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オズマ戦記  作者: 葱龍
三章「熱闘!ルトヴァーニャ大武闘会」
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第三十六話「巨人堕つ」

「くそぉぉぉ!!!!」


残された16体のシャドークドー全てがリゼル達目掛け突進。


「俺は!俺はこの世界で無敵の力を手に入れたんだ!!」


リゼル達の蹴りを受けシャドークドーが三体雲散霧消!


「この世のどんな権力にも屈せずどんな理不尽も叩き潰せる絶大な力を!!」


リゼル達の右ストレートを受けシャドークドーが四体雲散霧消!残り9体!!


「それを!それを!」


リゼル達のソバットを受けシャドークドーが2体雲散霧消!


「小妻コウみたいな良い子ぶった野郎や!」


リゼル達が同時にリゼルガイザーを放ち五体のシャドークドーが雲散霧消!!


「こんなアマにあしらわれてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


残る二体のシャドークドーも二人のリゼルのチョップで真っ二つにされ消滅!


シャドークドー全てが消滅し、その残滓を一瞥するとリゼルは、


「…力を誇示する事だけが目的?なら貴方に勝機は永遠に来ないわね。今までも、そしてこれからも」

「力ヲ求メ、力ガアル事ヲ証明スル事ノ何ガ悪イ。周リカラ持テ囃サレルオ姫様ニハ解ルマイ。

 自分ヨリ大キナ力二叩キ伏セラレル屈辱ガ…。抗エナイ恐怖ガ…。」



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『彼』には愛された記憶が無かった。

父親はおらず、母親は常に何かを怒鳴り散らし暴力を振るってばかり。

まだ幼かった『彼』はやがて、日常的に繰り返される暴力により、ある感情と意志を覚えた。

死に対する恐怖と、それを退ける為の殺意が…。


そして『彼』が五歳の時、その殺意は遂に牙を剥いた。

依然暴力を振るわんとする母に対し『彼』は台所にあった包丁を手にし、

それを母の喉元へと突き刺した。

何度も。何度も。何度も。

我に返った時母は既に血の海に倒れ動かなくなっていたが、不思議とパニックには陥らなかった。

むしろこれでもう殴られずに済むと安堵していた。


母の死後『彼』は施設に預けられる事になった。

『彼』は生まれて以後名前と言う物を与えられていなかったが、

それでは不便と言う事で母親の性を取って『クドー』と名付けられた。


施設で暮らすようになってからの生活は彼にとっては耐え難い物だった。

人に暴力を振るえばやり返され、怒鳴られ、時には狭苦しい部屋に閉じ込められる。

それは教育と言う意味では至極当然と言えるのだが、クドーはそうは思わなかった。

そればかりか施設の職員への、大人達への憎悪を募らせていき、遂には施設に火をつけ逃げ出した。


クドーは放火の容疑で指名手配され、そして途中盗み出したバイクで逃亡中にトラックと正面衝突。

気が付いた時クドーは既に異世界アーサレナにいた。

そして彼が超常の力『異能』に目覚めるのにさほど時間は要さなかった。


異能に目覚めた時クドーは思った。

遂に自分は万物を屈服させ世界を意のままに支配できる力を得たのだと…。



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「金モ、地位モ、何モ与エラレナカッタ俺ニハ力シカ頼レル物ガ無カッタ…。

 オ前タチガ俺ヲ排除シヨウトシタ時ドレ程コノ世界ヲ憎ンダカ!貴様二解ル物カ!!」

「解る訳ないでしょ。それに貴方こそ私の事を何も解ってない。持て囃されたのは本当に幼い頃と今だけ。

 あの戒めの鎧のおかげで私はロクに王女扱いされず行く先々で疎まれる毎日を送ったわ。

 でも誰かを憎んだり恨んだ事は一度も無かった。自分のせいでああなったんだもの、ちゃんと反省しないとね」

「偉ソウニ説教垂レルンジャナイ!!コノ……」


炎の巨人の背中から赤黒い悪魔の様な翼が生えると、炎の巨人は空高く舞い上がる。

上空10マルール(1000メートル)の高さで制止すると両手を突き出し、その先に黒い炎の塊が現れる。


その黒い炎は見る見るうちに大きくなり、地上からでも容易に視認できる程の大きさにまで膨れ上がっていた。


「あの黒い炎、魔力の質量からして普通じゃない!」とシャイン。

「闇属性の魔法…まさかこの目で見る日が来ようとは」


ジン・ハゥロンは頭上で繰り広げられる光景が信じられず独り言ちる。


「マズいな逃げねぇと!」


シロウがその場に居合わせた者全員に退避を提案するが、


「ダメ。私達が逃げてもあれだけの質量をぶつけられたら、私達どころかこのルトヴァーニャにいる人みんな死ぬ。

 それだけは絶対に避けたい」


リゼルは屹然とした態度でシロウの提案を拒否。


「じゃあどうすんだよ!」


思わず反論するシロウを尻目に国王はリゼルの意図を察してか懐に帯刀していた剣を差し出す。


「倒すに決まってるでしょ」


そう言うとリゼルは差し出された剣を引き抜くと霞となって消え、炎の巨人の頭上に瞬間移動。

炎の巨人がリゼルを見上げると同時にリゼルの眼が本来の金色に戻り衣服に走っていたラインも消える。

時間切れか?いや、ルナスプラッシュは魔力に秀でる代わりに腕力と防御力が通常時より劣り、

逆にストロングフレアは腕力と防御力に秀でるが魔力と素早さは通常よりも劣る。

魔法を武器に纏わせる『魔法剣』を放つにはどちらか一方に変身するより通常の状態に戻った方が良いと言う事を、

リゼルは誰かに教わるでもなく肌で、心で理解していた!


頭上に剣を掲げると稲妻が迸り、刀身を青白い光で包み込んでいく。

更にリゼルは掲げた剣に自らの魔力を込め、巨大な光の刃を形成。

稲妻を帯びた剣を大きく振りかぶると、そのまま炎の巨人の頭目掛け叩きつける。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


剣は炎の巨人の皮膚を引き裂きながら真下へと一直線に突き進む。

切っ先が赤黒く燃える皮膚から離れると、巨人の身体は真っ二つに裂け、音も無くバラバラに崩れていく。

リゼルが空中で3回転を決めた後華麗な着地を決めると、三秒遅れて炎の巨人の本体が、クドーが落ちてきた。


「ガボアァァッッ!!」


轟音と土煙と飛散する瓦礫片と嗚咽が混ぜこぜになって辺りに響き渡る。


「や…やった…やったぁぁ────────────!!!」


勝利を確信しリゼルの下へ駆け寄るシャイン達。


「やりましたなリゼル様!」

「お姉ちゃんかっこいいー!!」

「最初はどうなるかと思ったぜ…」


各々にリゼルを勝算する中ツバキが、


「あいつ、死んだの?」


と不安げに切り出す。


「斬撃に加えあの高さから落下したから…無事な筈はないけれど…」


と、クドーが頭をもたげリゼル達を睨む。

ツバキがすぐに身構えるもクドーは睨んだだけで力尽きその場に倒れる。


すると瓦礫の中に隠れていたであろう正嗣が再び姿を表すとクドーの下へ駆け寄り、


「無理をするな。死ぬのはお前だって御免だろ」

「貴様…」


リゼルは剣の切っ先に正嗣の方へ向けるが、正嗣は両手を上げ、


「やれやれ。このクドーはいざ知らず、我々はもう戦う気は無いよ。悔しいがお前達の勝ちだ。

 今日はもう帰らせてもらう」

「私達の勝ちって…それ貴方個人が決めて良い事なの?貴方達のリーダーの、アルバスの意向を無視するの?」とリゼルは問う。


「アルバスはこいつの様に聞き分けの無い男じゃない。事情を説明し状況を把握すれば撤退も認めるだろう」


そのアルバスは何処にいるとリゼルが聞こうとした矢先、コウが走り去っていった方の壁面が爆ぜた。

爆ぜた向こう側では禍々しい剣を握り不敵な笑みを浮かべるアルバスと、

顔面が血で真っ赤に染まり聖剣を杖替わりにしかろうじて立っているコウの姿。

どちらが優勢かは、火を見るより明らかだった。




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