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オズマ戦記  作者: 葱龍
三章「熱闘!ルトヴァーニャ大武闘会」
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第二十五話「決勝トーナメント開幕」

その後もコウは特に苦戦する様子もなく順調に白星を重ね

決勝トーナメントへと駒を進める事が出来た。


大武闘会の予選は全32ブロックの総当たり形式で行われ、

各ブロック6名の選手で試合を行い、その中で最も勝利した回数の多い選手が決勝に上がる事が出来る。

コウは他5名の選手に全勝。

第一試合の後コウに突っかかってきたモヒカンは……あっさりとコウに一撃でやられてしまった。



その後も各ブロックから次々と決勝進出者が現れるが、

その殆どがコウがそうした様に多くの試合を一撃の下勝利していた為

コウは自分だけが異様に強いのではないと安心し、同時に決勝は今までの様な楽な試合はないのだと実感させられた。


「あのシロウって転生者も勝ち残って来たか…」


壁面に立てかけられた決勝への進出を果たした者達の名が刻まれたホワイトボードを見やりコウが独り言ちる。

シロウ。顔を合わせるなりいきなり握手を求め応じた相手に「何か」を仕込んできた男。

あの男も結局予選では実力の殆どを見せる事は無かった。

奴の実力が如何ほどの物か、奴が握手した相手に何をしたのか。

それを知るには奴と戦うほかにない。



ホワイトボードを見上げるコウに一際熱い視線を送る女が一人。

流れる様な長い黒髪に端の吊り上がった眼、戦闘においても動きやすい様袖が分割される等アレンジが加えられた和服がエキゾチックな印象を見る者に与える美女だった。

血と汗にまみれたこの会場では彼女の存在は一際浮きかねないが、勿論彼女は観客でも審判でもない。

参加者、それも予選通過者である。ツバキ・タカクラ。それが彼女の名前だ。

ツバキはコウの横顔を見つめるとフッと微笑み、呟く。


「あれが噂の…。彼なら、見込みがありそうね」



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予選が終わるまでの間主闘技場では吟遊詩人のグループによる生演奏や踊り子集団によるダンスが披露されている。

これらは所謂「ハーフタイムショー」としての性質が強いが、吟遊詩人等も踊り子達も今日と言う日の為に必死に練習を重ねてきた訳だし、

彼等が歌い踊る楽曲の宣伝効果も小さくはない。


吟遊詩人グループの一組「シャングリ・ラ」のボーカル、ルキウス・グリントのハスキーボイスが場内に響き渡る中、

リゼルは物思いにふけっていた。

彼女が現在座っている席は王族とその関係者のみが座る事の出来る「ロイヤルクラス」で、

決勝トーナメントの試合の模様を最高に良い場所から眺める事が出来る。

リゼルは「赦しを得たとは言え自分には相応しくない」と一度はここで見るのを拒んだが、

「人の誠意を無下にする物じゃない」と窘められ渋々了承した。

試合参加者であるコウ以外の何でも屋のメンバーもここに座る事になった為上手い事丸め込まれたのかとリゼルは訝しんだが。


「コウの事なら心配いらぬと言ったろう」


リゼルの左隣に座るマスター・リドが全て見通しているかの如く口を開く。


「いえ。私の気がかりはアルバスの言っていた転生者の事です。ワタシ達が控室で会ったシロウと言う男の他にあと3人…。

 顔も名前も、性別すら解らないから、勝ち上がったとしても誰が転生者で誰がそうでないか全く見当もつかない。

 これは、コウにとって私達にとって非常に不利です」

「……だからと言ってそれを悲観する訳にも行くまい。今のコウには我がアーレンバーグ流の技が刻み込まれておる。

 予選落ちなどしよう筈はないし、もしここで負けたとしてその時はその時じゃ。初出場なのにここまで良くやったと褒めてやろう」

「そう、ですね…。」


「シャングリ・ラ」の演奏が終わると大武闘会のスタッフがそそくさとアンプやドラムセットを片付け始める。

次のパフォーマンスの準備…では無さそうだ。

やがて全ての機材の片づけが終わると、黒いスーツにサングラスとどうにも怪しさの拭えない風貌の男がマイク片手にステージへと躍り出た。


男はマイクを自らの口元に近づけると、


「レディィィースェエェェーンッッッジェェェェントゥマァァァァンッッッッッッ!!!

今宵もこの日がやって来ました!3年に一度、『最強』の二文字を得る為世界各地の猛者たちが一堂に会す武の祭典!!

只今より第300回ルトヴァーニャ大武闘会決勝トーナメントを、開始いたします!!!!!!!!!!!」


四方を囲うように配置された観客席に座している観客たちが一斉に湧き上がる。

その迫力たるや先程まではしゃいでいたシャインとシャッテが借りてきた猫の様に大人しくなる程だ。


「凄い歓声…」

「にーちゃんこの中で戦うの?」

「相手は一人だけだけどね。でも大丈夫。そう簡単に負けはしないから」


やや不安げな表情を見せるシャインとシャッテをリゼルがなだめていると、

闘技場の北側に開け放たれた出入り口から髪の色も肌の色もバラバラな男達(女も2、3人ほどいるが)がぞろぞろとステージへ登っていった。

彼等が、彼等こそが予選を突破し、そして今から繰り広げられる決勝トーナメントの激闘を戦う32人だ。

そしてその中には当然、コウの姿も。


コウを見つけるやシャインとシャッテ、ゴンザが手を振り、

リゼルが「ここまで来たら遠慮なく思い切りやりなさーい!」と激励を飛ばす。


その後トーナメントの抽選が行われ、第一回戦の対戦カードが決定した。

コウは第一試合から。控室でやたら馴れ馴れしく接してきたシロウは第二試合からの出場だ。


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「では第一回戦第一試合、レッドサイド!智龍の谷出身!重量級ボディから繰り出される技は必殺級!!

 ドラゴン・デストロイヤーッッッジンンンンンンンンンハウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥロンンンンンンン!!!!!!!!」


ステージの西側、赤いフラッグが立てられた方に立つ屈強なリザードマン、ジン・ハウロンが胸の前で拳を叩き合わせると、

観客席から声援が沸き上がる。人間社会なら敬遠されかねない異形の姿に関わらずこの声援。

この声援は、アーサレナではリザードマンは洞窟や廃墟に潜むモンスターではなく社会的地位を与えられた亜人種であり、

同時にジンと言う男が声援を一身に受けるに値する実力者だと言う証明に他ならない。



「ブルーサイド!ルプシカ出身!その実力は未知数!如何なる技が炸裂するか!?

 ブラッッッッッッッックホウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥプッッッ!!!

 うぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉずまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

くぉぉおおぉぉぉぉぉぉおおぉぉおぉおぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉおおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


対するコウは声援とブーイングが混ぜこぜになって巻き起こる。

まだ青臭さの抜けきっていないコウはまだ受け入れられてはいないと言う事なのだろう。


そう言えば大衆の前でまともに戦った事無かったっけ。

今までの戦いを振り返るとコウはやや自嘲気味に笑う。


「何がおかしいんだ?」


コウの様子を不思議に思ったのかジン・ハウロンが問いかける。


「いやね、自分が見てきた世界ってのは…思ってたより狭かったんだなって、思って…」

「そうか。なら、君に世界の一部と言う物を見せるとしよう」


ジン・ハウロンはそう告げるとその場で演舞を舞い、身構える。

コウもそれに応える様に身構える。


先程までの歓声が嘘の様に静まり返る場内。

一分一秒が、何十分にも何時間にも感じられる程緊迫した空気をその場にいた誰しもが感じ取っていた。

そしてその静寂を破らんと、


「はじめ!!」


審判の右腕が振り下ろされる。

それを合図として一気に駆け出すコウとジン・ハウロン。

互いの腕と腕がぶつかり合う反動でお互い吹き飛ぶやすぐに間合いを詰め、

コウの左フックをジン・ハウロンが右脚を上げて防御、

ジン・ハウロンが右脚を踏みしめ左回し蹴りを繰り出すとコウはそれを右腕で防御。

電光石火の如き早さで目まぐるしく繰り広げられる攻防に

「ジンが瞬殺すると思ったが」「もしかしてあの小僧凄い奴なんじゃ」と動揺した声が端々で上がる。



「やるな。予選を勝ち抜いたのがまぐれでなければと思ったが、それ以上だ」


コウの実力が予想以上と感じてかジン・ハウロンも称賛の言葉を贈る。


「お褒めの言葉は光栄だけど、称賛するのはまだ早いんじゃない…の!!」


言いながらコウは手刀の突きを六連続で繰り出した。

ジン・ハウロンはうち五発を両手でいなし、最後の突きが放たれた瞬間突き出されたコウの右腕を掴み、

背負いこむようにして投げ飛ばした。


今のは!?


内心驚愕しながら咄嗟に受け身を取るコウ。

見まがう筈もない。今ジン・ハウロンが放ったのは一本背負い投げ。

日本由来の武術柔道の技だ!それを何故アーサレナの、リザードマンのジン・ハウロンが!?


コウは背中が打ち付けられるより早く地を蹴り、その反動を生かしてジン・ハウロンの頭部目掛け両脚蹴りを叩きつけ、

頭部への衝撃で右腕の拘束が緩むや、蹴りの反動そのままに前方宙返りし、着地する。

コウが向き直るのを待つとジン・ハウロンは、


「…称賛するのはまだ早い……。確かに、君の言う通りだな。準備運動はこれで終わらせて、本気で君と戦う事にしよう」


今までは本気じゃなかった、と言う趣旨の発言だが、コウは不思議と恐怖を感じなかった。

むしろ一種の高揚感を感じていた。

これほどまでに強く、気高く、そして正々堂々とした相手と全身全霊を以て戦える。

今の今まで悪人を止める為の戦いしかしてこなかったコウにとって、今まで味わった事の無かった感覚。

互いに互いを高める、競技としての「戦い」ができる。これほど嬉しい事は無かった。


そしてコウに呼応するかの様に、観客席からも歓声が沸き上がった。


更新が不定期になってしまい申し訳ありません。

執筆自体は続けていくので何卒

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