第十一話「西へ。」
炎の球と氷塊が混ぜこぜになってコウ、リゼル、エル目掛け一斉に襲い掛かる。
炎の球には「爆熱の槌」、氷塊には「氷惨」と言う名があるが、それを知る術はコウには無い。
コウは左に、リゼルは右に、エルは後ろに跳躍し回避するがすぐにまた別の氷塊と炎の球が襲い来る。
コウ達は再びこれを回避するが、仮面の子供に操られた王宮魔術師達との距離は広がる一方だ。
「クッ!どうすれば良いんだ!?これじゃ逃げられちまう!!」
コウは打開できそうにない現状に狼狽する。
魔法はこちらを的確に狙ってきている。
しかもコウがどう避けているのか把握しきっている様。
だがだからと言って元を断つ事も出来ない。
王宮魔術師たちは敵意があって攻撃してきてるんじゃない。彼らはあくまで操られているだけ。
彼らは言わば被害者なのだから。
するとリゼルが、
「動きを止めれば良いだけでしょ?だったら!」
リゼルは両人差し指と中指で額を指さし、額から紫と黄色二筋の稲妻を放つ。
リゼルガイザー。そう名付けられたその技は1人の王宮魔術師の体を貫き、更に他の王宮魔術師達も横薙ぎに払っていく。
稲妻に身を貫かれた王宮魔術師達は糸が切れた操り人形めいてパタパタとその場に倒れ伏していく。
「リゼル!!」
コウは思わずリゼルを叱責するが、
「大丈夫。気を失ってるだけ……よ…」
リゼルの見上げた先には巨大な氷塊が。
気絶する寸前王宮魔術師の一人が唱えた魔法が消えずにまだ残っていたのだ。
そして氷塊は、真っ直ぐにコウ目掛け飛来し、
「コウ危ない!!」
リゼルが叫ぶより速くコウの頭を直撃。
コウは頭から血を流し、前のめりに倒れるとそのまま意識を失った。
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暗い。暗い闇だ。
コウの周囲には今か今かと彼を呑み込もうとする暗闇が広がっていた。
何処なんだ?と言う疑問を抱くより先にコウの目の前に火が灯り、一瞬の内に炎となって燃え上がると
炎は人の顔の形を成していく。
「お前は!!お前は俺から聖剣を奪い、命を奪った!」
炎の顔がクドーの声で怒鳴った事にコウは驚愕した。
これはコウが仕留めたクドーの怨念か!?
更に別の炎が顔となり、
「貴様は何も解っていない。この世界に転生してきた者に課せられた責務を」
今度はいつぞやの赤髪の男の声。
「俺が生きるのはダメでなんでお前はのうのうと生きていられるんだ!!」
お前を生かしておけば別の誰かが犠牲になるだろ。
「強大な力には義務と責任が伴う」
俺の持つ力ってなんだ。それにその台詞どっかで聞いた事があるぞ。
その様な言葉を返そうとするが言葉が出ない。何故?
「お前がいなければ…!!」
「お前には罰を与える」
二つの顔は一つの炎に姿を変え、コウに纏わりつきその身を燃やし尽くす。
「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ようやく出た声は悲鳴。
身を焼かれる暑さと痛みに対する悲鳴だった。
「これがお前の罪。お前の業の炎だ」
「このまま灰になれぇぇぇ……!!!」
「ああああああああ!!!!」
コウは炎に身を焼かれる苦痛と助けてくれる者が何処にもいないという恐怖に、喉が枯れる程の悲鳴を上げ──
「!?」
眼を開けると炎は跡形もなく消え、荘厳な雰囲気の照明と天井がコウの視界に広がっていた。
首を右に、左に巡らせてみるとリゼルと大臣が怪訝そうな眼をこちらに向けていた。
「リ…ゼル…?」
「良かった!目が覚めたのね!?」
「そうか。俺…氷の塊を頭に喰らって……!?魔術師の人達は!!?」
コウは眼を見開き寝かされているベッドから飛び起きる。
が、すぐに突き刺すような頭痛に制された。
額に手を当てると布の感覚。包帯を巻かれているんだとコウは理解した。
「無事だよ。数にして12人ほどは」
「じゃ残りの人達はみんな…。」
コウはベッドのシーツを強く掴み、
「…すみません。みんなを助けるつもりが、逆に敵の手伝いをする結果になってしまって………」
「だが君の助力のおかげで敵の正体や手口を知る事が出来た」
「正体?」
「君たちが見たと言う仮面の子供二人組。二人が纏っていたローブの右胸に紋章があったらしいな」
「あったっけ?」
コウは仮面にばかり意識を向けていて胸に紋章があった事を知らなかった。
するとリゼルはやや呆れ気味に、
「あった。鷲を模した紋章が」
「あの紋章はここより遥か西方に位置する大国『デストラ共和国』の物だ。」
「で、デス…?なんか穏やかな響きじゃないけど」
「デストラ共和国。規模で行けばこのルトヴァーニャと同等かそれ以上の国土を誇る大国よ。
ルトヴァーニャとは事実上敵対関係にあって、もう40年以上はにらみ合いが続いてる状態ね」
「じゃ王宮魔術師の人達はみんなデストラに…!」
「おそらく。でも内情や正確な場所までは把握しきれてないから、エルには内部調査の為に仮面の二人組を追ってもらってるわ」
「…大臣さん。俺の頭の傷の具合は?」
「傷は軽い。明日にでも外を出歩けるまでになるだろう」
「よし。明日にでもデストラに出発だな」




