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蒼穹の神滅者(シルヴァリオ)  作者: 1
第1章 廻る時計
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第4話 序幕〜闖入者〜

 

 自分の放った爆裂の魔法によって濛々と炎と煙が辺りを包む。

 自分の抜きはなった斬撃によって近くにいた騎士を薙ぎ払う。

 一歩。

 また一歩。

 歩を進める毎に降る血の雨と場を包む血煙が己の所業の異色さを物語る。

 目の前にいる全身を鋼の甲冑で身を固めた有象無象が俺の行く手を阻もうと突進してくる。

 その度に剣を一閃すると甲冑ごと胴が寸断されまた血煙と血雨が巻き起こる。


 もう来るな。


 そう言った所で神の名の下に命を棄てる狂信者の如く忠義やら正義やらで思考が凍った連中に自分の声は届かない。届いた事がない。

 ならばーー。草を刈るが如く一掃する。

 これも何度も繰り返した自問とその答えだ。

 誰も俺の歩は止められない。

 目の前に真に俺を待つ者がいると信じて。

 また剣を振るう。



 異変はすぐに変事へと姿を変える。

 それに気付いたのは大聖堂の鐘が鳴り響いた直後だった。戴冠式が行われているはずの大聖堂からすさまじい大爆音が轟いたからだ。

 誰もが一瞬何が起きたか把握できずにただただ狼狽え逃げ惑うばかりのなか、爆発のあった大聖堂に向かう姿があった。


「何が……一体何が起こったの⁈」

「エティア‼︎」


 紅い髪の少女を後ろから呼ぶ声に足を止める。


「兄さん」

「エティア、お前何処に行くつもりだ。避難するなら方向が違うぞ?」


 この騒動のなかエティアを探し続けていたのだろう。さしもの体力自慢のメカージュも肩で息をしている。しかしはっきりと目の前の妹分を見据えその真意を問う。


「お前……まさか大聖堂に向かうつもりじゃないんだろうな?」


 メカージュはエティアをよく理解している。

 伊達に長年兄妹のように過ごして来たわけじゃない。こんな時エティアが自分に対してどう答えるかは分かっているつもりだ。

 だが確認せずにはいられない。

 しなければならない。

 答えはいつも最悪の答えが返ってくると分かっていても。


「行くよ。きっと怪我してる人がいる。苦しんでいる人がいる。だから私行かなくちゃ」

「馬鹿‼︎状況を良く見ろ!これだけの大混乱の中、お前が行ってなんになる!足手まといになるだけだ。それどころかお前自身が危険に晒されるんだぞ!」


 つい語調が強くなる。

 目の前の少女の肩を掴んで声を荒げる。

 しかしエティアはいつも自分の心配をよそに笑う。

 いつも同じ言葉で己の意志を曲げない。


「だいじょぶだよ。きっと何とかなる。何とかするよ!」


 駄目だ。

 この笑顔と言葉が手を組んだ時自分の意見など通らない。これも長年の経験からのものだ。

 ーーならば自分のする事は一つ。


「この跳ねっ返りが。したい事があるならさっさと済ませろ!ったく保護者も楽じゃない……」

「うん。頼りにしてるよ、兄さん」


 そう言うと旅の兄妹は白の巨城に駆けていく。



「貴様!何者だ‼︎」


 騎士の1人が蒼い髪の賊に問う。しかしその蒼い髪の男はにべもなく、


「答える気はない。だがすぐに分かるさ」


 そう言うと何も手にしない左手をその眼前にやる。

 するといままで褐色の瞳がみるみる髪と同じように深い蒼さを増していく。

 その現象を目にした騎士たちは、いやその場にいる全ての者がとある異名を脳裏に呼び覚ます。


「し……神滅者(シルヴァリオ)……⁈」

「分かったならそこを退け。俺の目的も……分かるだろう……?」


 明らかに戦意が萎えていくのが見てとれる。

 もはや神滅者と呼ばれた男の目には100を越える騎士達など映っていなかった。

 その目に映すのは今しがた聖王女の名乗りを許されたか弱い王女だった。


「待っていろ。すぐにそこまで行ってやる」


 その言葉が自分に掛けられたものだとアルメアはすぐに気付いた。


「あ、貴方は……。まさか……?」


 まさか。

 まさか。私の祈りを知られた?私の思いを見透かした?

 そんな心の声が漏れたかのように口から出た言葉。

 だが。


「ええい!神滅者が何するものぞ!我らは王国の騎士!邪を払い正義を行使する断罪の剣!皆、奮起せよ!今こそ我等が騎士道示す時ぞ!」


 聖騎士長だろうか。髭を蓄えた初老の騎士は一際豪奢な鎧に騎士章を設えた外套を纏い銀の剣を抜き騎士達を鼓舞する。

 そんな姿に蒼髪蒼瞳の神滅者はため息をつく。


「……いい加減有象無象を蹴散らす草刈りも飽きてきた。ならば……」


 そう言うと神滅者は左手を前に突き出し、魔法の詠唱に入る。


『レグナ・ラウ・フェルハーサ 神霊の盟約よ 精霊の誓約よ 古の神の名において彼の者を縛りたもう 神縛霊鎖(ワウ・ラーイア)


 詠唱が終わると同時に神滅者の手から光が大聖堂を一杯に照らす。光が収まった時、騎士達は自分の身体に起きた異常にすぐに気づく。

 身体がまるで見えない石の中に閉じ込められたかのように動かないのだ。声は出る。意識もある。呼吸も瞬きもできる。

 だが身体が動かない。


「お前達の身体は周囲の空間ごと縛られた。意識はあるだろう。お前達の騎士道とやらがいかに無力か。噛み締めながら聖王女の断末魔を聞いておくがいい」


 まるで枯れ木と化した騎士の林を悠々と抜けて神滅者が石段に足をかけたその時。

 背後から別の気配を感じた。


「うりゃああああああ!」


 後背から聞こえた足音に振りかえりつつ、自分に襲いかかるその蹴りを躱す。

 蹴りを繰り出した本人は着地と同時に身を翻しこちらを睨みつける。

 だがその表情は賊を視認した瞬間、驚きに変わる。


「……君か。確か……エティアと言ったか。」

「え……?蒼い騎士……さま?」


 再び(まみ)えた二人は何を思うのか。

 ほんの先刻出会った二人はその立場を大きく変えて再び見える。

 そのすぐ先にある未来はまだ誰にも知る由も無かったーー。


第4話目です。

バトルシーンを文章で表現するのは難しいと再認識。

表現力を付けるために何がいいのか誰か教えてくださいませ。(爆

では次回序章パート最終回です。お付き合いくださいませ。

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