第6話 「練習2」
読んでくださっている方、ブックマークしてくださった方本当にいつもありがとうございます。
目を覚ますとアイリスといきなり目が合った。
「うわぁぁ! どうしたんだ!?」
「ごめんなさい! うなされていたので汗を拭こうとしたらイズモさんが目を覚ましたのですよ」
「そうだったのか。てっきり••••••いや、どれくらい寝てたんだ?」
体を起こそうにもすごくだるいし、力があまり入らない。
「もうすぐ日が昇ると思うので半日くらいですかね」
そんなに寝ていたなんて••••••
「それよりお腹とか喉渇いたりしてないですか?」
「水もらえるか?」
俺はアイリスから水の入ったグラスを受け取り、お風呂も入れるか聞いてみた。
「少し待っていただければ入れますよ。」
「申し訳ないな。汗かいて気持ち悪いからお願いしていいか?」
「わかりました。用意出来たらまた呼びきますね」
そう言うとアイリスは部屋を出て行った。
出会ってからアイリスに世話になりっぱなしだな。いつか恩返ししなきゃな。
少ししてアイリスが部屋に戻ってきた。
「お待たせしました。用意ができましたよ」
俺はベッドから立ち上がろうとしたが、力があまり入らずよろけてしまった。
「大丈夫ですか!?」
アイリスがすぐに支えてくれた••••••が少しタイミングが良く、いや悪く何やら柔らかい感触が顔に広がった。
一瞬なにが起きたかわからなかったが、左頬に刺す様な痛みが走った。
「すみません! 反射的に••••••」
どうやら平手打ちされてらしい。危うくまた気絶するところだった。
「全然大丈夫だ。むしろ俺の方こそごめん」
不可抗力とはいえ、年頃の女の子の胸に頭をつけてしまったのだ。平手打ちくらいで済んで良かった。
少し気まづい雰囲気の中、俺は風呂へと向かった。
「はぁ••••••生き返った」
左頬を摩りながら、少し熱めの湯の中でそう呟いた。
「しかし腕の紋章みたいなやつがまた変化したな。」
十字に天使の羽の様なものの周りに、魔法陣の様なデザインが加わっていた。
もしかすると、俺のレベルに応じて変化するのかもしれない。
「それにしても厨二病みたいで嫌だな」
デザイン的にも前の世界でこんなのが書いてあったら、確実にそう思われる。
あまり長い事入っているとのぼせてしまうので、俺は早めに風呂から上がった。
案の定、替えの服がないので先程まで着ていた、汗まみれの服を着た。
部屋に戻ろうとすると、食堂からいい匂いがして来たので覗いてみた。
「もうお風呂から上がったのですね。もう少しで料理が出来上がるので待っててもらえませか?」
俺はアイリスに返事をし、席に着いた。
美味しそうな匂いのせいで、先ほどからお腹がやたら鳴っている。
「お待たせしました。沢山食べてくださいね」
昨日よりは少ないが、それでもテーブルいっぱいに沢山の料理が並べられた。
夕飯を食べていなかったので、あっという間に食べ終わった。
「ご馳走様。美味かったよ」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると作りがいがあります」
風呂に入り、飯も食べたので体調は大分回復したと思う。
「そう言えば、今日の練習はどうするか聞いてるか?」
「もう大丈夫なんですか? おばあちゃんは体調が悪ければ休みでって言ってましたよ」
「そうか。体調は大丈夫だと思うから、練習お願いしますって伝えておいてもらえないか」
「わかりました。また倒れるまでやらないでくださいね」
アイリスは、少し悲しそうな笑顔でそう言った。
「わかってるよ。それじゃ少し部屋で休んでから練習するから」
アイリスにそう声を掛け部屋に戻った。
俺は部屋に戻り、本棚から何か役立つ本がないか調べてみたが、小説の様なものであったり、なんだかよくわからない本しかなかった。
「ギルドマスターに聞いてみるか••••••」
これ以上探しても何も出てこないので、少し休んでから空き地へ向かった。
空き地に着くと、昨日あれだけ魔法を使って一帯を破壊したのに、何事もなかったかの様に元通りになっていた。
俺はウォーミングアップを済ませ、昨日の魔力コントロールの復習を開始した。
手を前出し意識を集中すると、ピンポン球くらいの赤い球が出来た。
「もう完璧だな」
その後は、他の属性の球も出現させ問題がないか確認した。
段々調子に乗ってしまうのが俺の悪い癖だと思う。
気付くと一度に全部の属性の球を出すまでになっていた。
「相変わらず異常じゃな••••••どうしたらそんな事になるかのう」
ギルドマスターが呆れた顔しながら現れた。
「楽しくなってつい」
「はぁ••••••。段々教えるのが怖くなってきたわい」
そう言いつつ、ギルドマスターは今日の練習メニューを告げた。
「昨日の今日じゃから軽めにやるかのう。なので今日は下級魔法じゃな」
この世界には、下級魔法<中級魔法<上級魔法の順に、威力及び難易度が上がっていく。各級の中にも、三段階で分かれている。
ちなみにアイリスが最初使っていた火球は下の下で紅炎は中の下である。
他にも古代魔法というものがあるらしい。
「基本的に魔法は、イメージと練り込む魔力によって威力が変わってくるのじゃ。ただ各魔法には込められる魔力の上限があるから、超えた分は無駄になってしまうんじゃ」
だから魔力コントロールが必要なんだな。
「とりあえず一度みせるからよく見ておれ」
そう言うとギルドマスターは、アイリスが最初使った火球をいつの間か設置されていたマト目掛け放った。
それは見事命中したが、マトは少し黒くなった程度だった。
「ではもう一度いくぞ」
また同じ火球を放ったのだが、今度はマト自体が当たった瞬間燃えて無くなった。
「込める魔力の量でこれ程威力が違うのじゃ。100パーセントの力を出せなければ悲惨な事になり事やその逆で、威力を高め過ぎると仲間に被害が出る場合とかもある」
確かに頑張り過ぎて、仲間を巻き込んだりしたら後味悪いな。
それから俺は、しばらくギルドマスターの指導のもと、下級魔法の練習をした。
ギルドマスターは火、風、光の三属性を持っているらしく、それ以外は本からの知識で教えてくれた。
「そろそろお昼じゃがどうする?」
「今いいところだからもう少しやってるよ」
「また倒れるんじゃないぞ」
「わかってるよ」
昨日に比べたら、魔法をいくら使っても疲れない。もしかしたら腕の奴と関係があるのか?
俺はその後しばらく練習していたが、集中が切れたせいか急お腹が鳴り、昼飯にする事にした。
いつの間にかギルドマスターの他に、アイリスも一緒にいた。
「お疲れ様です。お弁当持ってきたのでどうぞ。」
「ありがとう。ところでギルドの方はいいのか?」
ギルドマスターの代わりに、ギルドの手伝いをしているはずじゃなかったか?
「おばあちゃんが溜め込んだ仕事はもう終わりましたよ。後は細々とした仕事なのでサリーに任せてきました」
アイリスさんどれだけ仕事が早いんだ?
本当にギルドマスターの孫なのか?
「そっか。サリーに任しても大丈夫なのか?」
「ああ見えてやれば出来る子なので大丈夫だと思います」
「口調はあれじゃが頼りになるからのう」
ギルドマスター、もっと仕事ちゃんとしろよとか思いつつお弁当を平らげた。
「ところで、体調は大丈夫かのう?」
「全然問題ないけど」
「そうか。ただ昨日の事もあるから今日はこれで切り上げるとするかのう」
まだ全然出来るが、みんなに心配されるのもアレだし、大人しく従っておくとしよう。
「なんならアイリスとデートでもしてはどうじゃ?」
前サリーがしていたのと同じ様なニヤニヤ顔でギルドマスターが言ってきた。
「おばあちゃん! 何言ってるのもう!」
もちろんアイリスは顔を真っ赤にしていた。
「何を恥ずかしがっておるのじゃ。グイグイいかんと誰かに取られてしまうぞ?」
「イズモさん! おばあちゃんの事は無視していいからね」
アイリスさん、顔が怖いです••••••
「冗談だってわかってるから大丈夫」
俺がそう答えると、何故かアイリスは少し寂しげな顔をしていた。
「デートじゃないけど、着替えを買いたいから案内してくれないか? さすがにずっと同じ下着だと気持ちが悪くて」
「わかりました! それじゃ意地悪なおばあちゃんは放って置いて、お店に案内しますね」
こうして、機嫌が直ったアイリスと二人で買い物をする為街へ行く事になった。
次回はちょっと魔法の練習は休憩し、アイリスとのデート?編です。