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オズマ戦記  作者: 葱龍
四章「神秘と鋼の都 大和」
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第四十五話「首都炎上」

「輸送艦十六夜より伝達!ロボ部隊が敵との交戦を開始した模様!!」


防衛省本部内に据えられた作戦指令室に通信オペレーターの声が響き渡る。

作戦指令室は地下三階分に相当する大きさを有する国防の要であり、

非常時には緊急避難用シェルターとしての機能も果たす。

その最上部に据えられた司令官用の椅子にはノブシゲが鎮座し、

ノブシゲの両隣にはコウ達が戦いの様子を見守っていた。


「映像、出せるか?」


ノブシゲが通信オペレーターに問うと、


「ドローンによる空撮になりますが」

「構わん。やってくれ」


オペレーターは頷きキーボードを叩く。

すると指令室の壁の一面のおよそ半分を占める程の大きさのスクリーンに映像が映し出された。


夜の闇にチカチカと迸るマズルフラッシュが10式の姿と魔物たちを交互に照らす。

赤、青、緑、紫と多様な色彩の体液を撒き散らしながら倒れる魔物たちだが、

コウはここである事に気が付いた。


「いないな…。」

「いないって?」


独り言ちるコウにリゼルが問う。


「俺達が出くわしたキングヒドラさ。あれだけの巨体が影も形も無いと言うのは流石におかしい」

「確かに。別ルートを通ってなきゃ普通に映る筈…ハッ!!?別ルート……!?」


リゼルの独白に応えるかのようにアラームが鳴り響く。


「し、シンジュク区にて地震発生!!震度6強!!」

「6強!!?バカな、こっちは揺れを感じていないのに!!!」


ノブシゲ達が狼狽するのも無理はなかった。

地震と言うのは余波が伴う物である。

かの東日本大震災においても震源地に近い宮城県のみならず

青森、岩手、福島、と東北のみならず関東をはじめとした太平洋側全域で揺れが観測され、

停電や果ては津波による被害も多々報告されていた。


しかし今回観測された地震はシンジュク区以外の地区では僅かな揺れも観測されていない。

あまりに非現実的で奇妙な状況だ。


「姿を見せない親玉…一か所だけで起きた地震……!!?しまった!!!!」


ノブシゲも気づくが時すでに遅し。

地震の報告はそのまま魔物出現の報告にすり替わる結果となった。



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シンジュク。

色鮮やかな光に彩られ昼も夜も変わらぬ賑わいを見せる眠らない街。

その日のシンジュクも行きかう人々でごった返していた。


激しい揺れに狼狽えパニックを起こす人々。

更に地下鉄のレールと電車、更には地下と地上とを隔てるコンクリートが押し上げられ、凶悪な龍の首がその姿を現し、

続けて胴体、翼、脚、尻尾もが地上に現れる。


キングヒドラ。

かつてそう呼ばれ恐れられた邪龍はシンジュクの街並みを一瞥するや、


「…我が眠っている間に、人間の世界も随分と様変わりしたようだ…」


キングヒドラに続くように地上に這い出た巨大なガーゴイル像が、


「確かに、住む環境は変わっているようですが、人の心はさほど変わりないかと。いや…」


ガーゴイル像が見下ろす先にいた人々の反応はまばらであった。

悲鳴を上げ逃げ惑う者もいれば、物珍しそうな目で見上げ写真を撮る者もいる。


「すっげー!!」

「デッケー!まるで映画みたいだ!」

「写メ撮ろう写メ!!」


「むしろ衰えているかと」

「まぁ良い。我が力を前にすれば、その楽観も恐怖に変わる…」


そう言うとキングヒドラの顎が赤く閃き、業火が噴き出しシンジュクを赤く染め上げる。

燃え盛る炎に包まれるビル群と焼かれる人々、逃げ惑る人々の阿鼻叫喚。

シンジュクは瞬く間に地獄と化した。



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大型スクリーンに映し出される燃え盛るシンジュクと炎の中で跋扈する大型魔物達を睨みながらノブシゲは両拳をきつく握りしめる。


「迂闊だった……。知性で魔物が人間に勝る筈がないと…!まさか魔物が陽動と言う策を使うとは!!」


本来魔物は力こそ人間を凌駕する半面知性は動物並か動物より少し高い程度が良い所で、

リザードマンの様に高い知性を持つ者は「亜人」、

知性は高くないが魔力の類を有する者は「魔物」、

知性も魔力も持たない者は「動物」と区分されるのがこのアーサレナでの一般常識である。


それ故ノブシゲも、国防軍の兵士達も、戦力を分散させ一方を囮に使うなどと言う作戦に出る事はまず無いと思っていたが、現実は大きく違っていた。

陽動作戦を使われ首都を攻撃される事はノブシゲにとって、いや大和と言う国にとって屈辱であった。


作戦参謀は深刻そうな顔を向けると、


「他の部隊を向かわせるには、少し時間がかかります。」

「どのくらいだ?」

「輸送機への給油、弾薬の確保、急ピッチで進められたとしても50分以上は要します」

「遅すぎる。連中は50分で街を壊滅させうる戦力を有している可能性だってあるんだぞ」

「あの!」


コウが声を上げるとノブシゲと作戦参謀たち、皆の視線がコウに注がれた。

コウは一呼吸すると、


「地下の研究室にあった戦闘機を出せませんか?」

「あれをか?」

「輸送機を使わず直接向かえば、時間は短縮できる筈です!」

「確かにそうではあるが、危険すぎる。」

「覚悟の上です!」


そう、覚悟はできている。

お礼を貰うだけでなく、キングヒドラと戦う決意をした時、

いや樹海でキングヒドラと対峙したあの時から。

それは戦って傷つき、より強い力を身に付ければ勝てるかもしれないと言う楽観論から来る物ではなく、

蹂躙される恐怖を他人に味わって欲しくない、それを押し付ける者が許せないと言う純粋な正義感から来る物だった。


「…ダメだと言っても行くつもりなのだろう?良いだろう、行ってきなさい。ただし、絶対に生きて帰ってきてくれ」

「…解りました。必ず、生きて帰ってくると約束します」


そう告げるとコウは指令室を後にし研究室へ、そこにある戦闘機目掛け一直線に走り出す。

振り返ると、リゼル達も後に続いていた。



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研究室に着くとゴチャゴチャと床面を這いつくばっていたケーブル類は片づけられ、

戦闘機が通れるように機材も整理され以前着た時とは違う様相を見せていた。

戦闘機へ駆け寄るコウ達に研究員の一人が、


「推進剤の給油は済ませています!それと乗る時は起動テストの時に乗った機体でないと動きませんのでご注意を!!」

「生体認証的なのが積んであるの?」

「そうです」


コウは言われるがまま起動テストの時乗っていた機体を探してコクピットに乗り込む。

一度起動に成功したら魔力を込める必要は無いのか、イグニッションキーを捻ったらすぐにエンジンに火が点いてくれた。


「ところでこれ名前はあるんですか?」


コウはふと自分が乗っている戦闘機の事をこれから何と呼べば良いか気になって問いかけてみた。


「正式名称は不明ですが、我々は便宜上『参式特別戦闘機「白龍」』1から5と呼んでいます」

「じゃ……」


コウはフットペダルを踏み込み、スラスターを吹かすとコントロールレバーを動かして具合を確かめる。

レバーの動きに合わせフラップが小刻みに動くのを確認するとレバーを定位置に戻し、


「小妻コウ、白龍1、出ます!!」


白龍と呼ばれた機体は目にも留まらぬ速さで研究室を飛び立った。

一瞬で最高時速に達する加速に身体をシートに押し付けられる感覚を味わいながら、

コウは外の景色が一瞬で夜空に変わるのを垣間見た。


この速さなら、いける!

確信しコウは機体をシンジュクの方へ向け加速させた。


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