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オズマ戦記  作者: 葱龍
五章「転生者大戦 開戦篇」
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第五十七話「1つの勝利と十の敗北」

思考錯誤も兼ねて文体を少し変えてみました。

評判次第では今回の文体で執筆続けるかもです

ミュラン沿岸の戦いから一夜が明けた。

戦場となった地のあちこちからは黒煙が上がり、戦死者たちが炎に焼かれていく。

その傍らには火葬される死者らを見つめるコウの姿があった。

本人たっての希望で、志半ばで散っていった者達を敵味方問わず弔っているのだ。


「ルトヴァーニャ側の被害は、死者12名、重傷者13名、軽傷者が16名です」


コウの傍らに立つシドが、先の戦いでの被害者数を述べる。


「デストラ側はもっと死んだんだろ?」


「えぇ…まぁ……」


「戦死した12人の遺族に、なんて言えば良いんだ…!」


「簡単ですよ。国を守るために立派に戦いました。って…。

 いずれこうなる事を覚悟した上で入団したんです。悔いはないでしょう」


カイルも付近の偵察を終え、コウの近くに歩み寄ってきた。


「コウお前、デストラの兵士も弔っているのか?」


「はい。死んでしまえば、敵だろうと味方だろうと関係ないですから。

 せめて最後くらい、人として眠らせてやろうと思って………」


「優しいな。戦っている最中も、お前は決して相手を殺めようとはしなかった。

 だが、敵は必ずやその優しさに付け込み卑劣な策をめぐらせてくるだろう。」


一理ある。

エタニティは転生者を中心とする組織であり、

大武闘会でシロウを狙撃した奴の様に卑怯極まりない奴だっている。

奴等ならば人質をとる事も無差別攻撃も大量虐殺も何の躊躇もなくやってのけるだろう。

それこそ、ゲーム感覚で。


「あぁ、そうだコウ。お前に良いニュースと悪いニュース、どちらとも言えないニュースの三つがあるんだが、

 どちらから聞きたい?」


映画で何度か聞いたセリフだ。

こういう時は、大抵悪いニュースと言うのはタンスに脚をぶつけたとか他愛ない物ではなく、

笑うに笑えない重いニュースと相場が決まっている。

だから先のカイルの台詞の様な質問をされた相手は、

悪いニュースから先に聞いて良いニュースを後に持ってくる事で心理的ショックを和らげようとする。

コウも、そうしてみる事にした。


「…悪いニュースからで」


「先程王宮から連絡があった。ルトヴァーニャ、ミュラン、大和と、

 デストラと同盟を結んでいる国以外の全国家が…デストラの同時攻撃を受けた」


「!?」


「本当ですか!?40以上ある国家を同時に攻撃するなんて……!!」


あまりに衝撃的な報告にさしものシドも声を荒げて驚いた。


「流石に勝てましたよね?いくら世界有数の軍事大国とは言え、

 世界各国を同時攻撃なんて無茶が…」


「残念ながら、勝てたのは我が国だけだ。いや…正確には『我が国は勝たせてもらった』と言うべきか」


「どういう事です?」


「君を、小妻コウを有するルトヴァーニャには少数かつ、戦力的に見劣りのする部隊をぶつけ足止めをし、

 他の国には逆に強力な戦力をぶつけたんだ。敵が少なく、援軍も来なかったのはおそらくそれが原因だ」


「かませ犬を使われたって事ですか……」


コウが歯噛みしながら言う。


「そうだ。今や世界の70%がデストラの占領下にある。

 残って国が再び狙われるのも時間の問題と言って良い」


「………それで良いニュースって言うのは?」


「この事態を受けルトヴァーニャが大和と同盟を結ぶ事を決定した。」


独自に戦うよりは残った者同士協力した方が良い。

実に合理的な判断ではあるが、問題は中立国である大和がこの同盟に合意してくれるかどうかだ。

大和はそのテクノロジーが世界のパワーバランスを崩す事を危惧し鎖国状態を維持し続けている。

もっとも、パワーバランスの話で言えばデストラ、と言うよりエタニティも個人レベルで有している者が何人もいて、

好き勝手に暴れてぶち壊しているのだが。


「近い内に陛下が大和の総理の下へ赴き、同盟締結の為の交渉を行うそうだ」


「大和の有する科学力は、デストラと戦う上で有利になるだろうけど、

 果たして中立国のトップが同盟を結んでくれるかどうか…。」


「コウは確か数日前に大和に行ってたのだったな。総理がどう言う人かは知らないのか?」


「会ってません。国防長官にはあったのですが………」


「人となりが解らんとなるとどう転ぶかも予想できないか。

 デストラと同盟を結ぶと言う、最悪の展開にならない事を祈るしかないな」


「…話は変わりますが、最後のどちらとも言えないニュースとは?」


「デストラ大統領が…アルバス・ロアがお前と話がしたいそうだ。」


コウとシドは驚いた。

全世界に喧嘩を売った、今もっとも憎むべき相手と邂逅するチャンスが

これほど早く訪れるなんて!

だが、


「…誰から聞いたんですか?そんな話………」

「デストラからの使者を名乗る男が来てな」


カイルが親指で自身の後ろを指さすと、何者かがこちらへ向かい歩いてきた。

ほっそりとした体つきや若さ、と言うより幼さの残る顔は一見無害そうに見えるが、

相手はアルバスに通ずる者。コウは警戒せずにはいられなかった。


「初めまして、小妻コウ。俺の名は須磨豊太郎。アルバスのメッセンジャーを任された、転生者です」


妙に甲高く耳障りな声に却ってこちらが不快になる様なヘラヘラとした作り笑い。

コウはこの豊太郎と言う男がどうにも好きになれる気がしなかった。


「名前だけでなく態度もふざけた野郎だ…。」


「いけませんねぇ。初対面の相手にそんな事言ったりしちゃ」


「転生者でアルバスに味方してるって事は、先の総攻撃にも参加したのか?」


「ええ。ノーダメージで100人斬り。自己ベスト更新ですよ」


「それベストじゃなくてワーストだろうが。こんの殺戮趣味のサイコ野郎が」


「サイコ野郎………言ってくれますねぇ。勇者は寛大な心を持っていると聞いたのに残念ですよ」


「思った事をストレートに口にしてみただけなんだがな、

 性が須磨で名前が豊太郎とかいじってくださいと言ってる様な物だろ。

 お前元いた世界で通ってた学校で何と呼ばれてた?

 スマホ太郎か?それとも魔法使いか?」


「言ってくれましたねぇ。アルバスに会わせると言う命令が無ければ今ここで貴様を嬲り殺しにしていたのに!!」


「驚いたな。お前が人の言う事を聞くタイプだったとは…」


言葉は穏やかだが豊太郎は眉間にしわを寄せ歯ぎしりをし、拳をふるふると震わせているのが遠目でも解る。


「良いから!黙ってついて来い!アルバスに用があるんだろ!?」

「ああ勿論だ。だが奴の所に向かうのは俺だけじゃない。俺たち全員で行く。それで良いよな?シド」

「……はい。僕自身も、敵を知っておく必要はあると思うので」

「決まりだ。俺の仲間が集まるまでここで待ってろ」


そうしてコウと豊太郎は何でも屋のメンバーが集まるまで浜辺でじっと待ち続けた。

途中両者が睨み合い一触即発となりかけもしたが、何とか大事にはならずメンバーの集合まで双方共に耐えきる事が出来た事はある意味で幸いと言える。


そして、浜辺に集まった何でも屋オズマの面々だが、その表情には不安の色が見え隠れしている。

無理もない。案内役を買って出たと言う男が胡散臭さが服を着て歩いてる様な奴だから。


「あの須磨豊太郎とか言う男、信用できるの?」


リゼルがその場に居合わせている者が抱いてるであろう疑問をコウにぶつけた。


「全然できない。けど、こっちはアルバスに言いたい事が山ほどある。

 そういう意味ではむしろ望む所って奴だ」

「もし須磨豊太郎の言った事が全て嘘で、私達をハメる為の罠だとしたら?」


コウはフッと笑うと


「その時は、全員で袋叩きにする!」


それを聞いたリゼルは、


「まぁ、そんな事をする根性がある奴には見えないけれどね」


当の豊太郎はと言うと、シャインシャッテを眺めながらニヤついている。

気持ち悪い。とコウは感じていた。

こういう奴が女児が被害に遭う事件を起こし、性犯罪者としてニュースで取り上げられるのだろう。

シャインとシャッテも怯えた様子を見せ、ツバキとエルも豊太郎を警戒している。


豊太郎が右手をかざすと目の前の空間に人が入れる大きさの穴が開く。

コウもこれまで何度か見てきた魔法だ。確か空間魔法だったか。


「これは…空間魔法!?禁術である筈の魔法を何故…!?」


目の前に開けた穴にシドが驚く。

そう言えばこいつエタニティとはロクに遭った事が無かったな、とコウは改めて実感した。

コウは何も知らないシドに説明する意味も込め、


「禁術とかタブーとか、そう言うのは連中には関係ないんだ。

 何せ今目の前にいるスマホ君も含めエタニティって組織は1人1人がこの禁術レベルの力を持っている」


「話は済みましたか?さぁ行きますよ」


コウ達は豊太郎の後に続き穴の中へと入っていった。

穴の中は暗闇の中赤や青、紫色の光が前から後ろへと流れている。


「綺麗…」

「追いかけない方が良いですよ。少しでも道を外れたら最後、二度と元の世界には戻れなくなりますから」


リゼルが嘆息を漏らし、豊太郎が苦言する。


「つきましたよ」


暗闇が開け、巨大な城が姿を現す。

いや、正確には城ではなく大統領府。

デストラは王国ではなくて共和国だ。

久しぶりに訪れるデストラ、ツバキとシドにとってはおそらく初めてのデストラだが感銘を受けている暇はない。

コウ達は豊太郎に連れられるままアルバスのいるとされる大統領室へと向かった。


壁一面を占めるほどの巨大な窓、

20人ほどが入っても余裕の生まれる広い空間のほぼ中心に豪勢な机と椅子の置かれた以外目ぼしい物の見当たらない部屋。

まるで独裁者の心の中を表したかの様な空間で、その男は悠然とした様子で椅子ごとコウの方へと向き直った。


「久しぶりだな、小妻コウ。見ない顔もチラホラいる様だが…。」


「そっちこそ、少し見ない内に出世したみたいだな。どんなインチキを使ったんだ?」


「簡単な話だ。マウザンディアを抹殺し、国民共に洗脳魔法をかけた。

 この方が早く成り上がれるからな」


酷く冷酷で、血も涙もないやり方だが、コウは不思議とショックは感じなかった。

アルバスならそれくらいやると言う確信があったからだろう。


「異世界からこっちに転生してきて、チート能力使って世界各地で暴れまわって、

 挙句に一国家乗っ取って王様気分か…。

 これで亜人の幼女侍らせてたらまさしくWEB小説の主人公様だな」


「私にそんな趣味はないさ。それをやるのはせいぜい豊太郎くらいな物だろう」


部屋の片隅でコウ達から視線を逸らす豊太郎に

言われてるぞお前、と目で忠告する事しかできなかった。


「して、話ってのはなんだ?ただ自慢しに読んだだけか?」


「まさか。私が君を呼んだのは重大な話があるのと、意思確認の為だ。」


「意思確認?」


「知っての通りこの世界は今70%にも及ぶ地がこのデストラの領土と化している。

 準備さえ整えば、ルトヴァーニャをはじめ残った国も掌握し、

 アレキサンダーやチンギス・ハン、ナポレオンが成しえなかった世界征服さえも可能だろう」


「だがお前の目的は世界征服なんかじゃない。だろ?解ってる。

 お前にとって世界征服はただの手段、過程でしかないもんな」


「無論。世界を完全に破壊し新たな理想郷を作る為には、一度世界を手に入れなければな」


自惚(うぬぼ)れるな。国1つを自分の領土にしたからってそれで第一ステップクリアだと思ったら大間違いだ。

 こんな荒っぽいやり方を行使した以上お前に反感を抱く人だっているんだよ。

 家族を奪われた者がいる、愛する者を奪われた者がいる、誇りを踏みにじられた者がいる………

 そんな人達がデストラを憎み、お前への怒りを募らせている以上、お前の思い通りには絶対にさせない………」


「…そう断言するのは、お前が勇者だからか?」


「それもある。それもあるが、単純に人として許せないんだよ。

 世界征服も世界を破壊する事も…。

 それを止める事が勇者の使命だって言うなら、喜んで受け入れるまでだ」


「違うな。勇者の使命は世界に変革をもたらす事だ。

 歪なまま変わる事のない世界を一度破壊し、新たな秩序を築き上げる。

 それこそが勇者を勇者たらしめる使命である」


「…その根拠は?」


「私も勇者の生まれ変わりだからだ」


驚くべき事実であった。

コウ以外にも勇者の生まれ変わりがいて、しかもその"もう一人の勇者"がよりにもよってこのアルバスだったとは。

思えばコウ自身が勇者の生まれ変わりだと言ったのはアルバス。

そしてそのアルバスも勇者の生まれ変わり。

納得のいく話ではある。

自分が勇者であるなら、他の勇者とシンパシーの様な物を感じる事もあるだろう

だが……。


「このアーサレナの地に転生した私はこの世界の事を調べるうちにある伝承に辿りついた。

 『アーサレナに混乱訪れる時、天は勇者を遣わし平安をもたらす』と。」


「だからマウザンディアを殺して、

 この世に平安をもたらすと言う大義名分を掲げ世界中に戦争を仕掛けたのか?」


「混迷極まる今の時代を終わらせる為だ。多大な犠牲も流血も致し方あるまい。」


「それは自分以外の事を歯牙にもかけない人間の台詞だ!

 そんな奴に、世界をどうこうされてたまるかよ…!!」


「今まで何度も私に盾突いてきた君なら、そんな事を言うだろうとは思っていたが、

 とうとう本格的に嫌われてしまったな。

 良いだろう。君達の存在が私とエタニティ、ひいてはデストラ共和国の障害となるのなら、

 全霊を以て君達を叩き潰させてもらう。」


「それは俺達とて同じ事だ。お前だけは絶対に倒す!

 お前だけじゃない、お前に味方しこの世界で好き放題する、クドーの様な邪悪な転生者もだ!!」


コウとアルバスは無言のままにらみ合い、その場に居合わせた者皆が踏み入れない様な緊迫した空気が流れだす。

そんな中、リゼルが口を開いた。


「……お互い、宣誓は済んだようね」

「ああ。色々、解った事がある分余計負けられなくなった。」


コウは踵を返し、出入口の扉まで歩み寄る。

その背中にアルバスが、


「戦わないのか?」


コウは半分だけ振り返ると、


「お前がいつでもルトヴァーニャを潰せるのに今攻めに行かないのと同じように、

 俺達もまたいつでもお前を潰す事が出来る。

 お前と戦うのは、各国をデストラの支配下から解放した後でも充分間に合う」


「つまり私はメインディッシュと言う訳か」


「何とでも言えば良い。」


短く吐き捨て、コウは扉を開け大統領室を後にする。

リゼル、ツバキ、シャッテ、シド、エルも後に続き、シャインはアルバスに向かって「べー」と舌を出した後大統領室を出た。



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コウ達は、アルバスとの邂逅後豊太郎を呼び、空間魔法を使ってルトヴァーニャへと帰還した。

「またデストラに戻るのか」と聞いたら豊太郎は「領地の管理がある」と言ってその場を後にする。

去り際シャインとシャッテに「またね」と愛想を振りまいたが、

シャインとシャッテは顔をしかめながら中指を立て、

「二度とそのキモい顔見せんな」と嫌悪感を露わにして去りゆく豊太郎を牽制した。



「あんっのロリコン野郎!何がまたねよ!!いつそんな事言われる程仲良くなったの!!?」


何でも屋に戻るなり柄にもなく豊太郎への不平不満を怒鳴り散らすシャイン。


「まぁまぁ落ち着いてお姉ちゃん」


怒れるシャインをなだめるシャッテ。

コウとリゼルも、


「シャインの気持ちも解らない訳ではないがな」


「私もあいつは気持ち悪いと思った。12の子相手に色目使うとか、ありえないでしょ」


「あの人も転生者で、僕達と敵対関係にある以上いつかは決着を付けないといけないんでしょうね」


とシドが不安を漏らすとシャインが、

「なら私があいつを潰す」と豊太郎への敵意をむき出しにしていると、


「お取込み中のところ悪いんだけどさ…」


エルが話の端を折る様に食堂に戻ってきた。


「なんだ?」とコウが問う。


「お客さん」


エルが左に身をズラすと、枯葉色のローブに身を包んだ女性と男が入ってきた。

女性がフードを取り、素顔をさらけ出すと、シャインとシャッテは驚き目を丸くした。


「お母さん!!?」

「久しぶりですね。シャイン、シャッテ」

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