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オズマ戦記  作者: 葱龍
六章 転生者大戦 激闘篇
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第七十四話「光と闇と悪鬼の最期」

「須磨豊太郎の異能って…相手を意のままに操るあれ?」


コウと彼の持つスマートフォンを交互に見やるリゼル。

須磨豊太郎の持っていた『相手をスマートフォンを介して操る』と言う異能には

リゼルもコウもルスナで苦しめられていた。

その力が今、コウのスマートフォンに宿っている。

にわかには信じがたい話であった。


「そうだ。その気になれば相手を無理矢理自決させる事も出来るだろうが、

 そんな使い方は邪道だろうし何より大本は俺の力じゃないから、あまり使いたくないと言うのはある」


「そ・れ・が…どうしたァァァぁぁァァ!!!!」


いきり立ち突進するクドー。

コウは掴みかかった手を掴み返し、組み合いの形を成す。


魔人化に伴い腕力が強化されているのか僅かにクドーが圧し始め、

コウを大きくのけ反らせる。


「ハハハハ!どうシた小妻コウ!人ノ事を空ッぽと蔑ンでおきなガラこノザマか!!

 俺が空っポなラお前はなんダと言うンだ!!?」


「確かにお前は力こそは俺を凌駕しているかもしれない。

 だが俺にはお前が絶対に持ち得ない力がある。」


「俺ガ持ち得ナイ力だト!?何ダそレハ!!」


と、クドーの頭部にリゼルの踵が叩きつけられる。

その眼は炎に様に紅く、服にも紅いラインが走る。

コウは初めて見る、しかしクドーにとっては二度目のストロングフレアリゼルだ。


「仲間よ」


リゼルは踵をクドーから離し、片足立ちの姿勢をとる。


踵の形にへこんでいたクドーの頭がまるでゴム風船のように変形し元の形に戻っていく。

その様子は異様ながらも何処かコミカルだ。

クドーと自分のスマホとを交互に見やり、倒れているシド達の方を一度振り向くと、

コウは再び自分のスマホを見やり、


「スマホ太郎…お前の異能で相手を意のままに操れると言うのなら……!

 こう言う使い方だって出来るだろ!!?

 エル・ジンティア!シャイン・バルバ!シャッテ・バルバ!ツバキ・タカクラ!

 シド・ハーマン・ルトヴァーニャ!ジン・ハゥロン!シロウ!!……治癒!!!」


瞬間、シド達の身体が光に包まれる。

光が消えるとシド達は意識を取り戻し、各々にゆっくりと立ち上がる。

クドーより受けた傷もみるみる塞がり、衣服を赤く染めていた血糊も綺麗に消え去っていく。


「コウさん…?もう大丈夫なんですか?」


コウの姿を視界にとらえ、シドが問う。


「ああ。心配かけたな。けどもう大丈夫だ、戦える。

 いや、あいつに限って言えば…戦わなくてはならない!!」


「その様子だと、もう吹っ切れたみたいね。良かった。」


ツバキは安堵しつつ、武器を構える。

シャインとシャッテも同様だ。


「1人では叶わないかも知れないけど、みんな一緒なら勝機はある。でしょ?」


「その通りだ。みんな…行くぞ!」


対するクドーは全身から無数の糸を伸ばし、自身と酷似した姿の人形(ひとがた)を次々と作り出していく。

大武闘会でも見せた「シャドークドー」だ。その数はコウが目視できるだけでも300以上は下らない。


だが今のコウ達にとってシャドークドーなど恐るべき相手どころか路傍の石程度の脅威にもならない。


「そんな物で、俺達を止められると思うな!!」


「にーちゃんの言う通り!シャッテ!!」


「うん!!」


シャインとシャッテが杖を掲げると大量の火の玉と大量の水の球がシャドークドー達の頭上に出現。

杖を振り下ろすと火の玉と水の球は一斉にシャドークドー目掛け殺到。

森のあちらこちらで次々と水蒸気爆発が巻き起こり、シャドークドーを蒸発させていく。


「俺達も負けてられないな」


「そうだな」


「はい!」


シドが土掌でシャドークドー達を上空へ押し上げる。

宙に舞い上がったシャドークドーが自身の肩の高さまで落下してくるのを見計らい

シロウとジン・ハゥロンが同時に紅蓮掌を放つ。

炎と打撃の二重奏が二体のシャドークドーを炎に包みながら吹き飛ばす。


焼かれながら吹き飛んだシャドークドー二体は他のシャドークドー達に激突。

多くのシャドークドーを巻き込み爆発した。


エルとツバキもシャドークドーの群れ目掛け突撃。

エルがシャドークドーの一体を掴むと空高くジャンプ!


「ハァァァッ!!!」


回転を加えながら投げ落とした!

多くのシャドークドーが衝撃波に巻き込まれ霧散する。


螺旋百舌落(らせんもずお)とし。

空中で相手に高速回転を加えながら叩き落とす忍者の荒業である。

この技を使いこなし、相手のみにダメージを与えられるようになって初めて忍者を名乗る事が許されると言われているが、

現在アーサレナにおける忍者の総数は減少傾向にある為詳しい事は解っていない。


「フッ!!」


ツバキは納刀状態のステファニーを構えながら直進。

シャドークドーの群れとすれ違うと、遅れてシャドークドー達が次々と血しぶきを上げながらバラバラになり、糸の塊へと姿を変えていく。


抜刀術・桜花。

大和に伝わる抜刀術の1つで、斬られた相手の鮮血が噴き出す様が桜の花を彷彿とさせる事から『桜花』と名付けられた。

その斬撃は余りの速さに太刀筋はおろかいつ抜刀したかすら解らず、

鮮血が花びらの様に舞う様子は残酷にして華麗で、

この技を「最も美しい必殺剣」と称する達人は少なくない。



300体以上いたシャドークドーもコウの仲間たちに苦も無く蹴散らされ、三分と待たずシャドークドー達は全滅した。

コウ達と自分の分身との戦力差が予想以上だったのか憤怒に顔を歪める魔人クドー。


「バカな!?戦力差ガ互角なラ敗ケルのは貴様等ノはズ!!!」


残ったシャドークドーを裏拳一発で霧消させるとコウはクドーを見据え、


「単純な話だ。全然互角じゃない、お前の分身の方が俺達より劣ってただけだ」


「ナ…何ヲォォォォォ!!!!!?????」

怒りの雄叫びと共も右腕から出した糸を鎌状に変形させ襲いかかる魔人クドー。

しかしそれに対してシャインとシャッテがペンデュラムを射出。

魔人クドーの両腕を絡め取った。


大の字に両腕を広げられた魔人クドーの顔面めがけ

コウとリゼルが飛び膝蹴りを叩きこみ、更に身を翻しながら剣を抜くと交差させるように、Xの字に斬りつける。

X字状に刻まれた魔人クドーの傷は瞬く間に塞がろうとするが、コウとリゼルは構う事無く何度も斬りつけ、蹴りつけ、殴りつける。

さしもの魔人クドーもその激しい猛攻に再生速度が追いつかなくなり、糸の鎧が剥がれ中のクドー本体の姿が露になった。


「思えば俺がこの世界に来たのも俺の戦いも、もとはと言えばお前が始まりだったな…

 お前がいなかったら、俺はリゼル達とも出会えてなかったし、そもそもあの部屋で人生の殆どが終わっていたかもしれない…」


曝け出されたクドーの姿を見てコウは感慨に浸る。


「だから今、俺はここでお前との因縁に…決着をつける!!」


コウは聖剣を構え、リゼルと共に突進。

すれ違いざまにクドーを斬りつける。


鮮血を噴き出しながらも踏ん張り、尚もコウに戦いを挑もうとするクドーだが、

糸の鎧は既に剥がれはじめ、視線も定まらなくなっている。


「コ………!!た……た…………ガハッ!!」


吐血し、仰向けに倒れるクドー。

少し遅れてコウもその場にへたり込む。


「お…終わった………!」


「ええ。長い闘いだった…。」


「……姉さんもコウさんも、何を安心しきっているんですか…?

 まだ一区画を解放しただけだと言うのに」


まるで一仕事終えたかのように安堵の表情を浮かべるコウとリゼルを見るシドは不思議そうな表情を浮かべていた。

そんなシドの肩をエルが軽く叩くと、


「2人にとってあの男、クドーは全てのきっかけになったと言っても良い相手だったのよ。

 かく言う私も、クドーがいなかったら今もルプシカの方でこそ泥やってたんだろうけどね」


「なるほど。姉さんの言ってた長い闘いと言うのは、その因縁の事を言ってたんですね…」



「ッ!!ゲホッゲホッ!!!」


咳き込みながらクドーが意識を取り戻す。

それに対しコウは視線を合わせる事無く、


「致命傷だ。長くは持たん」


「何故…一思いに息の根を止めなかった……!」


理性を取り戻したのかクドーの口調も元に戻っている。

抵抗する様子は見られない。しても無駄だと知ってか、それとも死期が近いと悟ったのか…。


「お前に、懺悔する時間を与えたかった。自分の罪を悔いる時間を……」


「ははは…生憎そうしなければならない事をした覚えがない…」


「世迷言を!!」


怒るリゼルをコウは制する。


「物心ついた時から俺は1人だった…。

 人とどう接すれば良いか解る筈もなく誰かが教えてくれる筈もなく、

 ただひたすら向かってくる相手を完膚なきまでに叩きのめし続けてきた…。

 大人も、大人に味方する子供も、男も女も……。

 だが戦えば戦う程、強くなればなる程人は俺から離れていく一方だった……。」


「それはお前が好き勝手やり続けてきたからだろ…。自業自得だ」


「かもな…。小妻コウ…正直言ってお前が羨ましい通り越して妬ましいよ……。

 俺が手に入れられなかった物全部持ち合わせやがっ…て……ゲホッゲホッブホッ!!…」


吐血するクドー。

コウは死期が近づいているのを感じずにはいられなかった。


「…そろそろ、今生の別れの時か。

 次は良い奴に生まれ変わってきてくれよ」


「良く言う…ぜ……人の命を奪っておいてよぉ……」


「散々罪のない人々の命を奪ってきたお前を、今更人間扱いなんてできないよ」


「へっ…とことんウマが合わねぇな俺ら…。

 そのムカつくくらいの…正義の味方面が何処まで持つか……地獄で見物…させて……もら………」


言いかけて、クドーはピクリとも動かなくなった。

脈も呼吸も無い。完全に死んでいる。

瞬間、コウの右腕が光り輝き、腕から白く輝く糸の様な物がうねりながら現れるのをコウは見た。


そしてコウは直感した。

転生者が絶命した時、その転生者の持つ異能はその命を奪った転生者へと受け継がれると言う事を。

それならば自分が須磨豊太郎の異能を使える様になった点についても納得がいく。

いやむしろ、そうでないと辻褄が合わない。


「クドー…最後の一瞬まで決して人と混ざり合おうとしないドス黒い闇……。

 今ならハッキリと言える…。俺はこいつとは違う。こいつと同じ状況下に晒されても、決してこいつと同じ道は辿らない。

 何処にいようが俺は俺だ!!小妻コウと言う1人の人間だ!!」


「…その様子だと、もう吹っ切れたみたいね」


「ああ。俺はもう迷わない。平和な世界を取り戻す為に…俺はデストラと、エタニティと戦う!」



決意を新たにするコウを遠くから見つめる人影が1つ。

抵抗勢力の監視の目が手薄になったのを見計らって脱走したジュリア・O・カーターだ。


「我が切り札をこうもあっさりと屠るとは…何という力だ。

 アルバス様の為にも、早々に手を打たねば」


そう独り言ちるとジュリアは1人森の中へと消えていった。



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「豊太郎に続きクドーまで…」


クドー戦死の報告を聞いたマサツグが苦言する。

しかし苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるマサツグとは対照的にアルバスはあくまで涼しい顔で、


「もともと命令無視を繰り返す常習犯だったんだ。

 かえって処刑する手間がなくなった。そういう意味では、小妻コウに感謝すべきか」


「確かに、クドーの奔放さは目に余るものがありました。

 しかしだからと言って倒した相手を賛美するのは流石に………」


「奴より有能で忠実な転生者はエタニティには山といる。

 他の地区の首尾はどうなっている?」


「はっ。奪回されたルスナと智龍の谷以外は特に問題も無く。

 デストラに反発する者達による抗議運動もすぐに鎮圧されております。ただ…」


「ただ?」


「各地に補給物資が行き届いていないのです。

 補給部隊も何隊かとの連絡が途絶えたままになっています。」


「補給部隊が襲われていると?」


「おそらくは」


「…何らかの対策を講じねばな。

 今はともかく、補給路の断絶は後々響いてくる」


鉄面皮を装っているがアルバスの組む手は震えていた。

アルバスは屈辱を感じていた。

小妻コウが本命と思いきやそれは陽動で、

補給路を断つ為の部隊を用意していたとは。

もはや余裕を見せていられる状況ではない。

全身全霊を以て敵対する者を殲滅せねば。


アルバスはその名も知らぬ反逆者たちに激しい怒りを燃やしていた。



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