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 小夜は走っていた。あまりの上天気でまひるに月が顔をだし、やがていざなうように、夜の帳を連れてきた頃合いである。


 社の裏手は鎮守の森である。おとな達からさんざんに厳戒されていることなど、百も承知で小夜は走りに走っていた。

 なぜ厳戒されるのかといえば、当然のごとく、夜の森はおそろしいからである。


 たそがれが迫る時分だ。


 薄墨色の夜が、茜の森へやってくる。闇色の触手が、さざめく枝葉から幹へ、幹から木の葉たまる土もとへ、土もとから小夜の足へとからみつき、やがて冷気とともに森の容姿を一変させていく。

 ざわわ、と林が身震いした。まだ森の中に、薄赤い夕焼けのかけらが残っているのが、唯一の救いであった。


 どうして。


 小夜は幾度目かの疑問を、あさく呑みこんだ。

 なぜ。なぜこんなことになってしまったのだ。

 走っていると、少しずつ頭が冷えていく。冷静になると、今度は不安と恐怖が胸いっぱいに広がり、体じゅうの熱や気力を奪いはじめた。

 そうして徐々に力を失い、とうとう小夜の足が、ついに一歩も進まなくなったときだった。


 高らかなよこ笛と、涼しげな鈴の音が、茂みの奥より響きわたった。よく耳をすませば、地ひびきとまごうほどの大太鼓まで聞こえる。よく目をこらせば、あかあかと燃えるかがり火が見える。

 小夜のこころは浮上した。

 

 どこをどう走ったのか、縁日にもどってきたのだ。

 

 木の葉をけちらし、木の根を飛びこえ、かがり火のさなかに入ると、多くのひとびとが神輿のまわりを囲んでいた。たちまち安堵して小夜は叫ぶ。




「ばあちゃんっ。小夜、小夜はここだよっ」




 いったいどうしたことだろうか。

 ふり向いたひとびとは何故かみな、狐の面をつけていた。




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