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オズマ戦記  作者: 葱龍
七章 転生者大戦 最終篇
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第八十一話「中東戦線異常アリ」

お待たせしました。

今回より新章スタートです。

照り付ける太陽と緩急も日光を避ける場所も無い広大な砂漠を一台の馬車が走っていた。

馬車を牽引するのは、砂漠を走るのに不向きな馬ではなく砂漠に生息する大蜥蜴「ディザードサラマンダー」、

運んでいるのは多量の水と食料、新品の武器防具。

両隣や後ろには同じく馬車を牽引する(おびただ)しい数のディザードサラマンダー。

これはデストラ軍の補給部隊だ。


「エイプ1より各員。状況を報告されたし」


「エイプ2、異常なし」


「エイプ3、同じく異常なし」


他の馬車に乗る兵士も同じように周辺に異常がない事をエイプ1、補給部隊の隊長に伝える。


「来てないらしいですね、バンデッド…」



手綱を握る兵がやや安堵した表情を隊長に見せる。

バンデッドとは連日の様に補給部隊を襲う敵部隊に彼らデストラ補給部隊が付けた俗称で、

物資を根こそぎ奪い去る様が盗賊や屍人を彷彿とさせる事に由来している。


「そうそう来られてたまるか。連中のせいで我々は多くの同胞を失った。

 その事はアルバス国家主席も深刻な事態と判断され、対策を講じていると聞くが果たして…」


「アルバス国家主席…ねぇ。昔はデストラもこんなじゃなかったんですが」


「…マウザンディア前国家主席の更に前、ルティス政権時代か。

 確かにあの頃はこんな事になるとは思いもしなかったな。

 ルティス様が任期を終え、後任に前国家主席が着任してからデストラはおかしくなってしまった。

 急激な改革のしわ寄せで民の暮らしは豊かになるどころかむしろ更に苦しくなるばかり。

 それが暗殺され少しはマシになるかと思ったらこれだ。」


「…俺達、何処まで堕ちれば良いんですかね」


「上からの命令には従わざるを得ない。が、今回の大和とルトヴァーニャ以外の全国家制圧は流石に無茶苦茶すぎる」


「軍内でも反発の声ありましたからね。と言っても反発する者を国家主席が処刑してからピタリと止みましたが。

 とにかくこんな事続けていてはダメだと思うんですよ」


「気持ちは解るが、俺たちは兵士だ。政治に首を突っ込むべき立場ではない」


「でも!!」


2人の兵士の会話を遮る様に左手で爆発。

爆発の起きた方を見ると吹き飛ばされ、臓物を散らすディザードサラマンダー達の姿が。


「敵襲ー!!」


「ど、何処から!?身を隠す場所なんて何処にも無いはずなのに!!」


「攻撃してきたのではない。トラップだ…」


被害の状況から察するに仕掛けられていたのはおそらくは地雷。

殺傷ではなく受けた損傷に対する治療に人員を割かせ物資の輸送を滞らせるのが目的と判断できるが…。

そう思った矢先、


「うわぁぁぁぁ!!」


悲鳴と共に兜ごと頭を粉砕される兵士。

その傍らには血にまみれた槌を握るルトヴァーニャの騎士。


「吸血…騎士……!!」


兵士が不意に呟いたその名は、当人も知らぬうちにデストラ内に知れ渡ったミハイルの二つ名であった。



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ルスナより更に南西に位置する砂漠地帯を補給部隊が通過すると言う情報をキャッチし、

ミハイルの率いる部隊はすぐに行動に移った。

砂漠全てに罠を仕掛ける、と言うのでは時間が掛かりすぎるし民間の輸送業者が被害を被りかねないので

輸送ルートをある程度予測し、そこに地雷を仕掛ける事にした。

後は砂の中に身を隠し、輸送部隊が来るまでひたすら待ち続けるだけ。


「こっちは三日も待たされたんだ…。遠慮なくやらせてもらうぞ」


踏み込み、デストラ兵たち目掛けハンマーを振るうミハイル。

力任せに叩きつけられたそれはデストラ兵の胴を、胸を、頭を容赦なく粉砕していく。

中にはミハイルの猛攻を逃れ、一目散に逃げだす兵もいたが、その者たちが逃げおおせる事はかなわず、

待ち伏せしていた弓兵の餌食となるばかりであった。


「な、何故俺たちがここまでされなきゃならない!?俺たちがお前たちに何をしたと言うんだ!!?」


ミハイルの攻撃を受けながらもなお生き永らえたデストラ兵は死に物狂いに嗚咽する。

それに対しミハイルは眉一つひそめる事無く、


「お前たちが何かしたから、じゃあない。

 お前たちが運んだ剣が罪もない人を斬り、お前たちが運んだ矢が罪もない人を射抜き、

 お前たちが運んだ食料を糧に罪もない人が死ぬ。それを止めるのが俺たちの役目だからやっている。


ミハイルは一度ハンマーを降ろすと脇腹からナイフを抜いた。


「これは戦争だ。理不尽な死も突然の死もそこかしこに転がっている。

 殺されるのが嫌なら…」


そして息も絶え絶えとなりつつあるデストラ兵の喉元にナイフをあてると、


「最初から軍人になんてなるな」


何の躊躇も見せずにナイフを突き刺した。


吐き気を催すような破壊と殺戮。

その中心にありながらもミハイルは平然としていた。

いや、平然であろうとし続けているのか。

一度嗚咽し、荒く息を吸ったり吐いたりを繰り返している。


「クッ!戦った後のこの感覚…

 いつまで経っても慣れないな………!」


ミハイルがそんな独り言を口にしていると、急に辺りが暗くなる。

雨雲?いや砂漠でそんな物が現れる事はあり得ない。

日が沈むにも早すぎる。これは一体?

ミハイルが空を見上げると、信じられない物がそこにはあった。

雲よりも分厚く、二又の尾を持ち、胴から三つの首を伸ばした巨大な影。


「り…龍……!?」


子供の頃から余程の事では驚かないミハイルだったが、生涯本気で驚いた事が無かった訳ではない。

一つは騎士団への入団が認められた時。そしてもう一つは…今この時であった。



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ドジャーズ以降リゼル騎士団の快進撃は目覚ましい物があった。

シャインとシャッテの魔術が、ツバキの剣術の冴えが群がる敵を薙ぎ払い、

シドの武術と知略、リゼルの多彩な技が敵の戦略を打ち破り、

コウの必殺の一撃が勝利をもたらす…。

破竹の勢いとはまさにこれ。飛ぶ鳥を落とす勢いとはまさにこれ。

その凄まじさたるやリゼル騎士団の名を聞いただけで恐れおののくデストラ兵が出るほどである。


しかし幾多もの勝利は同時に大きな弊害をもたらしていた。


「もはや今の僕たちに敵はいませんね」


「まさに無敗ー!」


「むてきー」


慢心である。

度重なる勝利により自分たちは何者よりも強くなったと驕り、相手を侮る様になり始めたのだ。

かの日本海軍も慢心の結果第一航空戦隊(略称一航戦)の主力空母二隻を喪った以上

こう言った事態は避けるべきなのだが、生憎コウは一航戦の事はロクに知らなかった。


いつもの調子で空間の歪みをくぐって居城へ帰還するコウ達リゼル騎士団。


「調子よさそうですね」


浮かれた様子のコウ達にそう語りかけるモアザ。

コウは歯を見せながら笑うと、


「そりゃもう。デストラに占領された地域って後どれだけ残ってます?」


「残り11。うち戦略的に重要なのは4つですね。後の七つは殆どおまけみたいな物。

 他が崩壊すると戦線を維持するのが難しくなり連鎖的に崩壊するでしょう」


「つまりあと四つ攻め落とせば戦争は終わるんですね!?」


「いえ。戦争を終わらせるにはまずデストラと和平交渉をして、和平条約を結ばなければ…」


「みんな!もう少しの辛抱だ!もう少しでこの戦いを終わらせる事ができるぞ!!」


すっかり浮かれてしまい、聞く耳を持ってくれないコウにモアザは溜息を一つすると、


「貴方達は順風満帆かも知れないけれども、そう上手く行ってない方々もいるんですよ。」


「上手く行ってない…って言うと?」


「ここルトヴァーニャと大和以外の各国がデストラの侵攻を受け陥落した際、

 ルトヴァーニャ騎士団に対し二つの作戦を展開した事は覚えてますか?」


「ええ。私達が独自に各国を開放し、もう一つの部隊が敵の補給路を断つ、と言う物でしたね」


コウに代わりリゼルがモアザの問いに応えた。


「そうです。ですがその補給を妨害する為の部隊の動きがデストラに…アルバス・ロアにバレたらしく、

 先日から連絡が取れない状態が続いております。

 あなた方には至急別働隊の救援に向かってもらいます」


「先日からって…生きてるんだろうか」


聞いててコウは不安になった。

登山者が行方不明になり、数日後遺体で発見されたと言うニュースなんてこれまでに何回も聞いてきた。

専門家曰く行方不明になってから三日が立つと生存の確立は大きく下がるとバラエティで言っていた気がする。

いや、もし別働隊が全員死んでいたとしても今度は遺体をこのルトヴァーニャまで届けなくてはならない。


「…行きますよ。事態は一刻を争うんでしょ?」


「それはそうですが少し待ちなさい。貴方たちは今しがた戻ってきたばかりでしょう。

 今日はもう休みなさい」


「でもスタミナを回復する薬なら用意してあるんでしょ?リポ〇タンD的な」


「あったとしてもすぐ動くんじゃ意味はありません。

 今日はルプシカの外には出しませんからね」


モアザがコウに釘をさす。

要するに明日まで休めと言う事だ。

仕方がない。今日一日は一休みして明日行くとしよう。

コウ達は一度解散し、翌日に再度集合し別動隊の救出に向かう事にした。



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休息、と言う以上自室で寝るのが一番かもしれないが

コウの頭は妙に冴え渡りとても眠っている気分にはなれなかった。

なので酒場で少し時間を潰す事にした。

何か飲みながら相手を探して話の一つでもしてればすぐ夜になるだろう。


酒場のドアを開け、中に入るとコウはカウンター席の丁度真ん中に腰を下ろす。


「未成年でも飲める奴」


「あいよ」


そう言って差し出されたのはメロンソーダだった。

緑色の液体の中で炭酸が立て続けに弾け、甘い香りを放ち続けている。


「なかなか気が利くじゃないの」


「新メニューの研究、ってのもあったからねぇ」


ならその味も試してみようと思い、コウはメロンソーダを一口あおってみる。

美味い。口の中で弾ける炭酸とメロンの甘みが口一杯に広がりだす。


「…良いねこれ!レシピ誰から教えてもらったんですか?」


「あぁ。丁度良い所にいたな。あちらのお客さんからだ」


マスターが指さした先の席に座っていた青年がこちらに気づいたのか立ち上がり、駆け寄ってきた。

その青年の顔にコウは見覚えがあった。

間違いない。自分がこの世界に転生してくるより前、

同じ中学の同じクラスだった………


「…宮本?宮本なのか?」


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