第3話 序幕〜戴冠式〜
またか。
また生まれ落ちたか。
何故だ。
何故神はこの現世に干渉するのか。
ならば。
ならば俺はーー。
何度も繰り返してきた自問自答。
何度も繰り返してきた所業。
また同じ行為をするというのか。
また同じ想いをするというのか。
しかし俺にしかできないのなら。
それを相手が望むのならば。
俺がーー。
この手で。俺の意思で。
剣を振るおうーー。
聖王建国祭とはある条件のもとで「聖王女」の称号を得た王族の女子が女王の位階に就き、戴冠する儀式と同時に建国祭を執り行われるものである。
建国祭自体が10年に一度と極端に頻度の少ない稀な祭事である上に、聖王女の条件というのもまた完全に偶発的事象なため誰にも予期できるものではなく、聖王建国祭が執り行われるのは100年200年に一度という稀覯的行事である。事実前回の聖王建国祭は200年以上前の話だ。
そしてその「条件」を得た王女がいままさに「聖王女」として君臨しようとしていた。
「白峰城」城内大聖堂ー。
1人のまだ年若い見目麗しい王女が100を越える儀仗兵の旗槍ひしめく中、ゆっくりと歩を進める。
その身には最上級の絹であつらえた純白のドレスに、細い首には魅了の魔法が施されたような美しく光り輝く宝石を散りばめたネックレス。腰まである長い髪は清流の大河の如く流々と靡いている。真紅の絨毯を静々と進むその姿はまさに聖女と呼ぶに相応しい佇まいを見せていた。
やがて7段の石段を登り祭壇の前まで行くと神前で跪く。国教である神フェニアの神像が王女を優しく見つめているその光景は荘厳厳粛で誰もが言葉を出せるものではなかった。
その静謐な空間で一人、神教の大司教が跪く王女に優しく言葉を告げる。
「アルメア・フェル・ラトバリア・ヴェルシアーナよ」
「はい」
短く、しかしどこまでも美しく通る声には気品を漂わせている。
「そなたは聖王女としてその身にその心にその魂に神を宿す覚悟はあるか」
「はい」
「そなたは聖王女としてこの国に住まう者全てに分け隔てなく与え、救い、導く事を約する事ができるか」
「はい。」
「そなたは聖王女として生きる事を悔さないか」
「……はい」
「では宣誓を」
「私、アルメア・フェル・ラトバリア・ヴェルシアーナはこの身を神と民と国に捧げる事を…誓います」
「では我が教会は地母神の名においてそなたを第62代バルカード国聖王、第4代聖王女と認めよう。……聖冠を」
一連の聖礼を交わし、新しく聖王女の名を受けた王女の頭にゆっくりと天使の翼が象られた黄金の冠が乗せられる。
直後、大聖堂の聖鐘が大きく鳴り響く。
多くの騎士、貴族、司祭達に振り向き手をかざし応える姿に地が震える程の喝采が起きる。
「聖王女万歳‼︎」
「アルメア聖王女に光あれ‼︎」
「聖王国バルカードに神の祝福あれ‼︎」
大聖堂の鐘が鳴る。
それが聖王女が降誕した事を告げる証であり誰もが幸福と光に満ちた未来を想起する。
アルメア聖王女はバルコニーから目下で慶びの大喝采を上げる民草に優しく微笑みながら応える。
アルメアは決意する。
この国と民にかかる災厄はすべて自分が払うのだと。
決意したその時。
「ーー降ろしたか」
低く、しかしその場にいた全ての者が言葉を聞いたその刹那、
ドガアァァァァァァァァァァァァン‼︎‼︎
耳をつんざく爆音が炸裂する。
いや爆音だけではない。同時に赤い雨が大聖堂の一角で降り注ぐ。
大理石でできた壁が爆発したその場に数人の騎士が鎧ごと歪な形になって倒れている。騎士たちの首から上は全て引き千切られたようにーーーー無い。
騒めく貴族、司祭達を守る形で騎士が己の剣を抜いて爆煙を睨みつけるとそこには。
血で赤く染まった世界にどこまでも続く蒼穹のような髪が揺れていた。
「聖王女アルメア・ヴェルシアーナ。その命……、ここで絶ってやろう」
深夜投稿です。
スマホは便利です。いろんな言葉を検索できます。
語彙に乏しい私が物語を書けるのはスマホ様のおかげです。
…勉強します(反省。
まだまだテンポが悪いのは承知の上ですが諦めずお付き合いくださいませ。
ではまた近く次話をあげますのでよろしくお願い致します。