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オズマ戦記  作者: 葱龍
五章「転生者大戦 開戦篇」
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第五十三話「決闘-デュエル-」

「騎士って…そんな藪から棒に言われても」

「藪からでは無いわよ。出会ってから私はいつもコウに助けられてばかりで、

 感謝してもしきれないくらい。騎士の身分を与えるには充分よ」

「そんな、俺はただやるべきと思った事をがむしゃらにやってきただけで…」

「過度の謙遜はただの無礼よ」


コウは返答に困り果て周囲を見やる。

救いを求める様なコウの眼差しにツバキは、


「受け取りなさい。騎士になると言う事は社会的に認められたと言う事なんだから。」

「社会的に……?俺が…?」


実感の湧かない話だった。

ロクに学校も行ってなかった自分が、

無我夢中を貫き続けた末騎士となるなんて…。


「…騎士になれば、もうこんな風にため口で話すことも出来ないんだろうな」

「公の場ではね。式典の様な礼儀を(わきま)えないといけない所では

 私の事は「姫」と呼んで敬語を使わないといけないけど、

 それ以外だったら今まで通りに接して良いから。」

「騎士になって、何をすれば…」

「今までと変わらない。困ってる人がいたら手を差し伸べる。」

「そうか。…よし、決めた!俺はリゼルの騎士になる!!」


コウは決心し、リゼルと共に城へ向かおうとする。

だが、


「僕は認めませんよ」


シドだった。

シドだけがコウが騎士になるのに異論を唱えたのだ。


「どうしてよシド!?コウは今まで私達やみんなの為に勇敢に戦ってきた!

 騎士として認められるには充分の筈よ!!」

「リゼルの言う通りよ。いくら貴方がコウと会ったばかりで実力を知らないとはいえこんな…」

「だからですよ。周りの評価がどれだけ良くとも、実際にこの目この身で確かめてみない限り、

 僕は彼の実力を認める事は出来ない。」


実姉であるリゼルやツバキに責められてもなお譲らないシド。

コウは1つ嘆息をつくと、


「…ならどうする?ここに俺を閉じ込めて城に行かせないか?」

「いや。僕と模擬戦で勝負してください。僕に勝ったら貴方を…小妻コウを姉さんの騎士と認めます」

「理屈は解った。だが、アンティルールを持ち込む以上、俺が負けた時のペナルティが無いのはフェアじゃないな。

 だからこうしよう。『勝った方がリゼルの騎士になり、負けた方は勝った方の言う事を何でも聞く』。」

「!?本気で言ってるのコウ!」


コウの提案にリゼルも驚愕し声を荒げる。


「本気だよ。俺もこいつも互いの事を知らない以上譲れない物がある。

 これはお前の騎士を決めるだけでなく、お互いのわだかまりを消し去る為にも必要な事なんだ!」

「必要って…ズルいよ。そんな言い方されたら、否定しようにも否定できないじゃない」

「ついて来いシド。勝負するならとっておきの場所がある」



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



かつてルトヴァーニャ大武闘会が開かれ歓声に包まれていた競技場も今はその面影をわずかに残すばかりで、

瓦礫が撤去されてはいるものの以前の様な熱気は失われ殆ど廃墟と化していた。


その中心、かつて石膏で出来たタイルが敷き詰められた舞台があった場所に

コウとシドは相対する様に立っていた。

コウの右手には訓練用の木剣、シドは身の丈ほどの長さの棒を右手に握っている。


「ルールは時間無制限一本勝負。どちらかが降参するか気絶したら負け。

 攻撃、戦闘補助の用途を問わず魔法の使用は禁止。2人とも良いわね?」


コウとシドの間に立ったツバキが双方を見やりながら言う。

彼女が今回の模擬戦のレフェリーだ。


「良いぞ」

「異論はありません」

「では、構え!」


ツバキの号令と共に2人は手にしていた武器を構える。

少し離れた場所で固唾を呑んで見守るリゼルとエル、シャイン、シャッテ、リド。

ツバキは右手を頭上高く掲げると、


「………はじめ!!」


そのまま勢いよく真下へ振り下ろすと同時にコウとシドが肉薄。

カンッと言う軽めの音と共に棒と木剣がぶつかり合う。


更に二度、三度と打ち合うとコウが回転の勢いをつけて木剣を振るい、シドが棒を縦に構えて防御。


「やるな…!」

「そちらこそ…!!」


シドは棒を回転させてコウの木剣を弾くと、回転の勢いを利用して木剣を握る右手を叩く。

コウの右手から叩き落される木剣。当然すぐに拾い上げようとするコウだが、シドが木剣を蹴り飛ばした為叶わず。

勝利を確信してかシドは棒の先端をコウの顔に向け、


「勝負ありです」


コウに降伏を迫る。

このまま参った、俺の負けだと言ってくるだろうとシドは思ったのだろうが、現実のコウの対応は全く正反対の物だった。


「勝った気になるな!」


コウは突きつけられた棒を掴むと、それを思い切り引き寄せる。

バランスを崩したシドの顔面にコウの肘鉄が飛び、シドは逆方向に吹き飛んだ。


「ブハァッ!!」


肘鉄を放った時シドの手から離れた棒を放り投げてダッシュすると

コウはシドの身体が地に付くより先にシドに詰め寄り、その無防備な背中を蹴り上げた。


うつ伏せになる形で落下したシドの背中を見やりコウは、


「武器が使えなくなったら負けと言うルールは無いんだ。悪く思うなよ。

 これは君の慢心が招いた…」


台詞を遮る様にシドは回転しながら蹴りをコウの腹に叩きつける。

倒立したまま二、三回転して膝立ちの体勢で顔を上げると、


「そっちこそ、説教するにはまだ早いですよ」

「それでこそだ」


コウは笑い、再び身構える。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



「いったい何事だ?」


競技場に駆けつけた国王がカイルとスタンを伴ってリゼルに問うた。

目を泳がせ口をもごもごさせたまま何も答えようとしないリゼルに変わりリドが、


「すみません陛下。コウを姫様の騎士にすると言ったらシド殿下が反対しだして……」


国王はやれやれと言わんばかりの表情を浮かべながら額に手を当て、


「つまらん意地張りおってシドの奴…。」

「殿下は昔から融通の利かない所がありましたからね。

 今回の件もコウと初対面で、彼の実力を知らない事が原因なのでしょう」

「…見ず知らずの相手に姉を負かせる訳にはいかないと言う訳だな」

「左様」


2人で勝手に納得しているリドと国王に割って入る様にシャインが、


「もしかしてシド王子って……しすこん?」

「何処でそんな言葉覚えた」


幼子が発した言葉にツッコミを入れるリドを尻目に国王はリゼルに、


「して、勝負はどうなってる?」

「え…?良い勝負をしてると思います。

 お互い武器を失った状況ではありますが、シドもコウも勝負を諦めた顔をしてはいません」


一方のコウとシドは武器を使わない肉弾戦に突入していた。

フック、ストレート、アッパー、チョップ、裏拳、回し蹴り。

お互いに体術と言う体術を繰り出しダメージを与えていく。


「コウとシド様、そのどちらかがリゼル様の騎士になる、か…」


コウとシドの勝負を観ていたカイルが口を開く。

国王の左隣に立つスタンも、


「…両方騎士になってくれたら、言う事は無いんですがね」


カイルは頷きつつも、


「もう気が済むまでやらせるしかないだろうな」


コウがシドの脚を取って転倒させると、シドの真後ろへ回り込んで両脚で腰を挟みこみ、

左前腕をシドの首、右腕を後頭部に回して極める。


スリーパーホールド。

相手の背面を取り両腕で相手の首を絞めるこの技は、

一度極まれば抜け出す事は難しいどころか、

今のコウの様に両脚を相手の腰にひっかけた状態では脱出はほぼ不可能とすら言われ、

更に数ある急所の中で特に鍛え辛い喉を圧迫する上、相手が受ける後遺症も少ない為

『シンプルかつ究極のフィニッシュ・ホールド』と評する声も多い。


「降参しろ!ここでお前が死ぬ事は無い!」

「NO!!」


首を絞められていると言う極限状況からかシドは本来のキャラクターを忘れながら拒絶。

コウは更に腕に力を込める。


「降参しろ!ここでお前が死ぬ事は無い!」

「NO!!」


首を絞められていると言う極限状況からかシドは本来のキャラクターを忘れながら拒絶。

コウは更に腕に力を込める。


「降参しろ!ここでお前が死ぬ事は無い!」


シドはコウの左腕を軽い力で二、三度叩く。

降参の合図だ。


「それまで!勝者、小妻コウ!!」


コウがシドを解放し立ち上がると、シドは両手足を放り出す様に横になるのを見やり、


「俺の勝ちだ…」

「ですね。けど、不思議と悔しさは無いですね。お互い全力を出し合ったからでしょうか」

「約束、覚えてるか?」

「ええ勿論。何なりと、お申し付けください」

「だったら………俺と共に騎士になれ」

「!?な…なんですかそれ!!それじゃ僕が負けた意味が……ハッ!?

 貴方、最初から………」


コウのその要求はシドにとって予想を大きく裏切る物だったのか、

シドは目を大きく見開いて驚いた。


「そうさ。お前をこの国から追放したって誰も得をしない。

 お前も、リゼルも、陛下も、いやルトヴァーニャのみんなにとっても損な事だ。

 だったら俺が勝って、お前にここにいてもらった方が良いと考えたんだ。

 お前もリゼルを…姉ちゃんを守りたいんだろ?」


シドは思わず目を伏せ、


「…叶わないな。姉さんだけでなく僕やみんなの事まで考えてたなんて。

 僕が叶う訳ないじゃないか」

「そう謙遜するな。お前の実力だってなかなかだったぞ」


そう言ってコウは右手を差し出す。

シドは一度躊躇するもコウの手を取りすっくと立ちあがると固い握手を交わした。


2人が手を取り合う様を見て国王は、


「リゼルを護りし、二人の騎士の誕生か………」

「片方はリゼル様の弟ですけどね」


握手し、拳を合わせるシドとコウ。

2人の間には、確かな友情が芽生えつつあった。

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