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蒼穹の神滅者(シルヴァリオ)  作者: 1
第1章 廻る時計
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第10話 キャラバン編〜護衛〜

「ぐぇっ‼︎」


 中央航路街道を行くキャラバン隊を囲む男たちがいる。見るからに盗賊風な男たちの一人がキャラバン隊の先頭を進んでいた馬車に脚を掛けた瞬間。男が宙を舞った。

 幌馬車から男を吹き飛ばした原因が姿を見せる。

 正確には原因の一部が幌から突き出ている。

 それは肉付きの良い、白馬の如き白い肌をした白馬の脚と見紛うばかりの女性の脚だった。

 そしてその脚の主が馬車の中から姿を現わす。馬車の縁に脚を掛けたまま、まだ纏めていない少し長い髪をかきあげながら盗賊達を人差し指で指差し数える。


「ひぃ、ふぅみぃ……10人か。ねぇ盗賊さん達、一つ提案があるんだけど?」


 何事かと顔を見合わせる男達。


「私達を見逃してくれないかな?そしたら誰も怪我しないで済むし、ね?」

「ちょ、エティア。出てる。怪我人出てるよ」


 と後ろから踊り子のメルナが指で地に伏せっている男を指す。

 ありゃ、と苦笑いをしつつ舌を出すエティア。

 それを見て盗賊頭らしき男が剣を抜き身でちらつかせながら前に出る。


「姉ちゃん、その提案は却下だ。その馬車の中身と姉ちゃんたちをふん縛らないと俺たちは飯の食い上げだ。せっかく今乱れに乱れて警備隊らが出払ってるんだ。この好機を見逃す手はねえな」

「うーん……じゃ、遠慮なく」


『迸れ 光の聖霊よ 白の世界に満ち溢れよ 燐光(リリール)


 エティアの手から光が溢れ出す。そして弾ける。

 瞬間世界が白という白で覆われる。いわゆる目眩しの魔法だがその場にいた盗賊達はまともに光を浴びて視界を奪われたその隙にエティアが男達に一撃を入れていく。

 屈強な男達がエティアの細腕で倒れて行くのには右手の闘手甲(フェルマー)が一役買ったのは言うまでもない。

 全ての賊を制圧した後、キャラバン隊は急ぎその場を離れる。

 身体にまとわりついた埃を払ってふぅ、とその場に腰を下ろすエティア。

 隣のメルナがにへっと笑って話しかけてくる。


「エティアって強いんだね、10人以上の盗賊達をものともしないなんて武僧って皆それ位強いの?」

「私なんてまだまだだよ。白打も魔法も未熟だって父さんによく言われるよ」


 謙遜しながら髪をいつもの様に後ろで一つに纏める。


「お父さん?」


 エティアの口から初めて出た単語につい反応してしまう。


「父さんも武僧でね。あんまり知らないけど昔は知らない人がいないほど有名人だったんだって」

「そのお父さんに格闘とか魔法を習ったの?」


 頷き肯定すると、メルナの表情に影が指したのにエティアは気づいた。

 考えてみれば当然の反応だ。

 自分と同年代の少女が旅商で身体を切り売りしながら生きている。無論目の前の少女にも親がいたはずで木の股から生まれた訳ではあるまい。少女がここにいる理由を考慮すべきで無神経に自分の境遇を語るべきではなかった。

 そう後悔しているのが顔に出ていたのかメルナも慌てて、


「あ、ごめん。エティアは何も悪くないから、だから気にしないでよ」


 本来なら自分が謝罪すべきところを逆に謝らせてしまった。心優しい目の前の少女にはエティアは微笑み返すしか出来ないことにほんの少し自己嫌悪を感じた。


「……それはそうと」


 2人のやり取りを見ていたイリスはやれやれと話を変えようと別の話題を提供する。


「分かってはいたつもりだけど想像以上に荒れているわね、中央航路街道でこれじゃあ先が思いやられるわね」


 中央航路街道とは大陸を東西に5国2山脈3大河を貫く交易公路の事で旅商たちが西へ東へと移動するその権益は公路を有する国々に莫大な影響を与える。

 当然その権益を確保する為公路を有する国は移動の安全を保証する義務がある。

 その公路に日も高いうちから盗賊が出没するその事実が神聖王国バルカードの非常性を如実に表していた。

 エティアがメルナの勧めでキャラバン隊に護衛役として同行して二週間。先ほどのような暴漢に襲われたのは1、2回ではない。これまではエティアの活躍もあって事なきを得たがこの先もそうだとは限らない。


「でも……もう少しでゆっくりできる……」


 今まで沈黙を貫いていたロナが不意に口を開く。

 それを聞いてエティアは今まで聞きそびれていた疑問を口にした。


「そういえばさ、このキャラバン隊って何処を目指しているの?」


 エティアの質問に呆れた顔を見合わせる3人。


「アンタね……もう少し自分が厄介になってる寝ぐらの事くらい知っておきなさいよ……」

「とりあえず目下の目当ては城塞都市ザールベルク。そうだね、あと3日くらいかな?」


 そこまで聞いて自分の目的もふと気になって聞いてみた。


「じゃあハルテージまではどれくらいかな?」


 その言葉に今度は3人とも少し表情が陰る。


「ちょっと言いづらいんだけど……ザールベルクから先はグルトミアに渡る予定なの」


 それは暗にザールベルクから先は分かれ道になるという事を意味していた。

 ハルテージはバルカードの都市。ザールベルクから先はグルトミア帝国。

 キャラバンの皆には世話になった。

 中央航路街道で行き倒れていた自分を拾ってくれて、路銀がないのを護衛役として雇ってくれた。

 本当に感謝しかない。


「そっか。短い間だったけどここまで連れて来てくれて本当に感謝してる。あと3日間、しっかり護衛役を勤めあげるからよろしくね。」


 少し早い謝辞を口にせずにはいられず頭を下げる。

 それを見てついメルナは自分の希望を吐露しようとする。


「ね、ねぇエティア、よかったらだけど……」

「やめな、メルナ。エティアにだって都合があるんだ。未練がましいのはアンタらしくないよ」


 メルナの提案は分かりきっている。だがそれはエティアを困らせるだけだ。短い間でも仲間として二週間ともに旅をしたエティアを困らせたくはない。その真意は誰にも言わず彼女らしい物言いで叱咤する。


「別に今生の別れじゃないんだ。再開を楽しみに笑って送り出しな」

「うん、そうだね……。エティア、あと3日間私たちを守ってね!よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げ返すメルナを見て互いに笑いあう。間も無く訪れる別れの時を悲しむのではなく笑って過ごす。二週間とはいえ慣れた居心地のいい空気を楽しむ。

 陽気な幌馬車は旅曲と歌でリズムをとりながら一路街道を往く。その歌は別れを微塵も感じさせる事はなく未来を期待しての明るい声で彩られていた。


第10話です。

本来なら昨夜投稿する予定がつい寝落ちしちゃいました爆

キャラバン編もうちょっとだけ続くんじゃ。

ちょっと複雑な流れになるかもですがなるだけ説明くさくならないように気をつけます。

もう少しお付き合い下さいませ。ぺこり。

あと感想、評価をいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

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