表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オズマ戦記  作者: 葱龍
二章「光と影の魔術師」
19/168

第十七話「反逆の理由」

傷ついた体に鞭打ちコウ達はなんとか国境近くの宿屋にたどり着いた。

宿屋の主人に状況を説明すると

すぐに応急手当をしてくれたので誰一人として大事に至る事は無かった。

お国は違えど心優しい人がいない国は無いのだなと、コウは改めて感心させられる。


宿屋のロビーに集ったコウ達。

手当てしたとは言え体調は万全とは言えず、所々に生傷が絶えない。


「本当なんだな?本当にあいつ等がそんな事を企んでるんだな」


エルが廃教会で見聞きした事を聞かされ、コウは驚きを隠せずにいた。

シャインとシャッテには母と呼び慕う魔術師がいて、

その母は今まで連れ去った王宮魔術師達を使い祖国たるデストラ共和国に対し総攻撃を加える…。


にわかに信じがたい話だ。

かつて日本人として生まれながら日本に対しテロを企てた者がいる事をコウは知っていたが、

彼らの心理まで理解できるのかと言えば、答えはNOだ。

自分の国を潰そうとするなど、損しかしないと言うのに。


「はい。この目で見て、この耳で聞いたので間違いはありません」

「攫った魔術師達を、あろう事か破壊の道具に使うなんて…」


リゼルの膝に添えられた握りこぶしに力がこもるのをコウは見た。

自分の国の国民が己の意志とは無関係に悪用されると言うのは、

王女としてはとても許しがたい事なのだろう。


コウはそんなリゼルの意志を汲んで、


「確かに、許せないよな。洗脳するのも、テロの道具にするのも。

 だから俺たちは戻る訳にはいかないし、負けられない。」

「けど、あいつ等は強い。私達じゃ太刀打ちできないかも知れない」

「…せめて俺も魔法が使えたらな」


歯痒さを感じずにはいられなかった。

異世界に来てからと言うもの、魔法を見た事は幾度もあるがコウ自身が魔法を使った事は一度もない。

使い方を知らないのか、元から使えないのかすらも解らない。

前者なら使い方を教えてもらいたいし、後者の場合だったとしてもそれはそれで諦めがつく。

破壊神を破壊した一国の王子だって魔法を使えなかったのだし。

なんて事を考えているとリゼルが、


「そう言えば来る日も来る日も仕事三昧でマスター・リドに魔法教えてもらう暇すら無かったものね。

 なんなら、私がコウに魔法の素養があるか見てあげようか?」

「出来んの?」

「出来るわよ。素養の有無を見る事はそう難しい事じゃないから、

 ある程度魔法の教養があれば子供でも見る事が出来るわよ」

「じゃ…お願いします」

「ええ」


リゼルはコウの両頬、両こめかみに両手を添えると目を閉じるとコウに顔を近づける。

思わずドキッとするコウ。キスでもされるのかと考えたが、実際はただ額と額を合わせるだけだった。


「…なんか、これはこれでドキドキするな」

「少し黙って」

「はい」


しばらくコウとリゼルは額と額を合わせた状態が続き、他の宿泊客が見たら冷やかしの視線を向けられそうな気恥しさにコウは襲われた。

そして、リゼルが額を離し、


「はいおしまい」

「どうなんだ?魔法の素養ある?」

「あるにはあるけど…」

「けど?けどってなんだよ」

「良いコウ?まず魔法の素養がある人には同時に適正と言うものがあるの。

 適正と言うのはその人がどの属性の魔法が扱いやすく、効果を発揮できるかを決めるもので、

 例えば炎属性の適正がある人は炎の魔法の威力が高くなるの。

 ちなみに私は雷属性ね」

「で、俺の適性は?」

「それが解らないのよ。炎なら赤、水なら青、風なら緑、土なら茶、雷なら黄で氷なら水色の光が見える筈なんだけど、

 コウから垣間見えたのはそのどれでも無い白い光だった」

「白い光…?」

「魔法の適性であんな光を見たのは初めてよ。タブー視されてる闇属性とも違うし、何なのかしら…」

「でも、なんか特別って感じしないか?他の何者でもない、俺だけの色!って感じで」

「特別…確かに、そうかもね。さて、と。エルの適性は…」

「あぁ、お姉様がこんなに近くで…!」

「適正なし。ある意味珍しいわね」


適正なしと言われたエルの表情は心なしか悲し気だった。


「…話を戻そうか。まず、奴らが自分の国に反旗を翻す理由だが…何か心当たりは?」

「残念ながら見当もつかないわ。ガザン語はマスター・リドに教わっただけでデストラに直接赴いた事は無いから」

「私も…。新聞とかあまり見ない方だから。母親の方が科学がどうとか言ってた気がしたんだけれど…」


コウはエルから語られた数少ない情報を基に推理しようとはしてみたが、ダメだった。

どうとかでは解る物も解らない。

もう少し明確な情報は無いのか?

そう思っていた時、


「デストラは警備に薬品精製等の生産業、前は魔術師が担っていた仕事を全部機械化しちまったのさ」


宿屋の主人がそんな事を語りかけてきた。

デストラの内情はエルよりもリゼルよりもこの人の方が詳しそうだ。


「機械化って、何があったんですか?」

「元々デストラって国は魔術師と魔法で経済を成り立たせていた国だったんだがな、

 国のトップ、大統領が今のマウザンディアって人に変わってから魔法頼りのやり方は合理性に欠け、人件費もかかり過ぎるって、

 軒並み機械任せにしちまってよ。もう10年前になるかな」


宿屋の主人の話にコウは一種のデジャヴを感じていた。

コウの住む日本でも、同じ様な経済革命は起こっていた。

確か、IT革命だったか…。

あれによって市民の生活が激変し情報社会が確立された半面、

会社員のリストラも相次ぎコウの叔父も会社からリストラを言い渡され、再就職に苦労したと語っていた。

急激な改革のしわ寄せが思わぬ悲劇を招いてる、と言うのはこの世界でも一緒か。


「当然魔術師達は反発したさ。だがマウザンディアはそれを無視した。無視して自身の唱える改革を推し進めたんだ。

 中には逆賊の汚名を一方的に着せられ粛清された魔術師もいたっけな…」


言葉にしただけでも解るマウザンディアの独裁者ぶりにコウは思わず、


「その内暗殺でもされるんじゃない?」

「そうなってもおかしくないだけの恨みはもう買ってるさ。でもテロはいけねぇな。

 関係ない人間まで何人も傷ついちまう。」

「それには俺も同感です。どんな理由があれど、相手にどれだけの非があろうと、止めなくてはならない」


そう言うとコウは立ち上がり、


「だが無策で敵陣に突っ込めば敗北は必至。となれば、やるべきは一つ」

「なに?」


リゼルの問いにコウは「買い物だよ」と即答。


まずコウのポケットマネーをシャオハーンの通貨に還元。

こちら側での資金を確保すると道具屋へ直行し、あるアイテムを探した。

魔宝石だ。シャインとシャッテが王宮魔術師を連れ去るのに用いたあのアイテム。

ただし欲しいのは『洗脳』の魔法を内包した魔宝石ではなく、

相手の魔法を無効化する魔法(リゼルに聞いた見た所「ある」らしい)を内包した魔宝石だ。


最初に訪れた店には無く、2、3件回った所でようやく目当ての物を見つけたが、僅かに3個が売られている程度だった。

魔宝石と言うものはそれほどまでに貴重な物らしい。

続いてコウが買い揃えたのは戦闘で受けたダメージを治す「治癒薬」。こっちの方は相当数が出回っているのか魔宝石よりもずっと簡単に揃える事が出来た。


魔宝石3つ、治癒薬16個を袋に詰めると、宿屋の主人に「お世話になりました」と宿代を支払い宿屋を後にする。


「準備は整ったって事で良いのよね?」とリゼル。

「ああ。現状できる事は全部やった。後は全力を尽くすだけだ」


コウ達は一路デストラを目指す。

最初は攫われた人達を連れ戻すだけだったが、今は違う。

一国の存亡に関わる戦いだ。それも負けた時のリスクがやたら多い。

絶対に負けられない。その思いを胸にコウは一歩ずつ歩を進める。

全ては東西二つの国を守る為。そして奪われっぱなしだった者を取り戻す為…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ