第四十三話︎ 始まり
「ワンズさん、頼みがある。」
単刀直入に面会者へと告げる。
その眼に迷いも、以前までの鋭さも無い。
「分かってるのかい空真くん。あと数日もしたら私も責を問われる。私たちのような組織に所属している能力者は安易に『世界改変』を使ってはいけないの。恐らく私の立場も無くなるでしょう。そのような私にできる事は当然限りがあるわ。」
「ああ・・・。俺は凄く無理を頼んでしまう。それであなたの身に何が降り掛かるかかも計り知れない。だけど・・・・、だけどやっと何かへと進んでいる気がするんだ。それを俺自身で潰したくない。」
「そうねぇ。その『頼み』によるねぇ。」
「此処から出してほしい。」
「今すぐかい?もう少し、時間を待てば自然と出れる措置ではあるんだよ?」
「この『檻』から出ても、たぶん俺はまた別の『檻』・・・、『柵』の中で生きる事になるんだと思う。それじゃあ何も変わらない。答えは『外側』にあるんだと思うんだ。」
「・・・ふふ。少しは道が見えてきたようだね。」
真剣な話の合間とは思えないとても朗らかな微笑み。
この人は怒りもしない。だからといって捨て置きもしない。そんな優しさを感じさせた。
「いや、見えてなんか無いさ。ただ、進み続けたい。そう思ったんだ。」
「そうかい。・・・そうかい。」
噛み締めるようにワンズは相槌を打つ。だがほんの僅かに手が動いたのを今の空真は見逃さない。
ゴトン。轟音に満たない重量の音、まるでそっと荷物でも置いたように『対能力珪素伝達壁』に丸穴を落とした。
「中東に行きなさい。あそこの支部の名前を出せば通れる。あそこはゴタ付いているからねぇ、きっと機関の人間は通れるよ。」
「すまない・・・。」
「私に出来るのはここまで。これ以上は空真くん、君の目で、心で見定めて選択しなさい。」
「・・・すまな・・・・、いや、ありがとう。」
微笑みながらワンズは『檻』を後にする。
ワンズは未来への希望を胸に、空真は未来への前身を心に。
2人はこの場を後にした。
*
「良いんですか?」
廊下に佇む少女。ツインテールは『魔女』の証。
西洋の黒歴史の中心にいた歴史の被害者。
「クラリッサ、あなたも此処を発つなら今よ。」
「私の帰る場所はココだけですから・・・。」
「私のことを少しでも考えているなら止めなさい。あなたは苦しんだの。これ以上茨の道を進むことは無いわ。」
「それでも、私はワンズ様に付いていきます。」
凛々しく、それでいて美しく背を伸ばす。
「そうかいそうかい・・・。じゃあ私も、まだ『彼ら』には負けられないねぇ。」
「ええ、『世界平和機関』は決して引きません。」
不死者2人。
彼女らは国連の国際司法裁判所による特例措置尋問を受けることとなる。
『司法』等と銘打ってあるが事実は違う。
行われるのは権力者による吊し上げである。




