第三十話「凶弾の先」
18年2月1日追記:
加筆修正しました。
両腕を発光させたままシロウが迫る。
コウも咄嗟に両腕を発光させシロウの両ストレートを受け止める。
僅かに後ずさるも何とか場外に押し出されずに済んだが、
持ち前の技をいとも容易く使われるのは流石にショックが大きかった。
「くそぉ…人が苦労して編み出した技をパクりやがって…!!」
「不服かい?」
「当たり前だろ、お前がやった事は技そのものと編み出した者達への冒涜だ!
俺以外にも、技をパクった奴は大勢いるんだろ!?」
「仕方ないだろそういう能力なんだから。
技を盗られるのが嫌なら、最初から技なんて物編み出さなきゃ良いだけの話だ」
「ふざけるな!!!」
コウは激昂し、シロウの顔面に右ストレートを叩きつける。
鼻から流血し倒れるシロウにコウは、
「テメェが言ってるのはただの傲慢だ!!正当性があるどころか良い訳ですらない、ただの開き直りだ!!」
「この野郎、よくも俺の顔を殴ったな…」
シロウはコウに傲慢と言われた事よりも顔を殴られたことの方にご立腹の様だが、
コウは気にも留めずシロウの胸倉を両手でつかみ上げると、
シロウの体を中空に放り上げがら空きになった腹目掛け両脚蹴りをお見舞いする。
空高く舞い上がるシロウ。
彼が目線の高さまで落下してきたのを見計らいコウは正拳突きを喰らわせようとするが、
「嘗めるな!」
シロウは空中で身をよじると右掌底をコウの胸に打ち付ける。
炎を帯びて吹き飛ぶコウと、宙返りしながら着地するシロウ。
そしてコウは、いや会場に居合わせた全ての者は、シロウの技を知っていた。
「今のは…ジンさんの紅蓮掌……!!」
「言ったろ?触れた相手の技をコピーできるって。」
「他の参加者にやたら馴れ馴れしく握手してたのは参加者の技を軒並みコピーする為か。
絶対裏があるだろうとは思ってたが…」
「偉い毛嫌いしてるみたいだがな、どれだけ正々堂々を貫いたって負けたら何の意味も無ェだろ。
俺は勝つぜ。どんな手を使ってでも、勝ち続けてやる」
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「何よあれ!店長の…コウの技ばかりかジンの技まで使えるなんて!!」
「おそらくは、他の選手の技も使えるんだろうな」
試合の一部始終を見ていたエルとは対照的にリドは冷静な声音で分析した。
そのリドの態度にエルは溜まらず、
「何で、そんな冷静でいられるんですか?大ピンチなんじゃないんですか!?」
「そう見えるか?確かにあやつの能力は厄介かもしれん。
だがあのレイバームの性質と弱点、編み出したコウはいざ知らずあのシロウが理解できているのやら…」
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右手に灯った炎を弄びながらシロウは、
「お前に勝つのは簡単そうだが、さて次はどんな技を使おうか…」
「言っとくがさっきの技はもう喰らわんぞ。前の試合で見切ってるからな」
「ついさっき喰らったろ」
「不意打ちはノーカウントだろ」
間合いを詰めシロウの腹へ右拳を打ち付けるコウ。
遅れて右拳が光り輝き、弾ける様な音と共にシロウを吹き飛ばす。
舞台の端ギリギリの所で受け身を取り何とか場外を免れたシロウは再び両腕を発光させるとコウ目掛け突進する。
「うおああああぁぁ!!」
「その技の、レイバームの弱点を教えてやろうか」
コウはシロウのラッシュを顔色一つ変えずいなしながら、
「そいつは自身の腕全体に光エネルギーを纏わせる性質上攻撃にも防御にも使える汎用性の高い魔法だ。
だが一度発動すると自分で解除するか集中が解けるまで、魔力を消費し続ける。
要するに、開きっぱなしの蛇口の様な物と言う訳だ。
俺は自分の一日における魔力の限界を把握し舵取りの仕方を身に着けたが、お前はどうだ?」
「ほざけ!!」
光り輝く右腕を突き出すシロウだったが、コウはこれを一瞬の内にいなし、逆に光り輝く右腕でシロウの胸めがけ袈裟切りを叩きつける。
「ぐあ……ッッ!!」
「それに!!」
コウはシロウの首に腕を回し、締め上げる。
チョークスリーパー。アーサレナに転生する前からコウが知っていた技だ。
「こう密着されてはその技を使う事は叶わん!
このまま一気に…」
決めてやる。そう言いかけた瞬間だった。
爆ぜるような音がしたかと思いきや、目の前のシロウが脇腹から血を噴き出し、前のめりに倒れたのだ。
「なんだ…?何があった?何が起こった?何故シロウが?シロウだけじゃない。俺も…何故血を流してるんだ…!?」
コウもシロウと同じく脇腹から血を噴き出していた。
コウが目の前で起きた状況を呑み込めずパニックになるより先に客席から悲鳴が上がった。
よく目を凝らしてみてみると出入口に大勢の人が殺到している。
コウとその対戦相手が、撃たれた。
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「おっかしぃなぁ。ちゃんと心臓を狙って撃ったはずなのに」
闘技場の最も高いスコアボードの上から闘技場を見下ろす須磨豊太郎は困惑していた。
右手にはスナイパーライフル、周囲に溶け込むライトグレーのコートを羽織ってはいるが、
その表情はスナイパーと呼ぶにはあまりにあっけらかんとしていた。
それは試合開始一時間前の事。
豊太郎はアルバスにある任務を与えられていた。
その任務とは、コウかシロウ、あるいはその両方を狙撃、抹殺すると言う物。
言わば自分の仲間をも手にかける非情な命令だが、豊太郎は二つ返事でこれを承諾した。
シロウが嫌いだった訳ではない。
そもそも豊太郎は生まれて以降人を憎いと思った事は一度も無い。
ただシロウの事はどうでも良いと思っただけであった。
どうでもいいと思うから躊躇なく傷つけられる。
どうでもいいと思うから人だって殺せる。
中学の時だってそうだった。
告白して断った女子に対し祖父とコネのある連中を仕向けさせ、
その家族を皆殺しにした事がある。
そのせいなのか父親から勘当を言い渡されたのだが、今となってはそんな事はどうでも良い事柄であった。
「まぁ良い。次当てれば良いだけだ。将棋みたいに二手三手先を読んで…ん?」
再びスコープ越しに会場を覗くと、コウが豊太郎の方を睨んできた。
自分の存在に気付いたのか?どちらにせよここに居座り続けるのはまずい。
そう判断すると豊太郎はスナイパーライフルをケースにしまうと、ケースを担ぎその場を後にした。
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「ぐぅっ…ッ!!」
阿鼻叫喚の様相を示す会場の中心で、コウは血の止まらぬ脇腹を抑えながらリゼル達のいる方へ歩み寄る。
「コウ!?」
「にーちゃんその傷!!」
「俺の事は良い…!それより、アルバスの仲間が会場に紛れてる筈だ!
そいつ等からみんなと、あのシロウを守ってやってくれ…!!」
コウの要求を聞いたエルは「あいつもそのアルバスの仲間なんじゃないの!?」と反論するがコウは即座に
「シロウは…多分だが見放された。」
「課せられた任務に失敗したと判断され、始末された…。ひどい話ね。
解ったわ。シロウとみんなの事は任せて。コウは?」
「俺は…狙撃した奴を追う!」
「そんな怪我で!?無茶よ!!」
怪我を圧して追おうとするコウをリゼルが窘めるがコウは、
「無茶でもなんでも、やられっぱなしのまま黙っているのは性に合わない…!
それに仲間を躊躇いも無く撃つような奴を、許すつもりはない」
「…解ったわ。シャイン、コウに回復魔法を」
「はい」
リゼルに促されるやシャインはコウの前に躍り出ると、コウの脇腹に両手を当てる。
するとシャインの両手が柔らかい光を放ち、コウの脇腹の傷がみるみる内に塞がっていく。
「応急処置的な物だけど、これでまともに動ける筈」
「ありがとう。みんな…死ぬなよ」
短く告げるとコウは出入口目掛け一直線に走り出した。
「死ぬなよって…まるで自分が死にに行くみたいじゃないですか」
走り去るコウの背中を見てエルは独り言ちるが、その言葉はコウに届く事は無かった。
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コウは狙撃手を探し求めてしゃにむに走り続けた。
誰が、どの様に自分とシロウを狙撃し、何処を通って逃げようとしているか皆目見当がつかないが、
逃走ルートを推測してる時間はない。とにかく会場の外へ出るルートを通るしか狙撃手にたどり着く方法はなかった。
しばらく道なりに進んだところでコウは急に足を止めた。
その理由は、目の前に立ちはだかる赤髪の男…。
今まで幾度となく自分の前に現れ意味深な言葉を投げかけては去っていった男。
「アルバス・ロア……」
「君ならここに来ると思っていたよ。君はその生まれついての物であろう正義感の強さから、自分とシロウが撃たれたとなれば
動かずにはいられない。そうだろ?」
「つまりシロウも俺ごとシロウを撃った狙撃者も、俺をおびき寄せる為の餌だったのか」
「もちろんシロウがお前を倒すに越した事はなかったさ。シロウと戦わせるのも狙撃したのも、作戦の一環でしかない。
言わば、今私が君と対峙しているのは作戦の第三段階と言う訳だ。
そして…この第三段階で君は敗北する。我らエタニティの前にな」
エタニティ。
初めて聞く名だった。
それこそがアルバスとその仲間達の組織の名か。
だが…。
「俺が敗北するってのは流石に誇張しすぎだろ。一度も俺と戦ってないのに…。」
「敗けるさ。君は何一つ知らないからね。私の…実力と言う物を」
そう言うとアルバスは低く腰を落とし身構える。
瞬間、アルバスから発せられた気迫にコウは思わず後ずさった。
遂に、アルバス・ロアが戦う……!!
ようやく総合PVが2000、ユニークアクセスが1000を越えました。
ここまで約三か月…書籍化は遠い……




