【ソーセージ mari & mari】〜#3 みずたまりをつけてくるロングコートの影
【みずたの後をつけてくるロングコートの影】
「やだ、ちょっとなに」
だいぶ前から気づいていた。
みずたまりは駅からの帰り道、ずっと後をついてくるものの存在に。
偶然だと思いたかった。
だが、乾いた革靴のかかとが自分の短いヒールの音と重なって聞こえた。
部屋までもう少し。
人気が少なくなくなり始めた頃を見計らってみずたはチラと後ろを見た。
濃いサングラスと黒いシルクハットでどんな相手かはわからない。
トレンチコートの前を手で押さえ自分と同じテンポで歩いてくる。
昔、出没した露出狂の変質者に見えてきた。
一度そう思い込むと怖くなってきた。みずたは小走りに切り替えた。
部屋のドアに飛び込むとやっとひと息つけた。
「ああ、怖かった。ちょっとなんだったの一体」
ところが、外から鍵が差し込まれドアノブがカタカタ回転し始めた。
「うそ、なになに、ちょっとやめて」
ドアが開くと、それは居候という名の同居人ごみたまりだった。
「もう、脅かさないでよ。ホンキで怖かったよ。
あ、外に変な人いなかった? コートにサングラスで、
いまどきそれかよっていう黒い帽子かぶってた。
ごみたはつけられたり怖い思いしなかった? 平気?」
心配そうに気遣うみずたはサングラスとシルクハットを手に
しながら、さっきまで見ていたものとそっくりのコート姿で
部屋に入るごみたまりに目を奪われた。
えっ‥‥‥。
しかもコートを脱ぐと下着。
「あたしの周りには、そんなのはいなかったワ」
ああ、
おまえかよ‥‥‥
つか、せめて服は着ろ。