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オズマ戦記  作者: 葱龍
六章 転生者大戦 激闘篇
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第五十九話「ここはルスナ!神帝が地獄に変えた国」

乾いた大地、黄土色の建物は所々が欠けて、

酷い物だと鉄骨が剥き出しになっている。

行き交う人々の表情も暗く痩せこけ、生活環境が厳しいのが伺い知れた。


ここはルスナの首都バグダダから少し離れた所にある町サムャータ。

初めて見た時、コウは現実世界の中東諸国を思い出していた。

直接言った事は無いものの、ニュース番組などで取り上げられる国の様子はルスナによく似ている。

違う所と言えば過激派テロリストがいない事くらいだが、まだ活動していないだけで何処かに潜んでいるのでは?コウは訝しむ。


「なんか…違う国じゃなくて違う世界に来たみたいだ…でっかい戦争で文明とか何もかも消え去った様な…」


「アーサレナにある国全てがルトヴァーニャみたいな賑やかな所では無いわ。

 ルスナにはルトヴァーニャ以上に厳しいカースト制度が息づいていて、

 カースト上位の貴族が自分より下位の者に対しどれだけ辛辣な言葉を投げかけても何も言われないけれど、

 カースト下位の貧民は貴族の物に触る事すら許されない…と聞いた事がある」


「酷いな。と言うのがまず一点。聞いた事があると言うのは?」


「私もルスナを訪れるのは初めてだから…」


ここでシドが、


「僕は一度来た事がありますが、ここまで閑散とはしてませんでした。

みんな貧しいなりに頑張っていて、人々の笑顔も少なからずありましたが、今は違う。

今のルスナは、悲しみに溢れている………」


言われてみると、確かに町の人々の多くが暗い表情を浮かべている。

絶望しきった様な、暗い表情…


町の人の様子を見たツバキは、


「デストラに敗けた、だけではこの状況は説明できないわよね」


「ああ。問題はおそらく、戦後処理か統治している転生者の采配…。

 調べてみる必要があるな」


リゼル騎士団は情報収集の為コウとリゼル、シドとシャインとエル、ツバキとシャッテの三組に分かれ行動を開始した。



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シド組とツバキ組が聞き込みを開始する中、コウ組は最寄りの酒場へと足を踏み入れた。

案の定内装も埃っぽく、椅子もかなりガタが来ているが文句は言ってられない。

コウとリゼルはカウンターバーに腰を下ろし、


「聞きたい事があるのですが…」


「注文」


バーテンダーは抑揚の無い声でコウの質問を遮る。


「この辺りで何か変わった事は!」


「注文!!!」


またしても遮られた。

目を伏せるコウにバーテンダーは、


「ウチだってただでこの店やってるんじゃないんだ。

 冷やかしなら帰ってもらうよ」


「…ミルク。二杯」


グラス二つにミルクが注がれ、コウとリゼルの前に差し出される。

コウはミルクを一気に飲み干すと、


「……このルスナに来たのは初めてだけれど、町の人達がみんな浮かない顔をしてるんだ。何があったか教えてくれないでしょうか」


「初めっから。と言っても納得はしないか。

 元から歪な部分の少なくない国だったが、神帝(じんてい)が現れてからだな。本格的におかしくなったのは」


「神帝?」


「今現在のルスナの支配者の事さ。皇帝よりも遥かに偉大な神の如き帝王で、神帝…。

 神帝は意にそぐわない者を身分に関わらず全員逆賊として処罰し、

 更に民から毎日貢ぎ物を捧げる様強要しているんだよ」


「貢ぎ物…農作物か?」

「それならまだ良いんだがね」


するとコウとリゼルの後ろの方から、


「グラス、お下げしてもよろしいでしょうか?」


若い、と言うより幼いと言った方が良い女の子の声。

コウが振り返るとそこにはウェイトレス姿の女の子がいた。

まだ幼い。シャインとシャッテよりも年下に見える。


コウはバーテンダーの胸倉を掴み上げ、


「どういう事だこれは!?」


「うっ…くっ……!」


「この町じゃあんな小さい子にまで働かせてるのか!?そこまで貧しい国なのか!!?」


「神帝の所に行かせるのに比べればまだマシな方…」


「落ち着いてコウ!!ここで騒ぎを起こされるのはマズいわ!」


リゼルに諫められ、コウはバーテンダーを掴む手を放す。


「ゲホッ…!ゲホッ…!!」


「……まさかとは思うが貢ぎ物って言うのは…」


バーテンダーを問いただそうとしたその時、


「神帝隊だー!!神帝隊が来たぞー!!!!」


外から怒号。

それを聞いたバーテンダーは、


「来やがった…。店の奥の方に隠れてろ!」


バーテンダーに促され、店の奥の方へと退避する子供ウェイトレス。

只事ではないと言う事をコウもリゼルも理解した。

子供ウェイトレスが退避し終えたのを確認するとバーテンダーは、


「神帝は貢ぎ物として各家庭から子供を取り上げているんだ。

 男の子供は労働力として働かせ、女の子供には自らの身の回りの世話をさせているらしい。」


「酷い………!!」


「そんな事ルスナに住む人たちが許す訳…!」


「逆らった場合は大人は殺され子供は無理矢理連れ去られるだけだ。

彼女も、マフリヤールも両親が神帝の傲慢で

 他者を顧みない独りよがりな政策に反発したせいで彼女の前で殺された…。

 身寄りのない彼女を匿い、保護してやってるんだよ」


「けど彼女を働かせてるじゃないか。」


「働いてるんじゃない彼女の方から手伝ってるだけだよ。

 給料は出ないし休みたい時に好きなだけ休ませてる。

 私も今の生活は気に入ってるし、彼女も少しずつ笑顔を取り戻してはいるが、

 いつ神帝に目をつけられるかと思うと不安で夜も眠れないんだ…!!

 せめて彼女が大人になるまで私が親代わりになって面倒を見てやりたいのに!!」


コウは一つ深呼吸をし、酒場の出入口まで近づき扉に触れると、


「その神帝が倒れれば、もう子供が連れ去られる心配はないんでしょ?」


「無理だ。神帝とその配下に叶う筈がない」


「やってみないで解るもんか。それに、俺達はその神帝を倒す為にきたんだ。」


リゼルはバーテンダーの肩を軽く叩き、


「心配ないわ。彼は勇者だもの。絶対に神帝を倒してくれる」


バーテンダーの顔に僅かながら安堵の色が見えるのを確認すると、

コウはリゼルと共に酒場を後にした。



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「オルァー!!さっさとガキ出さんかーい!!!」


ルスナの町に男の怒号が木霊する。

上半身裸で革製のジャケットを羽織り、スパイク付きの肩パッドを身に着け、両手には火炎放射器を装備、

スキンヘッドにサングラスと言う出で立ちが見る者に威圧感を与えていた。

町の人達は皆スキンヘッドの男と目を合わせない様周囲に視線を逃がしている。


「貴様らが神帝に子供を献上しなければ命はないと何度も言ったはずだ!!

 献上する子供がいないなら作ればいい!!子供なんてのは放っとけば勝手に増える者なんだからな!!!」


そんな中、1人の男が、


「ち、ちくしょう!何が神帝だ!!俺の子を返しやがれぇ!!!」


弓矢を構えスキンヘッドを威嚇するが、

スキンヘッドの周囲の男10人が弓矢を構え逆に男を威嚇!

弓道警察だ!!


弓道警察の極めて正しい姿勢から一斉に矢が放たれ、男を串刺しにしていく!!


「ンぐわーっ!!!!」


「貴様等!顔を上げてよーく見ろ!これこそが神帝に歯向かった物の末路!

 神帝の意思は神の意思!!この男は神に背いたから天罰を受け地獄に落ちたのだー!!!」


「酷い……!」


群衆の中で男が惨殺されるのを目の当たりにしたシャインは苦言する。


「こんな暴虐、赦す訳には…!!」


怒り、一歩前に歩み出るシドだが、エルがそれを制止。


「何故止めるんです!!?」


「行ってどうなるの?」


「あいつ等を倒すくらいなら!!」


「今目の前にいる相手を倒したって何の解決にもならない!!

 また別の相手が来て同じ事の繰り返しよ!!」


「じゃあどうすれば良いんです!!!?」


その時、


「うわあああーっ!!!」


弓道警察の一人が悲鳴を上げながら倒れた。

ざわめく町人。


「き、貴様ー!!何者だ!!?我々が神帝軍と知っての狼藉かー!!?」


一点を睨みつけ怒鳴るスキンヘッド。

その視線の先にいたのは…小妻コウ!!

コウはスキンヘッドを睨み返しながら、


「神帝に伝えろ。勇者が来た。王様ごっこはもう終わりだ」



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