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オズマ戦記  作者: 葱龍
二章「光と影の魔術師」
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第十九話「魔・法・覚・醒!」

シャイン、いやシャッテか?声音が似通っているから解らんが、とにかく双子の片割れが指摘した様に

魔力妨害(マジックジャミング)の効果は永続的に続く物ではない。

時間が経過すればその効果は切れ、双子とモアザ、それにリゼルは再び魔法が使える様になる。

その効果時間は、およそ30秒。

現在コウが持っている魔宝石は先程使用した者も含め3個。

連続で使用しても1分30秒の間しか魔法を抑止できない計算だ。

しかも使用する前に魔宝石を奪われる可能性もある以上

使いどころはよく考えなければならない。

相手に悟られない、絶妙なタイミングで…。



シャッテが右手に炎の球、左手に岩塊を、シャインが左手に水の球、右手に氷塊を精製すると、

ジグザグに走りながらそれらをコウやリゼル、エル目掛け投げつけていく。


「走れ!!」


コウに言われるがままリゼルとエルは全力疾走で双子の魔法を避けていく。

避けられ、目標を見失った炎の球と岩塊がムルスクの家屋を燃やし、押しつぶしていく。

沸き上がる悲鳴と業火がムルスクの街を瞬く間に地獄へと変えていく。

そして更に一つ、また一つ家屋が炎に包まれる。


「助けてくれ」「死にたくない」と悲鳴混じりに救いを乞う声が聞こえる。

「ママ」「お母さん」と母親を探し求め泣きわめく子供の声が響く。

どれ程の無関係な血が流れたか、これと同じ惨劇がどれだけ繰り広げられてしまうのか、

想像しただけでコウの胸に怒りがこみ上げ、コウはたまらず叫ぶ。


「シャイイィィィン!!シャッテェェェ!!もうやめろ!あそこにいる人達がお前たちに何をした!!?

 こんな事をするのがお前達の望みだって言うのか!?」


「我々は母様の命令に忠実に従うだけ。」

「望みなどと言う物は必要ない」


「なら何故泣く!?」


「泣く?バカな事を。我々が一体何を悲しむと…」


シャインが頬に指をあてると、そこには湿った感触。指先を見ると僅かな水滴。

シャインは言葉とは裏腹に泣いていた。シャッテも同様に。


「涙が流れるのは、お前達が心を痛めてるからだ!抑え込んでいた心が訴えているんだよ!!

こんな事、もうやりたくないって!!」


己が意思と無関係に涙を流す双子にコウは訴えかける。だが、


「2人を惑わすな!小僧!!」


モアザが叫び、風の刃を投げつけてきた。

風属性の攻撃魔法「風斬波(ウインドソード)」。

風属性の魔力エネルギー体を用い人為的に真空状態を作り出し対象を切り裂くその魔法は、

原理こそ単純で習得も容易ながら高い威力を誇る反面、

制御にはコツがいり慣れていないと相手より先に自分が先に切り裂かれると言うリスクがある。

その為魔術師達の間では「風斬波の制御が出来る様になったら一人前」と言うのがセオリーとして定着している。


コウは首を僅かに傾げ風斬波を回避するが、僅かに右頬を掠め、頬から血が滴り落ちる。

しかしコウは頬の痛みを意に介さず、


「あの2人の涙と、アンタのそのむき出しになった怒り。この二つを以て確信した!

 アンタは自分の子供を操り手駒にしている!!」

「何ですって!?」

「本当なの!?」


コウの口から飛び出たあまりに突拍子もない言葉にリゼルもエルも驚愕する。


「…必要だったのですよ。私の子達の、いえあの人の無念を晴らす為には…」


モアザは否定も誤魔化しもしなかった。

必要だったと語るその表情には、憂いと悲しみが感じ取れる。


「……そこまで言うんなら教えてください。貴方達とこの国の間に何があったのか」

「…もう10年前になるかしら。デストラのトップが今のマウザンディア国家主席に変わり、

 私達デストラ国民の生活は激変しました……。」



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「一体どういう事なんだ!?」


ロウソクの灯に照らされ燈色に染まった書斎の中で1人の男が怒鳴っていた。

年齢は20代後半ほど、白い肌と銀色の髪が精悍な顔つきを際立たせる。

彼の名は、ザルディン・バルバ。デストラはおろかアーサレナ全域で名を知らぬ者はいないとすら言われるほどの魔術師だ。

彼は常人を遥かに凌駕する魔力を有し、15歳になるまでに新しい魔法を幾つも開発した。

指定した地域の1週間分の天候を自由に操る魔法、ボロボロの服を一瞬で新品同然の仕上がりにする魔法、

そこらの石ころを黄金に変える魔法、そして敵兵のあらゆる攻撃を跳ね返す難攻不落の壁を作り出す魔法…

ザルディンの編み出した魔法はデストラに多大な利益をもたらし

前代の国家主席ルティスはザルディンを大いに慕い、ザルディンもまた国の発展に大いに貢献できる事を誇りに思っていた。

だが、その国家主席がマウザンディアに変わった事で全ては変わってしまった。


「これが…国を統べる者の行いだと言うのか…!?こんな横暴が……許されるとでも言うのか…!!!!」


ザルディンは右の手で手紙をクシャクシャに握りつぶし独り言ちた。

手紙の内容は、ザルディンを今就いている職業「国家魔術師」としての全ての権限を剥奪すると言う物だった。

国家魔術師はルトヴァーニャにおける王宮魔術師に相当する職業だが、国においての重要性はルトヴァーニャのそれよりも遥かに高く、

ルティス政権以前の時代においては花形職業と言っても過言ではない仕事であった。


だがマウザンディアが公約としてあらゆる産業、国防を機械化し、デストラの魔術師達は就くべき仕事を尽く奪われてしまった。

失業対策はどうするのか聞いても「知らん」の1点張り。

ザルディンも例外ではなく、先程失業を告げる手紙が彼の下に届けられたのだ。

ザルディンにはモアザと言う同じ魔術師の妻がいる。将来を有望視されている2人の幼い娘もいる。

今職を失う訳にはいかないと言うのに。ザルディンの怒りは頂点に達していた。


肩で呼吸を整え、落ち着きを取り戻すと書斎の外に出て、廊下でザルディンの慟哭を聞いていたモアザと目が合うなり、


「…すまない。驚かせてしまったようだ」

「あの手紙ですか?あの手紙に…一体何が書いてあったのですか?」

「私達魔術師はおろか、この国の未来すら危ぶむであろう内容だ。マウザンディアは、魔術師に強い恨みを持っているとしか思えん。

 だがこのまま引き下がるつもりはない。魔術達の未来の為、この国の未来の為、そして私達の子供の為、私は断固としてマウザンディア政権と戦うつもりだ」


しかし、ザルディンの想いがマウザンディアに届く事は無かった。

ザルディンの権限剥奪を告げる手紙が彼の下に届けられてから3日間、

彼は毎日の様に超時空要塞ムルスクにザルディンの様に解雇された魔術師達と共に通い続け抗議し続けたが、

政府側は魔術師達の再雇用を検討するばかりか、最悪とも言える対処法を決行した。

ザルディンを始めとする魔術師達が抗議を始めてから4日目。

その日もザルディンたちはいつもの様に超時空要塞ムルスクの前に集まり、

「魔術師達に仕事を」「解雇反対」「マウザンディア政権は独裁政権だ」等と書かれたプラカードを掲げ抗議していた。

すると正門前に枯葉色の対魔法防護鎧を纏った兵士が30人ほど現れ、横一列に整列。


「構え!」


隊長格の号令に従いライフルを構える兵士たち。

彼らのライフルは魔法の障壁を貫通する術式を施した対魔術師用特化弾を使える最新型「ドラゲナイト」。

例え島1つ消し去るであろう魔法を操る魔術師と言えど、所詮人の胎から産まれた者。弾の当たりどころが悪ければ死に至る。


「みんな逃げ──」


ザルディンが仲間の魔術師達を逃がそうとするが、時既に遅し。


「撃て!!」


ライフルが一斉に火を噴き、放たれた弾丸が魔術師達の身体を穿ち、辺りに鮮血を飛び散らせながら魔術師達がバタバタと倒れていく。

一瞬の内に辺りは魔術師達の血で赤く染まり、先程まで命だった者達が辺り一面に転げまわる。


「ま…まだ……死ねない…!魔術師の…この国の……そして…あの子達の未来の……為に………死ぬ…訳には……!」


ライフル弾の直撃を全身に受け半死半生となりながら尚ももがき続けるザルディン。

しかし彼の下に兵士が一人近づいて、抜刀したショートソードを彼の心臓目掛け冷酷に突き刺した。


翌日。

他の魔術師達と同様死体袋に入れられたザルディンの姿を見るやモアザはその場に泣き崩れた。

夫を失った悲しみ、国の理不尽に対する怒り、1人で二人の子を育てねばならない重圧は、

モアザを復讐者に変えるには充分であった。


モアザは自らの子供であるシャインとシャッテの二人に徹底した魔法と反デストラ主義思想の英才教育を施した。

子供達がやや早めの反抗期に入り、自分の言う事に反発する様になるとモアザは闇ルートを使い洗脳魔法を施した魔宝石を入手。

それを用いて子供達を従順にし、英才教育を終えると今度は子供達に他国の魔術師を魔宝石で洗脳させ自らの戦力とした。



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モアザから語られた真相にコウも、リゼルも、エルもショックを隠し切れずにいた。

あまりに理不尽で、あまりに悲しい過去。


「…言葉でどうにかできる程、今のデストラは生易しい環境では無いし、そもそも言葉はマウザンディアの所には決して届かない…。

 解りますか?私は子供たちの未来の為にこの国を…」

「解ってたまるかよこのバカ親がァ!!!!!」


モアザの方便をコウが遮った。


「ッ!?バッ…」

「何が子供たちの未来だ!自分の子供洗脳して手駒にして!!

 散々言ってきたが本当に子供の事を想っているならこんな事今すぐやめるべきだろうが!

 考えてもみろ!自分のせいで自分の子供が「テロリストの子」と永遠に蔑まされるんだぞ!!?

 こんなの、お前から家族を奪ったマウザンディアと何ら変わり…」


モアザをまくし立てるコウにシャッテは岩塊をコウ目掛けて叩きつけ、体勢を崩した瞬間を狙いコウに肉薄。

そのままコウからマウントを取った。


「母様を困らせるな」

「お前こそ、少しくらい自分の意思って物を…」


マウント姿勢に持ち込まれても尚反論をやめないコウ。

その首をシャッテは締め上げる。


「ガ…ァァ……ッ!!」

「口の減らない奴だ」

「グ…ッ!!」


コウは自身の首を絞めつけるシャッテの指を強引に引き剥がし、


「俺は…勇者の生まれ変わりと言われた男だ…。

 そう言った奴、俺は好きでは無いが…本当に勇者の生まれ変わりだと言うなら……その勇者の力で救いたい…!」

「マウザンディアをか?それともこの国をか?」

「どっちも違う…。出来ればこの世界に生きる人みんなを救いたいが…まず救いたいと思うのは、お前なんだ!!」


コウが叫んだ瞬間、彼の左手の甲が眩い光を放った。

光は徐々に集束し、左手に獅子を模した痣が浮かび上がる。

するとどうだろうか。シャッテの瞳に輝きが戻っていき…


「…?わたし…一体何を?」

「悪い夢を見てたんだよ。そして、その悪い夢はまだ終わっていない…。

 だが待ってろ。俺が今悪い夢を終わらせてやる!」


痣が浮かぶ左手をかざしコウは言う。

コウは自ずと感じていた。

自分が今「魔法」を使った事。その魔法が光属性である事を。

そしてコウは確信した。

この力があれば、勝てる、救うべき相手を救えると!


累計PV1000、ユニークアクセス数が500を突破しました。

ひとえに皆様のおかげです!

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