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オズマ戦記  作者: 葱龍
七章 転生者大戦 最終篇
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第八十九話「最強にして最凶の敵」

「やれやれ。驚くのも無理はない。

 こいつはエタニティが発掘、再利用した古代兵器…

 その名も『ヴァルジオン』だ」


ヴァルジオン。

そう名付けられた黒い巨人の姿にコウ達は動揺を隠せずにいた。

細かな差異はあれどヴァルジオンの姿はあまりにもガンダイオーに似過ぎている。

兄弟機と言っても何らおかしくないくらいだ。

そしてそれに乗っているのが親友であったはずの正嗣だと言うのがコウには一番応えた。

友人との感動の再開のはずがまさかこんな事になるなんて…。


「おい、まさか本気で俺と戦うつもりじゃないよな?これ遊びでやるんだよな?」


「遊びだったらあんな物引っ張り出して来たりしないでしょ?

 彼、本気よ…。」


「お前に同乗している女の言う通りだ。

 俺は本気だ。本気で戦争をやっている」


「正嗣…!戦うしかないのか!?」


「そういう…事だ」


ヴァルジオンが両腕を交差させると、両肩、背中の装甲がスライドし何かの発射口の様な穴が露になる。


「…ヴァルミサイル」


露出した発射口から多量のミサイルが発射される。

敵の性能もミサイルの威力も不明な以上避けるのは賢明な判断とは言えない。


「ガンダイビームッパルスモード!!」


依然動揺を隠しきれないでいるコウの代わりにリゼルが叫ぶ。

ガンダイオーの額から光の弾丸が連続で放たれ、ミサイルを一つまた一つと撃ち落としていく。


ガンダイビームには照射ビームを発射する照射モードと断続的にビーム弾を連射するパルスモードの二種類があり、

前者は威力に特化した分攻撃範囲が狭く、後者は逆に威力は照射モードに劣るが攻撃範囲が広いと言う特性がある。


多くのミサイルを打ち落とす事には成功したが三発ほど撃ち漏らし、ガンダイオーの付近の建物と足元に着弾、爆発する。


「ミハイルさん!」


巻き起こる爆風に見知った騎士が巻き込まれていないかと言う一抹の不安に駆られコウは思わずその名を叫んだ。

だが、安否確認をする余裕など与えてくれる正嗣ではなかった!


「ブレイカーナックル」


ヴァルジオンが左腕を突き出すとその下腕が切り離され、一直線にガンダイオー目掛け突き進む。


「!?ジェットナックル!!!」


ガンダイオーも迎撃せんと右腕を突き出し下腕を射出。

空中で二つのパンチが激突する。

双方のロケット噴射の勢いは徐々に強まるが、ガンダイオーのパンチの方がわずかに押されつつある。

ヴァルジオンは突如駆け出すと自らの左腕を叩きつける様に再接続、そのままガンダイオーのパンチを押しやる様にガンダイオーに肉薄し、

更に右手でガンダイオーの顔を鷲掴みにする。


「わぁぁっ!?」


「見えないよ!!」


「くっ!!」


拘束から逃れようと左水平チョップを繰り出し続けるガンダイオーだが、

ヴァルジオンの力は緩む気配を見せない。

膝蹴りも織り交ぜてみるが結果は変わらない。


「クッソ!正嗣ゥ!お前本当に俺のこと忘れちまったのかよ!!忘れたなら忘れたで、なんでそっち側にいるんだ!!」


「情に訴えてどうにかなるのは無理強いさせられてる相手だけで…!?待ってコウ!」


何か言いかけてツバキが言葉を詰まらせた。


「なんだよ!」


「思いついた…この状況を打開する方法!」


そう言うとツバキは思い切りフットペダルを踏み込んだ。

ガンダイオーが右足を上げヴァルジオンの背中を蹴りつける。

しかしヴァルジオンはわずかに身じろぎするだけだ。


「さっきと一緒じゃないか!!」


「本領は…ここからよ!!」


ツバキがコンソールパネルをタッチすると、ガンダイオーの右足からミサイルが発射される。

至近距離から放たれたミサイルはヴァルジオンの背中で立て続けに爆発を起こし、

ヴァルジオンは溜まらず前のめりに倒れ込む。

ガンダイオーはすかさず近づくヴァルジオンの腹部に左ボディブローを叩きつけその黒い巨体を空高く吹き飛ばした。


空中で身を翻し体勢を整えるヴァルジオン。

そしてゆっくりと立ち上がりながらヴァルジオンを見上げるガンダイオー。

戦いは、まだ始まったばかりだ。



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一方の壁が跡形もなく吹き飛び、城下を舞台に激突する2体の巨人の姿が垣間見える。

群がるゾンビ兵どもを一掃する為雷属性と炎属性の魔法を応用し疑似的な光魔法を放っては見たが、威力がありすぎた。

敵の拠点を攻略する為ならともかく拠点を守るのが目的でこれでは本末転倒も良いところだ。


「これは…禁じ手として封印すべきですね」


「そんな事、考えてる暇あるの?」


「…そう、でしたね。まずはあなたを倒さないと」


モアザが両手を広げるとその両掌に燈色の魔力エネルギー体が出現。

それを胸の前で混ぜ合わせるとバレーボール大の溶岩の塊となり、ゾンビ兵の群れ目掛け叩きつける。

溶岩塊はゾンビ兵を一人焼き尽くすと炸裂音と共に四方に溶岩を飛び散らせた。

溶岩を受け次々と焼かれていくゾンビ兵たち。だが!


モアザは背中に激痛が走るのを感じた。

視線を下すと、自分の腹から剣先が突き出しているのが見えた。

振り向くと、そこにゾンビ兵の姿はなく、ただ腕だけが剣を握っていた。


「貴方もしかして、バラバラに刻めばゾンビ達は元の死体に戻ると思ってません?」


「っ…!ごふっ……!!」


「五体満足で無くとも、腕や頭、肉体が少しでも残っていれば操れるんですよ。僕の能力はね」


ダメ押しと言わんばかりにモアザの背中に無数の剣が突き刺される。

多量の血を吐き出しながら、モアザは自分の命がもう長くは保たない事を悟った。


死の間際脳裏をよぎったのは二人の娘シャインとシャッテの事だった。

気づけば最後の最後まで親子としての時間を過ごす事が出来なかった。

こんな事になるのなら、送り届ける前に一度二人を抱きしめてあげればよかった…。

後悔してもし足りない。それどころか自分の人生の殆どが後悔で溢れていた。


「これから死にゆく気分はいかがですかな?」


自分に向けられたであろう根倉の一言でモアザは我に返った。

そうだ。私の今やるべき事は後悔ではない…。

今やるべきは、こいつを倒す事…!


「灰は灰に…塵は塵に……」


顔を伏せ何かをつぶやき始めるモアザ。


「?出血と激痛で頭がおかしくなったのでしょうか?」


「骸は土に…御魂は空に…我が身を糧に…我が敵を打ち払わん!!」


モアザは最後の力を振り絞り根倉に掴みかかると空間の歪みを生じさせ、根倉もろともその中に突っ込んでいく。

歪みの先向こうは…空!ルプシカの上空3000マルール!!



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ヴァルジオンの右回し蹴りをガンダイオーが両腕でブロックした瞬間、シャインとシャッテが空を見上げたのにコウは気が付いた。


「どうしたんだ…?」


「そっちに敵はいない筈よ。目の前の敵に集中なさい!」


明後日の方を向いているシャインとシャッテを諫めるリゼルだが、


「違う。敵じゃない…」


「お母さんが…死んじゃう……!」


その言葉にコウは眼を見開き、空を見上げた。

敵が目の前にいる事は知っている。だが見上げずにはいられなかった。


『コウさん、それに皆さん…私の声が聞こえますか?』


頭の中に声が響く。

モアザ・バルバの声だ。


「モアザさん!?」


「お母さん!!」


『私は最後の魔法を使いこの根倉と言うデストラの将校を討ちます。

 そして私自身も塵芥となって消えるでしょう…』


「そんな…どうしてさ!どうしてお母さんがそんな事…」


『私は戦いであまりに深く傷つきすぎた…。もう長くは保ちません。

 せめて最後に一言言わせてください。

 コウさん、貴方がいてくれたからこそ私は変わる事ができました。

 貴方はこの世界に必要な人。生きて、そして守ってください。この世界の平和を…』


「はい…!」


『リゼルさん、貴方はこの国の人々にとって太陽の様な存在。

 何時如何なる時も、優しさを失わないでくださいね』


「解りました…」


『ツバキさん、私の娘二人は自分で考え行動できる様になっているとは言えまだ子供。

 一人前になるまで、見守ってあげてください…』


「…お任せください」


『そして、シャイン。シャッテ。…思えば貴方たちには何も与えてやれなかった…。

 ずっと辛い思いばかりさせて……とても許してなんて言えないよね…。』


「そんな事ない…全然そんな事ないよ!」


「お母さんがいなかったら私達、生まれる事さえできなかった!

 兄ちゃん達と逢う事もできなかった!!許さないどころか怨む事なんてない!!」


『そう…良かった………。最後に、これだけは言わせて…。

 シャイン、シャッテ………愛してる…「クォ・ヴァディス」』


その瞬間、ルトヴァーニャの空が眩く光り輝いた。

ガンダイオーの操縦席に乗っていた皆がその光を見て悟った。

一人の偉大な魔術師の命が失われた事を……。

シャインとシャッテは言葉を失い、ただ空を見上げるばかり。

その頬を涙が伝う。


真龍歴2017年白の月8日 モアザ・バルバ 戦死



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