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オズマ戦記  作者: 葱龍
五章「転生者大戦 開戦篇」
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第五十四話「騎士就任」

2018/5/29 追記しました。

シドとの勝負から一夜が明け、

ルトヴァーニャ城内は右往左往する騎士達でごった返していた。

何分デストラの宣戦布告があった後だ、

暗殺者が潜んでいて就任式の最中を狙い…と言う事もあり得る。

王族が出席する式典故警備はいつも以上に厳重にしたいと言う気持ちもあるのだろう。


「しっかし、鎧を着て式に出るのは良いが…重すぎないかこの鎧?

 片腕だけでもキツいぞ」


城内の空き部屋で鎧の着付けをさせてもらっていたコウは、

初めて体感する鎧の重みに不満を漏らす。

コウの右腕に嵌められているガントレットはクロムシルバーの輝きが美しいが、

素材が軽量化されていない普通の金属な為か重い。

右腕だけでもこの重さなのに加え鎖帷子も纏っているので

最終的な総重量が相当な物になるのは容易に想像できた。


「我慢しろ。騎士になる者は皆通る道だ」


着付けを手伝っていたカイルが叱責しながらコウに鎧を着せていく。

左腕にガントレット、両脚にグリーヴ、腰にスカートメイル、そして胸にプレートアーマーを取り付けると

最後に鎧の肩の部分にマントを取り付ける。


「…兜は?」

「あくまで式典用に着てるから必要ない」


なるほど、と1人納得するとカイルの後に続いて式場へと向かった。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



式場の床には赤地に金の刺繍が施された豪華なカーペットか敷かれ、

壇上に立つリゼルの両隣には荘厳な鎧が飾られている。


式場に入り、壇上を見上げたコウはまずいつもとは異なる様相のリゼルに心奪われた。

純白のドレスを纏い、髪の上に黄金のティアラが飾られ彼女の美しい銀髪をより際立たせ、

唇にはうっすらとピンク色の口紅が引かれたその姿は、何物にも代えがたい美を感じずにはいられない。


「凄く綺麗だ………」

「ここは神聖な場だ。私語は慎め」

「はい」


率直な感想を漏らすコウだが、カイルに諫められ意気消沈。

遅れる形でシドも現れ、コウの左隣に並び立つ。

2人が式場に現れたのを確認するとリゼルの奥から国王が前へ出て、


「これより、小妻コウならびに、シド・ハーマン・ルトヴァーニャの騎士就任式を執り行う!!

 聖剣をこちらに!!」


鎧とフルフェイスの兜で全身を覆った騎士が聖剣を運んできた。

柄を握らない様に刀身と柄を両手に乗せるように持ち、摺り足でリゼルに近づくと片膝をつき聖剣を差し出す。


リゼルが聖剣を手に取ると、刀身が真横になる様に構える。

アルバスと魔剣に折られた刀身は傷跡も無くなり元の美しさと力強さを取り戻していた。

もう大丈夫そうだな、と蘇った人ならざる相棒の姿に安堵し、コウはフッと微笑んだ。


「汝、小妻コウ。汝はリゼル・ミァン・ルトヴァーニャの為、民の為、力を尽くす事を誓うか?」

「誓います」


リゼルは聖剣で右、左とコウの肩を軽く叩く。


「小妻コウ。汝をこのリゼル・ミァン・ルトヴァーニャの騎士と認めます」


コウは立ち上がり、別の騎士から円形の盾を受け取る。

こうしてコウは、正式のリゼルの騎士となったのである。


「汝、シド・ハーマン・ルトヴァーニャ。汝はリゼル・ミァン・ルトヴァーニャの為、民の為、力を尽くす事を誓うか?」

「誓います」


先程と同じやり取り。

シドもまたリゼルの騎士となった。


すると慌てた様子で兵士が式場に駆け込んできて、


「申し上げます陛下!沿岸にデストラの部隊が展開中との事!!」

「やはり動き出したか…。あの宣戦布告からして、我が国に攻め入るのは時間の問題であったが。

 シド、コウ君、就任して早々で申し訳ないが……」

「解ってます。」

「その為に騎士になったんですから」


国王とコウ達は式場を離れ別の場所へと移動する。

行き先は城の2階、作戦会議室だ。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



ルトヴァーニャ城の作戦会議室は流石に大和のそれとは異なり、

石を積み重ねた壁にルトヴァーニャの紋章が彩られた旗が飾られ、

中心には円卓と将校らが腰を据えて話し合いができる様十以上の椅子が円卓を取り囲むように配置されていた。


顎髭を蓄えた将校ティゲルが円卓上に地図を広げてみせる。

ルトヴァーニャ大陸周辺を描いた地図だ。

ティゲルは南南西沿岸部にあたる箇所を指さし、


「敵はこの沿岸部に揚陸艦四隻を展開。先んじて港を閉鎖してありますが

 万が一に備え近隣区域には戒厳令を発令してあります」

「流石手が早いな」


港の閉鎖と戒厳令は侵攻ルートに組み込まれたり揚陸艦からの砲撃を受けて

住民が被害を被る可能性を考慮しての物だろう。

それを指示される前に実行したティゲルの采配に国王は彼を責めるどころか逆に感銘を受けていた。


「敵の戦力は?」


カイルが問うとティゲルは、


「偵察隊によると展開中の揚陸艦はデストラのナボコフ級。

 これは艦自体を動かすのに必要な人員を除けば48人の歩兵、三台の戦車を同時に輸送可能な艦です」

「全艦最大積載とすれば192人の歩兵を相手にする計算か…」


カイルが顎に指を添え吐露するとコウが、


「それは単純計算での話です。今のデストラの歩兵1人をごく一般的な歩兵1人分と同一と思わないで下さい」

「と言うと?」


ティゲルが問う。


「今現在のデストラはアルバス・ロアをトップに加えた事により彼の属する組織『エタニティ』の戦力も組み込まれている可能性が非常に高い。

 エタニティを構成している人員は多くがこの世界とは別の世界から召喚あるいは転移してきた『転生者』が殆どです。」

「転生者?普通の人間や亜人種とは違うのか?」

「外見上は人間と全く変わりありません。

 しかし転生者には『異能』と呼ばれる魔法とは大きく異なる能力を持っていると言うアドバンテージがあります。

 どんな能力かは人によって大きく異なりますが、断言できるのは異能を持つ転生者は

 戦略兵器をも超え、この世界のパワーバランスを容易く崩せる程の絶大な力を持っていると言う事です。

 それも国ではなく…個人が」


戦略兵器以上の力を持つ個人。

と言うコウの解説に会議室全体がどよめき出す。


「戦略兵器より強力な個人だと…?」

「192人全員がその転生者だとしたら…ああなんと恐ろしい……!」

「そんなのとどう戦えば良いんだ!?」


狼狽えだす将校たちにコウはこの様な反応も致し方ないかと感じ始めた。

しかしコウには彼等を心から安堵させられる言葉を知らない。

そんな折ティゲルが、


「小妻君、君たちが乗ってきたあの妙な乗り物があったな。

 あれは使えないか?」

「ダメです。」

「何故だ!あれを使えばデストラの部隊にも勝てるのではないのか!!?」

「確かにガンダイオーの力を以てすれば今やろうとしてる戦いには勝てるでしょう。

 しかしあれは1国相手に使うには強すぎて世界全体のパワーバランスを崩しかねないし、

 今使えばデストラはより強力な兵器を実戦に投入し、最悪この国はデストラに敗北する事になる…」

「ではどうすれば良いのだ………ッ!!」


「狼狽える必要はありません」


リゼルであった。


「確かに彼等転生者の力は脅威ですが絶対ではありません。

 彼等も斬られれば血が出るし、痛みも感じる。

 優れた力を持っている以外は私達人間と何ら変わりないのです」

「こ…根拠は?」

「私は二度転生者と戦い、勝利している事。そして…」


リゼルはコウを指し示し、


「ここに1人、私達に協力してくれる転生者がいる事。

この二つが根拠です」


再びどよめく将校たち。


「コウ殿が転生者…!?」

「リゼル様が転生者に勝ったなど初耳だぞ!」

「おそらく大武闘会襲撃の時かと…」

「ともかくこれで少しは勝機が出てきた訳か…!!」


その様な声を聴きながらコウは国王に、


「…やはり、シャインやシャッテも戦わせる事になるのでしょうか…?」

「幼子を戦いから遠ざけたいと言う気持ちは良く解る。

 だが彼女らの魔力が我々にとって大きな助けとなるのもまた事実。」


「お前達ここで何をしてる!!」


扉の向こうで兵士と誰かが揉めている。

何事か、と国王が扉を開けるとそこにはシャインとシャッテの姿が。


「お前等…待ってろと言っただろ!?」

「いや、にーちゃん達が何話してるのか気になって…」

「聞いて面白い事じゃない。家に戻ってろ」


コウがシャインとシャッテを門前払いしようとしていると国王が、


「いや良い。却って伝える手間が省ける。

 …お二人さん、おじちゃん達はこれからみんなを守る為に悪い人たちと戦いに行かなくちゃならないんだ。」


それこそ子供をなだめる様な柔らかい口調で事情を説明する国王。

だがシャインは、


「なら私達もやる!」

「簡単に言うんじゃない!遊びじゃないんだぞ!!」

「遊びじゃない事くらい解ってる!私達だって戦う力はあるしみんなの力になりたいの!!

 だいたい大和で魔物退治した時何も言わなかったのに今更じゃない!!」


実際その通りであった事を思い出すとコウはそれ以上シャインに何も言えなかった。

リゼルもそれを察してか、


「貴方の負けよコウ。2人がやれるだけの事はやらせてみなさい。」

「………解った。だがこれだけは言っておくぞシャイン。

 何があっても生き延びる事を考えろ。」

「はい!」

「よし、次は準備だ。武器や防具を新調しないと」



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