表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼穹の神滅者(シルヴァリオ)  作者: 1
第1章 廻る時計
16/85

第16話 少女編〜少女〜

 ーー私は夢を見る。

 そう、これは夢だ。

 それが分かる。

 いつもの夢。

 決まって私が魔獣に連れ去られる夢だ。

 周りは暗く、寒い。

 魔獣は私を連れて駆ける。

 疾く疾く森を駆け走る。

 そして……森の中のとある場所で私を降ろす。

 魔獣は私を見つめる。

 凶悪な意志を秘めた魔獣の瞳。

 その意思とは私を捕食する為だ。

 大きな牙。怪しく滴る獣唾。赤く揺らめく瞳。

 今まさに私は凶牙に掛かるその瞬間、そこで目が醒める。

 目が醒めたその時いつもならーー。


「目が醒めたか?」

「ーーえ?」


 いつもと違う。

 何が違うとは明快だ。

 私に声を掛けてくる存在がある。

 私が重い瞼を開けると目に飛び込んできたのは澄んだ蒼い髪。その瞳は私をじっと見つめている。

 徐々に夢から現に戻ってくる感覚。

 ああ、私今この人に抱きかかえられている。

 ふぅと安堵したその時。


「ーーラドル、水を」


 もう一つの気配を感じてゆっくり首だけを軽く捻るとそこには。

 夢の中にいた魔獣が水袋を咥えて私を見つめていた。

 さっと背筋が凍る。


「いやああああああああああ‼︎」


 ーーーーーーーーーーーー


「……おい、ローグ。」

「えぇ?俺が悪いんですか⁉︎」


 魔獣からずり落ちた少女を介抱して数十分。ようやく少女が目を醒ましたのも束の間、いきなり目の前に魔獣がいれば驚いて再び失神しても仕方ない。

 この迂闊な同行者を責めるのは後にして何とか再覚醒を試みる。

 さらに数分。

 何とか目を覚まし、水を飲ませて落ち着いた少女を少し観察する。

 歳は恐らくまだ10歳前後。粗末な布地の服。手は荒れて身体中にアザがついている。

 奴隷…とまではいかないだろうがかなり貧しい生活を過ごしてきたと思わせる少女の表情は先ほど驚いた顔が嘘のように暗く沈んでいる。

 特にその瞳には光がない。この世に絶望しきったような死人の目と変わりなかった。

 一通り観察し終え、声をかけてみる。


「君、名前は?何故こんな所であんな魔獣に連れ去られて来たんだ?」

「……私は……カティナ。……あの……だれ……?」

「ああ、俺はラドル。冒険者ってとこかな」


 そこまで言うと何やら頭に直接語りかけてくる声がある。

 ラドルの後ろで控えていたローグが念話で語りかけてきたのだ。


(ラドル、いいんですか?本名を出して)

(別に構わない。世間で通っているのは神滅者であってラドルという名は珍しくもないしな)


「あの……あの魔獣は……?」

「ん?あいつは……まぁペットだ」

「ペッ……?」


 そこまで言って感じる背後からの視線を無視しつつ、カティナに事の経緯の続きを促す。


「私は……樹海の傍にあるトコル村に住んでるの……。そこでは…年に1度、魔獣に生娘を捧げる事で……村の安泰を祈る儀式があって……一昨年はアルテが、去年は友達のミナが……今年は……私が……」

「……要は生贄か。だが……腑に落ちないな」


 え?と顔を傾げるカティナをよそにラドルは少し思考に耽る。

 腑に落ちない事柄。それは樹海の傍に集落を構えて年に1度一人の生贄を差し出すだけで1年間も魔獣に襲われないというその儀式そのものだ。

 多くの生贄を必要とする儀式は魔術的要素がない限りその殆どは迷信である事が多い。

 今やそれは常識であり未だに生贄というシステムが根付いているとは少々信じがたい。

 魔獣は知能が普通の獣よりも高いものの、血を好む習性上生贄などすすんで差し出せば、一晩で村が全滅する事うけあいだ。

 とすれば他に考えられる可能性は限られてくる。

 それともう一つ。


「……カティナ。君は、それをただ黙って受け入れるのか?」

「……言ってる意味が…分からない……」

「……ならば聞き方を変えようか。君は……生きたくないのか?」

「……!」


 この質問でようやく今まで死気に満ちていた顔に生気が少し戻ってきた。

 ラドルはそれを見逃さない。だがカティナの答えを待つ。


「……そんなこと……決まってるよ……!生きたいに決まってる……でも……このままじゃ村が……皆が……死んじゃう!私が……私1人が……この身を捧げれば……!また1年……無事になるから……」

「そうか……ならそのまま死ぬか?」

「……え?」

「自分の命が他人より軽いという事は決してない。他人の為にとお題目を唱えて死ぬのは只の自殺願望者だ。命とは死ぬ瞬間まで持っている自分最後の所有物。それを他人の為に捨てるなら……ここで君は死ぬべきだ」

「……」


 カティナの目にじわと溢れるものがある。

 それは暗にカティナの本心を意味していた。

 だがラドルはカティナの口から言う事に意味があると知っているからだ。

 だから。


「君が生きたいなら手を貸そう。生きたくないなら俺は去ろう。……どうする?」

「……わ、私は……」


 ラドルは表情を変えずただ待つ。

 カティナの声で。口で。言葉で。

 その答えが出るのを待つ。

 やがて。

 ポロポロと両の瞳から大粒の涙が溢れてくる。

 その涙が今までカティナの瞳に覆っていた死の鱗を洗い落としていく。

 そして捻り出すように。だがはっきりと。


「い……生きたい……!もっと……ずっと……!最期まで生きていたい……!」

「……なら決まりだ。……しょっと」

「きゃ⁉︎」


 ぐい、とカティナの手を取るラドル。そのままカティアの軽い身体を抱きかかえる。

 所謂お姫様抱っこにしてカティナを見やる。

 ラドルの表情は終始変わらない。

 微笑みも怒りも憐れみも浮かべない。

 だが。

 カティナの目には少しだけラドルの頬が緩んで笑みを浮かべた気がした。

 何故か一帯樹々が薙ぎ倒されて暗い森に明るい陽光が差し込みラドルの蒼い髪が遥か蒼穹と相まっている。

 カティナはその姿を見てつい感じた事が自然と口から出た。


「神……さま?」


 不意に出たカティナの言葉にラドルは短く、だが曖昧に、だが優しく答える。


「俺は……人間だった……多分な」

第16話です!

もっともっともっと表現を学ばないと!

今回それを痛感しました。

多分改定します。いや必ずします。

今はこれでご勘弁を。

低くてもいいので感想評価お願いします!

ではまた!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ