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04-1 宿主、新人坊主な冒険者

前後編の前編です。

 今日の儲けも少ないな。こればかりは仕方がない。パーティーメンバーの装備強化は戦力の安定に繋がる。新人の僕が後回しなのも分かる。


 でも、装備の調整や作製依頼に時間がかかり過ぎだ。明日にでも聞こう。今の狩り場は本当に危ない。最近はミスも目立っている。僕が危うく仲間の魔法に当たるところだった。


 装備が整うまで、ギルドで指導を受けてコンビネーションを見直すのもいいだろう。収入は一時我慢して成長の時だと説こう。


 よし、明日に備えて寝よう。



  *  *  *



 展開は読めてたよね。この度の宿主とは出会ってまだ10日だ。サクッと転生、サクッと陳列され、サクッと売れたよ。


 この今回の宿主である新人坊主は、まんまと屑の先輩の餌になりました。装備更新なんて嘘。夜の街へと溶けていったよ。って捨て台詞と共に新人坊主にクリーチャーを擦り付けて逃げてった。


 死人に口なし。


 見事にバカにされて、クリーチャーと戦う姿をしこたま笑って、逃げてった。見事な屑の冒険者だったよ。んで、今、新人坊主は死闘中。


「僕は弱きを守る冒険者になるんだ! この程度……うぐっ!」


 ゴブリンが4匹。内1匹がモヒカンゴブリン。このモヒカン、新人殺しで有名なクリーチャーだ。ゴブリンと舐めてかかって返り討ち。今も木の棒で殴打されたよ。さて、もう出番か。


(新人坊主。力がいるか?)


「うっ! 何だ! 悪魔の囁きか!?」


(先日買っただろ? お前の中に居るスライムだ)


「スライムが悪魔? うおっ! 危ねっ!」


(いや、宿主が死ぬと僕も死ぬだろ? 生まれたばかりで死にたくはない。協力していいか?)


「くっ! 今は甘い言葉に乗るしかないか! 頼む!」


 了解を貰ったので、セット、『称号「勇者」』、『魔法「火・水・氷」』、『脚力強化』。これで動けるだろう。魔法も覚えてないようだから魔力は余ってる。さて、説明を……


「勇……者……? スライムが勇者を授けるのか!? いや、今は目の前の敵だ! 行くぞ!」


 なんと! 説明もなく称号を理解したやつは初めてだ。他の2つのギフトには反応がないから、相性か? 元々が剣術のギフト持ちだが、それだけでは足りないだろう。天性の素質だろうか?


「見える! 動ける! 体が軽い! 使えない魔法すら今なら……『ライトニングブレード』!」


 ほう。モヒカンゴブリンを一撃か。さっきの苦戦が嘘のようだな。説明要らずで楽だが、うん、僕は説明好きだったみたいだ。



  ○  ○  ○



「悪事の栄えた試しなし!」


 酒臭い屑の冒険者達が新人坊主を弔うためと冒険者ギルドで飲んでいたが、モヒカンゴブリンを含む討伐証明と逃げ台詞を、新人坊主が冒険者ギルドで大々的に説いた。


 冒険者ギルドも怪しんでいた様子で、冒険者ギルドでは兵士立ち会いの元で面接(拷問)が行われるそうだ。同様な事案が過去に3回もあれば怪しいだろうに。犠牲となった3人の新人冒険者に黙祷。


「えっ!? ちょ? 待って!」


 始まったのはパーティー勧誘合戦。新人とはいえ、モヒカンゴブリンと他3匹を相手して帰ってきたんだ。伸び代に期待大だよ。

 更に言えば素直で実直で誠実。正しきを大々的に説く真っ直ぐな性格に関心も集まる。その心根に実力派の中堅冒険者ですら勧誘している。


(好きにしろ。だが、僕は個人でないと力を貸さない。目立つのは面白くない)


「スライム!」


「「「スライム?」」」


 場が一斉に疑問符だ。ごく自然に老若男女問わず尻に仕込んでいるスライムをここで叫ぶのだ。どうした、って心配されてるぞ。


「い、いえ、先日買ったスライムが気になって」


「「「あるある」」」


 直腸って落ち着くから暴れないけどな。行儀の悪いスライムもいるのか。この異世界ではあるある話らしい。


「お話はありがたいですが、少し考えさせてください。今回の一件で自分を見つめ直そうと思います」


 各々も強引な勧誘はせず、いつでも大歓迎とだけ言って去っていった。さっぱりしたのも多いのが冒険者である。脳筋も多いな。娘っ子は脳筋は信じていた。裏表がない、言葉通りだったからな。


「娘っ子?」


(いい女だ。独り言に見えたくなかったら場所を変えろ)


「はっ。 ……おう(ボソッ)」



  ○  ○  ○



 安宿は別の安宿へと引っ越した。新人坊主は雑魚寝の素泊まりから個室へと移動したのだ。僕対策だな。独り言は病気に見えるし、新人坊主は素直に口に出やすい。自覚はあるようだ。


(端的に言う。スライムの寿命は1年。僕とソロで鍛えるか? 良さ気なパーティーも居たし仲間を組み直すか? あの中堅冒険者は本心で勧誘していたとは付け加えよう)


「ん? 人の心が分かるのか?」


(娘っ子から複写したギフトだ。乗った感情を感じるし乗せられる。僕の会話はこの意思疎通のギフトを使っている)


「そうか。いや、スライム。僕はスライムと強くなる。勇者に憧れがあるのは嘘じゃないが、スライムはパーティーを組むとどうするんだ?」


(ゆっくりと今世を眺めて過ごすさ。なに、暇なときにでも話し相手になるくらいの付き合いになるだけだ)


 意外に心の起伏が落ち着けば、スライムってこんな人生だよなって思えてのんびりと過ごせる図太さを得たよ。結局は、手を出して見守るか、手を出さずに見守るか。どっちにしろスライム動かない。


「それは僕が許せない! 命を救ってもらって終わりとは、僕が情けないじゃないか。恩には恩を返す。スライムは何がしたい?」


 何がしたい、か。特に予定はないな。先も言った通り動かない。動かない。動かない。ああ、心の死が寿命かな。なら、いい奴には積極的に関与して、スライムライフを充実させるか。ならば。


(強制はしないが、ギフトを集めたい)


「ギフトって1人1つだろ?」


 スライムのギフトであるギフト複写を説明し、更に元人間であり、その時に得たスライム輪廻転生も説明する。複数のギフトを抱えている理由だな。なお、未だに元異世界人とは誰にも言っていない。


「何だよ! 何なんだよそれ! 人間がスライムに!? それも死を何度も繰り返してるのかよ! 何なんだよ、その不幸なギフトは!」


(感情的になるな。スライムライフも悪くない。まだ数えられる数だが救った人もいるぞ)


「……すみません。スライム……いや、スライム師匠! 今後出会う人に幸せをあげれるように、僕がギフト集めを手伝う! あっ、具体的にどうするんだ?」


(ゴブリンに興味がある。クリーチャーにもギフトはあって、死後、直ぐであれば複写可能だ。新人坊主はゴブリン退治で僕のギフトからスキルへと鍛える。僕はゴブリンからギフトを貰う。どうだ?)


「僕ばっかりが得してないか? スライム師匠には返せてないぞ」


(流したが師匠呼びは定着か? まあいい。最弱クリーチャーが生きるのには宿主が必要だ。それだけで十分にありがたい。あと、出入りすると肛門に刺激があるだろう。目覚めても知らんぞ)


「い、いや、確かにそれは。でも、目覚めないように努力する!」


 こうして冒険者修行と僕のギフトコレクションを増やす両得なプランが出来上がった。


 ゴブリンは多様だ。面白いギフトがあれば嬉しいな。

スライム歴 4年11月~


宿主のネタを募集中です。

作品紹介の説明文も募集中ですw

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