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短編集  作者: タカ
幼馴染:藍×祐樹
2/6

○○○の友達の片割れ 前編

今日は日曜日。

なのに私は学校にいる。しかも、美術室に。

校庭では野球部が練習試合の準備をしている。

何故私が学校にいるかというと昨日に遡る。



昨日の昼。

私は自分の部屋にいた。

部屋で本を読んでると拓斗君から「今祐樹の家のインターホン鳴らしても誰も出なくて。今あいつと一緒だったりする?」とメールが届いた。

窓から顔を覗くと外には確かに拓斗君が祐樹の家の前にいた。

私は窓から拓斗君に話しかけた。


「拓斗君!」


拓斗君は私の声に気づいたのか私のほうに顔を向けた。


「あ、藍ちゃん」

「どうしたの?祐樹に用事?」

「うん、そうなんだ。その感じだと藍ちゃん一人見たいだね。あいつどこに行ったのか分かる?」

「多分家にいるとは思うけど。ちょっと待って。今見るから」


私は窓から体を出して祐樹の家のベランダに移った。

窓に手をかけると鍵が開いてて家には簡単に入れた。

ベッドで横になっている祐樹を確認した後先に玄関に下りて鍵を開けた。

鍵を開けると拓斗君が顔を覗かせた。


「祐樹は?」

「まだ寝てた。とりあえず起こすから上がって。私の家じゃないけど」


私はとりあえず先に祐樹の部屋に戻った。

そして、まだ寝てる祐樹の体をゆすったがまだ起きない。

そこに拓斗君が部屋に入ってきた。


「起きた?」

「まだ起きてない。仕方無い…」


私は拓斗君を部屋に待たしてまた玄関に降りてスリッパを持ってきた。

そして、祐樹の頭を力一杯叩いた。

『パーン』と心地よい音がして祐樹は目を覚ました。


「あ?」

「『あ?』じゃない!」


もう一度祐樹の頭をスリッパで叩いた。


「ッテェ!」

「目覚めた?」


私は笑顔で祐樹に話しかけた。

祐樹は私を睨んできた。


「目覚めた?じゃねぇ!痛いっつうの!」

「あんたが起きないのが悪いんでしょ」

「俺は昨日の遅くまでゲームしてたんだ!」

「それもあんたのせいでしょ」


私達のやりとりを聞いていた拓斗君がクスクス笑っているのが分かった。


「懐かしいなぁ」

「そう?」

「最近二人のやりとり見れなかったからなぁ」

「拓斗君用事があるんでしょ?だったら私部屋に戻るね」


私は窓から自分の部屋に戻った。

数時間後、机で小説を読んでいると窓から『コンコン』とノックする音が聞こえた。

そして、窓から祐樹が入ってきた。


「うぃ~す」

「拓斗君は帰ったの?」

「あぁ」


そう言って祐樹はいつものように私のベッドに横になって漫画を読み始めた。

私は小説をキリがいいところで読むのをやめて祐樹が横になっているベッドに腰掛けた。


「ねぇ」

「あ~?」

「拓斗君何の用事だったの?」

「明日の練習試合のこと」

「へぇ~。明日練習試合なんだ。でも珍しいね」

「何が?」

「普通試合前に休みってないんじゃない?」

「元々明日は練習だったんだよ。ただ、予定が変わって練習試合になっただけ」

「ふぅ~ん」


もう祐樹に聞くことがなくなったので私は棚から漫画本を取り出して読み始めた。

寝転がって漫画を読んでいた祐樹は漫画を置いて私に話しかけてきた。


「なぁ」

「何~?」


私は漫画を読みながら返事をした。


「明日試合見に来ないか?」

「え?」


祐樹からの突然の申し出に私は漫画から祐樹の顔に視線を移した。

祐樹は照れくさそうに私を見ていた。


「どうしたの?」

「いやさ、たまには見に来て欲しいなぁと思って」

「今まで言わなかったのに?」

「…いやか?」

「行ってもいいよ」

「マジ!?」

「マジ。どうせ明日暇だし。ただし、負けたら罰として何か奢ってね」

「…じゃあ、勝ったらキスしていいか?」

「は?」

「だから~、勝ったらキスしていいかって言ったんだ!」


祐樹は半ばやけくそに叫んだ。

てっきり冗談かと思っていたが祐樹の顔を見ると冗談とは思えなかった。

数秒考えて私は答えた。


「…いいよ。勝ったらキスね」

「いよっしゃぁ!!ゼッテェ勝つ!」


祐樹は嬉しそうに笑みを浮かべた。

私はそんな祐樹を見て少し呆れてしまった。



というわけで試合を見に来たというわけだ。

何故美術室にいるのかというとグランドの周りには瀬川ファンクラブが大勢いてうるさかったので落ち着いて見れる美術室で見ることにしたのだ。

グランドでは一年の部員が練習試合の準備を始めている。

そして、試合用のユニフォームを着ている部員が外野でウォーミングアップをしている。

私はその中からすぐに祐樹がどこにいるのかが分かった。


「やっぱり好きだったんだなぁ」


今思い返せば小学校の頃から大勢の中から祐樹の姿を見つけるのは得意だった。

昔を思い出しながら私は祐樹がアップをしている姿を見つめた。

祐樹はアップの最中に周りを見渡している。

おそらく私を探してるのだろう。

『一言声をかけてくればよかったかな』と思っていると祐樹が美術室のほうに視線をやった。

私は祐樹に向かって手を振ると祐樹も手を振った。

が、拓斗君に頭を叩かれている。

『真面目にしろ』といわれているのだろう。すぐに祐樹はアップに戻った。

私はアップをしている祐樹を見てると違和感を感じた。

そして、一つため息をついた後、美術室を出てグランドに向かった。

グランドに出た私は野球部の顧問の先生を探した。

幸いなことにすぐ近くで一年の部員に何か指示を出していた。

私は先生に近づいて声をかけた。


「先生」

「ん?俺に用か?」

「はい。先生、お願いがあるんですけど」

「お願い?」

「今日祐樹先発ですか?」

「あぁ。うちのエースだからな」

「その馬鹿をマウンドに上げないでください」

「は?いきなり何を言うんだ」

「お願いします。拓斗君に今の言葉を一言一句間違えずに伝えてもらえれば分かると思います」


「藍ちゃん?」


私と先生が話してるとそこにキャプテンである拓斗君がキャッチャーのプロテクターをつけてやってきた。

スタメンを聞きにきたのかそれとも次の指示を聞きにきたのかは分からない。

が、ここに来たのは嬉しい誤算だ。

私は拓斗君にも同じようにお願いをした。


「拓斗君。悪いけどあの馬鹿をマウンドに上げないで」

「…怪我はしてないみたいだから風邪?」

「う~ん、多分そうだと思うけど一応確かめて」

「分かった。後は俺が説得するよ」

「お願いね」


私がそういうと拓斗君は頷いた。

拓斗君に顧問が聞いた。


「どういうことだ?」

「とりあえず祐樹のところに行きましょう」


二人がベンチに向かって歩き出したのを見て私は校舎に戻った。

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