表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オズマ戦記  作者: 葱龍
四章「神秘と鋼の都 大和」
47/168

第四十四話「前哨戦」

PV数が4000、ユニークアクセス数が1700を突破しました。


「指摘されていた通りでしたね!僕も考えてたんですよ、何故1機ではなく5機纏まって埋まってたのか…

 だけどその謎が今解けた!あの機体は5機一組で運用する事を前提とした物で」


まくし立てるような口調で研究員の一人タカユキは語り出す。

分厚い眼鏡に伸ばしっぱなしで手入れもしていない髪型、白衣の下はTシャツにジーンズ、素足にサンダルと

オシャレには無頓着な恰好が研究者らしいと言えばらしい出で立ちの人物だ。


彼は普段は殆ど人と話をする事は滅多にないが、その分一度話し出すと気が済むまで話すのをやめないきらいがあるが、

大和の名門大学を首席で卒業し、ロボの開発にも携わった天才である事は誰もが認める事であった。


熱弁するタカユキを見やりコウは、


「火が付いた様に喋りまくってるけどあれ大丈夫なんですか?」

「害があるわけではないし離したい事一通り話せばまた大人しくなるから放っといても良い。

 それよりも…」


ノブシゲは別の研究員と視線を合わせると、


「状況は?」

「ターゲットは現在シズオカを東へ向け進行中。カナガワ、そして首都トキオに到着するのも時間の問題かと」

「対策会議の準備は?」

「進めてはいますが、会議中に魔物たちが大人しくしてると言う保証がありません」

「それでもやらねばなるまい。独断で軍は動かせない」

「存じております」


ほどなくして魔物の軍勢対策会議が執り行われた。

野党が軍を動かす事に反発するも国民の安全を第一に考えるべきと言うノブシゲの発言に閉口せざるを得ず、

軍は害獣駆除目的での出動が要請される運びとなった。

地上に出たコウ達が見た、輸送機に積み込まれていくロボの姿は勇ましく見えたが、

パイロットがこれから死にに行くのかもしれないと考えると何処か儚げにも見えた。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



シンと静まり返った森の真上を巨大な羽根を生やした鉄の鳥が通り抜ける。

人の手で作り出されたその鳥は「多目的戦術輸送機『十六夜』」と言う名が与えられており、

その腹には最大200tまでの物資を搭載し、4基のジェットエンジンと翼端のローターを用いて飛行するのが大きな特徴である。

今、十六夜の貨物室には最新鋭のロボ『10式』が三体、その後方には同型の輸送機が二機。


「ポイントに到着」

「ポイントに到着」


十六夜の操縦士が告げ、副操縦士が復唱。

いずれも慣れた様子である。


十六夜の貨物室のハッチがゆっくりと開け放たれ、外の風が乱暴に室内に入り込む。

横に広い貨物室の10式は既に懸架とパイロットの搭乗を終え、発進を待つばかりである。


「投下開始」

「投下開始」


操縦士達の合図と共に投下される10式。

規定の高度に達するとパイロットはコンソールを操作し、10式の背面に装備されたパラシュートを開く。

落下速度を減殺し、脚部のスラスターを吹かすと森の開けた空間に一機、また一機と着地する。


「一番隊、降下完了。索敵後目標への接触を図る」

「了解、当機は予定通り合流ポイントで待機する」


続いて二番隊、三番隊の10式が着地に成功したのを確認すると

背中から専用のアサルトライフルを取り出し、計9体の10式はゆっくりと前進を始める。


数キロほど移動すると、キングヒドラに随伴していた魔物の群れに出くわした。

大きい物は10式を見下ろせるほど、小さい物は人間と同等かそれ未満と大きさも外見もバラバラだ。


「魔物を確認。警告は?」


部隊長は無精髭の残る顎を指でさすりながら、


「意思疎通ができるかは解らんが、一応警告しろ。呼びかけに応じなかったり、攻撃してきたら撃っても構わん」

「では…。これより先は民間居住区のあるエリアです。健やかに停止し投降しなさい」


兵士の警告を意に介さず一歩踏み出す魔物たち。


「ダメみたいです。」

「…やむを得ん。各機射撃用意!」


隊長機の合図で10式が一斉にアサルトライフルを構える。

しかし、10式がライフルを撃とうとした瞬間、木陰から何かが飛び出した!!


「なにっ!?」

「しゃ、射程範囲内に新たな反応!

 人です!!民間人が飛び出してきました!!」

「ええい、何処のバカだ!!」


飛び出してきた人影は中肉中背、大き目の顔の中年男性だった。


「探しましたぞ!!文明の破壊者たち!」


中年男は魔物の中で特に大きい、巨大な石像を見上げ叫んだ。


「私は西谷!!大和の現政権の危険性を世間に訴えるフリージャーナリストです!!」


「なんだ一体…?あの民間人、何を言っているんだ?」

「西谷…確か、ゴシップ系の週刊誌にコラムを載せているジャーナリストです。

 もっとも、書いているコラムがかなり左寄りな上内容は支離滅裂と評判は最悪ですが」

「そんな奴が何故ここに」


石像の下顎がゆっくり開かれると、


「何用だ……脆く小さい人間よ…」


喋った。

外見は人間に似せていようと体躯は人間とは似ても似つかぬ怪物が喋った。

このアーサレナに置いて人語を話す種族は人間以外にも山といるが、

それでも巨大な石像が喋ると言うインパクトは計り知れない。

西谷はその様子に物怖じ1つ見せず、


「私は、貴方方に頼みがあって参りました!今この大和の国は腐りきっております!!

 人心は乱れ政権は腐敗し、今の総理は他国に戦争を仕掛けようとしている!!!

 貴方方には今の政府高官を皆殺しにしてもらいたい!!」

「貴様はどうするのだ?」

「現政権が打倒された後で総理大臣となり、新生大和の政治を司る救世主となる…!」


「あいつ…魔物連中に反政府テロをやらせるつもりか!?」


西谷の発した言葉に部隊長は狼狽し、そして憤慨する。

国と国民を守る義務を背負った国防軍の眼前で国家転覆の目論見を口にするこの男の存在が許せなかったのだ。


「ほぅ…」


巨大な石像が見下ろし、顎をしゃくる。

すると石像の足元にいたワーウルフは腰に提げていた剣を抜き、頭上まで振りかぶると…そのまま一直線に振り下ろした。


西谷の左肩口から夥しい量の血が噴き出し、西谷の左肩から先が消えていた。

彼の足元には、切り落とされた彼自身の左腕が鮮血を浴び真っ赤に染まっていた。


「あ…あああ‥‥あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


状況が呑み込み切れず依然血を噴き出し続ける左肩口を見て絶叫する西谷。

魔物の群れと自分の肩わ交互に見やり口をパクパクと開閉させている。


「あいつ…!やりやがった!!」


西谷が襲われた事に激昂した10式の部隊が一斉にアサルトライフルを構える。

しかし、


「待て撃つな!!」


部隊長は部下たちの攻撃を制止する。


「何故止めるんです!!例え相手がクズだとしても、魔物が人に危害を加えたんですよ!!?」

「今撃ったらあの民間人も被害を被る!!」



「な…何故?何故私を斬る!!?そうか解ったぞ!お前達も現政権を支持する薄汚い資本主義者共だな!!?」

「違うな」


石像の抑揚の無い言葉が西谷の主張を真っ向から否定する。

更に、


「我々の目的はこの地に巣くう人類の殲滅。お前も例外ではなく、そして手近であったから手にかけたまでの事。

 資本主義がどうとかなどどうだって良い。お前達」


石像に促されるや彼の足元にいた魔物たちが一斉に西谷に襲い掛かる。

着ていた服ごと皮を裂かれ、肉を引き千切られ、瞬く間に無惨な肉塊と化して魔物に食われていくのを

10式の部隊はただ黙ってみている事しかできなかった。


「くそっ…ただ見てるしかできないなんて…!!隊長!なんで……」


部隊長は苦虫を噛んだ様な表情を浮かべながら、


「撃てば、国防軍が民間人を巻き添えにした事になる。国民を守る為の軍としては、それは避けたい…」

「けどその民間人はもういません。魔物に…食われました」

「ああ。総員発砲を許可する!」


部隊長の合図と共に10式のアサルトライフルが一斉に火を噴いた。

あのフリージャーナリストの仇を取る訳ではない。

しかしあのような無惨な死を他の物に強いるつもりもない。

さっきは守りようが無かったが、1人よりも多くの国民を守るために戦うと言う彼等10式部隊の思いは変わる事は無かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ