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オズマ戦記  作者: 葱龍
三章「熱闘!ルトヴァーニャ大武闘会」
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番外編2「奔放に、懲罰を」

ルトヴァーニャの地より遥かに遠く離れた不毛の大地。

土は荒れ木は枯れ、陽の光は差さず常に紫色のおどろおどろしい雲が空を覆い隠す。

そこにもかつては文明が栄え木々も生い茂っていたが、長く、そして頻発した戦乱と退廃により荒れ果て、

文明の面影は残された廃墟に残すのみとなっていた。

その地の名は「ハザム」。

アーサレナのソドムと呼ばれたのがナダならば、そこはアーサレナのゴモラと言うべき場所だった。


そのハザムの地の中心に一際大きな建造物がある。

以前は最も地位の高い貴族が住んでいた屋敷であったが、

今この屋敷を使っているのは別の人間だった。

そう、結社「エタニティ」が。



屋敷の一際大きな部屋に携えられた豪勢な玉座にアルバスは腰を下ろしていた。

大武闘会をエタニティが襲撃してから3日。

アルバスの疲労はとうに回復しきっているが、他はそうもいかない。

先の戦闘でどれ程の損害が出た事か…。


「報告します」


部屋に入ってくる人影が一つ。

エタニティ幹部の直江正嗣だ。


「下位戦力50名投入し、うち負傷者27名、死亡者12名、上位と見なされている戦力からも死傷者が出ています。

 それに離反者が一名…」

「シロウか」

「ええ」


正嗣は手にした報告書を見ながら淡々と告げる。

アルバスは、正嗣が表情を変える所を一度たりとも見てはいない。

それが不満であり、不安でもあった。


「随分と冷静だな」

「私は幹部であり国王です。逐一感傷的になっていては責務は果たせません」

「自分の眷属が死んだのにか?」


アルバスはラークスが死んだ件を指摘した。


「…ラークスの事を言っているのなら、それはあいつの運が無かったと言うだけの事です。

 そもそも、クドーがもっと理性的な行動を取っていれば、こちらの被害は抑えられたはずなんです」

「そうだな…」

「あいつは協調性が無さすぎる…。常に自己中心的で、場当たり的な行動しかしようとしない。

 組織に最も馴染まないタイプの人間です。何故あんなのを組織に入れたのか、私には解りかねます」

「…組織に入れておかねばあの無軌道さが必ずや牙を剥く。

 その不利益を回避するためスカウトしたのだが、やはり抑止は必要か…。」


エタニティに加入してからのクドーの奔放ぶりは目に余る物があった。

指示を出せば「うるせぇ」と憤慨し、やりたいと思ったであろう事は例え命令に背く行為でも迷わず行い

逆にやりたくないと思った事は必要不可欠であろうと絶対にやらない、もはや不良どころか動物レベルの立ち振る舞い。

最初はアルバスがクドーの首輪に電流を流す事で何とか手綱を引いてこられたが、かなりの頻度で流されたせいかすぐに電流を克服。

もはや当初の抑止策はその機能を失っていた。


「…あれを使うしかなさそうだな」

「あれですか…」

「仕方あるまい。行き過ぎた自由は破滅しか生まない。」


アルバスと正嗣が話していると扉が乱暴に開け放たれ、白衣に身を包んだ男が入ってきた。

彼はエタニティの医療班である。


「アルバス様!!」

「どうした血相を変えて」

「クドーが……」


エタニティと言う組織の中の階級ピラミッドではかなり下の方に位置するこの医療班の男にすら呼び捨てにされる。

それだけクドーの評判は悪かった。

アルバスは内心でクドーの悪評を嗤いながら、クドーのいる病室へと向かう。


白い壁で覆われ窓枠もまた白いカーテンで閉ざされた病室。

その壁沿いに置かれたベッドの上にクドーは眠らされていた。

ただ横になっているのではない。革製のベルトが何重にも張り巡らされ身動きが取れない様拘束されている。

クドーの危険性を考慮しての措置だ。


アルバスはクドーの隣に立つと、クドーは首を巡らせアルバスを見据える。

その眼に怒気が含まれているのをアルバスと正嗣は感じていた。


「気が付いた様だな」

「このグルグル巻きはなんだ?身動き取れねぇだろこれじゃ」

「お前が暴れないと言う保証が何処にも無いからな」

「ざけやがって…これが人間にする事かよ…ッ」

「お前の様な命令も聞かず無軌道に破壊の限りを尽くしたがる奴が人間なら犬だって人間と見なすべきだろ」

「フッ…フフ…ハハハハハ!!」


アルバスの痛烈な皮肉に正嗣は頭を抱えて大笑いする。

初めて見せる正嗣の表情の変化に彼も人間だったかと安堵しつつアルバスは、


「本題に入ろう。クドー、お前が小妻コウの仲間に敗北したのは覚えてるな?」

「思い出したくないがな…」

「その際お前が巨人化の技を使ったろう。その影響でルトヴァーニャ側はおろか我々まで被害を被った。

 どう責任を取るつもりだ?」

「そんなもん、巻き込まれた奴が悪いに決まってるだろ!!」

「不正解だな。その無責任さ、本来なら解雇か処刑と言いたいが、お前の異能はまだ使いようがある…。」


アルバスは懐からタブレット端末を取り出し操作するとその画面をクドーに見せる。

画面に映し出されたのは裾の長い白い服とマスク。

だがその服は至る所にベルトや錠前が付けられていた。

ベルトで各所を繋ぐ事で着用者の動きを大幅に制限する事は想像に容易いだろう。


「クドー。お前にはこれからこの拘束具とマスクを着けてもらう。

 この拘束具は自力では絶対に外せない構造になっているし、

 お前の異能で壊せない特殊繊維を素材に使っている。

 食事は栄養素を直接体内に注入。万が一排泄されても臭いは抑えられる。」

「要するに俺は囚人扱いかよ…」

「解ってるじゃないか。無論、お前に拒否権はないがな…」

「考え直し…いや考えた末の答えがこれだと言うのか……」

「そうだ。お前は組織の一員をやるにはあまりに奔放すぎた」


アルバスが顎で指示すると病室内に兵士が入り込み、

クドーを束縛していたベッドのベルトを外し、新たに拘束具を着せていく。

慣れた手つきで両手足がベルトで固定され、四肢を錠前で繋ぐ。

マスクがクドーの顔に近づけられるとアルバスは、


「言い残す事は?」

「…ねぇよ。もう何を言っても無駄な事くらい解ってる。」

「そうか」


無感動に応じるとアルバスはクドーにマスクを付けさせる。

これでクドーは動く事も話す事もできなくなった。

生きながら屍になった様な物である。


クドーの処分を終え病室を後にするアルバス。

そんな彼を手持ち無沙汰に追う影が1つ。

最近エタニティに加入してきた元女騎士ジュリア・カーターだ。


「あの…」


ジュリアは思い切ってアルバスに話しかけてみる。


「なんだ?」

「私は一体何をすれば…」

「とりあえず今は組織の空気に慣れておけ。異能を持たないお前は即戦力とは言いづらい」

「異能…?」

「特定の人間のみが持つ特殊能力の事だ。神の力と言って過言ではない」

「神ですか…。そんな物存在しないと私は思います」

「何故だ?」

「私には母と弟がいましたが、魔物に襲われて二人とも命を落としました。

 もし神がいるのなら、母と弟はあんな理不尽な死に方をさせなかった筈だから…」

「ほぅ…。お前の人となりが何となく読めてきたぞ。

 お前は家族が死んだのは自分に力が無いからだと考え騎士団に入ったが

 肝心の騎士団は著しく弱体化していた事に失望して、エタニティに入った…。違うか?」

「…違いません。見事なまでの洞察力です」

「とにかく組織の何たるかを学べばしっかりお前を使ってやる。いずれ大きな作戦があるからな」

「大きな…はい!その日が来るまで頑張ります!!」


ジュリアは小さくガッツポーズ。

己を鼓舞するための仕草だろうが、アルバスにはそれが媚びへつらった挙動に見え鬱陶しくて仕方がなかった。

その日のハザムも毒々しい曇天の空だったが、それでも酸の雨が降らないだけいつもよりはマシな天気であった。


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