第三十五話 『植物統治』VS『圧縮解放』・中
奇しくも両者は似た能力者だった。
そう、『リソースが無限』という点で。
周囲の気体全てが武器となる『爆弾屋』。対してクラリッサは周囲の植物全てが力となる。
「・・き、気圧で空気濃度を弄ったわね・・・?」
「ご明察!まァ、普通なら即、気を失って天国行き────なんだけどねェ。これでも膝を付かないとなると少し困ったなァ・・・。」
わざとらしいしかめっ面を披露する『爆弾屋』。
「あんた、忘れてない?今、この植物の檻はあたしの『世界改変』による指定空間そのもの。だから────。」
「─────だからこっちが有利だろ?実際はそうでもないかもよ?俺がちょっと応用使ったらフラフラだしさッ!」
「この言葉を言うのは二度目ね。あんた────。」
言葉がスイッチであったかのようにクラリッサが動く。
弾丸のように一直線に跳ねたその様に酸欠によりダメージなど微塵も感じられない。
それどころか先ほどより────。
「(強化されてるッ!?)」
ルーカスの驚愕の最中、目の前の猪突を捌く算段を巡らせる。
「(避けるかァ?・・・だるいな。それにこの檻、もとい『世界改変』の効果が分かんねェ。ヘタに外周の植物に近付くべきじゃアない。なら────!!)」
『気圧による壁』。それを利用し往なすか防ぐという方法にでた。
これはクラリッサ相手には最も愚策である。
近距離で振りかぶられる拳。振りかぶる直前見えたのは筋肉の異常とも言える膨張と収束。
「────舐めすぎよ。」
筋繊維がぎりぎりまでに圧縮された腕が『気圧の壁』とぶつかる。
凡そ人間の体由来の音とは思えない轟音。爆撃音に近いそれを防げるはずもない。
「マズイ」と『爆弾屋』は感じる、が、それも手遅れである。
幾層にも芸術的なまでに空気が折り重なった壁は霧散し、その衝撃だけを『爆弾屋』へ残す。
衝撃のままに吹き飛ぶが『檻』を手前に停止する。いや、停止させた、である。
「・・クソッ!・・・・・・プッ・・・・。」
喉の奥から湧き出る血を不愉快に吐き捨てる。
骨、さらには内臓までも損傷している可能性がある危機的状況。それでも彼は『嬉々』として『冷静』だった。
「・・・ハァ・・ガァ・・・・。お前、植物使うんじゃねェのかよ・・・。」
「使ってるわよ?正確には植物から分けてもらってるけど。」
淡泊な返答。だがルーカスはこれだけで答え合わせには十分だった。
「・・そうか。植物とその生命エネルギー自体も操作対象なワケだ・・・。」
「そうよ。それでこの『世界改変』でその上限を一時的に廃止している。分かる?あんたは今、『無限に湧き出る大自然そのもの』を相手にしているの。」
絶望的なまでの物量の差。
空気は膨大でこそあるが地上の総量に限りがある。しかし、『命』は育み続ければ悠久に続く。
その意味を咀嚼し、絶望するところだが彼はその逆。歓喜した。
「あァ・・。おもしれェ。」
動物的直観であろうか。クラリッサは即座に間合いに入る。
「────圧縮解放・真空弾頭!」
能力の発動宣言と共に肉体がズタズタに惨たらしく抉れていく。
クラリッサは驚く。身体に起こった異常に対してでは無い。『爆弾屋』の使った不可視の能力に対してである。
この植物の檻はクラリッサの手の平。ここで何が起こっても観測できる────はずだった。
「(感知できない攻撃────!?)」
「やーーーっと驚いた顔見せたなァ。」
『爆弾屋』は圧力を操作する。ならば今のは?空気の変動すらも感じないのはなぜか?何の圧力を?
疑問だけが滔々と浮かび上がる。
「じゃア再開しようぜ。────デスマッチをよォ。」




