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蒼穹の神滅者(シルヴァリオ)  作者: 1
第1章 廻る時計
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第13話 キャラバン編〜同行者〜

 大陸を東西に横断する中央航路街道を往く旅人を太陽が焼いている。

 フードを被り直射日光を避けているその中身は赤い髪の少女。

 ほんの3週間前も似たような境遇にあったエティアだ。しかしあの時とは違いその表情は明るい。

 城塞都市ザールベルクでキャラバン隊の護衛役としての報酬を得て目的地である教会都市ハルテージを目指していた。


「エティア、短い間だったけど護衛役、ありがとね。ハルテージまではあと10日程度だけど途中から中央航路街道から外れちゃうから迷わないでね!」

 ザールベルクで命を救われたメルナはあれからさらにエティアに懐いてきた。イリスやロナもキャラバンの皆もエティアを更に信頼し護衛役として雇っていた。

 ザールベルクでの興行を終えるまで。

 バルカード神聖王国はグルトミア帝国に対して宣戦した為国境は閉じられてしまいグルトミアに渡る事は叶わずそのままバルカードに留まる事になるもザールベルクで別れる事になった。

 というのも教会都市ハルテージはその名の通り多数の神教が教会を構えている地で厳格化の為キャラバンなどの娯楽興行の認可が下りる事はまずない。

 メルナやキャラバンの面子はこのまま護衛役としてエティアの同行を求めたが彼女はその要請を辞した。


 ーー自分にはやるべき事があるーー


 キャラバン隊と過ごした日々は楽しかった。

 居心地が良すぎた。

 陽気に歌い、明るく笑い、楽しく食を摂る。

 隊の皆は優しく接してくれ、許されるならこのまま隊に留まるのも吝かではなかった。

 しかし。

 自分の無力さで死んだ人間がいた。

 烏滸がましいと言われるかもしれないが、もうそのような光景は見たくない。

 大罪人である神滅者を捕らえ神罰を与える。

 それが自分に課した罰。

 それは自分が為すべき使命。

 忘れちゃいけない自分の旅の目的。

 だから。

 優しい人たちとの別れを選んだ。

 また会えると信じて。


「……ありがとう、皆」


 メルナには泣かれたがイリスやロナは笑顔で送り出してくれた。

 そんな仲間への感謝がつい口に出た。

 そして再会を約して2日。

 順調に行けば今日の夕方には岐点街に入れるはず。

 そう思ってザールベルクで手に入れた地図を広げる。歩きながら道を確認する。確認も何も中央航路街道はほぼ一本道なのだが。

 そんなエティアの姿に声を掛ける存在がある。


「また地図か。方向音痴だからって一本道だぞ?」

「……悪かったわね」


 それはザールベルクで出会った死神と言われた男だった。

 メルナ達と別れてからずっとエティアの後を黙ってついてくる。

 最初はただの偶然だと思ったが街道を出たらもう間違いなかった。

 わざと道を間違えた振りをしてみてもついて来ている。おかげで方向音痴と思われる特典までついてきた。

 いい加減不審な追跡者に理由を聞いてみる。


「アス、いつまで付いてくるのよ……?」

「……別に気にするな。たまたまお前が俺の前を歩いているだけだ。」

「たまたま、ね……」


 じっと横目でアスを見る。

 その視線が痛いのか、顔を顰めるアス。

 沈黙が続く。2人の足音が余計に耳につく。

 だが死神はその沈黙に抗い何も言わない。

 はぁ、と溜息一つつくとエティアから切り出す。


「まぁ、心強い同行人がいると思えばいいけど。ところで」

「……なんだ」

「アスって通称でしょ?一緒に行くなら本名くらい教えてよ」


 少し考えた後。

 その答えが返ってくる。


「アスカル・ディッドだ。……だがその名前では呼んで欲しくない。呼んでいいのは……1人だけだ」

  「……了解。それじゃ早く行きましょ、同行者さん」


 気難しくも新しいパートナーに相槌を打ちつつ不似合いな2人は中央航路街道を往く。


 ーーーーーーーーーー


 グルトミア帝国東方には隣国メイフィール王国との国境に渡って広大な森が広がっている。

 その森は森に棲みついた魔獣、魔物が跋扈している上に地中から魔力が至る所から湧き出ている為磁場を狂わせ中に入り込むと感覚さえも狂わせてしまう。

 その為この森は付近の住民からはこう呼ばれていた。

 ーー帰らずの樹海と。

 その帰らずの樹海に足を踏み入れた男がいる。

 日中にも関わらず暗く、鬱蒼とした木々が日差しを遮り、高い湿度が不快感を催す。

 地から噴き出す魔力が身に纏わり付きなんの耐性も無い者が足を踏み入れれば半刻ほどで発狂してしまうだろう。

 だがその男はそんな不快感も外部からの魔力も歯牙にも掛けず平然と歩を進めていた。

 暗い樹海にそぐわない蒼穹のような髪を持つ神滅者には。

 その手にはすでに魔獣に襲われたであろう痕がこびりついた剣を手にしている。

 そんな神滅者はふと足を止め辺りを軽く見回す。


「……この辺りの筈だが」


 と呟きながら更に奥に進むと一軒の小屋があった。

 どうやらそれが神滅者の目的であったのだろう。

 迷わずその小屋に入っていく。

 中には誰もいない。

 ただ一つ、小さな砂時計があった。


「まだ……半分も落ちきってないか」


 どう見ても手の平サイズのその砂時計は砂が落ちる速さは通常のそれと変わらない筈なのに一向に減る様子がない。

 同時にいくら砂が落ちても溜まっていく様子も見えない。

 明らかに魔術的な処置が施されているであろうその砂時計に手を差し出そうとしたその時。


「それが燐界の砂時計ですか?ラドル」


 背後から声がした。

 自分がこうも容易く背後を取られた事実をおくびにも出さず、その声の主を推察する。


「ローグか。わざわざ俺の監視に来たか?」


 そう結論付けたラドルはその身を振り返るが誰もいない。

 いや、いるにはいた。

 小さな魔獣が一匹。

 見た目は愛らしい猫みたいな姿をした魔獣。

 猫とは違うのは鋭く大きな牙にその身に似つかわしくない翼がある。

 ビルキャスと言われる魔獣の幼体だ。

 成体になればそれなりの体躯で人を襲う立派な魔獣に成長するが今はまだそのイメージは微塵も見いだせないほど愛くるしい姿をしている。


「……しばらく見ない間に随分可愛らしい姿になったな。お前の趣味か?」


 少し顔を綻ばせると相手から不満がでた。


「違います。まぁ色々あるのですよ。……で、それは?」


 ついと見る先には件の砂時計が。


「……そうだな。強いていうなら邪神復活までの時の砂と言った所かな」

「……ほぅ」


 興味深げに砂時計に近づくと襟首を掴まれるローグという名の魔獣。

 ジタバタと暴れる魔獣に扮したローグに聞く。


「で?何故俺の前にわざわざ姿を現した?監視なんだろ?」

「いや、一つ言伝を頼まれまして。」

「リカードからか?」

「まさか。リカード様からは貴方との接触は禁じられましたから。故にこそのこの姿で」

「……じゃあ誰から?」

「ダルタニアから」

「げ」


 不意に出た名前につい顔が歪む。

 それを見たローグはニヤと愛らしい姿には不似合いの醜悪な笑みを見せる。

 しまった、と思うもすでに遅かった。


「いいのですか?そんな嫌そうな顔をして。それがダルタニアの耳に入ればなんと言うか」

「待て待て。それはその、余りに想像していなかった相手だったから、その、な」


 珍しく神滅者と言われるラドルがしどろもどろに弁明になっていない弁明をする。

 それを見て満足したのか、ローグは先ほどまでの醜悪な笑みから姿に合った笑みに変える。

 ラドルも自分の態度を省みつつ、小さな魔獣を古い机の上に置いた、


「……で?アイツはなんだって?」

「ただ一言だけ。……殺す、と。」

「なんてシンプルでド直球だ。しかも豪速球なのはアイツらしいがな」


 グルトミア十星将序列第2位の紅星のダルタニア。

 気性が激しく、一度敵に回れば全てを焼き尽くすまで破壊する烈火の星。と同時に神滅者の信奉者でもあった。

 一度グルトミア帝国の名門貴族がラドルの存在に対して非を唱えたため、その貴族が有する領地全てを焼き払おうとした事があった。

 それはラドルとリカードの口添えで未遂で済んだが。

 その時からか、グルトミアを離れる機会が近いのもラドルは感じていた。


「まぁそれはそれとして……それだけを言いに来たわけでもないだろう?」

「……ええ。貴方の聖王女殺害の件から世界が大きく動き出しました。」

「……そうか。いやそうだろうな」


 聖王女の存在は国内外を問わず多大な影響を及ぼす。

 現人神故当然と言えば当然であるが。

 その聖王女を殺害した。

 それは当人たちの思いを余所に勝手に事態が巨きくなってしまうであろう事は予想していた。

 その予想はさほど誤差がない程度には事態が進んでいる事を確認する。


「……でバルカードはグルトミアに対して戦線布告か。バルカード側は恐らく聖印騎士団が出張るだろうが……グルトミア側はどうなんだ?」

「2人です」

「……2人?」

「十星序列4位金星のリーテス・ファラと序列5位銀星のドリムーラ・ファラの兄妹星ですよ」


 城塞都市ザールベルク郊外。

 バルカード聖印騎士団3万に対しグルトミアは2人という異様な光景が広がっていた。




一週間ぶりの投稿です。

ポロポロと十星メンバーが出てきました。

名前だけならやっと半数。

お話をもっとテンポ良くすすめないと全員出せるかなと一抹の不安が。笑

頑張っていきますのでよろしくお願いします!

感想評価も頂けたら嬉しいです。

是非是非よろしくお願いします。

ではまた来週まで〜。

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