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蒼穹の神滅者(シルヴァリオ)  作者: 1
第2章 堕ちる世界
77/85

第77話 魔導生命編〜覚醒〜

お待たせしました、約2ヵ月ぶりの更新です。

言い訳はまた後書きにて 三(#/__)/ズザァ

 黒い魔獣のローグは思い悩む。

 グルトミア十星将序列3位黒星のアルファス。

 その彼の言葉によるとまだ水の巫女ターニャを神滅者ラドルと引き合わせるわけにはいかないという。

 自分の知らないところで暗躍していた同志。

 これはリカードの知るところなのか?

 何も知らされていないのか?

 それとも彼の独断の行動なのか?

 ならばその意味するところとは?

 答えの出ない考察を繰り返す。

 まずしなくてはならないのは。


(アルファス!貴方はここで一体何をしているのですか?)


 少しでも情報を得なくてはならない。それもラドルにその詳細を知られないように。

 その為念話でコンタクトを取る。

 急に声を掛けてきた魔獣に対して黒星は。


(やあ、ローグ。監視役の任務お疲れ様)

(気付いていたなら貴方の行動の詳細を知りたいのですが?グルトミア国外でこんな内偵任務、いや諜報任務ですか?リカード様の意を受けて動いているのですか?)

(勿論だよ。リカード様の許可はある)

(許可、ですか。ではリカード様の意思から発された行動ではないのですね?)

(相変わらず細かいね、君は。まぁそうだね、これは言うなれば僕の研究の一環、と言ったところかな?)

(研究……?それは一体?その少女が貴方の研究に関係あると?)

(これ以上は言えない。僕の研究は僕だけのものだ)

(……この一件、リカード様に確認しても?)

(構わないよ、僕の邪魔さえしなければね)

(……分かりました、この場での詮索はここまでにしましょう。これ以上はラドルに気づかれかねない)


 そう打ち切ると一旦念話でのコンタクトを切る。

 だがほんの僅かなコンタクトでもラドルには気づかれているだろう。

 その内容はともかく。

 水面下での接触がラドルの不興を買うやもしれない。

 だがそれでもラドルに知らせる事はできない。

 それだけこの黒星のアルファスの行動が想定外すぎた。

 逡巡するローグを横目にアルファスはラドルから目を離さずに告げる。


「そういうわけでさ、先輩。ここは見逃しては貰えないかな?この娘には僕は手を出さないし先輩のする事に介入するつもりはない。約束するよ」


 にこやかに微笑みながらラドルに語りかける。

 まるで悪意など微塵も感じられない無垢な少年のような笑顔。この男の事を知らなければつい同意してしまうほどに。


「巫山戯るな、後輩。その少女には、いや水の巫女からは聞かなくちゃいけない事があるんだ、とっととその娘を解放して出て失せろ」

「へえ、聞きたいことって?」

「……このラーセンの龍脈(レイライン)の乱れの事だ」

「……気付いていたんだ、さすがだね先輩」


 龍脈(レイライン)

 この星には地脈と言われる網目のようなエネルギーの錯綜する脈道がある事が確認されている。

 それは人体に例えれば血管のようなものでその流れが滞れば様々な疾患ともいうべき症状が現れる。

 特に龍脈と呼ばれる大脈道が詰まれば星が死ぬと言われているほどその地脈がこの星には重要であるというのはもはや常識だと言われている。


「僅かな乱れだがな、ほんの少しだけ龍脈が漏れ出ている。その事をこの街の象徴たる巫女が知っているのか確認する必要があった」

「……いつ気づいたの?」

「このラーセンに入る前からだ、30年程前と比べて水質が汚染されているように見えた」


 厳密にはラーセンに入る前に見た例の夢が何かを示唆していたのではと思いその時に僅かに乱れた龍脈に気づいたのだ。


「なるほど、ここで生活している人間でさえ気づかない程に僅かな乱れを感じるとは流石は神滅者。恐れ入ったよ」

「納得したなら早くその巫女を離せ」

「断るよ」


 刹那。

 ラドルの姿が消えた。

 瞬の間にアルファスの背後に回り宝剣による斬烈を見舞う。

 だが。

 その刃がアルファスに届く事はなかった。

 アルファスの身体の周囲に見えない壁、いや力場がラドルの刃を音もなく反発して押し返そうとしている。


「斥力力場か、面倒な」

「やれやれ、このまま黙って去って欲しいだけなのにどうしてもやるのかい、先輩?」

「お前の都合など知るか!」

「無駄だよ、この力場は力が強い人間ほど強力に反発する。先輩の力が強いほどに、ね」

「しばらく会わない内に寝惚けたか?」

「え?」

「俺をただの人間だと思うな!」


 ぐにゃり。

 それまで反発していた斥力の力場が奇妙な形に歪む。

 その原因だと思われるのは。

 ラドルが手にしている宝剣だった。


「これは……」


 ラドルが宝剣に魔力を流入させたその瞬間、すぐにその違和感に気付いた。

 想像以上に魔力を増幅して発現したのだ。

 僅かな魔力でも数倍以上に増幅する性質を持つラジアス鋼の剣。

 宝剣セレンヴィーラ。

 この剣による魔力増幅能力によってラドルの一撃はかの神滅者の予想を超えたものになっていた。

 さしものアルファスの斥力力場と言えどその常識外の一撃に徐々に破られようとしたその瞬間。


 ギィィィ!!


 まるで金属同士の金切り音のように不快極まる醜音が神殿中庭に響きわたる。

 そしてその一撃が見せたその威力は中庭に張り巡らせられていた水が全て蒸発してしまう程の熱量をもたらした。

 周囲が水蒸気と霧によって一気に視界が遮られる。

 ラドルの予想の範疇を超えていた一撃の原因になった右手で握る宝剣に視線を落とす。

 その時脳裏にこの宝剣を押し付けてきたかの神使の姿がよぎる。


 ーー今の貴方に一番必要な、そして役に立つ物よーー


 かの神使が放った言葉もまた脳裏に再生されると、口元が僅かに緩む。


「全く……物騒極まりないモノを押し付けられたものだ。だが……この場は有り難く使わせてもらおう」


 そう独りごつと宝剣に改めて魔力を流入する。

 先程よりも遥かに細く、弱く、軽く。

 だがラドルは感じていた。それで充分だと。

 宝剣を騎士礼のように胸の前で立てて優しく刃をなぞるとそれに呼応するように宝剣もまた柔らかな光を湛えた。


「セレンヴィーラ。俺に従うならば俺の意思に従えーー」


 ラドルを中心に水面に落とされた水滴が起こした波紋のように魔力が中庭一杯に広がるとその波紋を乱す存在を感じた。

 視界が零でも感じることのできるその存在が姿を消した黒星である事を肌で感じる。


「ーーそこか」


 ボシュウッ!とその場の霧を全て吹き飛ばしながらその黒星に向けて吶喊する。

 アルファスが驚きとともに回避行動を取るもなおも追撃するラドル。

 ターニャを抱えながら回避するアルファスはラドルの猛追に追い詰められていく。


「さすがは先輩。そんなトンデモ剣を手にしているとは聞いてないんだけど?」

「手にしたのはほんの半月前だ、ここで骸になりたくなければその巫女を離せ」

「だからそれはーー」


 追い詰められているにも関わらず未だその表情には余裕が見えるアルファスがパチンと指を鳴らす。


「断ります」


 瞬間。

 その場が先程と同じように暗闇に包まれる。

 無駄な事を、とそのまま同じように燐光の魔法を無詠唱で放つと再び世界に光が戻る。

 光が戻ったその場に存在したそれは。

 小さな黒い球体のようなモノが無数に浮かんでいた。


「これは……?」

「気をつけてください、先輩」


 その声は中空に浮いたアルファスからだった。


「その黒の球体、一つ一つが小さな重力場を形成しているから触れたモノ全て噛み砕く命ない牙と思ってくれていいよ」


 ピン、と指で弾いた小石が黒い球体に触れた瞬間、小石が粉々に砕けた。


「これで足止めのつもりか?」

「まさか。これで足止めのつもりなんて傲慢にすぎますよ、かの神滅者に向かって。でもまぁ僕が逃げる分にはこれで充分かと」


 そこまで言うとアルファスの身体が闇色の魔力によって歪んでいく。

 転移しようとしている。そう察知したラドルが初動態勢を取ると黒い球体がそれぞれに自立行動を取って動き出した。

 直接ラドルを狙う訳ではなくラドルの周囲をまとわり付くようにその動きを制限してくる。

 ならば、と一気に純魔力による衝撃波で吹き飛ばそうとしたラドルに対して声がかかる。


「や、めて……おにー、ちゃん……」


 その声は。

 未だ目を閉じている巫女からの一声。

 その声にラドルはビタッと止まる。


「やはり……カティナなのか!?答えろ!」

「それはまたの機会に。では失礼」


 その言葉を最後にアルファスはターニャを抱えたままその姿を消した。

 ち、とラドルが舌打つ。

 失われた中庭に張られた水が再び溢れていく。

 その場に一人立つラドルの元にローグが駆け寄る。


「ラドル、アルファスは……」

「逃げられた。あいつの職種(クラス)はたしか……」

錬金術師(アルケミスト)です」

「錬金術……また厄介な奴か」


 そして。

 破壊されずにいた中庭がまた元の美しい水の景観を取り戻したその場に。

 無骨な軍靴を多く響かせてくる。

 その主人は。

 この街を守る自警団の者たちだった。


「そこの男!神聖なる神殿にて狼藉を働く不届き者とは貴様だな!大人しく縄につけば良し、抵抗するならばその身は保証できんぞ!」


 重厚な鎧に身を覆った自警団員に囲まれる。

 団長らしき男の背後にはいつの間にか居なくなっていた女神官が震えていた。


「あー……やり過ぎたか?」

「やり過ぎどころではないかと。今日は厄日ですかね……」



 ーーーーーーーーーー



 神殿から少し離れたとある小屋。

 そこにターニャを担いで現れたアルファスが訪れた。

 アルファスが腕の中の巫女に視線を落とすといまだ祭壇の水に濡れて湿った髪を優しくかき分ける。

 その小屋の中に唯一の家具とも言えるベッドにターニャをゆっくりと横たわらせて自身はその脇にある椅子に腰を掛けると一つ大きなため息を吐いた。


「はぁーー……。流石は伝説の神滅者だね、こんなに相手するのがしんどいとは思わなかった……」


 椅子の背もたれに体重をかけるとズルズルと体勢がズレていく。

 力が抜けて髪をクシャッと乱す。

 そして目の前で未だに目を覚さない水の巫女を見やる。


「……この娘はまだ先輩に会わせる訳にはいかない。変な刺激を与えてしまえばこの娘の存在がどうなるのか……先輩がラーセンに来ると分かった時から瞑想期間と口実を設けて眠らせているけど……そろそろ目を覚ます頃合いか?」

「目を覚まさせて大丈夫なのか?」


 背後から声がかかる。

 その男は言葉少なめにアルファスの背後に立つ。

 男の正体を探らず視線も動かさず返答するアルファス。


「大丈夫さ、今のところこの娘の素体構造は安定している。だが……予想外の刺激は好ましくない。どんな症状となって表に現れるか分からないからね」

「お前のその研究素体……どうやって、どこから連れてきたのかそれは問わないが……彼女を僕が連れてきたと言う事になっている以上、僕の大事な支持層の要だ。いま倒れて貰っては困るんだがな」

「君の政治活動とかは興味はないけど……まぁこの場を貸してくれた借りと利害が一致している以上は協力はするさ」

「それならば良いが……僕の婚約者にかの神滅者が接触した」

「へえ?」

「そちらについてはどうなんだ?彼女が今朝倒れたという報告もあるのだが?」

「まぁ魔力回路もないただの一般人には負担がかかる代物だからね、アレは。知らず知らずのうちに生気が枯渇するくらいの反動はあるかもね」

「大丈夫なのか?」

「とりあえずは一晩休めば枯渇した生気自体は元どおり程度には回復するさ。でも無理したらその限りではないね。でも君にとってはどうでもいいんじゃないの、レザース?仮初の婚約者なんだから」

「……声が大きいぞ」

「……大丈夫、まだ死なせはしないよ。彼女もまた僕にとっては大切な人だからね」


 ラーセンの街の若手議員と十星将の黒星は目の前で眠る巫女から視線を外さずに会話する。

 その時。

 目の前の巫女がうっすらと目蓋を開ける。

 そしてその瞳からつう、っと一筋。

 涙が溢れた。

 その口は弱々しく震えながら何かを話そうと試みようとする巫女に対してアルファスは覚醒の挨拶をする。


「おはよう、水の巫女様。ご気分はいかがかな?」


 にこやかに笑顔で声を掛けると顔を動かさずに視線だけをアルファスに投げかけて。

 ただ一言。


「……死にたい」


はい、最新話更新します。お待たせしてしまいました。

さて現れました、アルファス。

彼は当然某錬金術師の影響をバリバリ受けての登場です。

しかしこの世界での錬金術の最終目的は一般の錬金術とは異なります。従ってこの世界での錬金術師の立場もまた複雑な位置にしてあります。

それは次回以降に明らかにしていくつもりではありますがもうしばらくお待ち下さい。

そしたレザース。

彼はやはり、と言うかなんというか。

いい奴では無さそうですね。

ただ彼らには彼らなりの信念があって行動を起こしています。

それも追々書いていきますね。

そして水の巫女ターニャ。

見た目のイメージは某姫接続のガイド役の幼女ママかな?そんなイメージです。

ただ彼女にはこれから半端ない試練が待ち受けている予定です。

これ書き切れるかなぁ、と少し不安。

あ、言い訳書いてないやん。

……まあいいかw

でもまだまだ頑張って書いていきます。

皆様のおかげでこんな長丁場なお話を書けています。

もうしばらくお付き合いください。

感想評価もお待ちしております。

ではまた次回☆

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