第三十九話「私の父は真田丸」
総合PV数が3000を越えました。
「私達、まだアーサレナにいるのよね?第三者の手で異世界に飛ばされてたりしないわよね?」
リゼルの口からとても異世界人とは思えないような言葉が飛び出す。
無理も無い。古き良き西洋文化の面影を残す街から海を渡ったら目の前に未来都市が広がっていたのだから。
「イメージしてたのとだいぶ違う…。
もっとこう…長屋が何処までも続いてて、和服姿の人や人力車が横行して、道行く人の何人かが刀を腰に差してるのをイメージしてたのに…
これじゃ和風ファンタジーじゃなくてニン〇ャス〇イヤーの世界じゃねぇか!!」
想像してた物とあまりにかけ離れた大和の景色にコウは憤慨するが、
リゼルはただ「ニ〇ジャ〇レイヤーってなに?」と呟くばかりだった。
「少しは理解できた?大和が軍を持たない国としか交易をしない理由が…」
「まぁ、何となくは…」
ツバキが問い、コウが答える。
リゼルもまた、
「大和が軍事力を持つ国と交易をすれば、得られた技術力で軍備を増強し、戦火が拡大する。
彼等が恐れてるのは、きっとそれ…」
「もっとも、技術力目当てに侵略してくる国も中にはあるだろうけどな…
だいたいマスターフォンとかゲーム機が普通にルトヴァーニャでも売られてるのは良いのかよ」
「…行きましょうか」
「話聞けよ!っつか行くって何処にだよ!」
「私の父の仕事場、防衛省よ」
ツバキの父。
一体どのような人物だろう。
期待と不安を混ぜ合わせながらコウ達はツバキに案内されるがまま大和防衛省へと向かう。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
防衛省庁舎は大和の首都トキオの都庁に構える大和の国防を担う機関である。
ここからの要請を受け大和の防衛軍は初めて行動を起こす事が出来るとツバキは言う。
単純な利害だけでなく世論も考慮した上で軍を動かさなければならず、
命令を受けてから行動に移されるのにも時間が掛かる為柔軟な対応が出来ないと言う問題点も存在する。
大和防衛軍に限った話ではないがやや面倒だとはコウも思う。
昇降機で4階に行き、ツバキの後を付いていくがまま通路を右へ左へと曲がっていき、
真っ直ぐ進んだ先にツバキの父の部屋はあった。
「失礼します」
扉を開けて中に入ると、そこには立派な椅子に腰かける青年がいた。
鼻の下と顎に立派な髭を蓄えている事を覗けば概ね若々しいが、
この場で椅子に座っている以上それ相応の地位の人間である事は確実だろう。
「よく来てくれた。私は大和の防衛大臣を担当しているタカクラ。ノブシゲ・タカクラだ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
「よ…よろしく…お願いします」
「「よろしくお願いしまーす」」
各々に挨拶を済ませるとノブシゲはコウを見るなり、
「君…名前は?」
「え?俺…?…コウ。小妻コウ……です」
「その名、その髪色、その顔立ち…君、日本人だね?」
日本人、と言う何処か懐かしさを感じさせる言葉にコウは思わずギョッとした。
異世界に転生してきたコウは専ら転生者と呼ばれる身。
それをわざわざ「日本人」と呼ぶこの男は……。
「そ、そうですが…それが何か?」
「私が思うにね、この大和で暮らす人々の祖先は…君と同じ日本人だと思うのだよ。」
「?何故…そう思うのですか?」
「大和の民は皆黒か黒に近しい色合いの髪を持ち、日本のそれに近い言語を使い、
そしてその技術力は他国のそれを凌駕する。それにね、私もその日本人なんだよ」
「!?大和の高官が…貴方が日本人?」
「婿入りして妻の性を名乗ってはいるが、この世界に来たばかりの私はサナダと言ってね。
サナダ・ノブシゲ…。それがかつての私の名だ」
「ノブシゲ……サナダ…?ッッ!!もしかして貴方…真田幸村!!?大河ドラマの!」
「ハッハッハ。君のいた時代ではそっちの名前の方が有名か。如何にも。私がその真田幸村だ。たいがどらま、とか言うのは知らんがな」
真田幸村。
戦国乱世の時代に六文銭の家紋を掲げ、
その戦いぶりから日本一の兵と評された武将。
歴史の教科書等に載っている様な人が、目の前にいる。
信じがたい状況にコウは気がどうにかなりそうだった。
「つまりはそこのツバキ…さんは真田幸村の娘…。けど幸村の子供って何人いたっけ……?」
「女子が9人、男子は3人いたが、みんなあっちに置いていってしまったよ…」
ノブシゲ防衛大臣の話をしている中リゼルが、
「して、依頼の話なんですが…。まさか、自分語りをする為だけに私達を呼んだんじゃないのでしょう?」
「おお、そうだった。ここから南西に行った所にフジの山と言う大和で最も高い山があるのだが、
その麓で魔物の目撃例が多数確認されている。昨年が20件だったのが、今では600件だ。」
「前年比30倍は確かに異常ですね…。」
リゼルは顎に手を添え真剣な面持ちで応える。
「君達にはフジの山の麓へ向かい、原因を突き止めてもらいたい。
君達の実力は既に風の噂で聞いているが、嫌なら降りてくれても構わない。どうする?」
「……」
コウは一瞬考え、
「…本当に、魔物の『目撃例』だけ、なんですか?魔物に襲われた人もいるんじゃないんですか?」
「一応近づかない様注意は促しているが、それでも犠牲は避けられなくてな。
片手の指で数えるほどだが、既に死傷者が出始めている…。」
「やりますよ…。これ以上被害を広げる訳にはいかないし、今ここで降りたら何の為にここに来たのか解らなくなる。」
コウの言葉を聞くとノブシゲはふっと笑みを浮かべ、
「そう言うのではないかと思っていたよ。噂に聞く、勇者そのものと言って良い勇敢さと正義感だ。
明日0600に作戦を開始する。君達は、今日は私の家へ泊まっていきなさい。」
「ありがとうございます。宿まで用意してくれるなんて…」
「客人には最低限礼儀を尽くさねばならないからな」
日本人らしい礼儀正しさを垣間見、コウ達は一路タカクラ家の自宅へと案内される。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
タカクラ邸は都内の高級住宅街に構える三階建て、200坪を越える豪邸である。
家の大きさはもちろん、庭の大きさも相当な物があり、
自分がかつて住んでいた家も今住んでいる事務所兼自宅もまとめて入ってしまいそうだとコウは考える。
庭をデカくしたがるのはどの世界の金持ちも一緒か。
と言うか何故庭をデカくしたがるんだ。
金持ち流の自己顕示欲なのか?
などとコウが思いながら玄関前まで歩み寄ると、
「いらっしゃい!」
木製のドアが開け放たれ女性が1人姿を現した。
やや下がり気味の目尻と服越しでも解るほど豊満なバストがその女性の妖艶さを際立たせる。
外見から実年齢をうかがい知ることは難しいが、見た感じは30代くらいか?
「あ、私のお母さん」
ツバキに紹介されるやコウ達は驚愕の叫びを上げる。
若すぎる。子供を産んでから15年以上経過した女性の外見には見えない。
コウは女性に年齢を聞く事は失礼だと承知した上で敢えてツバキに質問を1つぶつけてみる事にした。
「不躾な質問するようだけど、ツバキさん今幾つ?」
「19よ。お母さんは42で…父さんは64」
「42と64…この見た目で42……あんたの家族は波紋戦士か?」
「生憎、道場追い出されるような事はやった覚えが無くて…」
「そういう意味じゃねぇ」




