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第二十話 『解体屋アーシャ』・上

※誤字脱字等はご報告いただければ幸いです。


昨晩から立て続けに起こる『不審死』にローラントは考えを巡らせていた。



―――偶然。そんな言葉で片づける案件では無いのは明らかだ。『確実な意図』と『その先の目的』があるはず・・・。



共通点は被害者が全て()()()()()()()()()()()されたいること。

この時点でのローラントの考えは“二つ”あった。

一つ、『生きながらに一瞬で解体』という前提が間違いで犯人は現場で殺害と解体を順に行っている。

二つ、人を瞬時に解体可能なハイクラスの『能力者』。


「どちらにしても危険だが後者の場合で考えるか。」


夜明けを前にしてコールが届きっぱなしだった電話が止む。

「夜間犯行」「連続性」「国際法会議前日」。今わかっているこの三つの情報を精査し考えに耽る。

そして幾分かした頃、警備内容の緊急変更を伝えた。





―――フランス パリ 外務省管轄 外交会議会場周辺某所


空真を含め数名の警備班は周囲の警備から飲食物搬入の車両入口の警備となった。

インカムから「β(ベータ)異常なし、どうぞ。」「λ(ガンマ)も異常なし、どうぞ。」と定期報告が飛び交う。

空真のポイントでも当然異常など無い。

こういった警備が厚い催しの場合、搬入車両というのはスケジュールによって厳重に管理されておりそれ以外の車両というのはまず有り得ない。当然、不審車両が来ようものならもっと前の警備に引っかかる。余程のことがない限り空真のいる場所で異常など起こり得ないのだ。


「緊張するか?」


班の年長者であり班長を務めるハウラーが声をかける。


「警備は初めてだから少々・・・。」


「けっこうけっこう!警備は気を引き締めてこそだからな。でも緊張してるところ悪いが、そろそろ車両搬入がある。能力でチェック頼むな。」


その言葉から数間置いてトラックの駆動音が微かに地を揺らす。

視界に入ったところで空真が『空間視覚』を使い内容物を隅々まで確認していく。


入口に着き、搭乗者の身分確認をしていたところで空真はハウラーに「貨物に異常共に異物一切ありません。」と耳打ちする。

その報告を聞きつつハウラーはトラックの“異常”に気付く。


「待て。助手席のお前、下りろ。」


その言葉に従い抵抗する素振りもなく助手席の者が俯いたまま下りてくる。


「動くなよ。おい、もう一度IDを確認しろ。そしてお前は手をあげてゆっくりと顔をあげろ。」


班長であるハウラーの命令のままに班員が動く。取り囲むように動きながらも意図を察し全員が腰の拳銃に手を掛けた。

一人が首に掛けられたIDを手に取った。その時――――。


“最悪のラッパ”は鳴り響く。


手に取った班員が真っ二つに()()()()

直後だった。顔をこちらに見せた“それ”はミルクのように白い人物。


「お前、女―――!」


ハウラーの言葉を聞き終える前に捉えらぬ速さで距離を詰める女。

ハウラーの懐に飛び込んだかと思うと、そっと()()()

するとどうだろう。まるでクラッカーでも砕くように二つに砕けた。

さっきまで班長だった者は、ジャムでも溢れているかのように血を垂らしながら肉片に成り果てる。


女は次の行動に移るまでの一瞬の攻防。『空間視覚』で相手の筋肉を機微を感知するがそれを全て視ていてはあの速度に対処できないと判断する空真。

結果、ギリギリ、紙一重のところで避け距離を取ることができた。相手の足首に絞り最低限の能力を使用し、『相手の視線』『重心の動き』を自分の目で判断したことで刹那のタイミングを掴んだ。


「い、異常発生!異常発生!!δ(デルタ)にて襲撃発生!!!」


生き残った者が各ポイントに伝達する。

3秒とかからずローラントが現れ(テレポート)る。


「空真、状況を簡潔に伝えろ。憶測や推察は抜きに事実だけ言え。」


「接触したものを切断。回避にするのも困難な速度で接近。班長・班員の二名死亡。」


「・・・わかった。」


先ほどまで余裕がなかったが距離をとった今、襲撃者の顔に視点を向ける。

その顔はこの血祭を心底楽しんでいるかのように、口角を上げ笑っていた。


「あーあー。これじゃ仕事失敗じゃーん!――――なーんてね。」


女はニマニマと笑い喋り続ける。


「それにめんどくさい支部長さんまで出しゃばって来てー。アーシャ困っちゃうー!」


目の前で二人を数秒で殺した女のそのありふれた軽口に、空真は嫌悪感を止められなかった。


「あ!君、空真くん?この前はごめんねー?ケビンはまだまだ新人で全然楽しくなかったよね?大丈夫!もう()()()()いないからー!」


「楽しい?お前―――!」


空真が心の激情を零れそうになったところをローラントが制止する。


「今回の会議、それの妨害か。国際法の改定なぞお前ら『掃除屋』にはメリットもデメリットも無いだろう?おいお前、()()()()()()()()?」


そう。『掃除屋』はテロ集団ではあるがその行動に対して声明も大儀も掲げていない。つまり彼らにメリットが無い場合そこには“依頼した者”がいる。


「クライアントに関しては喋れませーん。口が裂けても、ね?ヒヒヒ、試しに裂けるかやってみるー?」


上がり切った口角は角度さらに鋭くさせる。彼女もまた『掃除屋』。混乱と狂気を完璧に楽しんでいる。


「答えなぞ期待していない。今の時間で包囲が進んだ、これで“詰み”だ。」


「あーあーあー。支部長さんそれは悪手だよー。」


真顔で落胆する素振りをわざとらしく見せる。


「それはね?あたしに『ご馳走並べてくれてる』のと同じだよ?ふふ、ぜーーーーーんぶショッキングな絵面に変えてあげる!」


「(本当に包囲を・・・?)」


「(嘘だ。相手の能力がキャパオーバーしやすいならとハッタリを掛けただけだ。)」


ローラントの真意を聞き、この後起こるであろう事空真は予期する。



――――この二人で捕獲しなければならない。



「内緒話終わったー?じゃあ行くよ?『解体屋アーシャ』がこの会議、文字通り()()()()()()()()()()!!」


最悪は“災厄”に変化しつつあった――――。


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