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オズマ戦記  作者: 葱龍
五章「転生者大戦 開戦篇」
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第五十一話「ルトヴァーニャへの帰還」

今回より新章………いや第二部が始まります。

ここからです。ここから本格的に物語が動き出します…。

「何の真似だ…?」


夜も更け月明りが照らす中マウザンディアは己の眉間に拳銃を向けるアルバスに怒りと戸惑いの眼を向けた。

一方のアルバスの表情は氷の様に冷たい。

だがその気になればいつでも引き金を引き、鮮血と共にマウザンディアの命を終らせる気概さえ感じられる。


「マウザンディア。今までどうもありがとう。

 貴方は面白い程私の思った通りに動いてくれました」

「貴様は私に、これ以上何を望むつもりだ…?」

「全てです。貴方が今持ち得る全て。

 地位も国家もその戦力も何もかも!!」

「……狂人め。何がお前を狂わせた!」

「まさか独裁者と呼ばれる男の口からそんな言葉が出てくるとは」


アルバスは一切の躊躇も見せる事無く引き金を引く。

鮮血と脳漿が轟音と共に飛び散り執務机と執務室を赤く染め上げる。

一部始終を部屋の片隅で見届けていた直江正嗣が五歩ほど前に出て、


「…やっちまったなぁアルバス。これから先どうするつもりだ?」

「どうするもこうするも無いさ。全て想定内だ。

 私はデストラの支配者となりこの世界の全てを変える戦いに臨む………」

「しかし、それは魔道だ。この世界にもし地獄があるとすれば、お前は確実に底に堕ちる」

「世の革命家ならば皆通る道だ。世を正す為あえて業を背負い

 変革をもたらした暁には英雄として称えられる…。マウザンディアの抹殺はその為の手段に過ぎん

 それに、止めずに見ていた時点でお前も同罪だろ?」

「それは……そうだが…」


マサツグは返す言葉に困り窓の方を見やる。

心なしか東の空に浮かぶ星が一際眩く輝いているように見えた。



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夜の闇がアーサレナの空を藍色に染め上げる中を一筋の光が駆け抜けていた。

光を放っているのは人型ではあるが人ではない。

それは機械仕掛けの巨人。名はガンダイオー。

ガンダイオーの胸部にあるコクピットの中、コウ達はしばしの眠りから目を覚ます。


「状況報告」

「現在標準時0600(マルロクマルマル)時。ルトヴァーニャまで、残り680マルールの位置ね」

「だいぶ近づいてきたな…ルトヴァーニャの人がガンダイオー見たらパニクるかも知れない」


ガンダイオーの人型でありながらあまりに人間離れし過ぎたサイズと容貌をコウは自嘲し、

リゼルも「かもね」と同意する。

このままルトヴァーニャの領空内に入れば無用な混乱を招く事は必至だろう。


「ガンダイオー、合体解除!」


コウの号令を受け、ガンダイオーのコクピットシートが移動をはじめ、それぞれが頭部、胸部、腰、右腕、左腕に移動すると、

ガンダイオーの身体が五つに分離。

元々の戦闘機、『白龍』と呼ばれる姿へと再度変形した。


「これで万事OK、とまでは行かないがさっきの巨大ロボットよりは良いだろう」


そうしてコウ達は再びルトヴァーニャへと進路を取る。

ヒヒイロハガネを届け、早く聖剣ペンドラゴンを直してやらないとと言う気持ちがコウを(はや)らせた。



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白龍をルトヴァーニャ城の中庭に着陸させ、コウ達は白龍から降りる。

ルトヴァーニャに戻ってきたと思いたい所だが、中庭に集まってきた衛兵がそうさせてくれなかった。


「なんなんですかこれは!?リゼル姫まで一緒で!!」

「説明すると長くなるので、まず陛下に話を。」

「…解りました。では少しの間お待ちください」



しばしの間大広間で待たされた後、コウとシャイン、シャッテ、ツバキの四人は謁見の間に呼ばれる事となった。

リゼルは今回客人ではなく王室側として呼ばれる事となっており、国王陛下の左隣に整列している。


「コウよ、大和への旅ご苦労であった。リゼルも…」

「はい…」

「時に、君たちが中庭に停めているあの乗り物は一体なんだ?」

「大和からの依頼を達成した際に大和政府から餞別として受領した戦闘機と呼ばれる物です。

 ルトヴァーニャの戦力として大いに役に立つはずです」

「そうか。」

「それで陛下、これを…」


コウは懐にしまっていたヒヒイロハガネの入ったカプセルを1つ取り出すと、

国王陛下の面前にに差し出した。

近衛の兵士がコウの前に出てカプセルを受け取るとコウは、


「これで聖剣の修繕が出来る筈です」

「うむ。腕利きの鍛冶師を遣わそう。それで聖剣が治ったら…リゼル」

「ええ。私もそろそろ考えておりました」

「な、なんだよ2人して…」


2人で勝手に納得し合う国王とリゼルにコウは独り狼狽える。

兵士が無礼な口を聞くなと言わんばかりの視線をコウに向けるが、国王陛下が兵士を右手で制す。


「今は秘密とだけ言っておきます。聖剣が直るのを、心待ちにしておいてください」


いつもより妙に上品な口調のリゼルに多少の違和感を感じながらも

コウ達は一度お辞儀をし、城を後にする。


城門をくぐるやシャインが、


「王様、聖剣が直ったらどうするつもりなんだろうね」

「お姉ちゃんもなんか様子がおかしかったし」

「さぁな。悪い事を考えてるわけじゃないのは確かだ」


ツバキが何を思ったのか空を見上げる。

日は既に真上にまで昇っている。


「もうお昼ね…」

「だな。腹も減って来たし…何か食べに行くか?」

「行く行くー!!」

「行くー」


コウ達は適当な料亭を探し入店。

カウンター席に全員が座ると

シャインとシャッテがオムライス、ツバキが和風ハンバーグ、コウがカレーライスを各々に注文する。


コウ達が食事をしていると、コウは店内に置かれていたラジオから流れる音声がふと気になった。

どうやらニュース番組を放送しているらしい。


「次のニュースです。昨夜未明、デストラ共和国のマウザンディア大統領が何者かに殺害されているのが発見されました。」


アナウンサーの抑揚の無い声にコウ達も食べる手を止めラジオの方を注視する。

そのニュースに店内もどよめき出す。

ガヤからは「あの人死んだの?」「病死とかじゃなくてか?」と言った声が聞こえるが、

流石に歓喜の声は上がっていない。


「マウザンディアって…あの?」

「他に誰がいるのよ。巷じゃ独裁者だって専らの評判だったから、

 暗殺しようとする人がいてもおかしくはないわ」


ツバキは複雑な表情を浮かべるシャインとシャッテを見やると

「かと言って、暗殺と言う手段がまかり通る訳でもないけれど」と付け加える。


「ツバキさんには説明してなかったな。2人はデストラの出身で、

 親がマウザンディアの急な改革に不満を抱いて父は弾圧で死に母は反政府運動に身をやつした。」

「母親の方は?」

「服役中。たぶんあと五年以上は出てこれないと思う」

「それでしばらく2人を保護してると」

「そ。原因になったマウザンディアのおっさんが死んだから、今後どうなるかって言う不安はあるけど」

「少なくとも混乱は避けられないわね。体制が良い方向に変わっていけば良いけど………」

「ま、俺達部外者が考えても仕方ない事だ。なる様になれだよ」


そう言って食事を終えるコウ。

三人が食事を済ませるのを待った後勘定を済ませ店を出ると、一路何でも屋オズマへと向かう。


「みんな、元気してるかな」


コウは無意識の内に口中で独り言ちていた。



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「おかえりなさい!」


何でも屋に戻ったコウ達をエルは屈託のない満面の笑みで出迎えた。

何でも屋を発ってひと月と経っていないのに大和に出向いた時と何か違う。

外見上は髪が少し伸びたかぐらいで殆ど変化はない筈なのに。


「エル…何かあったか?俺達のいない間に」

「特には。強いて言うなら、私が忍者になった事と………」

「忍者?転職でもしたのか?」

「してないよ。地下迷宮で見つけた巻物を見て、そこに書いてある技を身に着けたの。…まだ一つ目を覚えただけだけど」

「全然なってないじゃん。ただ読んだだけじゃん」

「こ、これからなるから問題ないし!!」


2人のやり取りにため息一つするとツバキが、


「…で、もう一つ何かあったんじゃないの?」

「それが………」


エルが半歩下がるとソファの上に座る少年の姿がそこにはあった。

コウよりも幼く、シャイン達よりは大人びた印象の忠誠的な顔立ち。

座っている状態なので背丈は解りにくいが髪はリゼルによく似た銀色…。


「邪魔してます」

「あんた…誰なんだ?」

「シド・ハーマン・ルトヴァーニャ。ルトヴァーニャの第一皇子。

 リゼル・ミァン・ルトヴァーニャは………僕の姉です」



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