほとんどは既に観測されている種類のいずれかに分類される。


 だが、極々稀に未確認の種類の技能が観測されることがある。


 他の誰もが持ち得ない、その者のみが宿す特別な技能。


 現在確認されているのは国内だけでも、指で数えられる程度と言われていて技能や個人に関するデータは国によって硬く秘匿されているため厳密な情報を一般の人間が知ることは出来ない。


 類を見ない希少な技能ということもあって様々な噂や憶測が後を断たないがどれも信憑性には欠ける。


 これに関しては分からないことだらけで、技能開発支援機構の上層部以上の人間でもない限り正確な情報なんて知るよしもないだろう。



 他にも細々とした部分で新しく発見されたデータなどはあるが解説し出すときりがないので割愛するとして、大きな発見と言えるのはこの2点くらいだろう。




 ・技能の分類



 今まで技能全般に関する具体的な解説は省いて来たが、ここで一気にまとめて解説していく。 

 


 ・技力の数値化


 同じ技能を使おうとそこには必ず強弱があり、その差を一つの指標として技力と呼ばれる。


 初めは技力が高い低いと呼ばれて来たが、いつしか技力の高低さを明確に表す指標として数値化による表記が導入されるようになった。


 技力の評価は10段階で表され数値が大きくなるほど技力の高さを表す。


 技力を評価する対象は技能そのものの規模や応用力とされている。


 例え技能そのものは大したことがなくても開発を続けて応用力がつけば技力は上がっていく。


 技能力者を評価する基準としてこの技力はとても重要な部分になってくる。


 ちなみに技能が使える者は年に2度、定期的に技力を測るための検索が行われる。


 ・技能力者の分けられ方


 技力の評価が1~4までの技能力者をa群.


技力の評価が5~10までの技能力者をb群.


 このように技力の高低さを基準に群別されている。


 a群に比べればb群の数は圧倒的に少ない。


 現在において技能力者の人口は全体で30万人と言われていてその全てを研究対象にすることは難しく、技力が高いと判断されるb群の人間のみが一部を除いて任意で研究の対象とされている。


 比較的、技能力者という枠組みではa群よりb群の方がより優れていると言える。



 ・技能の種類


 技能には扱える種類に限りがあり、それらを種類毎に~種と表される。


 ()種、(すい)種、(ふう)種、()種、(でん)種、(ひょう)種、独立(どくりつ)種の7つの種類が存在する。


 独立種というのは先ほど挙げた通り、今までに観測されたことがない唯一の技能であり、他に類を見ないため独立した個の種類という意味で独立種と表される。


 火、風、水、地の種類はよく見られるが氷や電気の種類はほとんど見られない。


 とはいえ独立種に属するほど珍しくはなく、一部では僅かに存在するためそれぞれの種類として表記される。


 人によっては一人で複数の種類の技能を使いこなせる者もいるが、それらの技能を同じレベルで扱えるかと言われればそうでもなく、種類によって得手不得手があり技力に差が生じる。

 

 最大で3種類もの技能を扱える技能力者が現在日本において確認されている。


 2種類までなら扱える人間もちらほら確認されているが3種類となると壊滅的にまで数が減り、独立種の技能を宿す人の数と同等とまで言われている。


 ちなみに複数の種類の技能が扱える人の技力判定は種類毎に分別されて行われ、そのうちの一つでも技力が5以上ならb群に属される。



 ・類による分類


 少し細かくなるが同じ種類の技能が使えても出来る事は人によって大きく変わってくる。


 例えば、火種の技能において火を増幅させるものや火を的に向けて射出するものなど、同じ火を扱う技能でもその内容はまるで違う。


 それを具体的に分類するというわけだ。


 ・Ⅰ類……特定の物質を増加、減少させる。


 ・Ⅱ類……特定の物質を意図的に運動させる。


 ・Ⅲ類……無から特定の物質を生み出す。



 主にこの3種類で分類される。


 下にいくほど体力の消耗度合いが大きくなると言われているが、類に関係なく行使する技能の規模によっては体力を大きく消耗するため一概にどちらの消耗度合いが激しいかを判別することは難しい。


 技力が高いほど複数の類の技能が使える傾向にあり、技能の研究などで重宝されている。


 また技能力者の技能を表すときは~群~種~類と表記される。


 ちなみに全ての技能においてⅠ類からⅢ類までが存在するかと言われればそれは違う。


 技能の種類によっては一部で観測されていない類もあり、例えば地種に関しては現在Ⅰ類とⅢ類の技能は観測されておらず、Ⅱ類のみしか存在しない。


 またⅠ類からⅢ類には確答しない特殊なケースの技能も僅かながら観測されており、必ずしも技能の全てがⅠ類からⅢ類に分類されるわけではない。


 これはあくまでも大まかな定義でしかないということを知っていて欲しい。


 技能の説明はここまで。




 日本で実施されている技能力検索や研究を受ける人間の待遇など



 技能の発現は10歳以下の児童からしか観測されていない。


 日本では10歳以下の児童を対象に、技能が発現するかの有無を確かめるため年に2度の定期検索を受けることが法により義務付けられている。


 検索を受ける場所は技能を観測出来る環境が整えられた特定の施設となっていて、この検索を受けて初めて技能が発現するケースが多々ある。


 また技能は無自覚に発現するケースも多く日常生活で突発的に観測される場合もあり、その時は即座に技能開発支援機構に連絡を入れたのち検索を受けなければいけない。


 国として技能力者全ての情報を管轄する義務があり、少しの漏れも許されない。


 ここに漏れがあると国が認知していない技能力者が存在することになり、その技能力者が技能を用いて犯罪を犯した時などに警察の捜査の初動で遅れをとる可能性なんかもある。


 治安維持という意味に置いても技能力者に関する情報は重要なものになってくる。




 次は研究の対象となる人の待遇について。


 研究を受けること自体は任意であり、嫌なら断ってしまっても構わない。


 しかし希少な技能を宿している一部の人間に対して、政府から直々に研究に協力するよう打診されることもあるそうだ。


 それでもあくまで任意であることに変わりはなく強制ではないとされている。


 研究の対象とされるのはほとんどの場合、技力が高いb群の技能力者であり技能の開発が行われそれを応用、発展させ日本社会にとって有意義な使い道を模索していくのが本来の研究の目的とされている。


 そこで気になるのが研究を受ける技能力者の待遇なのだが、研究を受けることにより国から報酬金を得ることが出来る。


 そもそも研究を受けるか否かは任意なため相応の待遇がない限りは拒否する者が後を断たなくなる。そこで待遇の一つとして協力者に国からお金が送られるわけだ。


 国からの明確な待遇としては報酬金が支払われることのみであるが、研究を受けることのメリットは主に2つある。



 まず、自身の技能を開発出来る環境が手に入ること。


 特別な事情がない限り技能を行使出来る環境は限られており、自分自身で技能を向上させたいと思っても環境がなければ行うことは出来ない。


 研究を受けることでその環境が手に入り、開発を通して自身の技能を向上させるきっかけにも繋がる。


 自分の持つ技能を発展させたい、技力を上げたいと思う者からすれば一つのメリットと言えるだろう。



 次に進学や就職の際に有利になる可能性があること。


 研究に携わっていたという経歴は、国の発展に助力したと公的に評価されやすい。


 今の時代は技能力者でも普通に一般の職に就職する者が多く、それを履歴書に書けることは大きな強みとなる。


 進学の際なんかでも内申点として大きくプラスに働いたりもする。


 もちろん、それだけで自分の進路が叶うほど甘くはないがそこそこ有利に働くというのが現状ではある。


この2つは研究を受けることで得られるメリットであり、国からの報酬金よりもこれらを優先して研究を受ける者も多い。



 ・技能が関わる国家職について



 現在日本では、優秀だと国に認められた一部の技能力者を国が管理する技能が関わる職に雇用する制度がある。


 以前まで技能に関する全てを納めて来たのは非技能力者達であり、技能界隈全般を牛耳っていたといっても過言ではない。


 技能力者達に実権は握らせないという国の上層部達の総意のもと技能に関する全ての分野において包囲網が敷かれ、技能力者は技能が関わる職に就くことが難しかった。


 しかし年々技能力者達の人口が増え全体的な年齢層が上がって行くに連れ、技能力者達が技能に関する分野で上に立つことが出来ない社会はおかしいとの声が大きくなっていった。


 やがてメディアなどでもこれは技能力者達に対する差別だなどと取りざたされる機会が多くなっていき、政府に対して直接抗議する団体なども現れた。


 政府側は強く否定しつつも、これを機に一部の技能力者達を技能が関わる職に雇用する制度を設けるなど改善の兆しを見せ始め、その制度の一環として技能力者を研究職や技能開発支援機構の職員など、技能が関わる国家職に雇用するようになった。


 といってもその制度を受けられるのは国が認めた一部の優秀な技能力者のみであり、多くの技能力者達はその制度を受けられていない。


 要するに表面上ではそういった制度を設け技能力者達が活躍出来る場を作っているように見せて、実際には制度が適用される条件をかなり厳しく引き上げて技能力者達を関わらせまいとしているのが現状だ。


 


 現在における技能力者の社会的地位について



 これまで各所でちらほら触れて来たが現在の日本における技能力者の地位をここで簡潔にまとめておく。



 労働している技能力者について。


 技能が使えるからといって技能が関わる職に就く必要はない。


 上述にもあるように技能力者が技能に関わる職に就くことは難しく、一般の職に就く場合がほとんどだ。


 昔でこそ技能力者に対する不満や偏見はあったが年を重ねるに連れてそれも薄れていった。


 技能力者の人口が爆発的に増加していったことから、国と技能者の抱える問題は切っても切り離せない関係にある。


 技能力者が一般の職に就くことに対して不満を抱く者も一部ではいるが、すでに多くの技能力者が存在し、これから先も増えていく傾向がある以上そのすべてを隔離して技能力者のみの職場を作ることなど不可能だ。


 国民としてもそれを理解しているからこそ、受け入れているという部分もある。


 また政府が、技能力者達が不利となるような選考はしないようにと国内の企業全般に強く呼び掛けていることもあり、技能力者であろうと一般の職に就くことは十分可能な社会になっている。


 まあ政府からの呼び掛けがあるのは当然だろうな、どの企業も技能力者NGなんてことになれば技能力者達の社会的な居場所がなくなってしまう。


 

 学生の技能力者について。


 技能が使えるからといって隔離されることなどはなく普通に教育を受けることが出来るし、受験の際に不利になることもない。これも政府からの呼び掛けによる部分が大きい。


 学校側は技能が使える生徒の現状をしっかりと把握し、定期的な面談やカウンセリング、一部で特別なカリキュラムを行うことが義務付けられる。


 一部では、独自で技能の開発が行える環境が整えられた特殊な学校などもあり技能力者達の進学先の候補となったりもする。


 子供ということもあり技能力者がいじめや差別を受けるなど度々メディアなどで取り上げられることもあるが、学校には普通に通える。


 小中高と進んで、大学に進学する者も多い。


 技能力者であろうと全うに学生をやれるというわけだ。




 技能力検定に関して


 

 日本では技能が扱える人を対象に、技能力検定という国指導の技能に関わる検定試験が行われている。通称、技検と呼ばれる。


 技検では1級から5級までが設けられていて課せられた試験を受験し、合格することでそれに準じる級を取得することが出来る。


 級を取得することで特定の資格や様々な待遇が与えられる。


 試験の内容は実技、筆記、面接があり、上の級に行くほど難易度がはね上がっていきそれぞれの級において試験は年に一度実施される。


 以下において、受験資格、試験内容、級を取得することで得る資格や待遇について説明していく。



 受験資格

 

 5級…国からb群の評価を受けている者。 年齢が18歳以上である者。


 4級…技能力検定で5級を取得する者。


 3級…技能力検定で4級を取得する者。

   大学を卒業している者。

   技能力検定で1級または2級を取得する者からの推薦を得られる者。


 2級…技能力検定で3級の資格を取得する者。 

   技能力検定で3級を取得してから3年以上が経過していること。 

   技能力検定で1級を取得する者からの推薦を得られる者。


 1級…技能力検定で2級の資格を取得する者。 

   技能力検定で2級を取得してから3年以上が経過していること。

   内閣総理大臣からの承認を得られる者。


 

 だいたいはこんな感じだが、前提として執行猶予がついていたり前科がある場合は受験資格を与えられない。


 まず、b群でなければ5級を受験することは出来ない。

 b群の評価を得るには技力が5以上必要であり、a群に比べてb群の数は圧倒的に少ない。


 この時点ですでに多くの人間が振るいにかけられることになる。


 次に目を引くのは3級以上の受験資格について。


 大学を卒業していなければならず、1級か2級を取得する人からの推薦が必要になる。


この推薦を得ることが非常に困難と言われていて、まず1級または2級を取得する人の数が絶望的に少なく、知り合える環境が限られていること。


 一年間で推薦出来る人数に限りがあり、誰かれ構わず推薦することは出来ないこと。


 さらに推薦に至るには1ヶ月から3ヶ月に渡り1級または2級を取得する者の指導のもと研修が行われ、その研修の結果推薦するに至ると認められ初めて推薦されることとなる。


 要するに、推薦を得ること自体がかなり難しい。


 公的に、1級や2級を取得する者と面会する機会が与えられたりもするがそこには受験生が殺到するため研修を行ってもらうための約束を取り付けるだけでも相当な倍率になる。


 技検は4級以上を取得することがかなり困難であると言われているが3級から上は本格的に次元が違ってくる。


 受験資格を満たすだけで相当困難であり、そこからさらに試験に合格する必要があるのでまさしく鬼畜の難度と言えるだろう。


 

 1級についても触れておく。


 3級の受験資格だけでも相当なものだが、1級はさらにその上をいく。

 なんと受験をするだけで内閣総理大臣からの承認が必要になってくる。


 1対1で直接面談が行われ、受験をするに至る適性があるのかを判断される。


 面談が行われるのは2級を取得する者で年に3人までと決まっている。

 面談が行われる人の枠自体が極めて少なく、仮に行われたとしても承認を受けられる保証はないため受験資格を得ることの難しさがどれほどのものか想像するのは容易い。


 ちなみに2級取得者がちょうど30名で、1級取得者に関しては5名しか存在しない。




 試験内容


 5級…その場での技力測定で5以上を記録すること。

技能倫理の試験での得点が80%以上であること。


 4級…その場での技力測定で6以上を記録すること。

   技能倫理の試験での得点が90%以上であること。

   面接において適性があると評価されること。


 3級…その場での技力測定で7以上を記録すること。

   技能を用いた模擬戦で一定の評価を得ること。

   技能倫理の試験での得点が95%以上であること。

   面接において適性があり、優秀であると評価されること。

  

 2級…その場での技力測定で8以上を記録すること。

   技能を用いた模擬戦で優秀であるとの評価を得ること。

   技能倫理の試験での得点が100%であること。

   面接において適性があり極めて優秀であると評価されること。 


 1級…その場での技力測定で9以上を記録すること。

   技能を用いた模擬戦で極めて優秀であるとの評価を得ること。

   技能倫理の試験での得点が100%であること。 

    


 同じような試験が続くように感じるかもしれないが全てにおいて内容が異なってくる。


 まず、その場で技力測定が行われること。


 技能を行使する時、その場の環境や精神状態によって多少はムラが生じる。

 普段の測定ではある程度決まった数字が出ていても、試験という環境下でその通りの測定が出るとは限らない。


 そういった事情を加味した上で自身の技力を正確に示せるか、そこを見るのが試験の意図らしい。



 次に技能倫理の試験が行われること。


 5級と4級はマーク式で問題が出題される。


 ここ2つに関してはしっかり暗記さえすれば合格基準の得点を越えられると言われている。

 それでも暗記する事項がそれなりに多く勉強時間は必要らしい。


 3級からは試験の難度が跳ね上がる。


 マーク式から論述式に代わる。

 技能倫理に関する小論文が課され、その得点で95%を越えられることが条件になる。


 それなりに多くの文字数を書くので細かい誤字や脱字が減点の対象となることはないと言われているが、そもそも小論文の得点で95%を越えること自体が至難であり仮に技力測定で合格基準を満たせても多くの人間はここで振るい落とされる。



 1級や2級は満点を獲ることが合格条件であり、その難度は3級の上をいく。

 課される小論文のテーマも3級に比べ、より抽象性が増し難しくなる。

 どれほど優秀でも満点を獲ることは難しい、一つのミスも許されないからだ。

 限りなく満点に近い得点を獲ることが出来ても満点でない時点で不合格。


 論述式の試験に加え、ここまでの得点率を条件にするのはあまりにも厳しすぎるのではないかとの声が各所から散見される程だ。



 面接について。


 4級からは面接が課される。

 他の試験でいかに優秀な成績を納めてもここで適性がないと判断されれば不合格となる。


 4級に関しては面接といっても形式上のものであり、ほとんどの人は合格出来ると言われている。


 これもまた3級からが難しく、問われる内容が高度になりその場での質疑応答が求められる。また4級と違い面接で適性無しと判断され不合格となる人の数が一気に増える。


 3級からは形式上の面接などではなく明確に振るいにかけるための面接となる。


 面接に関しては点数による評価ではなく面接官の心証で合否が決まるため未知数な部分が多く対策が最も難しいとされている。



 技能を用いた模擬戦による試験


 技能力者を前にして自身の技能がどこまで適応出来るのかを測る試験。


 試験内容は未発表であり、受験生には秘守義務が課される。


 不明瞭な部分が多く様々な憶測を呼んでいるが関係者でもない限り正確なことはわからない。


 模擬戦と聞いてぎょっとするかもしれないが、あくまでも試験であって戦闘ではないこと、最大限の安全を確保して行われることは受験要項に記載されている。


 試験内容に関してはざっとこんなところだ。



 級取得者に与えられる資格及び待遇


 受験生にとってはここが一番大事な部分になってくる。

 試験の難度が高い割りに合格出来ても大したメリットが得られないんじゃそもそも受験なんてしないからな。



 ・級取得者に与えられる資格


 5級…a群の技能力者に対する技能開発の指導及び監督。


 4級…b群の技能力者に対する技能開発の指導及び監督。


 2級…技能検定3級保持者の受験生を選抜し、推薦する認可。


 1級…技能検定2級保持者の受験生を選抜し、推薦する認可。


 (*)取得する級が上がるに連れ、以前まで与えられていた資格も引き継がれていく。


 1級と2級の推薦資格に関してはすでに触れているので割愛し、4級と5級に関してのみ説明する。ちなみに3級に関しては新しく与えられる資格はない。


 国からの特別な認可がない限り技能を開発するにはそれを指導、監督する立場の人間が必要になってくる。


 個人で技能を開発し、向上させていくには技能が行使出来る環境とそういった立場の人間との2点の存在が必要不可欠であり、技能力者を育成していく上でこの資格は欠かせないものとなる。


 資格を持つ者の中には、学校などの組織に雇用され所属する者や個人で契約して活動する者が多い。


 この資格があるだけで教職などの一部の職では優遇されやすくなる。


 教職で優遇されやすいのは技能が使える生徒を任せやすいからだ。今の時代一クラスに一人は技能を宿す生徒がいると統計が出ている。その中で技能が使える級取得者の先生が一人でもいれば、技能が使える生徒達の引率を任せたり、技能で悩む生徒の相談に乗ることも出来る。


 生徒視点からしても技能が使えない先生より使える先生の方が技能に関しては相談をしやすいだろう。


 このような観点から教職において級取得者は重宝されている。




 ・級取得者に与えられる待遇


 5級…警察官や教職を志望する者に対して公務員試験を免除。


 1級~3級…政府が掲げる技能力者活躍支援制度の対象。



 5級に関しては先程も触れたが、教職に加えて警察官にもなりやすくなる。

 技能に関わる犯罪を取り締まる専門の課で非常に重宝されていて、この待遇を利用して警察になった者は技能関連の課に配属されることが決まっている。


 教職、警察ともに級取得者の採用を積極的に行っているので、それらの職に就く上で必要な条件さえ満たしていれば採用はされやすい。



 最後に1級~3級の取得者が受けられる待遇、ここがメインとなる。


 技能力者活躍支援制度という制度がある。


 技能が関わる職に対して技能力者達を積極的に採用して行こうという政府発案の制度である。


 随分と前にも触れたが以前まで技能に関わる全てを牛耳っていたのは非技能力者達であり、技能力者が技能に関わる物事で権力を持てないように様々な利権が絡み、関わらせないよう包囲網が敷かれていた。


 それを避難する世論の声が次第に高まって行き、国民からの反発も徐々に大きくなって行ったが故、それを納めるため仕方なく、なし崩し的に発案されたのがこの制度である。


 この制度を受けられるのは1級~3級取得者と極めて少数であるが、その待遇は絶大なものであり以下の1つが挙げられる。


 ・技能が関わる全ての国家職に対して、級取得者の採用試験を免除する。


 要するに1級~3級を取得していると技能が関わる国家職ならどこであろうと採用されるといったものだ。

 ただし、採用試験が免除されるだけであって採用試験を受けるための必要な条件までは免除されないため、そこには注意が必要となる。



 ひとまとめにすると級を取得する難度の割りにこれだけかと思う者が多いだろうが、これはあくまでも名目上記載されているものであり、記載はされていないが実際に受けられる待遇は他にもある。


 まず挙げられるのは職に就いた後の出世をする速さだ。


 級を取得し、制度を受けて採用された職員はほとんど全てが出世コースを約束され、また出世する速さも他の職員に比べて速いと言われている。


 取得している級によって出世の速さが変わると言われていて3級、2級、1級と上がっていくに連れて出世の速さも上がっていく。


 ここが大きなメリットであり、多くのものはこの待遇を求めて技検を受験する。


 様々な利権が絡み技能力者は技能が関わる職に就くことが難しいと言われているのが現状であり、技能力者達の多くもそれを認知している。そのなかで唯一技能に関わる職に就く資格が与えられ、さらに出世まで約束されているとなれば尚のこと多くの人間が級を取得するため必死になって受験する。

 


 他に挙げられるのは研究職を志望する者などを対象に一部経歴が免除されること。


 採用試験は免除されても採用試験を受けるための必要な条件までは免除されないとあるが、アカデミックポストなどの研究職に関しては事情が変わってくる。


 アカデミックポストに就こうと思えば、多くの場合求められる経歴として大学卒業後に大学院に進学し、博士過程まで修了することが望まれる。


 一般的には経歴としてこれが必要な条件となるが、級取得者は技能力者活躍支援制度を利用して大学卒業の経歴のみでアカデミックポストに就ける場合が多い。


 修士課程、博士過程を飛ばしてアカデミックポストに就けると言うのはかなり大きく、研究者志望の技能力者で3級以上を目指す者は非常に多い。


 他にも細かな所で優遇されている部分は多いが、一般的に言われているのは今挙げたものが全てになる。


 また国家職に採用された技能力者達を出世させ重役に就けるのには理由があると言われていて、国の上層部と優秀な技能力者との間に繋がりを作ろうとしているのではないかと疑惑を呼んでいる。


 ただの疑惑であって信憑性はいかほどなものだが、以前までは技能力者達を技能が関わる職には就けさすまいと不遇に扱っていたのにも関わらず、技能力者活躍支援制度が施行されて以降、技能が関わる国家職の重役に就く技能力者達が徐々に増えて行った。


 制度に乗っ取って国家職に就けさせるとしても、わざわざ出世までさせる必要はないはずだ。

 

 これが偶々とは考えられない。ひょっとすると国の上層部で技能力者の扱いに対して考えが変わった部分があるのかもしれない。



 ・現代の日本における技能に関する法について


 日本で技能が観測され、技能力者が増え始めしばらくしてから技能に関する大規模な法整備が成された。


 法整備が成されたのが急であったこともあり不十分な部分や穴が目立ち、当時はうまく機能していなかったみたいだ。


 それも30年近くの長い時間を掛け、少しずつ改善されて行き今となっては国を守る秩序としてちゃんと機能している。


 とはいえ完成されているというわけではなく、まだまだ改善を求める声も多い。


 ここで日本の技能に関する法律で目立つものを一部、内容だけ触れておく。


 ・日常生活における技能の扱い


 日本では特別な事情がない限り意図的に技能を行使することは法によって禁止されている。


 遊び半分で技能を使ったり、無断で個人による技能開発を行うことも当然禁止されている。


 要するに国からの認可がない状態で技能を使うこと自体が罪の対象となる。


 課される刑罰は罪の内容にもよるが、軽いもので罰金刑や書類送検、重度のものとなれば初犯であろうと一発で実刑がつくこともある。


 ここまではいい。法で定められているのを知っておきながらわざと技能を使ったというなら取り締まられて当然だ。


 しかし問題視されているのは偶発的に技能を使ってしまう場合だ。


 咄嗟での反射や、無意識下における技能の暴発など意図せず技能が発動することが稀にある。


 意図的ならば当然罪に課されるが、意図的でないと判断された場合が難しい。


 軽度のものなら無罪になる場合が多いが、重度のものとなると過失を問われる可能性が出てくる。周囲の人間に被害が出たり、物を破損させたりなど、状況によって変わってくるので一概には言えないがどのくらいから過失を問うのか、そこの判断が難しくなってくる。


 そもそも意図的でないと判断すること自体が難しく、意図的で技能を使ったにも関わらず意図的ではないと主張し罪から逃れようとする人もいるため警察及び司法は慎重な対応が必要となってくる。



 ・技能を使った正当防衛

 

 状況に応じて技能を使った正当防衛が法律で認められている。


 正当防衛の基本的な定義は無抵抗な状態で相手から一方的に物理的攻撃を受けた時、もしくは受けると強く感じた時など、やむを得ない事情がある場合のみ暴力による抵抗が法的に認められるといったもの。


 その抵抗の際に技能の行使が認められる場合がある。


 ・加害者側が技能を使い攻撃を仕掛けてきた場合、もしくは攻撃を仕掛る素振りを見せた場合。


 ・加害者側が凶器を持ち攻撃を仕掛けてきた場合、もしくは凶器を向け脅してきた場合。


 上2つの状況においては技能による抵抗をしたとしても正当防衛が認められる場合が多い。


 相手が技能を使う、もしくは凶器を使うといった部分が大きなポイントになる。


 では加害者が技能を使わない、凶器を持たない、そういった状況で殴る蹴るなどの攻撃を仕掛けてきた場合はどうなるのか。ここが難しい。


 現在の法律においては程度にもよるが、丸腰の相手に技能を使った場合は過剰防衛と判断される場合が多いと言われている。


 法律では技能で相手を傷付ける行為は凶器で相手を傷付ける行為と同義に扱われていて、正当防衛であろうと丸腰の相手に技能を行使することは躊躇われる。


 ただしこれも状況によって変わって来る場合が多く、暴力によって重症を負わされた場合や格闘技など武道に関するライセンスや資格を持つ者からの暴力を受けた場合、女性が男性から暴行を受けた場合など、限定的な状況においてやむを得ない事情があると判断された場合は技能を行使しても正当防衛が適用されることもある。


 その場その時で状況が変わって来るので正当防衛かはたまた過剰防衛か判断することは非常に難しい。




 今挙げた2つは日常的に生活を送っていく上で特に知っておくべき重要な法律となる。


 他にも様々な法律があるが全てを解説することは出来ないので多くは割愛する。



 とても長くなったが、ここまでが技能の生い立ちとその歴史、現代に至るまでの流れとなる。

 

 飛ばし飛ばし簡潔にまとめたので厳密には説明し足らない部分も多々あるが、それらに関してはおいおい付随して説明していくことになるだろう。


 とりあえずはここまでで。ご苦労さん。

 




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