第162話 空から降り来たる その4
モフモフ達をなだめすかして前進する。
とにかく、ゴーレムが出てくること出てくること。
さらには、壁から天井から、飛び道具を放つ仕掛けが出現、俺達の進行の邪魔をしてくる。
これは片っ端から、アルディとフランメが潰した。
アルディが反射し、フランメが粉砕する。
『いい腕だ、相棒』
「お前が信頼できるからな」
テイマーである俺よりも、強い信頼関係を築いているような気がする。
ふーむ、俺が引退することになったら、アルディにフランメを預けるか。
「オースさんっ」
クルミに呼ばれてハッと我に返る。
いかんいかん、別のことを考えている場合ではなかった。
俺を呼んだ彼女は、ちょっと頬を赤くしている。
まだ慣れないけど、その分、破壊力があるよな。
お陰で正気になった。
俺はブランが打ち漏らした小型ゴーレムを、ショートソードで迎撃する。
刃がまともに通らないが、それは別に問題ではない。
ゴーレムの駆動部と見られるところに剣を突き刺し、動きを阻害しながら隙間に炸裂弾を詰めていく。
「それっ!!」
ショートソードを抜きながら、炸裂弾を強く切りつけた。
それと同時に、俺はゴーレムの胴体を蹴りながら離れている。
一瞬の後、ゴーレムが関節部分から爆発した。
こうして至近距離で、炸裂弾や炎晶石の効果を発揮させる方法だって身につけている。
死角は無いぞ。
横では、クルミがカレンと並んで、連続射撃でゴーレムを仕留めるところだった。
アリサの神聖魔法が通じるらしく、それを受けるとゴーレムの動きが鈍くなる。
ここに、クルミが炎晶石と氷晶石を立て続けに投げる。
もろくなったところを、カレンの銃が撃ち抜くというわけだ。
ナイスコンビネーション。
ちなみに、今のローズはカレンの肩の上。
お陰で彼女のコントロールでも、銃弾は百発百中だ。
改めて、ローズが偶然の要素を支配するモンスターだということが分かる。
既に、俺達に敵は無い。
恐らく今相手にしているゴーレムの集団は、どれもがバジリスクやコカトリスを上回る恐るべき敵だ。
だが、既に対策が出来上がっていて、こちらの戦力は万全。
負ける理由がない。
次から次に生み出され、俺達の前方から後方から襲いかかるが、倒しながら進む俺達の速度が早すぎるらしく、後方のゴーレムは追いついてこれていないのだ。
『警告する。速やかに停止せよ。速やかに停止せよ。さもなくば排除をする。排除をする。停止せよ。停止せよ』
船が発する言葉が、さっきから響き続けているが……。
「それで止まるバカがどこにいるんだ。そもそも、話し合う気も全く無かったじゃないか。だから俺達は、この世界のためにお前を排除する」
『停止せよ。停止せよ。内部工場にて防衛ユニットの生産……間に合わず……。停止、停止、排除、排除……ピガー』
『あー、バグった』
ドレが半笑いで呟く。
『ご主人、己らの快進撃は計算外だったようだ。このままの勢いで潰すぞ』
「もちろん!」
ついに、俺達の目の前めがけて壁がせり出してきた。
物理的に道を閉ざそうというのだろう。
だが、船は忘れたのだろうか?
俺達は外壁をぶち抜いて侵入してきたのだが。
「ブラン! アルディ! 頼む!」
『わふーん!!』
「任せろっ!!」
アルディの斬撃で、せり出してきた壁はズタズタにされ、そこをブランの前足が一撃でぶち割る。
「よし、クリア! どんどん行くぞ!」
今度は前方から、光り輝く網のようなものが迫ってきた。
ふむ、これはひょっとして。
『ご主人、侵入者を切り裂く光の網にゃ』
「だと思った。でも、それなら発射口があるだろ?」
俺がポーチから取り出すのは、トリモチ弾だ。
しかもこれは、粘着力こそそこそこだが……火山の放つ高熱に耐える、魔法のトリモチ。反面、冷気に弱くて、たった十度くらいの温度でカチコチになって外れる。
まあ、言うなれば不良品だな。
だが、ああいう光の刃って熱いものじゃないか?
今までの、船やゴーレムとの戦闘から、俺は学んでいた。
「クルミ! あの光が出てる辺りの壁を狙って、トリモチ連打!」
「はいです!! いっくですよー!!」
俺とクルミが並んで、トリモチ弾を猛烈な速度で射出していく。
どうやら、壁面の内側に、あの光を発する何者かがおり、それがこちらに迫ってきているようだった。
ダンジョンなら、通路や部屋そのものに擬態するフロアイミテーターというモンスターがいる。
似たようなものだろう。
このトリモチは、そういうモンスター対策でもある。
ぴしゃっ! ぱしゃっ!
トリモチが命中したところから、光が発せられなくなる。
これを繰り返すうちに、どんどん光は消えていき……。
網がスカスカになった。
「ほい、これで楽に通過できるな」
「いやあ、お見事! リーダーの戦い方はクレバーだよなあ」
「状況の原因が分かれば、解決するのに腕力はいらなかったりするからね」
「な、なんですねこの人達。ドン引きしますねーっ」
カレンは今更なことを言っている。
「ほらほら、カレンもさっさと進みますわよー! この奥に、さっきから生意気な事を言ってる奴がいますわよ!! とっちめてやらなくちゃですわ!」
『このモフモフ好き女、船のメインコンピューターが自分の信じてる神様に近いものだって分かってないにゃ……?』
「分かってますわよ。でも、神様でないならば敵でしょう? 神の敵は……」
にっこり笑ってメイスを構えるアリサ。
このメイス、展開してフレイルになるんだよな……。
カレン以外のメンツもやる気十分。唯一逃げたがっているカレンも、逃げ場なんかない。
何も問題はなし、というやつだ。
さあ、船の中枢をやっつけに行こう。
後は確か……動力炉? とか言うのを攻撃しないようにすればいいんだったな。
モフライダーズの攻撃は、あまりにも無体すぎるのだった!
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