第五十八話「リゼル騎士団」
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感謝感激!!
モアザ・バルバ。
シャインとシャッテの母親であり、
かつて二人の娘と共にマウザンディアへの復讐を果たそうとした女魔術師…。
だが、
「モアザ・バルバ、貴方は今服役中の身の筈だ。こんな所にいてはならないのでは…」
「確かに私は罪を犯し、そしてその罪は未だ償い切れてはおりません。
けれどアルバスは私の罪状を帳消しにする代わりに、ある条件を出してきたのです」
「条件?」
「デストラ軍への…と言うよりもエタニティへの全面協力。
けれど、もしそうしたら私は遅かれ早かれ娘と戦わされる事になってしまう…!」
「だからデストラを捨て、ルトヴァーニャに亡命してきたと。
子供と戦いたくない一心で」
「当然でしょう?子供を殺したがる親がいるものですか」
親になるどころか結婚するどころか、彼女いない歴と年齢がイコールで結ばれているコウにしてみれば
「そういう者なのか」としか言いようがなかったが、
実の娘であるシャインとシャッテはと言うと、
「私だって同じだよ!お母さんと戦いたくなんかない!!」
「お母さんも今のデストラが許せないのなら、私達と一緒に戦おう!ね!?」
「えぇ…!もう二人を置いていったりしないからね!
小妻コウさん!」
「あ、はい」
「今日まで娘二人をお預かりいただいて、ありがとうございます!」
「いえ、こちらこそ貴方のお子さんにはいつも助けられておりまして…」
「嬉しい限りです。して本題に入りますが」
「はい」
「騎士団長から話があるそうですので、まずは彼の所まで行きましょう」
ただ娘に会いに来ただけなのか、と疑問を抱きつつもコウ達はモアザと共に騎士団の兵舎へと向かった。
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騎士団の兵舎の中心にある会議室に集ったコウ達を騎士団長ボーマンが迎え入れた。
白髪混じりの短髪と顎髭を蓄えた聡明な男である。
穏やかさの中に覚悟と力強さを内包した眼差しと顔や首筋の傷から長きに渡り王国に仕え、
そして幾多の死線を潜り抜けてきた事は想像に容易い。
「初めましてだな、小妻コウ。君の事は部下達から既に聞いている」
「こちらこそ、初めまして騎士団長。リゼル王女の騎士を務めさせていただいてる小妻コウです。」
「うむ。お互い挨拶もほどほどに、本題に入ろう。
今現在の、アーサレナの情勢は知っているな?」
「ええ。最悪だと聞きました。大半がデストラの勢力下に落ちて…」
「ほぼ全ての国の人間から自由が奪われた状態となっている。
世界征服一歩前と言った状態だ。
偵察隊から入った報告によると、デストラ軍は制圧した地区の自治に関しては『転生者』なる者に全て一存しているらしい」
「支配下にあると解らせるにはより力の強い奴を置く、と言う事ですか‥‥‥。」
「おそらくは。その力は絶大と言って良いが弱点はある。それが何か解るな?」
シャインは「キモい奴が多い」と答え、エルは「器量の小さい奴が多い」と答え、
ツバキは「力以外全部」と答えた。
全て正解だと言えばそうなのだろうが、
「いや、私が言いたいのはだな………。」
どうやらボーマンが言いたい事からは外れていたらしい。
では何が言いたいのか?コウは考え抜いた末、
「…領土を、広げすぎた事ですか?」
殆ど当てずっぽうだった。
だが他に一将校が言い出しそうな答えは思いつかない。
これで外れてたらそれこそお手上げだ。
「その通りだ。彼等は世界中へ総攻撃を仕掛けその殆どに勝利し領土を拡大させたが、
急激な領土拡大のしわ寄せで補給が滞り治安も良くなるどころかむしろ悪化してるとは偵察隊の弁だ」
「まぁ、力で人を屈服させる事しかできないであろう連中が殆どだから、当然かと」
「そこで私はデストラ制圧下に置かれた国々を奪還する為二つの作戦を考案した。
1つは補給ルートを断ち敵を損耗させる作戦、通称『コード・ポルクス』
もう1つは各拠点に奇襲をかけ奪還、勢力圏を奪い返す作戦、こちらの通称は『コード・カストール』だ。」
ポルクスとカストール。
共にギリシャ神話のゼウスの子で、ふたご座の由来となった神話の人物だ。
このアーサレナの世界にギリシャ神話が何故浸透してるかは疑問だが、単に恰好重視でこの名を付けたのかもしれない。
ボーマンの説明は続く。
「コード・ポルクスにはこちらで編成した部隊を派遣する。
コード・カストールの方はコウ、それにリゼル様、君達に任せたい」
「え!?」
藪からな話だった。
ルトヴァーニャの、いやアーサレナ全体の未来をかけた一世一代の反抗作戦の片翼を
元々ただの高校生だった少年とその仲間に一任するとは。
しかしコウの言おうとしてる事を察してかボーマンは、
「言いたい事は解る。騎士と認められて早々こんな大仕事を任されたのだからな。
だが先も言った様に制圧された箇所を護っているのはこのアーサレナならざる地より来た者達『転生者』だ。
そして奴等との戦力差は歴然………。ならば転生者の相手を出来るのは同じ転生者である君を置いて他にいない。
これは転生者たちの暴走を食い止めると言う、君自身に課せられた使命だと私は考える」
「使命…」
「君にならできる。いや…これは君にしかできない事だ。頼む………」
深く頭を下げるボーマン。
彼の後ろの方でそれまでコウとボーマンの話を黙って聞いていた騎士達も
私からもお願いしますと言わんばかりに頭を下げた。
「あ…あ……解りました。俺自身も今のデストラのやり方が許せない所はありますし、
やってみせます」
頭下げて懇願されては断ろうにも断れない。
それがコウの欠点の1つでもあった。
「ありがとう。では早速だが君達にはルスナに向かってもらう。」
「ルスナ…」
コウが何処だ?と聞きたげな表情を浮かべるとリゼルが、
「中東にある小国よ。発展途上な上治安も良くない所だけど、それでも今よりはマシね」
「あぁそうだ。出発する前に君達部隊の名称も考えないとな。
いつまでも君達、俺達のままじゃ締まらないだろう」
「まぁ、そりゃそう…ですね」
コウはリゼル達の方を見やり、ボーマンの方へと向き直ると、
「………考えては見たけど、こう言うのは難しく考えるより直感で付けた方が良さそうだ。
リゼル騎士団。今日から俺達は…リゼル騎士団だ」
「リゼル騎士団………」
「リゼルとその騎士になった男2人が中心だから、リゼル騎士団。悪くないだろ?」
「中心って…僕もですか?」
シドが驚いた様子で周りを見渡す。
会って日も浅いシドが動揺するのも無理はないが、
「そりゃそうさ。お前だって王族だ。王族で騎士なら、立派な中心人物だろ。
それに、シドはいつか国王陛下と呼ばれる逸材なんだ。もっと堂々としてれば良いんだよ」
そう言ってコウはシドの背中をパンッと叩き、
「最初の行き先はルスナだったな。船を使わなきゃいけないんじゃ…」
「その心配は要りません」
今までずっと沈黙を保っていたモアザがここで一歩前に出た。
モアザが左手をかざし、円を描く様に左腕を動かすと、彼女の目の前に人一人が入れるほどの大きさの穴が現れる。
「これは…空間魔法!?確かに貴方なら使えるかもしれないけど…これは流石にマズいのでは?」
「確かに褒められるやり口ではありません。けど状況が状況です。
手段の綺麗汚いにこだわっている余裕はありません」
非常事態故致し方なしと反論するモアザに対しボーマンも、
「それに向こうは散々禁術を使ってきてるんだ。目には目、歯には歯、禁術には禁術で対抗するまでの事。
この事に関しては陛下も了承済みだ。気にせず進むがいい」
そういう事なら、とコウは深くお辞儀をした後、穴へ向かい歩き出し、リゼル達もそれに続く。
穴を潜る直前、コウはモアザとボーマンの方を振り返り、
「…この国の事を、お願いします」
「当然だ。それが騎士団長としての私の役目だからな」
「今のデストラは第三者の手により破滅へと向かっています。
止められる者がいるとすれば、同じ境遇を持った貴方とその仲間だけ…。
救って下さい。世界を、デストラを…。」
「それでは」
コウは再び真正面を見据え、
「俺達の、いやアーサレナの反攻はここから始まる。
絶対に失敗はできない!必ずルスナを解放するぞ!!」
リゼルが、エルが、シャインが、シャッテが、ツバキが、シドが頷くのをコウが見やり、
リゼルが左側の髪留めを剣に変えると真正面に構え、
「リゼル騎士団、出撃!!!!」
悠然とした足取りで穴の向こうに広がるルスナへ向け突き進む。
ルトヴァーニャの一大反攻作戦コード・カストールは、今始まりを告げたのだ。
なんだか「俺達の戦いはこれからだ!」的なオチになってますがこれで終わりじゃないのでご安心を。




