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オズマ戦記  作者: 葱龍
六章 転生者大戦 激闘篇
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第六十一話「明日すら見えぬ生き地獄!この町は勇者をも拒むのか!?」

8000PV突破しました!



テリブル・デッドが剣を振り下ろし、コウがそれを白刃取りの要領で受け止める。


「俺の異能は死なない事。頭を吹っ飛ばそうが!丸焼きにしようが!バラバラに切り刻もうが五分もあればすぐ元通りだ!」


「大した能力だ!魔物が跋扈して俺がいた世界以上に死の危険が転げまわってる世界、

 死なないに越した事は無いだろう!?」


テリブル・デッドはさらに剣に力を込め、


「冗談キツいぜ!!ただ死なないだけで死ぬ時感じるであろう痛みはそのまんまだから、

 何度も何度も激痛に苛まれ気が狂いそうなるばかりさ!!

 お前も死ぬ程の痛みを味わってみろ!自分の力が恨めしくなるからよぉ!!」


「生憎だったな!」


コウはテリブル・デッドの腹を蹴り飛ばし、彼の剣を取り上げると、


「俺はこの世界に来て目覚めた、この力を憎いと思った事は無い。

 確かに一度死にかけないと発揮しない力なんて使いにくいっちゃありゃしないさ。

 だがな、こいつはアルバスとエタニティを倒し、この世界に平和を取り戻す為には必要な力だ。」


コウはテリブル・デッドから取り上げた剣を放り投げ、


「平和を手にする為の力なら、迷わず使う。例えそれが呪われた力だったとしてもだ……!」


「へッ、カッコいい事言ってくれんじゃねぇか。気に入ったぜお前」


テリブル・デッドは剣を拾い上げると背中の鞘に納め踵を返す。


「逃げるのか!!」


「依頼なら果たした。あとは神帝にお前の事を報告するだけよ。

 お前、名前は?」


「…コウ。小妻コウだ」


「了解。覚えとくぜ」


振り向かずに右手を挙げながらテリブル・デッドはルスナの町を後にした。

残された弓道警察もテリブル・デッドの後を追う様に逃げ出していく。


戦いは終わった。

だが、町の人達はとてもコウを称賛してくれる様子では無かった。


「お前達…なんて事をしてくれたんだ……!」


1人の老人が杖をコウ達の方に向け言い放つ。


「今ので完全に俺達は神帝の怒りを買ってしまった!!」

「子供1人献上さえすれば俺達は生き永らえる事が出来たんだぞ!!」

「お前達が余計な事をしなければ!!!」

「何が勇者よ!!やってる事は疫病神じゃないの!!!」


無責任で心無い言葉を投げつける町の人達。


「力になってあげようとしてるのにそれは無いでしょ!?

 貴方達はただ為されるがまま…」


シャインが溜まらず反論するがリゼルがシャインの肩を掴み、


「よしなさい。」


「でも!!」


「良いから!…軽率な行動に出た結果、多大なご迷惑をおかけした事はお詫びします。

ですが、皆さん今一度よく考えてください。

 ただ黙って蹂躙され続けるだけの今に、どれほどの価値があるか。

 子供達を神帝に貢ぎ続けた先に、未来はあるのかを………。」


町の人達はリゼルの言葉に反論もせず各々の持ち場へと戻っていく。

舌打ちしたり、苦言したりするのをコウは聞き逃さなかった。


「…どうするの?これから」


ツバキがコウに問う。


「どうするも何も、停めてくれる宿も無いだろう。

 野宿。他に手は無い。」


そう言ってコウ達は町を後にする。

途中突き刺さる人々の視線が、コウには今まで受けたどんな傷よりも痛々しく感じられた。



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バグダダの中心にそびえ立つ黄金色の宮殿。

ここはかつてルスナを治めていた王族が住んでいた場所だが、

今現在は全ての部屋、全ての家具、全ての使用人が神帝の私物と化している。

デストラによる全世界への総攻撃が行われた時、神帝はデストラと戦う事はせずすぐに同盟を結び、勝利のおこぼれに肖った。


神帝用の寝室に入室した弓道警察は立膝をつき、


「ご報告いたします。町に勇者を名乗る一団が現れ、部隊長が行方不明に……」


ベッドと寝室とは薄手のカーテンで隔てられ、神帝の姿を見る事は出来ないが、

うつ伏せになり、少女にマッサージをさせている様子はかろうじて伺える。

神帝はうつ伏せのまま、


「…それで?」


「報告は以上です。けど必ずや、奴等を始末してみせ…」


「貢ぎ物1つ持って帰れなかったと言うのに、必ずなどとよくも言えたな。

 こっちはもうお前に何の価値も見出してはいない…」


「そ、そんな無体な…!!私に今一度チャンスを!!!」


「うるさいよ。…弓弥平治、消去」


「し…神帝ぃぃぃぃぃぃ!!うあああああぁぁぁぁぁぁ!!!」


弓道警察は断末魔を残しながら塵と化した。


その様子を出入口付近の壁にもたれかかって眺めていたテリブル・デッドは、


「おお。怖い怖い…。ちょっとでも機嫌損ねればすぐこれだ。

 ……それで俺は殺さなくて良いのかい?」


「殺したところですぐ再生して元通りだろう。お前の場合。」


「だが神帝隊をぶっ倒した連中には気を付けた方が良いぜ。

 あいつ等の戦闘能力は弓道警察如きじゃ全く相手にならん」


「ほぅ…。ところで、」


少女がピクリと肩を反芻させる。


「人目をはばからず殺そうとするその気概は認めよう。」


「お前がいなければ…!私はいつまでもパパやママと一緒に暮らせたのに!!

 いい加減パパとママの所に返して!!さもなくば…」


「さもなくば殺す。か…。ようし、君の勇気に免じてご両親の所に返してやろう。

 だが、君のご両親はいつまでも君の家にいるかな?」


「どういう事?」


少女の疑問への返答代わりに神帝が指を鳴らすと、

出入口の扉が開け放たれ兵士が1人入ってきた。

兵士はトレイを手にしており、そのトレイの上には……ああ、何という事だろう。

男女2人の首が置かれていた。


その生首を見た少女は目を大きく見開き、


「パパ……?ママ………?」


「約束通りご両親の所に返してやるさ。ご両親の待ってるあの世にな」


「…ッ!!イヤアァァァァァァアアアアァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!!!」


怒りと悲しみの入り混じった少女の悲痛な叫びが宮殿に木霊する。

だが彼女を助けてくれる者は宮殿にも、このルスナの町にもただの一人として存在しなかった…。



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サムャータの外れにある洞穴でコウ達リゼル騎士団は一夜を明かす事にした。

昼の一件で宿を取れなくなったコウ達にとってこの洞穴を見つけた時はまさに渡りに船だった。

ルスナのある地域は砂漠地帯で雨の心配は無いが風と夜の寒さだけは避けたい所。

洞穴に身を隠すかテントを用意して対処するしかない。


エルは情報収集の為町へ潜入した為しばらくは帰ってこれない。

焚き火の灯りを囲うコウ達はいずれも浮かない表情であった。


「俺達、ここにくるべきじゃなかったのかな…」

「何言ってるのコウ…」


コウの突然の一言に思わず狼狽するリゼル。


「だってそうだろ?

 こっちはただ助けたい一心でやったのに、お礼を言うどころか疫病神扱いだなんて!」

「確かに…」


洞穴の壁にもたれかかっていたツバキが口を開く。


「確かに町の人のあの態度は許せる物では無いわ。

 彼らの言葉の端々から、無責任さが感じ取れた…。」


ツバキはコウの傍に座り、


「でもね、貴方が今まで戦ってきたのって、誰かにお礼を言って貰いたかったから?」


「それは…違うけど……」


「なら、貶されたって気にしなきゃ良いじゃない。

 やりたい、やるべきと思った事を全力でやって、貶した連中を見返してやりなさい!」


気にしなきゃ良い。

その一言を聞かされたせいかコウはほんの少しだけ気が楽になった。


「あの…」


リゼル騎士団の誰の物でもない声。

誰か来た。

コウが洞穴の入り口に向かうと、入り口の前には1人の少女が立っていた。

コウは、その少女の顔に見覚えがあった。


「君は確か…」


「バー『アルババ』の手伝いをさせてもらってる、ミリヤ・マフリヤールです。

 皆さん、お腹空かせてると思ってお弁当作って来たんですが…」


「あ…あぁ!ありがとう、俺達なんかの為に!!」


「みんながどう思おうと、私達ルスナの子を守ってくれた事に変わりはないですから」


「大人の人達は…凄い怒ってたけどね」


「ああ言っている人もいるけれど、中には皆さんに感謝してる人もいるんです。

 彼等ならこの国を救ってくれるかもしれないって」


「救ってみせるさ。その為に俺達はここに来たんだから。

 お弁当、有難くいただかせてもらうよ。」


マフリヤールから弁当を受け取り踵を返すコウ。


「あ、それと…」


マフリヤールに引き留められ振り返るコウにマフリヤールは、


「私も信じてます。貴方達が神帝を、デストラを倒してこの世界に平和を取り戻してくれる事を……」


コウは何も言わずフッと微笑むと再び踵を返した。

マフリヤールも、いや彼女だけではない。ルスナの子供達もきっと自分達リゼル騎士団に期待している。


敗けられない理由がまた1つ増えた。

神帝だなんてふざけた二つ名を名乗る野郎を必ず叩きのめす事をコウは強く胸に誓った。


ちなみにマフリヤールの作った弁当はホットドッグによく似たパンだったが、

あまり美味しくは無かった。



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