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蒼穹の神滅者(シルヴァリオ)  作者: 1
第1章 廻る時計
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第15話 少女編〜魔獣〜

 神滅者と魔獣は昼なお暗い樹海を進む。

 ラドルは砂時計のあった小屋を出てから全く口を開かない。

 ラドルの歩に合わせてローグは宙を飛んでいる。

 ちらと横目でラドルの瞳を見ると先程までの蒼さが抜け褐色の瞳に戻っている。

 ローグは知っていた。

 瞳に蒼さが掛かっている時のラドルの力は神霊力によって遥かに倍加されている事を。

 この世界では魔法を使用する処置を施されると瞳の虹彩が魔術反応し、遺伝子レベルで僅かな変化をもたらす。代表的な変化が髪と瞳の相互関係にある。

 その処置が髪と瞳に反作用し同一の色合いになる事は滅多にない。

 だがラドルの場合、神霊力が発動すると魔力の作用が消失し元の色合いに戻る。

 それが蒼髪蒼瞳の邪神の神使として強い印象を与えた。

 結果ついた二つ名が「蒼穹の神滅者」だった。

 その瞳に蒼みが無くなっていることにローグは心なしか安堵する。


「……ラドル。貴方は今から城塞都市に向かって戦いに間に合うと思いますか?」

「……鎮火まで恐らくはひと月はかかるだろうな」

「ひと月?あの兄妹がそこまで手こずると?」

「聖印騎士団が伊達に数十年あの都市を護ってきたわけではないということだ」

「と言うと?」

「いるんだよ、あの軍にもお前達レベルの奴が。神鎗に選ばれた戦乙女がな」


 蘇る追憶の彼方の記憶。

 神滅者の過去に何度か立ちはだかった戦乙女。その手にはいつの時代にも神の鎗が握られていた。

 当代の戦乙女には未だ面識はないがやはり神の鎗に選別され聖印騎士団の副長に就いたという報告は受けていた。

 そしてその報告が真実ならばその実力は十星にも劣らない程の力を持っているはず。

 だが。今はそんな追想に浸っている場合ではない。

 目下の違和感が芽を出していた。


「……それはそうと」

「はい。おかしいですね」


 ふと足を止める。

 小屋を後にして既に1日以上が経っている。いくら広大な樹海といえどラドルの迷いない歩みなら抜け出ていてもおかしくない。

 だが現実は未だ樹海の中に囚われていた。

 抜け出るどころかなんの変化もない。いやますます迷いこんでしまう気がする。

 いくら還らずの樹海とは言えこれは異常だ。

 そう感じたラドルはローグに言う。


「ローグ、ちょっと上空から今の位置を確かめてくれ」


 そう告げるとすぐさま木々の高さよりも上に出る魔獣。そしてすぐに異変に気付く。

 樹海がずっと先の地平近くまで続いている。

 ラドルの直上にいるローグもそれなりの距離を進んで来たにも関わらず未だ樹海のど真ん中に居るという事だ。

 それを確認してラドルの元に帰る。


「これは異常ですね。休み無しで丸一日の行軍にも関わらずまだ樹海のど真ん中とは。いくら還らずの樹海でも貴方と私がいてこれはあり得ません」

「……だな。ということは……。罠にでも落ちたか?」


 普通なら遭難とも言える非常事態であるがラドルはにべもなく言い放つ。


「この俺と十星の1人を相手に気づかれずに無間空間に引き摺り込むとは大した術者がいるのかもな。とにかくこの空間術式を破るとするか」


 剣を抜き構え目を閉じる。

 そして無くなった視界の代わりにより鋭敏になった知覚で魔力を探知する。

 この還らずの樹海では自然に地中から漏れ出る魔力以外はまずない。人的な魔力であればそれはすぐに分かる。

 目を閉じ一つ一つ魔力の周密具合を探ると一つ明らかに人的魔力であろう気配を感じた。


「ーー見つけた」


 一言呟くと剣が魔力により巻き起こった風を纏いみるみる小竜巻になっていく。

 そして。

 鋭く迅く前方に剣に纏った竜巻を投げつける様に一閃する。

 刹那。

 放たれた衝撃波が目の前の樹々を薙ぎ倒していく。

 突如鬱蒼とした樹海に明るく光が差し込んだ。

 衝撃の土煙が晴れると眼前の樹海に大きな穴が開いたかのようにぽっかりと樹々が薙ぎ払われ視界が開けていた。

 チン、と剣を納めて歩き出す。

 ローグもそれについて行くと薙ぎ倒されている樹々を見て一言呟く。


「久々に見ましたよ、神哭剣……確か天風烈閃でしたっけ?」

「……単純に魔法付加剣術だ。そんな技名、だれがつけた?」

「ダルタニアがそう言ってましたよ?」

「……あいつめ」


 自分の剣には流派が無い。というよりもはやこの世界には存在しないと言った方が正しい。

 我流、と言うわけではないが自分の特性を突き詰めたら魔法を付加した剣術が一番しっくりきただけの話だ。

 流派名や技名に興味はなかった。

 しかし自分を盲信していた十星のダルタニアに名前をつけた方が必ず技が更に冴えると言われ勝手にさせて覚えさせられた記憶がある。

 まさか他人に言いふらすとは思わなかったが。

 やれやれと肩を竦めて件の魔力が施されていた樹が倒された場所まで来ると足を止める。

 その場で屈んで魔力の残滓を探ろうとした時。


 バキバキバキバキッ‼︎


「なんだ⁉︎」

「ラドル!何か来ます‼︎」


 目の前を樹々を歯牙にも掛けずこちらに猛突してくる黒い存在がある。

 その大きい黒い体躯の存在が姿をラドルたちの目の前に現わす。


「魔獣……ビルキャスだと?」


 ちらと魔獣と同種の同行者を見やる。


「ああ、この傀儡となった魔獣の親個体のようです。自分の子を取り返しに来たのでしょう」

「全く……そういう凡ミスの尻拭いはお前がやれ。人形使いよ。」

「いいでしょう……」


 親の目の前に現れた子の魔獣から発せられた、殺気に親魔獣が警戒する。子の異変に躊躇うのか、後ずさる魔獣。

 その隙を見逃さず子魔獣の目が怪しく光り、瞬間子魔獣の身体の全身から鋼線が飛び出し縦横を無尽する。

 魔力を帯びた鋼線が樹海の樹々に合わせて絡みつき鋼線の先がビルキャスの身体を刺し貫いていく。

 幾つもの鋼線が魔獣ビルキャスの巨躯を宙に浮かせる。

 暴れもがく魔獣はその身体から血を吹き出させ、貫いた鋼線はその血で滴り、その血が魔獣の下で大きな血溜まりを作る。

 出血と疲労から徐々に魔獣の動きが鈍くなっていき、やがて宙に吊られたまま完全に事切れる。


「終わりましたよ、ラドル」

「……お前もなかなかに悪趣味な仕留め方をするな。」

「この魔獣の子も既に息絶えています。あの世で会えるならまだ救いもあるでしょうに」


 ふぅ、と一息吐くと事切れた魔獣の身体から分離するモノがある。

 魔獣の毛並みに隠れて見えなかったのか、そのモノだけがドサっと地に落ちる。


「……この子は……?」


 地に落ちたモノの正体。それはまだ年端もいかない人間の少女だった。

第15話投稿です!

ラドルの物語がやっと動き出しました。

この少女編、少し長くなるかもしれませんが主人公としての話として相応しいものにするつもりですので少しお付き合い下さい。

感想評価お願いします!

ではまたお会いしましょう!

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