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体育館の二学期、教室の二学期

作者: ぱしゃす
掲載日:2020/08/21

一年半経ってもコンタクトレンズにはまだ慣れず、右目がぼやけたまま今年一番の勢いで自転車を漕ぐ。夏休みが終わり、部活ではいよいよ自分の学年が一番上の立場になった。これまでとは全てが違う学校生活が始まる。昨日までと夏の日差しは変わらないが、自分の元気さと登校に使うエネルギーは段違いだ。ギアを最大にし続けても息が荒れない。数学の宿題なんて朝礼までの五分で片付く。瞬きしてるうちにコンタクトも馴染んできた。

右足から靴紐を結び、左手から指をポキポキ鳴らす。ボールと水筒を持って部室を出る。予定通り、卓球部はもう朝練を始めている。今日のバスケ部の朝練には一番乗りすると心に決めていた。テーピングを巻きながら情報を集める。今日はバッシュがよく止まるし、足首も痛まない。カーテンだけで仕切られた隣の卓球部の練習場からは、ピン球がバスケ部のコートに転がってきているし、彼女が練習している台は昨日よりも近い。テーピングを巻いている間だけで、ピン球は三倍くらいに増えている。いよいよ眠気は吹っ飛んだ。こういう頭の回転は速いのだ。テーピングはあと三十秒くらいで巻き終えればいい。

ピン球を拾い、視線を投げる。練習を中断してピン球拾いを始めた彼女が来る。

「おはよう。」

体育館での彼女は一層爽やかに見えた。体育館の電球が多いせいだ。

「おはよう。はいこれ。」

挨拶で答えながら後ろを見る。他の部員はまだピン球拾いを続けているから、まだ時間はあるらしい。でもこのチャンスは想定外だった。こういう頭の回転は速くない。

「宿題終わった?」

「うん。でも手抜きだらけだから、抜き打ちテストなんてあったら大変。」

ここで僕は後悔する。もう宿題の話しかできないじゃないか。

「実はまだ数学が終わってないんだ。朝礼までの十五分に懸けるよ。」

「えー! それはヤバイね、いくら君でも練習どころじゃないんじゃない?」

僕は今度は冷や汗をかく。いきなり矛盾を晒してしまった。

「まぁ、平気平気! 宿題なんかよりもボールと過ごす方が幸せー!」

「あははっ。何それー。じゃあね! 拾ってくれてありがとう!」

「うん! 頑張って〜。」

それで彼女との会話は終わる。中学二年生の二学期なったから、もうこのタイミングで僕をからかう先輩はいない。たったそれだけなのに、僕は満ち足りてしまう。

スリーポイントを打ってみるけど入ることはない。カーテンの向こうにばかり気をとられ、過剰な自意識を抱きながら、成功率がそこそこの距離からのジャンプシュートばかりを繰り返す。次にピン球を拾う頃にはもう他の部員も集まってきてしまっていた。

朝練が終わり、部室で粘りながら数学の問題集を片付ける。今日は頭がよく働く。これなら抜き打ちテストがあっても一位を取れるだろう。笑顔で宿題を進める。スラスラ解けてしまい、教室にも割と余裕を持って着いてしまった。

久しぶりの雰囲気を感じながら教室に入る。しばらく聞いていなかった声が四方から聞こえる。そして僕は、夏休み前に楽しそうに遊びに行く予定を立てていた男女グループを見つける。以前より人数も増え、一層打ち解けたようだ。僕はそこに彼女の姿を見つける。こういう時の頭の回転は速い。

抜き打ちテストが行われることは無く、文化祭や体育祭が待ち構える二学期が始まった。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかすると何かの物語に繋がっていくのかな?だとしたらおもしろくなりそう!って感想です。 処女作との事ですが、是非続きも読んでみたいと思っちゃいました。
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