甘い甘いチョコレート【cacao 0%=sweet100%】@五月雨葉月
はじめまして!
この度、楠木さまのバレンタイン企画に参加させて頂いた五月雨葉月(姫宮煌輝)と申します。
今回の企画では、以前より短編シリーズとして投稿させて頂いている『アパートの百合物語』シリーズより、番外編としてバレンタインデー前夜の様子をお届けします。
バレンタインデー当日のお話は、五月雨葉月(姫宮煌輝)の投稿よりご覧下さいませ。
※このお話にはガールズラブ、百合キスが含まれます。ご注意下さい※
《登場人物》
松風いろは
18歳。早くに両親を亡くし、両親が大家だ った小さなアパートを相続して生計を立てながら生活をしている。本人は気づいていないが、可愛らしい容姿をしていて、影で噂になるほど。大学一年生。
雨宮煌羅
20歳。いろはの従姉で、二人の通う大学のアイドル的存在。
一度見かければ男女問わず見惚れてしまい、何か頼みごとをされると何でもはいと言ってしまいたくなるほどの美貌の持ち主。だが、いろはからすると、可愛いちょっと天然なお姉ちゃん。大学三年生。
《二人の関係》
およそ半年前に、いろはが大家をしているアパートに煌羅が引っ越してきて、五年ぶりに再会した。自分の部屋があるにも関わらず、いろはの部屋で一緒に住んでいる。
二人は恋人同士。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「いろはちゃん、いろはちゃん!」
「……ふぁ~。……どうしたの、きららちゃん?」
2月13日の朝、いろはは、ゆさゆさと体を揺さぶられながら掛けられた煌羅の声によって目を覚ました。
眠い目をこすって上体を起こす。
「見てみて! 雪、雪だよっ!!」
「ゆき?」
いつもなら布団から出たくなくなるほど寒い部屋は、煌羅が付けてくれたのか、暖房でほどよく暖かく、煌羅が言った“雪”という言葉がなければ再び夢の世界に旅立ちたくなるほど快適だった。
煌羅に手を引かれてベッドから起きる。
ふれ合う指から煌羅の体温が伝わり、心地いい。
「ほら、雪が降ってるの!」
煌羅が窓の外を示す。
いろははまだ眠そうにうとうとしていたが、窓の外を見た途端に目を見開いた。
「わぁ~!! すごい! 積もってる!!」
「ねっ?」
歓声をあげ、窓を開けて腕を外へ伸ばす。
「すごい冷たい! 雪、久しぶりだな~。……へくちっ」
「いろはちゃん、風邪引いちゃう! ……着替えてから外に出よ?」
「うん!」
寒さのあまりくしゃみをしたいろはを見て、慌てて窓を閉める煌羅。そんな事を気にする様子もなく、いろははまるで子供のようにはしゃいでいた。
「雪、見るの久しぶりなんだよね~!」
「そうなの? 冬に旅行とかしに行かないの?」
「最近色々忙しかったし、寒いの苦手だから……」
「そういえば。そうだったね。…………これであったかい?」
煌羅が、ぎゅぅぅっといろはを抱き締める。
「えへへっ、きららちゃんのからだ、ぽっかぽか♪」
「……もうしばらく、こうしていよっか」
「……うん」
お互いの温もりを感じながら、二人は雪が降りしきる窓の外をじっと眺めていた。
数分後、二人はそっと離れ、おはようのキスを交わし、外へ出るための準備を始める。
「「ちゅっ♪」」
「……じゃぁ、ご飯作っておくから、着替え終わったら出てきてね」
「うん。わかった」
「二度寝しちゃダメよ?」
「きららちゃんに怒られるからしない」
ふふっ、とお互い笑いあうと、いろはは着替えを取りにクローゼットへ、煌羅は朝食を作りにキッチンへと向かった。
朝食を終え、雪を満喫し、凍える身体を温めるように肩を寄せ合いながら部屋へと戻ってきた二人は、今日の本題、チョコレート作りに取り掛かった。
「本命のチョコを作るのは始めてなんだ~!」
「私も始めてなんだよ」
煌羅がチョコを溶かし、いろはが型を用意する。
「いろはちゃん、本当~?」
「きららちゃんこそ」
「私は本当だよ。ついでに言うと、手作りするのも始めて!」
「そうなの?」
「うん。作り方は知ってたけど、大体毎年買ってきたものを配ってたから」
「きららちゃん、モテモテだもんね」
いろはが嫌みを返す。が、あっさりあしらわれた。
「私はいろはちゃんにモテモテならそれでいいの♪」
「ふえっ!? あ、ありがと……。…………わたしもきららちゃんにモテモテならそれでいい、かな」
「えへへっ、嬉しい♪」
はにかみながら言ういろはに、きららがチョコを溶かしている鍋に入れてかき混ぜているヘラを置いて抱き付く。
「……もう、はやくやろっ?」
「照れ屋さんだな~」
顔を赤くして目を反らすいろはの頬を人差し指でぷにぷにとつつきながら更に強く抱き締める。
「も、もうっ!! ちょ、チョコが溶けちゃうよっ!」
「は~い」
さっきより真っ赤になった頬をを隠すようにうつむくと、きららを少し強引に押し話すと、そそくさと自分の仕事に戻った。
そんないろはの様子を見てニヤニヤしながらきららも鍋に向き直った。
こんなことをしながらも、無事チョコを型に入れ終えた二人は、型を冷蔵庫に入れて冷やし始める。
「ちゃと出来たかな?」
「わたしといろはちゃんが作ったんだから完璧だよ!」
「それもそっか。……明日が楽しみだね」
「うん。そうだね」
二人は見つめあうと、そっと顔を近づける。
そっと目を瞑り、互いの頬に手を添えてキスをする。
「「ちゅっ♪」」
そして伝えるのだ。
「「大好きだよ」」
と。
お読み頂き、ありがとうございました!!
この後のバレンタインデー当日のお話や、これ以前のお話を読んでみたい、そう思って頂けたら嬉しいです。
下記に代表作『オタク議員の異世界転生』と『バレンタインデーの夜に』、そしてその他の投稿作品一覧のURLを貼っておきましたので、気になったら是非読んでみて下さい!
ありがとうございました。
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