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オズマ戦記  作者: 葱龍
三章「熱闘!ルトヴァーニャ大武闘会」
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第三十五話「秩序の力」

炎の巨人が左腕を振り下ろし、シャイン達がそれを散開して回避する。


「さっきから腕振り回したり蹴ったりしてばっかだけど、それしか出来ないの?」


シャインが率直な質問を炎の巨人にぶつける。

だがそれが逆に炎の巨人の逆鱗に触れたのか、


「嘗めるな!!」


炎の巨人は口から炎を吐き出して応戦。

カツヤとシャッテが炎に呑まれる!


「シャッテ!!?」

「だ、大丈夫…」


シャッテは咄嗟に水の膜を張り炎を防いでいた。

しかし形勢の不利に変わりはない。


「クソッこうなりゃ俺とジンの紅蓮掌で…」


シロウが切り出すがジンはシロウの肩を掴み、


「ダメだ。奴はおそらく炎属性。あの巨体だ。炎に炎をぶつけても奴に餌を与えるだけだし、

 水属性もこの辺りを呑み込む程の質量をぶつけなければ意味は無いだろう。」


確かに水は冷却作用が強く、燃焼物の酸素供給を断つ事が出来る為消火手段として良く用いられる。

だがそれは水の容量が燃焼の規模を上回っている場合の話であり、燃焼物にかける水の量が小さいと逆に火の勢いを強めてしまう。

焚き火にコップ一杯程度の水を撒いても火は消えないのだ。


「じゃあどうすんだよ!?このままじゃ俺達クドーに皆殺しにされちまうぞ!!」

「勝算があるとするなら…」


ジンは炎の巨人とは真逆の方を見やる。その先には…。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



炎の巨人に果敢に立ち向かうシャイン達を視界の端に捉えながらリゼルは、


「常識外れな力って…?」

「身に着けた者に他とは比べ物にならない力を授け、文字通りの超人へと変えるアイテム…。『神器』だ」


神器。

リゼルはその名を聞いた事はあった。

幼い頃何度も言い聞かされたおとぎ話に幾度も出てきていた。

ある時は立ちはだかる怪物を一刀両断にする大剣として、

またある時は嵌めた者の姿を消す指輪として、

またある時は海を開き進むべき道を作り出す杖として…。

そんな成長するにつれ作り話だと信じ込んでいた神器が目の前に、それも父である国王の手に握られている。

にわかには信じられない光景であった。


「この神器『秩序の腕輪』は聖剣共々ルトヴァーニャに代々伝えられてきた腕輪。

 先代は岩をも砕く剛腕を手に入れたと聞くが、先々代は幾人にも分身する力を得たとも伝えられている。

 お前がこれを使えば如何様な力をもたらすかは私にも解らん…」

「けど、使わなきゃあれには勝てないのでしょう?」

「ああ。悔しいが今のリゼルは勿論今の私にも倒す事は叶わんだろう。

 私が嵌めても何も変化が無かったから、リゼルにも何も起きないと言う可能性もあるが」

「それって…」

「使い手を選ぶのだよ神器と言う物は…。」


リゼルは国王から腕輪を受け取るとそれを左腕に嵌めてみる。

するとどうだろう。

腕輪の中心に嵌められた宝石がより一層美しい輝きを放った。

その輝きはさしずめ雨上がりに現れる虹かオーロラの様だ。


「この輝きこそ、秩序の腕輪を扱う素質があると言う何よりの証。

 あとは如何様な力がお前にもたらされるかだが…」

「そればっかりは実際に戦ってみなければ解らないと」


そうだ、と言わんばかりに国王は頷いた。

頭上には既に炎の巨人の腕が迫っていた。

瞬間、リゼルの頭に声が響く。

念じろ、強き自分をと。


打ち付けられる巨腕。

リゼルも国王も、その燃え盛る腕に押しつぶされてしまったのか?

否!巨腕はゆっくりと地面を離れていく。無論巨人が腕を持ち上げているのではない。

持ち上げているのは…リゼル!

その眼は炎の様な赤色に染まり、衣服にも眼と同じ色の赤いラインが走り、

炎の巨人の腕を右腕一本で軽々と持ち上げている。


「…!?ナンダ…?ナンナンダソノ姿ハ!!?」


狼狽する炎の巨人。

リゼルが右腕に思い切り力を込め巨腕を押し上げる。

たちまちバランスを崩し転倒する炎の巨人。

辺りに轟音と地響きと土煙が上がる。


「炎の如き激しさと、力をもたらす姿…。名付けて『ストロングフレアリゼル』!!」


リゼルの突然の変化に驚いたのは炎の巨人だけでない。

正嗣の眷属ルプスとリヴィアも、


「正嗣様!あの女…明らかに何かがおかしいです!!」

「さっきまで満身創痍だったのに…まるで別人の様!!」

「やれやれ。それくらい解ってる…。作戦変更。ルプスもリヴィアも、あの女を集中攻撃。

 あいつを放っとくのはマズい」

「かしこまりました!!」


正嗣の命令に応じるやルプスとリヴィアは弾けるように跳躍。

リゼルの背後に着地すると、


「エタニティに、いや正嗣様に仇なす愚か者!!」

「その業その身で(あがな)うが良い!!」


2人の言葉にリゼルはやや呆れた様子で振り返り、ため息を一つ吐くと、


「愚か者はどっちよ。守るべき者がある私と、壊す為に戦ってる様な奴に疑問も持たずに従事する貴方達。

 どっちが悪かは明白じゃない」

「黙れ!正嗣様に異を唱えるな!!」


そう怒鳴るとルプスはリゼル目掛け回し蹴りを放つ。

が、リゼルは眉1つひそめる事なくルプスの蹴りを受け流し、がら空きになった腹に肘鉄と裏拳を連続で叩きこむ。

ストロングフレアとなったリゼルの拳は一撃1つ1つが重く、ルプスは胃液と嗚咽を吐き出しながら吹き飛んだ。


間髪入れる事なくリヴィアが手にした三つ又の槍を突き出す。

リゼルは左手を上げ、三つ又の槍を薬指で受け止めた。


「なっ!?片手どころか薬指で…ッ!?」

「所詮腰巾着の力なんてこんな物ね」


左手を返し三つ又の槍をリヴィアから取り上げるとリヴィアを蹴り飛ばし、


「返すわ」


三つ又の槍をリヴィア目掛け投げ飛ばす。

リヴィアは辛うじて残っていた壁に叩きつけられ、直後リゼルが投げた三つ又の槍がリヴィアの腹に突き刺さる。


「グハッ!」

「そこでいい子にしてなさい」


リゼルは今だ立ち上がれていない炎の巨人に向き直ると空高くジャンプ。

巨人の鼻柱目掛け右ストレートを叩きつける。

巨人は再び地面に仰向けに倒れこんだ。


「クッソォ…スバシッコイ奴…ナラヨォ!!」


炎の巨人の左腕がほつれ、本来の赤黒い糸へと戻っていく。

赤黒い糸は再び寄り固まって、等身大の24の人型を成し、その姿は炎の巨人の本体を、クドーを模した姿となる。


「行ケヤ『シャドークドー』!!」


24体のクドーの分身が一斉にリゼルへと襲い掛かる。

リゼルが左拳を胸に当てると、眼の色が赤から青へと変わり、衣服の赤いラインも青へ変わっていく。


6体のシャドークドーの手刀がリゼルに次々と突き刺さる。

瞬間、リゼルの身体は霞となって消え去る。


「!?」


そして一瞬の内にシャドークドー達の背後に現れるリゼル。


「テメェ!いつの間に後ろに!!?」

「己がこの身を霞に変えての瞬間移動。それを可能にするのがこの水面の如き心に月夜を映しだす力…。

 名付けて『ルナスプラッシュリゼル』!!」

「それが…どうしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


再びリゼルに襲い掛かるシャドークドー。

しかしシャドークドーの放った手刀は、拳は、蹴りはリゼルを僅かに掠めるばかり。

それどころか、リゼルが1人、また1人と増えていき、最終的には6人のリゼルが24人のシャドークドーと対峙していた。


「分身の術、と言うらしいわね」

「俺と似たような事ができるのは感心したが、こっちは24人だ!たった6人で叶う訳が」

「むしろ一体だけでも勝てる」


自身に満ち溢れた言葉にシャドークドー等は同時に眉を顰め、


「ざっけっやっがっっっってェェェ…!!!その言葉後悔しやがれ!!」


三度リゼル達に襲い掛かるシャドークドー。

6人いるリゼルの内の一人はシャドークドーの放つ蹴りやパンチをかわしつつ、カウンターを叩きこんでいく。

カウンターの蹴りや肘鉄、掌底を受ける度シャドークドーが一体、また一体塵芥と化す。

相手の攻撃を受け流し、カウンターの一撃を加えると同時に魔法による攻撃を加えているのだ。

24人いたシャドークドーは8人消し飛び16人にまで減っていた。


「…ッッッ!!!」


歯噛みし苦悶の表情を見せるシャドークドーと炎の巨人を見やるとリゼルは、


「言ったでしょ?一体だけでも勝てるって」


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