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蒼穹の神滅者(シルヴァリオ)  作者: 1
第1章 廻る時計
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第1話 序幕〜神話〜

 人気の無い山嶺に古びた廃墟がある。

 その廃墟の最奥に開けた広間があり更にその一番奥に廃墟に似つかわしくない女神を模した神像が立つ。

  静謐に包まれた神殿跡の主。

  その神像の前に佇む姿が二つ。

  一人は男。その両の手に黒と白の剣が握られている。

  一人は女。薄い絹衣を身に纒い額冠(サークレット)をつけている。

  互いが互いをじっと見入る。

  その瞳は多くの感情が入り混じるも表情は厳しい。


「ーーーーー?」

「ーーーーーーーー!ーーーーー?」

「……ーーー。」


  二人が何かを言い合う。その言葉は聴こえない。

 やがて。


「……邪神の使徒よ。何故汝がこの世界に存在する?汝の存在は許される事能わず。汝が許されし地などこの現世に無し。最早汝が慕いし邪神はこの現世に無し。即ち汝がこの現世に存在する意義は無し!汝に相応しき場は地の底の業火以外に有りはせず。疾く去ね!我が神の光、神の炎、神の正義が汝を裁く前に!」


  女のその口上の一言一言に膨大な神気が籠められ聞く者を恐慌させるであろうその言葉に全く怯む気配すら見せない男が逆に口上を返す。


「その身をか弱きヒトの肉に頼らなければこの現世に現れる事も出来ぬ脆弱な存在が何を(のたま)うか!その身を裂いて我が力を世界に示してくれる。身の内醜く小狡(こずる)い女神め!貴様を世界と断つ我が剣を以ってその神意を砕き天を割ってくれよう!そしてその断末を世界に轟かせてやろうぞ‼︎」


  男の剣が神気を纏い嵐を巻き起こす。

  女の手に神杖が顕れ光を満ち照らす。

  尋常ならざる力の奔流が静謐だった山嶺を揺るがし響かせる。

  そして二つの強大な力が、男の剣と女の神杖がぶつかり合う。

  そしてーーーーーー。




 ーーーーーーーーーーーー



  朝の小鳥の囀りで目を覚ます。

  少女は目を開けて周りを見渡すと背の高い木々から漏れ出る光が脳の覚醒を促した。

  むくりと身体を起こすと手の甲に一つ、ぱたと雫が落ちる。

  顔に一筋の道が眼から頬に伝っていた。

  ーー涙?

  夢を見ていたのか、しかしどんな夢だったのか覚えていない。

  ゴシと眼をこすり顔を叩く。今日はいよいよ旅の目的地に着く予定だ。

  そう思うと身体が不意に震える。先に起きて見廻りから帰って来た兄貴分と野宿の後を片付けてすぐにその場を発つ。

  足取り軽く歩を進めていくとやがて木々の切れ間が見えてくる。

  軽い興奮と高揚が身体の奥から湧き上がってくる。

  次第に歩調が早くなり徐々に駆け足になる。

  木々を抜けて目に入ったその景色の向こうは。


「わぁ!見て見て!見えてきたよ、聖王都!」


  少女がかつてないほど大きな声で叫ぶ。

  故郷の田舎町を発って24日。街道を抜け、川を渡り、 山を越えてようやく見えてきたその都市は高い城壁に囲まれ、幾つもの側塔を設け、その内に数えきれないほどの住居、施設、公館を構えている。

  王都と言うにふさわしい規模のその都市の中心にそびえ立つ王城は白く高く、荘厳かつ美麗な佇まいを見せ圧倒的な存在感を誇っていた。


「あれが世界に誇る最も美しい王城、『白峰城(レ・ディアメルス)』かぁ……」

「そんなに口を開けっぱなしにしてると虫が飛び込んでくるぞ、エティア」


  エティアと呼ばれた少女は長く紅い髪を後ろで纏め、およそ山歩きには不向きな軽装をしている。腰程度までの外套、質はそこそこな旅装、鞣し革で作られた古くも実用性に足る胸当て。少しスリットの入ったショートパンツ。

  しかし最も異彩を放っているのは彼女の右手だった。

  少女には似つかわしくない厳つく、ぶ厚く、そして存在感の塊。闘手甲(フェルマー)と言われる近接格闘用の武器に緻密に掘られた意匠の紋章が目を惹く。

 しかし彼女はその鉄の塊を意に介さず、自分に声を掛けてきた青年の方に振り向きながら軽く舌を出す。

 その表情からは今朝方見た夢の残滓は微塵も見いだせなかった。


「ふんだ、私が先に聖王都を見ちゃったから負け惜しみ?メカージュ兄さん?」

「あのな、お前の分まで荷物を持ってる俺相手に何を勝ち誇ってるんだ。それに俺は聖王都は初めてじゃない。残念だったな」


  彼女が兄と呼んだメカージュはエティアとは対照的にどんな悪地でも行軍できるような重装備だ。

  背中に大剣、二人分の荷物も抱えて山道を歩いてきたにもかかわらず疲労を微塵も見せないのは彼の人間的な強度を暗に表している。

  そんなメカージュはさらりと妹分の口撃を躱す。

 糠に釘な態度に口を尖らす少女に対して青年は追い討ちを掛ける。


「だいたいお前、今回の訪都の目的、覚えているんだろうな?」

「えーっと……」


  暫しの沈黙。

  互いに相手を見合いながらの沈黙。

  長い付き合いというより家族のような間柄故の独特な腹の探り合いはすぐに決着する。


「なんだっけ?」


  明るく破顔した少女の答えに思わず肩を落とす。

 これもいつものやり取り。


「あのな!今回はお前の……!」

「あはは、分かってるよ!じゃ、私先に行って王都一番乗りさせてもらうね!」


  そこまで言うと王都に向かって走り出す。


「あ!おい、待て!エティアー!」


  少女は走り出す。

  その身に起こる運命を未だ知らずに。

  少女は駆け出す。

  その身が出会う多くの縁を未だ知らずに。

  少女は止まらない。

  その身に宿る好奇心と冒険心がこれからの自分を変えてくれると確信して。


  赤き少女と蒼い騎士の縁の糸が手繰り始めた。


  これはこの世界の人間なら誰もが知っている、しかし誰も認識できない物語。

  大きな大きな時計の歯車が噛み合う。

  大きな大きな時計の音が鳴り出したー。

初投稿です。

昔から書き溜めてきたオリジナル小説を放出します(恥

ラノベも初めてです(爆

稚拙な文章ですがお付き合いいただければ幸いです。結構長丁場になりそうですが我慢して呼んで

頂ければ子犬の如く喜びます。

ではではこれから始まるファンタジーにお付き合いくださいませ(土下座

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