第8話 「再会」
なかなか更新出来なくて本当申し訳ありません。
まだ夜も明けきらない時間、俺は練習場に一人来ていた。
もちろん新しい魔法を練習するために。
昨日風呂から上がった俺は、ギルドマスターから借りた本に載っていない魔法を色々考えてみたのだ。
「よしやるか」
一人気合を入れ、しっかりとイメージするために集中した。そして、
「黒洞」
一応巻き込まれる恐れがあったので、なるべく遠く出現させた。
イメージ通り黒い穴に何もかも吸い込まれていく。このままだと俺自身飲み込まれそうだったので、すぐに魔法を解除した。
成功したのはよかったが、意外と魔力持っていかれた。後、仲間が近くに居たら使えない。
「出来たけど改良しなきゃ使えないな」
それから朝食までの間、何個か考えた魔法を練習してみたが、半分位は危険すぎてすぐには使えない感じだった。
やはり新しい魔法の開発は俺にはまだ早すぎたか。
自主練を終え、部屋に戻ろうとした時丁度アイリスが食堂から出てきた。
「おはようございます。朝食できましたよ」
「おはよう。少し動いてきたから丁度腹が減ってたんだ」
「そうだったんですね。頑張るのもいいですけど無茶はしないでくださいね」
「わかってるよ」
その後出来立ての朝食を食べ、少し休憩した後お昼までギルドマスターとの魔法練習をやった。
昨日の段階で中級魔法まではほぼマスターしていたので、より実戦的な立ち回りであったり、魔法の起動スピードを高める練習をやった。
一度倒れて以来、俺の魔力の上限がかなり上がっているみたいだ。
お昼になり、アイリスが持って来たお弁当をみんなで食べた。
昼食を食べ終えた後、ギルドマスターはギルドに顔を出す為に例のドアを使って出かけて行った。
少し食休みをして、アイリスと剣の練習を行う事になった。
「これから剣の練習をやるのですが、イズモさんがどれ位の実力なのか見極めたいので、これを使って遠慮なく打ち込んできて下さい」
そう言ってアイリスから練習用のロングソードを受け取った。
「わかったが怪我しても知らないからな」
「多分大丈夫だと思います」
アイリスはロングソードを中段で構え俺が打ち込んでくるのをじっと待ってる。
「それじゃ遠慮なく行くからな!」
俺は勢いよく地面を蹴り、それと同時に剣を振り上げた。その勢いのままアイリスに向かって真っ直ぐ切り掛かった。
だがアイリスは、俺の動きを初見で完璧に見切り、最小限の動きで受け流した。
それから何度もアイリスに向かって切り掛かったのだが、全て簡単に受け流された。
「イズモさんもう大丈夫です」
どうやらアイリスのチェックは終わったらしい。
俺が肩で息をしているのに対し、アイリスは呼吸の乱れすらない。
「ふぅー••••••どうだった?」
呼吸を整えてからアイリスに聞いてみた。
「一撃一撃はかなり重たかったです。多分まともに当たれば大怪我は間違いないでしょう。ただ動きが単調過ぎて簡単に受け流せました。経験不足と後は基礎が全然なってない感じですね」
ほぼ初めの剣なんて振ったのに、すごくボロクソに言われショックを受けた。
「これからの方針としては、素振りや足捌き、体捌きといった基礎をしっかりとやっていきましょう」
「••••••わかった。頑張る」
なんとかショックから立ち直り、俺はいつかアイリスに一泡吹かせてやると心に誓った。
それから夕飯まで、みっちり基礎練習を積んだ。
「それではそろそろ日も落ちてきたので終わりにしましょう」
「わかった。色々教えてくれてありがとな。また明日もよろしく」
「こちらこそありがとうございます。また明日も頑張って下さいね」
そうして俺たちは家へ戻った。
家には、すでにギルドから戻っていたギルドマスターが夕飯を作って待っていた。
「おかえり。今日は疲れたじゃろうから、儂が夕飯作っといたぞ」
「おばあちゃんが作ったの••••••?」
「そうじゃがどうしたんじゃ?」
聞いた途端アイリスは固まってしまった。
よほど珍しかったのだろう。
確かに面倒くさがりだもんな。
「ありがとう。かなり体を動かしたからさっきからお腹がすごいなってるんだ」
そう言うと俺たちは食堂へ向かった。
アイリスだけは先ほどから顔が引きつっているように見えるのだが気のせいなのか。
「冷めないうちに食べな」
品数こそアイリスには及ばないものの、それなりに美味しそうな料理テーブルに並んでいた。
「いただきます」
一口食べようとした瞬間アイリスが、
「イズモさん食べちゃダメ!!」
アイリスの叫びも虚しく、あまりに急に言われたのでそのまま口に入れてしまった。
その瞬間、俺は意識を失った。
****
目を覚ますと数日前に来たことがあった、あのふわふわとした空間にいた。
「まさか死んだのか?」
「ぎりぎり死んでないわよ」
聞き覚えのある声が答えてくれた。
「それにしても、随分早い再会だったわね」
「お前のせいで最初大変な目にあったんだぞ!」
「生きてたのだからいいじゃない。それに女の子と一つ屋根の下で暮らしているんでしょう」
にやにやしながら神様は言った。
「そうだけど、もっと違う方法で行かせてくれても良かったんじゃないか?」
「だってあの方が楽しそうだったから」
まじで一発殴ってやろうかと思った。
「ていうか俺はどうしてここに来たんだ?」
「あのフィルって言うギルドマスターが作ったの殺人兵器で昏睡状態に陥ったの。それで無意識のうちに幽体離脱みたいな感じで意識だけがたまたまここにたどり着いたって訳」
「それじゃ早く戻らないとやばくないか?」
死んだと勘違いされたら、燃やされたり埋められたりするかもしれない。
「身体の方は息もしてるし、心臓も動いているから大丈夫だとは思うけど、あまり長くここにいると浄化されて戻れなくなるわね」
「なら早く戻してくれ。お前なら出来るだろう?」
まだ冒険すらしてないのに死ぬなんてそんな馬鹿な話があるか。
「そんな焦らなくてもいい戻してあげるわよ。それより腕のヤツ、だいぶ変化したわね」
「戻してくれるならいいけど••••••。そもそもこれは何なんだ?」
「あれ? 言ってなかったっけ。それは『神の免罪符』って言って、私達神が人間に対してアクシデントを起こしたり、罪を犯してしまった時にお詫びとして与える力なのよ。効果はその人間によって違うけどね」
何だか凄いものを授かったんだな。
「ただ何で最初契約とか言ったんだ?」
「その方が雰囲気でるでしょ♪」
俺は無言で神様の頭を叩いた。
「痛ったぁー! 何するのよ!」
「すまん。あまりにムカついたので」
「次同じ事したらわかってるわよね?」
ドス黒いオーラを纏いながら、神様は睨んできた。
「もう絶対やりません! だから睨まないでくれ••••••。寿命が縮まりそうだ」
「全く。私を何だと思ってるのかしら!」
ブツブツ文句を言いながらも、オーラは消えていった。
「まーいいわ。そろそろ向こうに戻った方がいいかもしれない。出雲、ちょっと目を瞑りなさい」
「何でだよ?」
「何でって••••••見られてたら恥ずかしいじゃない••••••」
そう言いながら神様は、顔を赤らめモジモジし始めた。
「ちょっと待て!? 何をする気だ?」
「いいからさっさと瞑りなさい!」
せめて心の準備をさせて欲しいと思いながらこれ以上怒らせない様に目をギュッと閉じた。
「それじゃ行くわよ••••••」
そう言うと神様の顔が徐々に近づいてくるのを感じた。
もうすでに神様の吐息が俺の顔にかかる距離にいる。
いよいよかと思った瞬間、
「ばーか♪」
神様そう言い放ち、俺の左頬に鋭い痛みが走った。
どうやらビンタされたらしい。
チキショウ、また騙された。
そうして俺はあの世界へと戻されたのであった。
次回は、いよいよ出雲が初めてのクエストに挑みます。