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オズマ戦記  作者: 葱龍
三章「熱闘!ルトヴァーニャ大武闘会」
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第三十四話「『巨大化は負けフラグ』と旅人は言った」

ラークスがシャイン目掛け一直線に突進。

シャインはすぐさま炎の球を精製しラークス目掛け投げつける。


「バカめ!!」


しかしラークスが大きく息を吸い込むと、炎の球はラークスの口元へ引き寄せられ、

まるでゼリーを吸うかの様に呑み込まれた。


「私を相手に炎の魔法を使うとはな…。エサを与えてくれた事には感謝するぞ!!こいつは…そのお返しだ!!」


ラークスは再び大きく息を吸い込むと今度は燃え盛る火炎を吐き出した。


「下がれみんな!」


するとカツヤがシャイン達の前に躍り出て、両手を広げ身構える。

炎はカツヤの身体を焼きつくす。


「シバタさん!」


思わず叫ぶシャイン。だが妹のユキは、「大丈夫」と告げるのみ。


炎が消えるとそこには黒焦げになりながらもなおラークスの前に立ちはだかるカツヤの姿が。


「人一倍頑丈だから。ウチの兄貴は」


「さぁどんどん撃ってこい!!俺を倒す自信があるならな!」


カツヤの誘いに乗ってか否か、


「少し耐えたからと言ってッッッ図に乗るなぁァァ!!」


ラークスは再び火炎を吐き出した。

再び炎に焼かれるが、しかしカツヤはなおも膝をつかない。


業を煮やしたラークスは一度空へ舞い上がり、勢いをつけるとカツヤ目掛け一直線に突進した。


「その心臓抉り取ってくれるわぁ!!」


カツヤへと迫るラークス。履いていた靴を突き破り、その奥底に隠されていた爪がギラリと殺意を乗せて煌めく。

だが、


「それを待っていたんだ。お前が近づいてくるのを!」


ラークスが肉薄し脚を突き出した瞬間、カツヤは握りしめた右拳を素早く突き出した。

すると赤い光がラークスの脚を掠め、ラークスの上半身を呑み込み爆発する。


「ンガァァッ!!?」


吹き飛ばされ、すぐに体勢を立て直すラークスだがその表情は酷く困惑していた。


「混乱しているな。俺が何をしたのか解らないでいるな。説明してやろう。

 これは俺の異能の力…。俺自身が受けたダメージを蓄積しそれを倍の質量のエネルギーにして相手にぶつける。

 名付けて『倍返し(ナオキ・ハンザワ)』!!!!」


「兄貴、そのネーミングはもうちょっと何とかならないの…?」


ドヤ顔を決めるカツヤとは反対にユキは兄のネーミングセンスの無さに苦笑するのだった。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



「気を付けて。あいつ、私たちの目に見えない攻撃を仕掛けてくる!」


クドーと対峙するツバキにリゼルは警告する。


「ご忠告どうも。けど心配いらないわ。見えない攻撃だったら、こっちだって出来るから」


そう言うとツバキは懐からある物を取り出した。

藍色の柄に飾り気のない鍔、鈍色に輝く鞘…。

それは小太刀と呼ばれる武器だった。

刃渡り60cmほどの刀身はリーチこそ劣る物の携行の上で便利と言える。

ツバキが小太刀を鞘から抜くと陽の光を受けて刀身がギラリと光る。

良く磨きこまれている事は明白だ。


「そんなチャチな得物で俺に対抗しようってか?」


ツバキの小太刀を嗤うクドーだが、ツバキの表情は怒りも哀しみも見せていない。

先程現れた時と変わらぬ川のせせらぎの様な穏やかな表情のままだ。

ツバキはその穏やかな表情のまま、


「手にした武器の大きさだけで相手を判断する様じゃまだまだ三下ね。

 もっとも、自分が圧倒的に有利に立てる状態で無いと戦えないと言うなら当たり前だろうけど」


「ほざくなカスが!!!」


ツバキの言葉に激昂し二本のデスストリングスを放つクドー。

しかしツバキはクドーのデスストリングスが自身に届くよりも早くクドーの懐に飛び込んだ。


「速い!!?」


そのあまりのスピードに狼狽えるリゼル。

そして!!


「ぐああぁっ!!!」


胸から血を噴き出すクドー。

ツバキは両手で小太刀を構えたまま…否、実際には抜刀しクドーの胸を斬りつけたのだが、

太刀筋が早すぎて傍目には抜刀すらしていないように見えるのだ。


居合斬り。

刀を鞘から抜くと同時に一撃を与えるその剣術は、

一撃の威力こそ両手持ちのそれに劣るが速さに関しては両手持ち以上とも言える。

更にクドーとツバキとの距離は吐く息を感じる程に肉薄。

デスストリングスで反撃するには近すぎる距離だ。


ツバキは更に追撃の居合切りを放つ。

一撃がクドーに与えられる毎に刀身が煌めき、鮮血が飛び散るその様は

美しくも残酷。


「ぐはっ……!!」


クドーは既に立っているのがやっとの状態であった。

ルプスがクドーを助けんとツバキ目掛け鉄拳をお見舞いしようとするが、

ツバキは鞘でルプスの右腕を三度叩くと、そのままルプスの頭を掴み、


「おすわり」


地面に勢いよく叩きつけた。

ルプスは土下座をする様な姿勢のまま失神。

ツバキは小太刀を帯に納めると、


「これで解ったでしょ?己の無力さ、愚かさが。これに懲りたら何処か遠く、人目に付かない所に行って大人しくしてなさい」


しかしクドーは血にまみれた顔に笑みを浮かべ、


「何か勘違いしてないか?俺がお前に勝てないって…」


「?こんな状況で何を…」


「本当は小妻コウを叩きのめす時の為にとっておきたかった奥の手だが、ここまでコケにされたとなっちゃ仕方がねぇ!!

 はぁぁぁぁぁ……!!」


クドーの周囲を漂っていた糸がリゼル達の目にも映る赤い炎へと姿を変えるとクドーの傷だらけの身体を覆うように纏わりつく。

炎は二重、三重、四重とクドーの身体を覆っていき、その輪郭はやがて見上げる程にまで膨れ上がり…。


「何よ、これ…」


ツバキがその光景を見た者全ての気持ちを代弁した。

全身の至る所から炎を噴き出し、全てを見下ろさんばかりに膨れ上がったその人型はまさに…


「炎の…巨人…!!」


炎に包まれた人の頭に相当する部位から双眸が開かれ、更に下半分が大きく裂けて顎を成すと、


「驚イタカ!コレコソガ俺ノ奥ノ手!!名付ケテ『クドー・ザ・インヘルノ』!!」


「…でっかくなっても、相変わらずネーミングセンスは壊滅的ね……」


リゼルはよろめきつつ立ち上がると、半ば苦し紛れにクドーを煽った。

次いでカツヤとユキも、


「こういうシチュエーション、漫画でよく見るけど相手が小さい内に巨大化した奴は負けるってお約束知らないのか?」


「ドラ〇ンボールのベ〇ータが巨大化した時悟〇大ピンチになったじゃん」


「その後ヤ〇ロベーが尻尾切って元に戻したんだからプラマイゼロだろ」


「俺のこの姿を見ても余裕と言った感じの顔だな。だが」


炎の巨人が身をかがめ、その巨大な右腕を鉄槌の如く振り下ろす。

爆音と地響きを伴い競技場のリゼル達のいない方、そのおよそ四分の一が粉々に砕け散り、人々が宙へと舞い上がる。

そして砕けた破片がスコールの様にリゼル達へと襲い掛かる!


「みんな散れ!!」


ジン・ハゥロンが吠え各々が必死に破片の雨を掻い潜っていく。

そしてそれはマンダ達エタニティも同様であった。


「こンのバカ!少しは巻き込まれる方の事も考えなさいよ!!」


土埃にまみれたマンダが炎の巨人を仰ぎ罵倒する。

しかしその隣に立った正嗣が、


「無駄だよ。ああなったクドーはもう誰の言う事も聞かなくなる。

 もっとも、ああならなくても言う事は聞かないがな」



「…ッ!!」


炎の巨人を再び見上げるやリゼルは両の手で額を指さし、巨人目掛けリゼルガイザーを放つ。

紫と黄色の稲妻は螺旋を描きながら炎の巨人の頭を目指すがしかし、巨人の左手に遮られ雲散霧消する。

そしてお返しにとばかりに放たれた巨人の蹴りが他のエタニティ諸共リゼルを吹き飛ばした。


「お姉様!」


「「お姉ちゃん!」」


「リゼル様!!」


「姫様!!」


三種三様の呼び名が交錯するのを聞きながらリゼルは宙を舞い、そして地面に激突する。

仰向けになり、眼を見開いたまま微動だにしなくなったリゼル。

その姿を見た者からは一様に悲鳴が上がる。

そして、


「うぅ…」


飛来した瓦礫に下半身を挟まれ身動きが取れなくなったラークス。

瓦礫から這い出ようと必死に這い出ようとするが、そこへより巨大な瓦礫が飛来。


「ンギュッ!!」


ラークスは巨大な瓦礫に押しつぶされ即死した。

土煙の晴れた競技場を見下ろすと炎の巨人は、


「コレデ少シハ理解デキタダロ。コノ俺ノ力、俺二逆ラウトドウナルカガ。」


と、独り言ちていると動かなくなったリゼルの下に近寄ってくる1つの人影の存在に炎の巨人は気が付いた。

他とは違い、頭に王冠を被りマントを羽織っている。

このルトヴァーニャの国王だった。

国王がリゼルの隣に身を沈め、右手をリゼルの鎖骨辺りにかざすとその右手とリゼルの身体が眩い光に包まれた。

光が晴れると、リゼルの顔と体から傷と言う傷が消え、痣も跡形も無くなり、元の美しさを取り戻していた。

リゼルは目を開き、父の、国王の姿を捉えると、


「お父…様?」


「すまなかったな。国王としての責務にかまけてばかりで、お前には何もしてやれなかった…。」


「良いんですよ。お父様は私よりも、みんなの事を考えなければならないお方なのだから…。それで良いのです」


「それよりも…」


国王は炎の巨人を見上げ、


「今はあいつを何とかせねばなるまい」


「しかし魔法は通用しないし、武器による攻撃も通用するとは思えません」


「だろうな。奴が常識外れな力を行使しようと言うのなら」


国王は懐から何かを取り出した。

銀色に輝く腕輪だ。その中心には七色に光り輝く宝石が埋め込まれている。


「こちらも常識はずれな力を身に付ければいい」


「それは一体…?」


「少し遅くなったが、お前への誕生日プレゼントだよ」


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