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蒼穹の神滅者(シルヴァリオ)  作者: 1
第2章 堕ちる世界
79/85

第79話 魔導生命編〜夢現〜

ちょいと大人な表現があります。

ソフトにしてますが苦手な方は自己責任でお願いします。

大した事ないけどねw

 私は夢を見ていた。


「ーー私と一緒になってくれませんか?」


 それは私の婚約者からのプロポーズの言葉。

 相手は今頭角を表し始めて耳目を集めている若手の議員さん。

 見た目も性格も、もちろん経歴だって立派なエリート議員がなんでこんな場末の女将に求婚してくるのか最初は何の冗談かと思ったものだ。

 だけど日毎熱烈にアプローチされると情に絆されてしまうのは女の弱み。

 結局彼の熱意に押し負けて承諾した。

 妹のシアは、


「なんか胡散臭いよ、あの人。常連さんでも無いのに急にプロポーズなんてさ」


 確かにシアの言葉はもっともだ。

 でも何故かそのシアの言葉に同意できずに相手の議員さん……レザースさんとの交際が始まってしばらくしたある夜。

 私は彼と関係を持った。

 ある雨の夜だった。

 彼がずぶ濡れになって店にやってきたのだ。

 シアはすでに床につき私も寝ようとしたそんな時にやってきた。

 彼は雨で冷えた身体で私に縋ってきてこう言った。


「……僕はこの世の中が憎いんだ。父も母もいない僕には君が夜を彷徨い歩く僕の光の道標に見える。だから僕は君が欲しい。君という光を。どうか僕を受け入れてほしい……」


 何を言っているのか分からなかったがその時の彼の身体が寒さのせいか酷く震えていた。

 それを私はギュッと抱きしめて。


 ーー寒くなったらいつでも私の所に来てねーー


 そう答えている私は自分に少し驚いた。

 他人をこうも簡単に懐に入れさせてしまった事に。

 何故だろう、このレザースさんには放っておけない弱さが見えたのかつい受け入れてしまったのだ。

 そしてその後。

 私は彼と一夜を共にした。

 初めてだったわけじゃないけどそんな行為は久方ぶりだったからつい乱れてしまった記憶がある。

 雨音が激しくなってきて行為の最中の物音はシアには届かなかったのか結構声を上げても聞かれなかったみたいだけど不思議とレザースさんの声は耳にすんなりと入ってきた。


「君は……君が思う以上に魅力的だ。だから……もっとその魅力を光らせてほしい」


 そんな恥ずかしい言葉をサラッと言えるのは元からの性格からか慣れた経験からなのかは分からないけどその時。

 彼の怒張が私の中に来た時とは違う感覚があった。

 それからあとの事は覚えてない。

 とにかくその時の甘美な快楽に溺れてしまった事だけは覚えていた。



 朝になって目が覚めると。

 彼の姿はすでに無く、一夜の夢かと思ったが自分が裸なのと彼の書き置きが現実であった事を証明していた。

 その書き置きには。


 ーー夜の帳に翼を広げて怪しい夢魔となった君を僕はこれからも求めようーー


 夢魔。

 その言葉に違和感があるものの軽率な行為だったと反省する。

 だがこの時すでに反省なんてものでは済まされない身体になっていたのに私は気付いていなかった。

 それからしばらくして。

 私は私じゃない何かに夜を支配されてしまった。

 そう、夜に一人男の客が泊まった時に。

 異常に性欲が昂ってしまうようになったのだ。

 もう私は止められない。まるで男という生物そのものが私の糧のように。

 とにかく男を貪るようになった。

 何故か。それはわからない。ただその行為に溺れて。快楽に身を任せて。体面など気にせず。

 ただただ男と睦み合った。

 そんな事を繰り返せば当然出来るものが出来る。

 ……筈なのだが。

 一向にその気配はない。

 だから抜けられない悪循環に身を任せてしまう。

 そして。

 虹の橋亭の女将は淫売だと噂も流れ始める。

 事実だから仕方ないのだけど周囲の人からは軽蔑されたりはせずに寧ろ心配された。

 まるで人が変わったかのようなその行為に心配してくれたのだ。

 そして当然。

 レザースさんからも事情を聞かれる。

 こんな売女を貰ってくれる筈などないと婚約解消されると思ったがレザースさんはそんな事気にせずにそのまま交際を続けて欲しいと言った。

 それよりもそんな噂が出ては店はやっていけないだろう、自分と結婚して一緒に暮らしたらいい、と提案してくれた事に驚いた。

 人がいいにも程がある。

 そんな事を言ってくれる人の言葉だ、彼には感謝しかない。

 だが店を畳むのはやはり抵抗があった。

 せめて本当に結婚するまではこの店を続けさせて欲しい、お願いすると仕方ないね、と笑って承諾してくれた。


 それからしばらくして。

 彼がやって来た。

 シアが連れてきた若い騎士風の青年。

 歳は私よりも少し若いのかな、と思っていたが年齢を聞くとずっと上で娘までいるという。

 すごい若作りなんだと笑って話すと。

 なんて言うか、すごい唐変木だった。

 でも何故か惹きつけられる。

 吸い込まれそうなくらい綺麗な瞳。

 その褐色の瞳に吸い込まれそうで目が離せなかった。

 あと印象的なのが晴れ渡る大空みたいな蒼い髪。

 少し話しただけで彼が信頼できる人だと思ってしまう。

 他人からしたら私を騙すことなんて簡単なのかもしれない。

 それくらい人肌に恋しくなっていたのかもしれない。

 その夜。

 いつものようにラドルと名乗った騎士をベッドに誘い込む。

 さすがの騎士も所詮は男。こうまでされて据え膳を逃した男は一人としていなかった。

 だけど行為が始まろうとしたその瞬間。

 ビリっと身体に雷が落ちたかのような感覚に襲われてそのまま私の意識は強制的に落ちてしまった。


 次の日の朝。

 私はいつも通りに朝を迎えた。

 あれほどまでに昂っていた性欲が治まっていた。

 身体を起こすと身体には行為の後などない、ベッドも濡れてないし私の腰には着衣があった。上半身は裸だったが。

 まさかと思って身なりを正して食堂を覗くと。

 ラドルはそこでシアの出した食事をしていた。

 これまでの男は行為のあと不幸な目に遭うと言われてきた。

 だが今度の彼は身体を合わせなかった。

 だからきっと彼には何も起きない筈。

 良かった、と思った途端に昨日の行為の誘惑を思い出す。

 あんな恥ずかしい事をよくもやれたものだ、と顔を赤くしてしまう。

 ラドルに気づかれないように平常心を振りまいて。

 朝の挨拶を交わす。


「ラドル、おはよ」


 そのまま厨房に向かう。

 こんな時は一人は嫌だ。

 でも今こんな時彼とどんな顔をして会えばいいか分からない。

 追ってきて欲しいが追ってきて欲しくない。

 そんな私の気持ちを知ってか知らずかその本人は唐変木のくせによりにもよって追ってきた。

 そして私の身体に起きている事を話すと私はいつの間にか彼に助けを求めていた。


「分かったよ……クリス」


 その言葉を聞くと自然と涙が出て彼の胸に収まると。

 これまで無かったような安心感に襲われる。

 こんな落ち着いた気分ここ最近全くなかった。

 ラドル……この(ひと)は一体何者なんだろう。

 どこか浮世離れした雰囲気と冷たそうな言葉の中にある温かみ。

 普通の人じゃないのはすぐに分かった。

 尤も普通の男なら自分で言うのもなんだが据え膳を放っておかないだろう。

 こんな人初めてだ。

 婚約者がいるのに私の心はまるで少女のように高鳴っていた。

 だがそんなとき。

 厨房で仕込みをしていたら急に気持ちが悪くなった。

 目がチカチカする。

 冷や汗が止まらない。頭が痛くて目眩がする。

 これはただ事ではない。

 シアが私を寝室に運んでくれて横になると胸からこみ上げてくるものがある。

 かはっとそれを吐くと紅い鉄の味が口いっぱいに広がる。

 それが自分の血だと分かった瞬間、私はまた意識が闇に落ちていった。



 ーーーーーーーーーー



「お願い!お姉ちゃんを助けてよ!」


 シアの悲痛な叫びがラドルに刺さる。

 宿にまで戻ってきたラドルは未だ意識の戻らないクリスの傍らで彼女の容体を診ていた。


(助けてよ、か……言われずとも俺はクリスを助けると言った。その言葉を違える気はない。ないが……)


 口元から血が出た後がある。

 呼吸は浅く、顔色はまるで死人のように土気色だ。

 汗も多く、手足は冷たい。

 常用している薬はない為何がしかの疾患があるわけでもない。

 となるとやはりこの症状は。

 身体から乱れた魔力の残滓から魔生転換症だと診断する。

 魔生転換症とは読んで字のごとく生気を魔力に転換する事で身体への負担が増大しダメージとなって現れる症状の事だ。

 主に魔力回路を開拓されていない一般人による魔道具の連続使用や回路開拓されていても自分のキャパ以上の魔力を使用した時に引き起こされる症状である。

 魔力枯渇症よりも身体にかかるダメージは大きく重体になる可能性が高い。

 しかし目の前のクリスは魔道具を使用した形跡がない為ラドルはクリスから感じる魔力の残滓の出所を探る。

 クリスの手を握り目を閉じる。

 ラドルが自らの魔力を少しずつクリスに送り込んでいく。

 それを見た足元に控える黒い魔獣のローグがラドルの体調を危惧する。


「ラドル……大丈夫ですか?」

「……問題ない。悪いが集中させてくれ」

「……分かりました。シア、ここはラドルに任せましょう」

「……うん」


 そう言ってローグはシアを連れて部屋を出る。

 二人きりになった部屋は静寂に満ちる。

 しかしラドルの魔力を流し込まれたクリスの身体が柔らかい光に包まれていくとその中で濁った魔力が漂う箇所を見つける。

 その箇所はクリスの下腹部。

 女性としてのデリケートな箇所だが生命には変えられない、と服を一部だけはだけさせる。


「……これは」


 当初ラドルはクリスに魔道具の埋没術を施されているのかと思っていたが実際には呪術に近い術式が施されていた。


「……恐らく巻物(スクロール)などからの術式で意識をいじられている……そう言った類のものか?レナがいれば任せる懸案だが……仕方ないな。術式の根源たる神は……まぁデシテルあたりか」


 淫蕩の神デシテル。

 元は受胎の神なのだが人間は快楽を好む性質から変質し闇側の魔神になったという経歴の神である。


「となると……神に働き掛ける術式から解除魔法を行使すれば何とかなるか。問題は……クリスの体力だな。耐えてくれよ、クリス」


 そう言って宝剣を抜き魔力を流し込む。

 右手で剣を握り左手で魔法陣を展開すると緑色の光が部屋を照らす。


「うっ…ううっ……」


 魔法陣の光にクリスは少し呻いて汗を流している。

 ラドルはそれを横目に詠唱を開始する。


『レキ・レギ・マルテー・カータ 漆黒の宵闇に包まれし千丈の鍵は我が手にあり 破棄を 破毀を 撤回を 我は求める 夜の丘は陽光の扉を開きて我が声に導かれよ 解呪神鍵(ガルーテーシャ)


 詠唱の完成と共にクリスの下腹部から浮き出てきた魔力の塊を左手で握り潰すとそのまま霧散していく。

 それと同時に魔法陣の光を弱くなっていきそのまま夜の闇が支配する部屋に戻る。


「ふぅ……何とか成功したが……神聖魔法はやはり負担が大きいな……それはそうとクリスは、と」


 腰を落としてクリスの顔色を窺う。

 先程よりは顔色が幾分か良くなってきている。

 呼吸も元どおりに寝息を讃えているのを確認すると一先ず安堵する。

 その直後。

 クリスは予想だにしない行動をしてきた。



 ーーーーーーーーーー



 眠りが浅くなって来ているのが分かる。

 目の前に人の気配もある。

 だけど目蓋が重い。

 先程までの苦痛はもうない。

 ただ重怠い感覚が身体を支配している。

 だけど一つの欲求が私を動かした。

 ーー乾いた。

 そう私は乾いていたのだ。

 水分を。

 生気を。

 そして温もりを。

 それらを私はただただ欲した。

 ぐっと力を入れて腕を伸ばす。

 目の前の気配に向けて絡めていきたい。

 そうして動いたその腕は目の前の気配を掴んだ。

 そして。

 私の身体を抱きしめるように私に接触してきた。

 途端に私の身体は軽くなり世界が私の意識を呼び戻そうとする。

 温かい……。

 重い目蓋をゆっくりと開く。

 朝の日差しが世界を照らしたと思ったのも束の間、周囲は既に暗くなっていた。

 だが目の前には私と触れ合う人がいる。

 それは私が思い浮かべていた人。

 私はつい頭の中で独りごつ。


 ーーああ、やっぱり彼だーー


 そのまま私の欲求は彼との接触に浸りたいと舌を絡めていた。



 ーーーーーーーーーー



「んっ……」


 ラドルとクリスが互いの唇を重ねてから何分経っただろう。

 クリスの腕がラドルの首を絡めるとまるで淫魔の口付けのように生気を貪るような激しい接吻を求めてきた。

 もはや淫蕩の術式は解除されている為その反動が表に出てきたのかと判断するもクリスは病み上がりとは思えない程の力で抱き寄せてきている。

 もう思うようにすればいいと諦めてラドルはされるがままにクリスからの舌戦の応酬に対応していたのだが。

 ようやくクリスの目蓋が開き力が緩んだ所を少し力を入れて身体を引き離す。


「……気は済んだか?」

「……うん。ありがとラドル」

「別に礼を言われるような事はしていない」

「ううん。言いたいの。ありがとう、キスしてくれて」

「お前からしてきたんだが」

「ふふ、本当に……唐変木ね」

「お前に掛けられていた術は解除した。もうお前を縛るものはない……がそれを掛けた奴がいる筈だ」

「……だよね」

「心当たりは?」

「あるよ……でも今はまだ眠りたい……」

「そうか。なら今は休め。起きた時に全て終わっている様にしよう」

「……お願いね……」


 そのまま再び静かな寝息を立ててクリスは意識を手放す。

 ラドルはそれを確認して立ち上がろうとした時、グラっと世界が回る感覚に襲われる。

 酷い目眩はすぐに治まるも宝剣を杖にしてしまっていた。


「宝剣に助けられたか……だが今はまだ大丈夫かな」


 クリスに掛けられていた毛布をかけ直して部屋を去ろうとしたその時。

 ラドルに直接脳裏に問いかけてくる存在がいた。


 ーーたすけて……おに……ちゃ……ーー


「カティナ?」


 その声が聞こえてきてそのまま窓を開けると。

 信じがたい光景が目の前に広がっていた。

 夜空に浮かぶ闇色の球体の前に立つ男。

 それに対しているのは。

 湖水をもって水の龍を象る異形の存在。

 それを操るのは。

 神殿で見た水の巫女。

 ターニャだった。

 両者が対峙している街は一夜にして阿鼻叫喚の地へと変貌していくのであったーー。

はい79話です!

クリスの異聞にしてもよかったのですが一話使うほどの中身にはならないと判断して通常話にしました。

クリスとの絡みは大人の表現を用いてみてますが上手くいかないものです。

ハードになりすぎず、さりとてソフトすぎると説得力が弱いのでその匙加減が難しいです。

とは言え本当に必要な時は躊躇いませんがまだその時ではないのです。

書いてて楽しいのですがね。

クリスはとりあえずここで一旦お休み。

次回はターニャの番ですね。

ラドルには頑張ってもらいましょう。

感想評価お待ちしております!

ではまた次回も☆

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