第二十八話 Outer SIX・下
自身を中心に範囲内全てのの物理法則を書き換える現実離れした能力現象、『世界改変』。
先日のフランスで起こった『解体屋』による事象ですら各国の観測台は混乱を極めていた。が、しかし、今現在起こってる事象はそれを凌駕する。
『世界改変』の複数同時事象。
『世界改変』を扱える程の能力者が一つの場所に集まっている。それ自体が危険ですらあるのにそれが戦闘行っているとなると周辺地域への影響は図り知れない。
これを踏まえた上でワンズは発動する。そうしなければならない程の危険で異質な存在であったのだ、『処刑屋』は。
「────────『万奬永靈巡』。」
万象を昇華するワンズの妙技が定まり、展開される。
全てがワンズの糧と成るこの空間で『処刑屋』はただ────────。
────────最高の笑みを浮かべていた。
*
面会、というより“謁見”という表現が正しいのだろう。
そう空真は目の前の人物が座り偉ぶる空間を見て思った。『動く家具』達に案内された場所は玉座がある客間。
明らかに上座への贔屓が過ぎるその場所に居た女に傅く家具達。比喩では無い。身体を折り曲げ、地に目を伏せ、忠誠の証を体現させているのだ。
「ソフィアさん。お久しぶり。」
ソフィアと呼ばれた家具を従えた女性は心底不愉快そうな顔をクラリッサに向ける。
「早く要件を言え。どうせ『大虚け者』に言われてきたのであろう?」
反目の眼差しで睨むが、クラリッサは慣れた素振りで会話を続ける。
「その通りなんですよね・・・ははは・・・。じゃあ色々省いて話すと“この子”、どう思います。」
「塵芥だ。」
空真に向いた反目の視線は即答した。
「なっ・・・!?」
「まぁまぁ・・。じゃあ空真、ちょっと『能力』、使ってくれない?『空間視覚』。」
「・・・分かった。」
『視覚』を展開する。周囲に平伏す『家具』達だけじゃなく部屋の外、この宮殿内の様々な『家具』たち。それらの命を確かに感じていると──────。
「止めろ。」
ソフィアは不愉快そうな顔から更に眉間に皺を増やし空真の『能力』を止めさせる。いや、止めざるを得なかった。
周囲の『家具』達の明確な殺意。それはソフィアの命令によって殺意を向けているに過ぎないのだが、その事を知らない空真にとっては危険水域を遥かに超えた状況に思えた。
「な、なにが・・・!?」
「黙れ。それは儂の台詞だ。小僧、その力はいつ開花した?」
「・・・どういう意味だ。」
「無自覚・・・か。クラリッサ、なんだこの小僧は。」
「久遠博士のお子さん────で分かるかしら。」
「・・・・。」
二人の会話の“意図”が分からないレイと空真。レイに至ってはソフィアの圧に怯んで萎縮して冷静とは言えない状態である。
「小僧。」
視線が再度、空真に向けられる。
「お前その能力、どういう能力か口で説明してみろ。」
「・・・なぜだ?それが何か今この場と関係するのか?」
「お願い。確認が必要なの。」
クラリッサにも催され、理由が不明な点に釈然としないまま口を開ける。
「『周囲の空間を知覚できる』と『短距離間の空間移動』・・だが。」
「ふむ・・・。」
何か考えに耽るソフィア。スリットが多く前衛的なドレスを揺らしながら首を捻る。
「なるほど。」
そうして考えが結論に達したようだ。真っ直ぐ空真を見据え、言葉を続ける。
「おぬしはそう、思い込んでいるのだな。」
「は?」と言葉に出したかったが空真は口を開けるのが精一杯であった。
言葉の意味が咀嚼できずにいたのだ。
「つまり、『本質は別の能力である』と。ワンズ様の見解と同じですね。」
「あやつと同じ考えというのは癪ではあるが、この小僧の能力は間違いなく有象無象の空間干渉能力とは違う。」
「すまない。クラリッサ、いやイシュニガラブさんも。どういう事か教えたくれないか?」
「ふむ、人に講釈するの久々だな。まぁ良い。低能に分かるように説明してやろう。」
そう言うと説明をソフィアは始めた。
空真の真実の一端とも言える話を。




