第70話 聖戦編〜忠誠〜
またテキスト量が半端なくなりました汗。
トイレに行ってから読んで下さいませ笑
クステルム平原で起きた変事。
それは聖王国バルカードの国義が根底から覆す一大事であった。
その大事とは。
半年前に神滅者ラドル・アレスフィアにより殺害された聖王女アルメアが生きていたのだ。
いや生きていた、というのは正確ではない。
植物人間と化していたアルメアを戦略兵器としての人体実験を施し戦場に送り込んだのである。
その結果は元グルトミア十星将の一人紫星のダラスの討伐。クステルム平原の領有化。
魔道士ウーナとしてその力を発揮した。
神の力を以ってしなければ破ることのできないダラスの「絶対防壁陣」を破壊せしめたのは間違いなくアルメアの聖王女としての女神の神霊力故のものである事は言わずもがなであり、戦果としては申し分ないものである。
だがアルメアがまだ死んでいないとなれば今回の戦いの意味は泡となってしまった。
此度の聖戦の名分として聖王女アルメアの敵討ちという側面があるからである。
無論それ以上の戦闘は不可能の為軍を退いたのだが。
それ以上に戦闘を継続できなかった要因が別にあった。
紫星ダラスを倒した直後に現れた敵によってバルカード10万は半壊状態となり大敗を喫したからだ。
その場に現れた敵とは。
紅星のダルタニアというグルトミア帝国最強の火の龍だった。
そのダルタニアによってダラスはとどめを入れる前に保護され、10万の軍勢の3万は焼死し5万は負傷、総大将カインは現在意識不明の重体。戦乙女アーシアは右腕と左足の欠損という多大な損害を被ってしまったのだ。
アルメアとトリエに関しては逃げ惑う軍を再編し唯一無傷で帰還したメカージュ・ソルティスによってアルメアは回収されたもののトリエはダルタニアによって廃棄処分とされてしまった。
無論メカージュは軍法によって裁かれる事になるのだが軍属ではない上にメカージュ自身はフェニア神教の騎士である為数日の謹慎だけで済んでしまったのだ。
納得のいかない王族と貴族は教会に事情を説明を求めたが大司教からの教会の意向は、
『全ては我らが女神の思召しでありまた聖王女アルメアの神体は彼女の意向に依るものである』
という到底納得も理解もできない内容で公表されたのだ。
この現実は後にバルカードという国家を二分する出来事のきっかけとなるのである。
だがとりあえずは現在の状況を把握するため、現女王レーヴェは事の顛末をメカージュや生き残った兵士から聴取した内容の報告を受けていた。
「で?戦乙女アーシア・リングベルムが敵将ダラスを討ち取った後に何があったのです?」
柔らかな物言いだがその言葉には困惑と焦燥が明らかに見て取れた。
それに気づかない振りして答弁したのは執政官ドルテスであった。
「は。それにお答えする前に数日前に沈静化したグルトミアの内乱についてその詳細の確認が取れましたのでそちらからご報告します」
そうだ。
これ程までに軍を壊滅状態にしたあの紅星のダルタニアが何故を以ってその凶行に及んだのか。それを知らなければならない。
そのドルテスの口から聞いた内容にその場にいた者は一様に驚愕を禁じ得ずにいたーー。
ーーーーーーーーーー
「ここに新生グルトミア帝国の誕生を宣誓する!」
ラグナ皇帝の宣下がダルタニアの炎が燻る謁見の間に響く。
クーデターを成し遂げたラグナ皇帝とその後見人であるリジェル辺境伯が次にすべき事は帝都オーデルハイムの掌握であった。
宣言した翌日。
リジェルは帝都に滞留していた貴族派の人間を帝城に召喚しその協力を取り付けるつもりであった。
その召喚に応じて登城したのは実に約250名にもなった。
この内の全てがラグナに忠誠を誓った訳ではなかったが先帝の遺詔によりなし崩しに帝位に就いたシェルファニールよりは、ととりあえずは形だけでも忠誠を誓うように見せかけていた。
貴族派と対立していたほとんどの女帝派はその報復を恐れてかその場には姿を見せずにいたのだがただ一人登城していた者がいた。
そう摂政リカード・デ・ハルラである。
「此度の戦勝、おめでとうございます。ラグナ皇帝陛下」
そう言って恭しく片膝をついて礼を尽くすリカードに対して未だに疑念の視線を投げかけるラグナ。
「ふん。そのような明け透けな賛辞、俺を怒らせるだけだぞ?貴様、一体何を考えている」
「何を、と申されますと?」
「其方の忠誠は一体誰に捧げられるものか、陛下は聞いているのだ。リカード殿」
リカードが白々しく躱す言葉にすぐさま代弁するリジェル。
「忠誠……と?」
「貴様は我々の貴族特権を制限し女帝派の勢力を伸ばす事を画策していた。その貴様が急に掌を返して我ら側に靡いた。貴様も貴族でありながら女帝に忠誠を誓った身であるにもかかわらずバルカードが攻めて来て国の根幹が揺らぐと見るや否や主君を裏切ってその首を配下である十星将ダルタニアに取らせた。その様な不忠者を我らが変わらず重く用いると思うのか?」
「陛下、私は先帝のお言葉に従ったまでのこと。シェルファニール皇女を女帝としバルカードに対抗する旗頭とせよ。それがご先帝のご遺志。それを責められては私の立つ瀬がございません」
「それを先帝に進言したのは貴様だと言うではないか!」
「それは臣下として当然の務め。それを採用するか否かは主君の意思一つでございます」
「では何故そのような事を先帝に進言したのだ?」
いつまでもしつこく続く尋問に近い言葉にも丁寧に答えるリカード。
「理由は3つです。一つ目は近く聖王女の即位が確定的なバルカードに対する牽制的な意味を含めた威嚇姿勢を示すため」
聖王女アルメアが即位すればバルカードの国威はかつてないほどに頂点にまで極めてしまう。そうなれば北大陸の覇権は一気にバルカードが握ってしまう。それは避けなくてはいけない。
「2つ目は周辺諸国に対する外交的優位の維持」
バルカードは隣接する諸国に対して同盟、もしくは協力関係を約束している。それと言うのも北大陸は女神フェニアの教権地区が多く基本的に有効的な姿勢を見せている。
それに対してグルトミア帝国は帝国の指針として軍事力による保護と服従による関係であるためそこに信頼というものはあって無きが如しであり覇者としてその威容を誇る事を是としていた。その為バルカード以上の外交力が求められる。ある意味神聖性を前面に出しているバルカードは他国に対して自然と上位に立てたが柔和な人間による統治であるグルトミアは他国に対して人間同士の連帯感を期待しての人選であるとリカードは重要視したのだ。
「更に3つ目は貴族派の専横を防ぐ為です」
「なに?」
リカードの言葉の意味がよく分からずついラグナは聞き返した。
「我が国の貴族の特権は強大なものであり庶民の目からすればそれはマイナスにしか映りませぬ。搾取や暴行は当然のように行われ重税を課し、地方では分からないからと掠奪、徴用、厳罰化として民は塗炭の苦しみを味わう。それでは国の根幹たる社稷を守る事は出来ませぬ。皇女を女帝とする事で国民の一体化を図る意味合いでご進言致しました」
「貴様!それが貴族派を立ち上げた俺に対する非難であると分かって口にしているのであろうな!」
リカードの言葉に激怒したラグナは立ち上がり衛兵を呼び拘束するよう命令を下す。
しかしそれは冷静な判断のできるリジェルによって免れた。
「陛下。リカード殿はまだ先帝陛下がご存命の折に進言した事を述べただけに過ぎません。質問に答えただけで罰してはこれから帝国を統治するのに風聞が悪くなります」
「……ふん。だがこの俺が帝位に就いた以上は当然摂政位は廃止。貴様も閑職に回してやるから覚悟しておけ。さすれば俺への忠誠を誓ったと認めてやってもいい」
「ふ、ふふ。ははは。これはご冗談を」
急に含み笑いをしだすリカードに周りの貴族派の人間は何ごとかと訝しむ。
「何がおかしい!?」
業を煮やしたラグナが再び激昂してリカードを睨む。
「ああ失礼を。私の忠誠が貴方に認めて欲しいと勘違いしている事に可笑しくなりましてな。いや失礼」
「き、貴様〜!!」
「勘違いだと気づいていないのでご忠告申し上げましょう。私の忠誠は国に。このグルトミア帝国に捧げたもの。貴方個人に対してなどという器の小さい事を言われては甚だ迷惑というものです」
「衛兵!こやつを捕らえよ!罪状は不敬罪だ!」
「そして陛下。貴方もまた皇帝という形で国に仕えているのです。けして貴方がこの国を好き勝手にしていい法など何処にもないのです。それをシェルファニール陛下はよくご存知でした。これが最大の理由ですかね」
「斬れ!もはやその口を開く事は許さん!斬ってしまえ!」
ダダダッとあっという間にリカードの周りを衛兵が囲む。
ちらっと見ても知っている顔はいない。
恐らく貴族派の息のかかった者たちなのだろう。
ふぅ、一つ溜息混じりに衛兵を睨む。
その視線に少したじろぐ様子を見せるが目を合わせないリカードの背後の兵が斬りかかろうとしたその時。
「ぎゃぁぁぁ!」
リカードに斬りかかった衛兵がいきなり紅蓮の焔に包まれその場に倒れたのだ。
一瞬その場にいた全ての者が、いやリカード以外の者が一体何事かと目を見張ると同時にその凄惨な現実に理解が追いつかないでいた。
「な、何事か!」
辛うじてリジェルがその一言を発するのに精一杯だったがそれでも一体何が起きたのか理解出来なかった。
いや大凡の事は理解できていた筈なのだがそれを認めたくないその心理が冷静さを失わせている。
その現場に孤立している筈のリカードが自信に満ちた態度でいられるのは。
そう、彼直属の特務武官集団十星将が付いているからなのだ。
それは最初から分かっていた。
その為リジェルは摂政職を廃止した後十星将もまた廃止しそのまま爵位なり賞与なりを与えて適当に牙を抜いていく算段を目論んでいたのだが。
彼は十星将を甘く考えていた。
それはいかに理知的な貴族として知れ渡っているとは言えリジェル自身も高位の貴族である以上権威を以って命令すればそれに従うのが当然と考えていて事実今までそれで上手くいっていた。
だが十星将は国や皇帝に仕えていたのではなくいわばリカードの私兵集団と言ってもいい事にリジェルは考えが及ばなかった。
そして重々しい扉が開かれ十星将の面々がリカードを支持すると言わんばかりに謁見の間に姿を現した。
序列1位 白星のノヴァ・エインスレーゼ。
序列2位 紅星のダルタニア。
序列3位 黒星のアルファス・ヴァルター。
序列4位 金星のリーテス・ファラ。
序列5位 銀星のドリムーラ・ファラ。
序列7位 黄星のローグ・ファルザラック。
序列10位 翠星のセリカ・メールマール。
この場に居ない序列6位碧星のバトレシアと8位木星のライアスは戦場にいる為。序列9位水星のアレサ・アルガマスはフェニア神教に捕虜となっている為この場にはいないがそれでも十星将が揃い踏みする事はまずない。
だが一人一人がその人外の力を感じさせるほどにその存在感を強烈に発していた。
そして。
250名の貴族たちを前に一歩も退かずリカードの背後に立つと大仰に口を開く黒衣の摂政。
「さて。ここにお集まりの方々はいやしくもこの国に永遠の忠誠を誓った方ばかりの筈。その身は国に。その心は民に。その命は神に捧げると叙爵の儀で誓ったでしょう?では君に捧げられるのは何か?それは貴方がたの正義だ。正義を君に捧げ正しき社稷に導くのが臣であろう?」
「な、何が言いたい……!」
先程までの威勢はどこへやら十星将の威圧に押し黙らされていたラグナがガタガタと歯を鳴らしながらもそれだけを言葉にする。
「早い話が貴方では我らが正義を捧げるには値しないのですよ。ラグナ陛下。……いや即位前ですからラグナ皇子。醜く肥え太り貴族としての尊厳ばかりは人一倍と忠誠を捧げるには足りないのです。そしてその貴方に取り巻くここにいる貴族たちもまた然り。漸く膿を出し集める事が出来ました」
「リカード殿!膿とは失礼千万であろう!我らはこのグルトミア建国以来の宿臣宿将であるぞ!その我らをそうやって威を以って脅迫するが貴様らの正義か!」
リジェルが激昂しながら自らの家格に縋る言葉にリカードはふ、と一つ失笑をこぼす。
そしてリジェルの糾弾に冷たく返す。
「これは異な事を。我らが正義と忠誠は変わらずただ一人の方にのみ捧げられるのです」
「誰だと言うのだ!先帝は既に崩御され貴様が後見したシェルファニールは貴様の配下ダルタニアが弑した!他に誰が皇帝に相応しいというのだ!?」
「……ここまで愚かだと話す気力も失せるというもの。その方にご出座頂くことに致しましょう」
そう言って手をかざすと三度扉が開く。
謁見の間中央に伸びる赤絨毯の脇に十星将が分かれて膝をつくと聴こえてくるのは女性の靴音。
そこに現れた人物を見て貴族派の人間が凍りついた。
桃色の長い髪に優しく光を湛えた紫の瞳。
右手にはかつて父から移譲された聖杖。
美しくあるが消して華美過ぎないドレスを着こなすその人物はかつて全ての国民が忠誠を捧げた女帝。
その姿を見て誰よりも驚きを見せたのは玉座に座っていたラグナだった。
「シェ、シェ、シェ!シェルファニールゥゥゥっ!?」
そう、その麗姿を見せたのはかつてのままの状態で現れた女帝シェルファニールであった。
「ば、バカな!き、き、貴様は焼き殺されて……その首はテト川のほとりに晒された筈だ!この目で何度も確認した!間違いない!」
リジェルも想定外な人物の登場に冷静を保てなくなりただ叫ぶしか出来なくなっていた。
「女帝陛下。此度の一件、ご協力頂き感謝の念に堪えませぬ」
「リカード。ご苦労様でした。……まさかこれ程までの貴族が私に反目していたとは……自らの不徳を恥じ入ります」
「ご安心を。貴女様の覇道は私と十星将がお守り致します故。貴女様は悠々とその後に続いて頂ければよろしいのです」
シェルファニールに頭を垂れるリカードを労う。
そして優しく見せた瞳を今度は真正面の玉座に座っている小太りの皇子に冷たく鋭い視線を投げかける。
「偽帝ラグナ。私の従兄弟というだけでここまで貴族を扇動し国家の根幹を揺るがすような行為に及んだ罪、如何に貴方が帝国随一の名家の出といえど厳罰は免れませんよ?どう釈明するのです?」
「だ、だ、黙れ!貴様は偽物だ!シェルファニールは死んだのに何故この俺を弾劾する!?許さんぞ!このグルトミア皇帝に対して!禁軍はどうしたぁ!?早くこの痴れ者を捕らえて殺せ!」
禁軍と呼ばれる近衛兵は皇帝直属である為、この場合付くべき相手は当然即位前のラグナよりもシェルファニールに優先されるべきである。
しかし禁軍自体もシェルファニールは死んだと伝えられている為その存在が本物であるかの確信が取れない現状どちらに付くのか分からず懊悩することしかできなかった。
「私が本物であるかの証明が必要ならばよく見なさい。このグルトミア帝国の聖杖に認められた光を」
そう言うとコォン、ひと突き石床を打つと。
聖杖の豪奢な装飾が一際強い光を放つ。
「こ、これは……!始祖の光……!?」
始祖の光。
グルトミア帝国の皇帝はこれまで世襲で受け継がれて16代になるシェルファニールが即位した時この聖杖に認められた時と同じ万世一系の光を放てた事実がシェルファニールが本物である何よりの証明である。
それはつまり。
ここに集まった貴族派の人間は須らく反逆の徒である事を同時に証明した事になるのだった。
「ば、バカな……!何故だ、貴様が死んだのは、この目で確かに、見たのに……!あれが偽物だと言う事だったというのか?」
リジェルがその場に膝から落ちると自らの野望が潰えたのを感じてかうわ言のように呟やく。
その言葉に誰も答えず禁軍が仰ぐべき主君を見定めた事で逆に孤立した250名もの貴族たちは捕縛される事になる。
その現実にヘナヘナと腰が砕ける者、逃げ出す者、歯向かう者様々だが未だに微動だにしない人物がいた。
偽帝と呼ばれたラグナである。
「こ、この玉座は、渡さぬ!これは俺のモノだ!この椅子こそがグルトミアの全てだ!俺が手にする筈の!全てなんだ!」
「……ラグナ。貴方は何故そうまでして……」
「黙れ!このグルトミアが建国されて260年!15代の皇帝に一人として女帝などいない!それを何故ここで貴様の存在を認めねばならぬ!女は男の為に子を成す道具ではないか!それを何故位人臣極めた俺を貴様ごときが呼び捨てる!そんな事はグルトミアの歴史にあってはならないのだ!」
グルトミア帝国の貴族の根幹にある男尊女卑の発言にその場にいたダルタニアが眉を顰め立ち上がる。
だがそれを制したのは上司であるリカードであった。
「ダルタニア、剣を借りるぞ」
「ま、待て!貴様、グルトミア皇帝たる俺に刃を向ける気か!?」
ダルタニアの腰から借り受けた抜き身の長剣を手にリカードがラグナに近づく。
「ラグナ皇子。貴方は生きていたいか?」
「な、何?」
「貴方が先程から口にしているその身分、その血脈。一体それに何の価値がある?そして貴方が先程からしがみついているその玉座に何の意味がある?貴方自身はただの人間。神でもなければ神使でも聖人でもないただの人だ。血だの身分だのそれを口にしてこの刃を防げるとでも言いたいのか?所詮それは戦いを知らぬボケた思考の持ち主よ。同様にその玉座もただの椅子。燃えればただの消炭になるだけのもの。それが分からぬ貴方にこのグルトミアにいる資格は無い!!」
そう言って剣を振り上げるとそのまま無慈悲にラグナに向けて振り下ろされる。
「ぐぁぁぁぁぁっ!」
ラグナの肩口にめり込んだ剣が振り抜かれるとそこから噴水のように赤い血が大量に噴き出す。
ブン、っと血を払うとダルタニアに視線を投げかけて顎で合図するとダルタニアがパチンと指を鳴らす。
瞬間、ゴォッと玉座に火が燃え出した。
そのまま物言わぬ骸に成り果てたラグナは自身がしがみついた玉座と共に音を立てて焔に包まれていく。
その様を見てシェルファニールは憐憫の目を向けたのは未だその椅子に座っている偽帝。
そしてその一部始終を見ていた貴族たちは十星将と禁軍に囲まれて断罪されるのを待っている。
「リカード、彼らですが……貴方はどうするおつもりなのですか?」
「此度の一件、全ての貴族派の人間を一箇所に集めそしてその全てを処罰もしくは処刑するつもりでいました」
その言葉を聞いて中には失禁する貴族がいるのを見てダルタニアたち十星将はこの国の壊死した部分を見た気分になっていた。
そのまま命令が下されれば何の迷いも無く250名の貴族を鏖殺していたであろうがそれに異を唱えたのは彼女らの主君であった。
「……リカード、ここにいる250名は全貴族の3分の2にも及びます。その全てを処罰するとなると今度は彼らの領地を治める当主がいなくなり近隣諸国の侵攻を招くことになり、また彼らの身内による反乱も相次いではそれこそ国家の体を維持できなくなります。何とかなりませんか?」
「陛下、罪は罪です。罪には罰を与えねばなりません。でなければ逆に貴女様を支持してきた女帝派の貴族に示しがつきません」
その冷徹な物言いに震え上がる貴族たち。
その様子を見て一つ溜息を吐きながら。
「とは言え陛下のお言葉を無視する訳にも参りません。いいでしょう、軽度の罰と罰金で収める事といたしましょう。無論、今度こそ国家と陛下に比類なき忠誠を誓った者のみですがそれで良いでしょうか?」
「ええ、ありがとうリカード」
黒衣の宰相に礼を告げると今度はへたり込んでいる貴族たちに向き直る。
「皆さん。貴方がたは未だにこの私がグルトミア皇帝に相応しくないとしてラグナの声に応じたのでしょう?それは本当に私の不徳。でも貴方がたのその思いはグルトミアを思ってのもの。此度はそう私の中で結論をつけます。私自身に何の力も無い女帝である事が良かれと思い政治的な事には口を出さない象徴でいました。でもこれからは私も自らの意思でグルトミアを繁栄に導きます。その為に皆さんの力を貸しては頂けないでしょうか?お願いします……」
そう言って嫋やかに頭を下げるもその姿に媚びも諂いもなく一人の麗人が優雅に振る舞う礼にそれを見た貴族たちは一人、また一人と膝をつき臣下の礼をとっていく。
それを見てシェルファニールはまたもう一度今度は感謝の意を込めて頭を下げる。
ここにようやくグルトミア帝国はオーデルハイム政変という変事で一つに纏まろうとしていた。
後の世にこのオーデルハイム政変は電撃的に僅か5日で死者を二人出しただけで成し遂げた政変として高く評価されるのである。
そして。
それは同時に敵が一つだけになった事を意味していた。
黒衣の宰相、リカードはそれを傍らに侍る火の龍こと紅星のダルタニアに新しい命令を出した。
それを受けてダルタニアはにやぁ、とまるで肉食の獣のような本能的な笑みを浮かべる。
「ふふ。ダラスの爺さんに貸し作るのも面白いけど……10万の獲物か……食べ応えがありそうね。ラドルともう一度会う為の腹拵えって感じにして灼きつくしてあげようかしら……!」
ペロッと赤い舌を出しながら一人、謁見の間を後にした。
第70話です!
皆様台風の影響はありませんでしたでしょうか?
被災された方々のご無事をお祈りしております。
さて今回やはり、というか生きてました、シェルファニール。
やっばね、このままシェルファニールの退場は無いです、はい。結局アルメアもシェルファニールも生きていたという事にしましたがその過程も結果も真逆な2人。
これからどうなるかは正直悩んでるところがまだあります。
一番最良の選択をしたいのですが小説は生き物。
勝手に話が転がっていくのでそこの匙加減を注意していきたいですね。
次回はダルタニア無双の前に異聞シェルファニール編を送ります。ダルタニアとの戦いの裏側を書ければな、と思ってますので無双はちょいとお待ち下さい!
感想評価お待ちしております!
皆様の応援に書き続けられています。本当にありがとうございます!
ではまた次回☆




