第二十四話 敵と敵
「報告していない事はあるかね?」
国連事務長官兼WOO第三者委員長。そんな大層大層な肩書きを持つ男はWOO特別責任者に悪態の限りを示す。
「申し訳ありません。今回の件は支部長である私の失態です。」
「君はいいよ。中間管理職叩いて謝罪させても何も得るものは無い。」
謝罪なんてしていない。これは俺なりの処世術として便宜上頭を下げてやってるだけだ。なによりワンズ様をこれ以上コイツに・・・!
「ローラント、目に感情が出てるよ。」
「・・・ふぅ。君の配下は社会教育ができてない者が多いな。」
「私自身が到らないからねぇ・・・。長官にご迷惑おかけします。報告も現状可能なのは先程の内容が全てでございます。」
「減らず口を。」
偉そうな男は煙を吐き出し睨見つけてくる。酷く不愉快だ。何でこんな男が人の上に、なんなら世間から支持を得ているか理解に苦しむ。
「詰まるところ、だ。『掃除屋』の狙いを幾つか絞れはしているが確実と言える『主目的』は未だ分からない、と。」
「そうなります。」
「『国連』としてもお前のような化け物共を飼うのはめんどうで嫌だが世界の害虫に対抗するには『化け物』も必要か。1年だ、それまでに目的だけでもハッキリさせろよ?ワンズ。」
「精進いたします。」
帰り際にも頭を下げるワンズ様を見て男への怒りが止めどなく込み上げる。こんな奴に・・・。
「すまないねぇ・・・。辛かったろう?」
「いえ、俗人にどう思われようと特には。自身としてはワンズ様への悪態の方がカンに障ります。それよりも何故言わなかったのですか?」
「・・・・。」
「『解体屋』との戦闘、その時の現象・・・、あれは久遠博士が提唱していた『人類特異点』です。それが───。」
俺がそれを言いかけたところでワンズ様の視線の先に気付いた。
カメラだ。廊下に死角なく置かれた監視カメラ。
カメラを気にして発言が・・・?聞かれてはマズイ内容・・・。それも最上層部にすら報告できない?つまり────。
───────敵は内部にもいるのか?
*
そんな様子を伺う者が二人。
「映像から唇を読むに、『人類特異点』の能力を発現した者がいる・・・と。」
「さすが大統領!多芸ですねェッ。」
向かい合うように座る『大統領』と呼ばれた男と『爆弾屋』。
「それにしても『掃除屋』の一対一での直接交渉に応じてくれるとは!アメリカの大統領さんも随分とリスキーですねェ。」
『爆弾屋』は片手で帽子を外し、「やれやれ」と軽薄な仕草を示す。
薄ら笑いを見せる『爆弾屋』を他所に沈黙する『大統領』。
「あァーーら?もしかしてキレちゃった?これはこれはご無礼────。」
「黙りなさい三下。」
『爆弾屋』の言葉を遮り睨む。両者の間に生まれる水面下の攻防。
「あたしはね、いや、あたしたちはね。『掃除屋』を利用し、ギリギリのところで『討伐』していない。わかってるでしょう?あんた達、『あたしら』に生かされてるの。」
「痛いところ突くねェ・・・。総長の言う通り食えないオカマだ。」
「煮るなら男、焼くなら女、食えぬわオカマよ。覚えておきなさい。」
「そうかいそうかい」と冗談に笑う『爆弾屋』。
直後。その眼から笑いの感情が消え、殺意が漏れ出す。
表裏一体の狂気と殺意。これが『掃除屋』の本分である。
「それなら精々、飼い犬に食い尽くされないようにな・・・ッ!」
放たれた『言葉』と『殺意』。何が気に障ったのか。それを考えるのは“無駄”というもの。
この条理が通じない性質こそが『掃除屋』が一切捕まらず、テロ行為を請け負い続けられるほどの集団である証拠と言える。
「じゃアな。今後の件は総長に聞いといてやるよ。」
『運送屋』の能力で虚空の渦へと消えていく。
ピリピリとした空気が解け、机の下で構えた臨戦態勢を解く。
頭の熱が抜けきった頃、一本の電話を繋いだ。
「・・・あたしよ、ラルジェリックよ。次の会議の準備と『お客様』への招待を進めてちょうだい。・・・わかった?手早くね。」
通話を切り一つ溜息を付く大統領。
もしも。もしもだ。あの場で対立していたら間違いなく『運送屋』により『処刑屋』が目の前に現れたでしょうね・・・。
『運送屋』は兎も角とし『爆弾屋』はなんとでもなった。だけど、『処刑屋』。アレはダメね。今の世界にアレをどうにかできる『能力者』がいるとも思えないわ。そうね────────。
「WOOと潰し合わせられないかしら。」
幾千の政敵を潰したオカマは、『誰か』に負けない下劣な笑みを浮かべる。
『WOO』、『掃除屋』、『各国専門機関』。
それぞれが一つの点に繋がろうとしていた────。




