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オズマ戦記  作者: 葱龍
六章 転生者大戦 激闘篇
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第七十三話「戦う理由と炎の魔人と目覚めるスマホ」

「ハッ…ハハハハハ……!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」


コウの姿を捉えた瞬間、クドーは唇の端を大きく吊り上げ、笑う。


「この瞬間ヲどれダけ待ちワビた事クァ!!おおお小妻コウ!!きささまをこのの手デ殺殺殺せる

 こヌヌぬヌォ時ヴぉオォォおぉぉぉぉ!!!!!!!!」


極度の興奮状態に達したのか呂律が回らなくなるクドー。

対してコウはあくまで冷静に、


「俺にしてみればもう二度と会いたくはなかったがな。

 何処か世界の隅の方で誰にも手を出さず静かに過ごして欲しかった…。だが」


コウは腰から聖剣を引き抜きながら、


「お前は俺の仲間を傷つけたし、罪の無い人々を何人も殺し続けた。

 それでいて何の罪悪感も感じていないと言うなら…もうお前を許す事は出来ない。

 何もせず見知らぬふりをする事が正義だと言うのなら…

 お前を傷つけ殺してでも止める事が罪だと言うのなら…その罪喜んで背負ってやる!!」


「相変ワラララず正義の味方ヴルルルりやがッて…ムカつくぜ……二度どとそンな口たたたたけなくしてやルるゥゥゥ!!!」


雄叫びを上げながら赤黒い刃を飛ばすクドー。

コウは聖剣を軽く一振りし、クドーの攻撃をいとも容易く弾き飛ばす。


「くわぁぁぁらあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


クドーは赤黒い刃の数を増やし、更に激しくコウを責め立てる。

だがコウは物怖じ1つ見せずクドーの攻撃を弾きながらクドーに一歩ずつ歩み寄る。


クドーとの距離を腕一本分にまで詰めるとコウは聖剣でクドーの左腕を斬り、同時に右肩を左の人差し指と中指で突く。

素早く、鋭い突きと斬撃を同時に受け苦悶するクドー。

コウは塞がっていく左腕の傷を指さし、


「…思った通りだ。クドー、お前の異能は斬られて出来る傷は治す事が出来るが、」


次にクドーの腹の痣を指さす。

棺から出てきた時には無かった痣。おそらくシドかジン・ハゥロンと戦った時に付けられたものだろう。


「打撲の様な内側に出来る傷はどうしようもない…。

 お前は前に自分の異能の事を『無敵の刃』と呼んでいたが…実際は無敵でも何でもない、ちっぽけな力だ」


「ちっ……ぽケ…だとォォォ!!?グルルぉォォォするなぁぁぁあああ!!!!」


激昂し、背中から無数に糸を伸ばすクドー。だが、


「今からそれを証明してやる!リゼル!!」


一瞬の内にクドーの背後に回り込んだリゼルが斬りかかる。

リゼルの斬撃は転生者にしか見えない赤黒い糸によって阻まれているが、構わずリゼルは斬り続けた。


前方と後方、両面から息つく間もなく繰り出されるコウとリゼルの攻撃。

いくらクドーの異能が驚異的と言えど前後両方からの同時攻撃を捌ききるのは至難の業であった。


「グゥゥ…ッ!!」


そしてほんの一瞬だけバランスを崩したのをコウとリゼルは見逃さず、同時に回し蹴りをクドーの腹部に叩きつける。

ワンバウンドし、転げまわった後地面に突っ伏すクドー。

クドーは肩を震わせながらゆっくり立ち上がり、


「何故だ…!?何故……あイつ等に勝テナい…!!」


「それも解らないなんて、つくづく可哀想な奴だよお前は。

 どれだけその異能の力を高めようと結局お前は1人。

 共に戦う仲間も、守るべき者もいないし、地位も名誉も持ち合わせていない。

 その異能の力と自分の命以外何も無い…。空っぽだ」


「ンだとォ!!?」


クドーは右腕を剣状に変形させ、コウに斬りかかる。

コウは聖剣でクドーの攻撃を防御。鍔迫り合いの形となった。


「だが俺には共に戦う仲間がいる!守りたい人達も沢山いる!!

 失いたくない物の無いお前には負けられないんだ!!!!」


コウは切り結んだクドーの右腕を押しのけ吹き飛ばす。

200マルト(200メートル)ほど後ずさるも何とかバランスを保ったクドーは、


「何ガ空っぽダ!!こレを見テモ、同ジ事が言えるのかァァ!?」


クドーの身体を赤黒い炎を帯びた糸が包み込んでいく。

目も鼻も、腕も脚も覆いつくし、クドーの姿を変容させていく。


「この感じ…大武闘会の時に似てるけど、大きさが変わってない。

 スピードを殺す事無くパワーを上げる術を僅かな期間で身に着けたと言うの?」


「炎の巨人…いや、炎の魔人か」


全身を赤黒い炎で包み、体格がより筋骨隆々としたものに変わり、顎が耳まで裂けたクドーのその姿は、

まさに魔人と呼ぶに相応しい異形であった。


「さァて、オレヲ空ッポと言ッたお前の力ガどれ程ノ物カ………拝見ッッッ!!」


魔人クドーが跳躍。速い!

身構えるコウの腹に魔人クドーのボディブローが打ち込まれる。

魔人と化したクドーの一撃は重く、コウはその場に腹を抱え、片膝をついて倒れた。


クドーは更に左手でコウの髪を掴み上げ、唇の端を大きく吊り上げる。

振りかぶられたクドーの右腕をリゼルは激しく斬りつけるが、

クドーの前身を覆う糸が生き物の様にうねり、すぐに切り口を塞いでしまう。

再生速度がこちらの攻撃速度を上回っている。

だが今攻撃を加えるのを止めればクドーはすぐさまコウを嬲り殺しにするだろう。

それだけは何としても避けたかった。


「それなら!!」


額に意識を集中させ、紫と黄色の稲妻を放つリゼル。

リゼルガイザーと命名されたその魔法は十二分に強力なリゼルオリジナル魔法であるが、

クドーの全身を覆う糸の前には蚊が刺した程度でしかなかった。


「ククククク…何かヤッたか?」


「!?そ…そんな……!!」


起死回生をかけた策も水泡に帰した。

リゼルに残された手は、ただ項垂れ立ち尽くす事のみ。

そう思われた時だった。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



コウの腰ポケットが光り輝く。

何事かと思いコウは手探りで腰ポケットからある物を取り出した。


スマートフォン。

この世界に転生する前から持っていて、あまり弄る機会の無くなった所謂初期アイテム。

wi-fiが繋がらなくなってから遊ばなくなったゲームを面倒くさがって全く削除していないスマートフォン。

ネット通販で購入した微妙にダサいデザインのスマホカバーから未だに替えられていないスマートフォン。


それが、今眩く光り輝いている。

やがて光が収まると、スマホの画面に見た事の無いアイコンが追加されているのにコウは気が付いた。

藁にもすがる思いでそのアイコンをタッチすると、スマホの画面に日本語で

「命令したい相手と、それに対する命令を言え」と表示される。

コウはその内容にデジャブを覚えるが、もはや他に打つ手はない。

コウはスマホのスピーカーが拾えるように、叫んだ。


「クドー!今すぐ手を放せ!!」


「ハッ!誰ガ放す…ッ!!?」


言葉とは裏腹にコウを掴む手をあっさりと放すクドー。

四つん這いになる形で着地するとコウはバックフリップで一度クドーと距離を取り、


「思った通りだ……。何故こんな物が現れたのか知らないし、

 俺の思った通りなら出来るだけ使いたくはなかったが…非常時故致し方ない………!!」


「どういう事?いったい何が起きたの?」


「クドーに手を放せと命令した……

 俺のスマホに、相手に絶対遵守の命令を下せるアプリケーションがダウンロードされていたんだ…!」


「それってまさか…!」


「あぁ。須磨豊太郎の異能が俺のスマホに宿った」


須磨豊太郎の異能。

それは自身のスマホを介し相手を意のままに操る力。

豊太郎の死と共に失われた筈の力が、今こうしてコウのスマホに宿っている。

所持者の怨念と共に乗り移る呪いなのか、それとも別の要因が重なったのかを知る術は今のコウには無い。

だが確実に言える事がある。


クドーを倒すには、この力も活用しなければならないと言う事だ。


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